超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「うぅぅ〜〜ん…どうしよっかなぁ……」
のどかな草原に溢れる少女の声。その声は悩ましげであり、同時にどこか期待を孕んでいた。悩ましげと期待というまるで方向性の違う二つの要素が同時に存在するものなのか、と問われれば答えは勿論YES。そもそもの話悩む、というのは別にマイナスの事とは限らない。例えてみれば夕飯に好きな食べ物Aと同じく好きな食べ物Bのどちらを食べるか考えている時、それもまた悩んでいるという事なのだから。
……なーんて、うだうだと長ったるい地の文だけど、短くまとめちゃえばわたし達はラステイションに来たよー、って事なんだよね。はい第六十八話始まり始まり〜。
「ねぷねぷ、それだと地の文の大半が必要なかったって事になっちゃうですよ?」
「あ、確かに…ってさも当たり前かの様に地の文を認識してるんだねこんぱ…」
「二人して何早速メタ発言してんのよ…てか、ねぷ子最近メタ発言多くない?」
雪国であるルウィーからラステイションへ移動した事で気温を高くなり、それのおかげで出発時よりも口数が増えたわたし達。…まぁ、別に寒きゃ寒いで結局色々話してるから寒さは関係ないかもしれないけどね。
「それはアレだよ、主人公の片割れが離脱した事でわたしにスポットが当たり易くなって、それによってわたしの個性がより前面に出て来てるんだよ」
「メタ発言増えた理由をメタ発言で説明って…まあいいや、それより何を悩んでたのよ?」
「え?そりゃ勿論ノワールに会ったら何言って弄るかだよ?」
「弄る事は確定なんですね…」
偽者の対処とシェア率向上の為にパーティーメンバーが別れてから凡そ一週間…って、ありゃ?意外とあんまり経ってないんだね。もっと経ってる気がしたよ。…まぁそれはともかく、その間にわたし達は三つの大陸で偽者を倒し、残りはラステイションのみとなっていた。そしてラステイションはノワールの担当の大陸であり、ラステイションが一番最後となったのもノワールが理由だった。そう、一番最後にした時最も良い感じの反応をしてくれそうなノワールだからだよ!ツンデレぼっちなノワールならそれなりの期間が空いた上でわたし達が来ればさぞ嬉しがる筈!だからこそそんなノワールをどう弄るかがミソなんだよね。
「いきなり抱き付いてすりすりしようかなぁ…それとも上手い事ノワールを乗せて甘えさせようかなぁ…いや、敢えて冷たくしてみるのも面白そうかも……」
「ねぷねぷが何だか企み顔になってるです…」
「ほんとノワール好きよねねぷ子…」
「そりゃ勿論だよ。だってあんなに弄りがいがある上にノリも良くて良い属性持ち合わせてる子なんてそうそういないもんね!」
自分でも分かる位笑顔で話すわたし。それを見たこんぱとあいちゃんは何故か苦笑いしていた。
「…まぁ、とにかくさっさとラステイションに行きましょうか。こんな所で騒いでた結果モンスターが寄ってきちゃった、とかごめんだし」
「…あ、モンスターと共に登場ってのも良いかも…」
「迷惑かけるのはめっ、です!」
「あぅ、怒られた…分かったよ、普通に向かうよ…」
こんぱに可愛く怒られちゃったらもう従う以外の余地はない。それに弄りとか抜きにここまで来たらノワールに会いたい気持ちも段々大きくなってくるし、あいちゃんの言った事も含めてここでうだうだしてる時間は無意味だよね。
と、いう訳で道草食ったり雑談で足を止めたりせずにラステイションの街へと向かっていたわたし達だったんだけど…
「…ねーあいちゃん、どうして騒いでなかったのにモンスターが寄ってきちゃったの?」
「それは単なる偶然だから…」
「ぱっぱと倒してノワールさんに会いに行くですよ」
数体(数機?)のマシン系モンスターと相対する事となるわたし達。…どう見ても人工的に作られたっぽいモンスターが何の説明も無しに出てくるのって今作に限らず色んな作品であるけどさ、これってかなり変だよね。戦闘マシンを造ってる組織がある(うちでいうアヴニールとかね)とか、古代兵器の残存機とか、知性あるモンスターや敵の重役が造り出してとか説明になる要素がある作品もあるけど…ま、深く突っ込むのはご法度だよね。重要なのは楽しめるかどうかだし。
とか考えながらわたしは抜刀し、一番近くのモンスターへと仕掛ける。ルウィーの街へと向かっていた時と同様に数の差があんまりなくて、且つ個々の戦闘能力じゃわたし達の方が数段上だった事もあり、然程苦労する事なくモンスターの殲滅に成功し、戦闘開始から十分足らずで一息つける様になった。
「ブレイクオーバー!って事で戦闘しゅーりょー」
「こうやって余裕でモンスターさんを倒せる様になると、自分の成長を感じるですね」
「こんぱもねぷ子も旅に出たばかりの時に比べて大分体力ついてきたものね。…ナースの戦闘能力が向上するってのはどうなのかと思うけど」
「ふふっ、わたしは戦えるナースさんを目指すです。…って、あれ?」
武器をしまい、さぁ今度こそ街へ…と思っていた所でこんぱが何かに気付いた様な声を上げる。
「どしたの?モンスターに何か盗まれた?」
「違うです、向こうから何かが近付いて来てるです」
「向こう?…って、げ…あれちょっと面倒なモンスターじゃない…」
こんぱが指差した方向を見たあいちゃんは、分かり易く嫌そうな声を漏らす。こんぱの言う通り、遠くから来ているのはわたし達が今さっきまで戦っていたモンスターよりふた回り程大きいモンスター。ごく一部を除いて、基本的にモンスターは大きい程強いからあのモンスターが楽々倒せるレベルじゃない事は明白だった。
「どうするです?隠れるですか?」
「いや、倒しましょ。どうやら手負いの様だし後々つけられても困るわ」
「はいはーい、じゃ…援護は任せたよ!」
再度抜刀し、こちらへと走りこんでくるモンスターを迎え撃つ為に走るわたし。わたしが前衛として突っ込み、あいちゃんが援護と撹乱を担当し、こんぱがわたし達の取りこぼしを確実に倒していく。何度も戦う中で少しずつ洗練させてきたわたし達の担当と戦法は単純ながらもそれなりに効果的で、単純だからこそ相手を選ばず使う事が出来ていた。
双方が接近する事で一気に距離が縮まるわたしとモンスター。刃が届くまで残り数メートルの所でわたしは少し高めの脇構えを取り、地を蹴って肉薄する。
わたしとモンスターが接触する寸前、両者の視線が交錯する。次の瞬間--------わたしの太刀は、宙を斬る。
「……え…?」
一瞬前まで、確かにモンスターはわたしの目の前にいた。でも、その一瞬後にはモンスターの姿が消え、放たれた太刀は目標を捉える事なく空振りする。
そして、更にその次の瞬間、その理由が判明する。
「あははははっ!私に勝てないって事は判断出来た様だけど、私から逃げる事すら叶わないって事は分からなかった様ね!」
「……え、ノワール…?」
「……え、ネプテューヌ…?」
上空から聞こえてくるのは高く、過剰な程の自信を感じられる声。わたし達にとってはとても聞き覚えのある声。
わたしが道中着々と練っていたわたしの案は全て水泡に帰し、わたしもこんぱもあいちゃんも…そして、ノワールすらも予想しなかった形で、わたし達とノワールは再会を果たす事となったのだった…。
「むー……」
「だから何でそんなに不満気なのよ貴女は…」
わたし達とノワールが想定外の再会を果たしてからだいたい一時間後、わたし達は揃ってラステイションの教会に来ていた。
「だって、せっかくノワールとの再会だったのに…」
「…ネプテューヌ貴女…私と会えるのをそんなに楽しみにしてくれてたの…?えと…そ、その…私もネプテューヌと会えるのを楽しみに--------」
「これじゃノワールを弄る事が出来ないじゃん!ノワールを慌てさせたり困らせたり赤面させたり出来ないじゃん!」
「ってそれが目的かいッ!」
顔を真っ赤にして怒るノワール。おぉ!これは期せずしてノワール弄りに成功したっぽいよ!ねぷちゃんやったね!
「この光景見るのも久しぶりね、ノワールは元気だった?」
「ったく…えぇ勿論元気だったわ。そっちは…聞くまでもないわね」
「はいです。沢山の偽者のねぷねぷに追いかけ回されたり、ベールさん好きの人達の騒動に困らされたり、ねぷねぷとフィナンシェさんとルウィー国民の人達のとばっちりでぶっ飛ばされそうになったりしたですけど今日も元気です」
「な、中々ハードな経験してたのね…」
こんぱの発言に汗を垂らすノワール。…こうして考えると、結構わたし達ってぶっ飛んだ体験を立て続けにしてたんだね…これじゃわたし達がトンデモ集団になる訳だよ…。
「あ、それでさノワール、ノワールの偽者はどうなったの?もしかして出来る女神のノワールさんの事だからもう倒しちゃった?」
「何よその妙に引っかかる言い方は…残念だけどまだ見つけてないわ」
「えぇ!?あの何時ぞやの人気投票ナンバー1の超絶出来る女神のノワールさんなのに!?既に見つけて一対一で優勢に立ってたブランに名実共にナンバー1の座を譲ったとでも言うの!?」
「貴女私に喧嘩売ってんの!?っていうかそういうネプテューヌは普段主人公主人公言ってる癖に二度も私より下だったじゃない!」
「うぐっ…ま、まさかこんな反撃を食らうなんて……」
ここぞとばかりに弄りまくってた筈が酷い切り返しを受けるわたし。えーっと…皆も人を弄る時は同じネタで返されない様にしようね、その場合何も言い返せなくなるから。今のわたしみたいになるから…ほんと、気を付けようね…。
「自業自得よ。…で、私からも聞きたいんだけど、もしかしてもう私の偽者以外は倒し終わったの?コンパとネプテューヌの言葉からはそう察せるんだけど」
「その通りよ。ねぷ子の偽者は複数体いたからベール様とブラン様はまだ隠れてる偽者がいないか調べてる所だけどね」
「複数体?よく女神化無しで複数体倒せたわね」
「一人一人は女神化したわたしより大分弱かったからね。…けど、勝てたのはやっぱ皆が協力してくれたおかげかな」
「へぇ…貴女も大分女神らしい顔する様になったじゃない」
ノワールがわたしの顔を見て少し感心した様な言葉をかけてくる。んー…ノワール以外にも時々わたしを女神らしいって言ってくれる人いるけど、やっぱりわたしには実感ないんだよね。プラネテューヌでの偽者との戦闘辺りから多少自覚はする様になったけどさ、あくまでわたしは女神だから、とかそれが役目だから、とかじゃなくてわたしがそうしたいからそうしてるってだけだもん。だから自分がやりたくてしてる事について褒められたりするのは違和感があるんだよね。……って、何か前に似た様な事思った気がするなぁ…。
「…あ、ところでノワールはあんな所で何してたの?職務放棄?」
「そんな訳ないでしょうが…治安維持を兼ねたおびき寄せ作戦よおびき寄せ作戦」
「おびき寄せ作戦って…偽者のノワールさんをですか?」
「そうよ、中々良い作戦だと思わない?」
そう言って自信ありげな様子を見せるノワール。対するわたしは揃って『?』って顔をする。いや、だって良いも何もろくに説明ないもん。更に言えばこれまでの偽者の動き的には全くおびき寄せにならない気がするもん。
「…ごめん、もうちょっと詳しく教えてくれない?」
「詳しくも何も、そんな複雑な作戦じゃないわよ?だって単に相手が偽者の私だって事を利用してるだけだもの」
「偽者のノワールさんだと、ノワールさんがモンスター退治してる所におびき寄せられるんですか?」
「えぇ、だって私の偽者なのよ?だったら姑息な事はせず、正々堂々真っ向から戦って勝利を掴もうとするに決まってるじゃない」
『…あー……』
説明、というには確かに単純過ぎるそれを聞いたわたし達は揃って何とも言えない様な顔をする。確かに偽者のベールは本物と似た様な趣味嗜好をしてたけど…ノワールは別にそれを聞いた訳じゃないよね?しかもそれってつまりノワールが自分を姑息な事はせず正々堂々真っ向から戦うタイプだって自負してるって事だよね?…ノワールって趣味方面で暴走する事は少ないけど、やっぱりそういう所はわたし達と同じ女神だよねぇ…。
因みに、説明を言い終わったノワールは腕を組んでドヤ顔をしていた。…こういうのって普通ちょっとウザかったり嫌味だったりするけど、ノワールの場合他の要素のおかげで一周回って逆に可愛いよね、変な意味じゃなくて。
「……何よ、その反応は」
「別に何でもないよ?だよね二人共?」
『うんうん』
「いや明らかに何か感心以外の感情抱いてるわよねそれ…まぁ良いわ、この作戦を続けていればいずれ分かる事だし」
「じゃ、もしおびき寄せ作戦中に全然違う所に偽者のノワールが現れたらどうするの?」
「そしたら私が間違ってたって反省するわよ?当たり前じゃない」
わたしの思っていた意図とは微妙に違う回答をしてくるノワール。うーん…まぁいっか、ノワールが反省してる所は見てみたいし。…え?それは取らぬ狸の皮算用じゃないのかって?やだなぁ…これはもう明らかに違う所に現れるフラグ立ってるじゃん?
「あの、ノワールさん。それじゃ偽者の情報は集めてないですか?」
「いや、情報はきちんと集めてるわよ?偽者がいそうな場所で戦ってた方がおびき寄せやすいし」
「おびき寄せ前提なのね…なら私達はどうする?その作戦だと私達は特にする事ないわよね」
「あ、ほんとだ…うーん、ノワールとは別行動するとか?」
「それだとノワールと合流した意味ないでしょ…」
「なら、ノワールに同行してノワールの護衛兼ストッパー役をしてくれないかな?」
わたし達がどうするか悩んでいた所に後ろから声がかけられる。その声の主は勿論ラステイション教会教祖のケイ。…そう言えばシアンといいケイといい、ラステイションにはボーイッシュキャラが多いね。今の話には全く関係ないけどさ。
「護衛兼ストッパーって…ケイ、貴女私が一人だと危ないって言いたい訳?」
「君は自分の力を過信し過ぎる傾向があるからね、万が一の時が不安なんだよ」
「さっすが教祖、ノワールの事よく分かってるね。…けどノワールが独断先行しちゃったらわたし達追えないよ?」
「それは気にしなくて大丈夫さ。同行者が女神ならともかく、君達ならノワールは守らなきゃと思って冷静でいられるだろうからね」
偽者のブランに比べると大分温かみがある…けどやっぱり淡々とした声音で話すケイと、それを聞いて言い返せないでいる(前半はその通りだったから、後半は否定する必要がないからかな)ノワール。そしてわたし達は特に他の案がなかった事とケイの言葉に納得出来た事から護衛兼ストッパーを務める、という事で決定する。
「よーしそれじゃあ護衛とストッパー頑張るよー!
「…それ私が使い手って前提?」
「ううん、わたしが使い手って前提」
「それじゃ絶対私守ってくれないじゃないの!…って、いやそもそも貴女に守られなくたって私は大丈夫何だからね!」
「ノワールがいると突っ込み役が分担出来て楽で良いわ…さて、私達はそれを引き受けた訳だけど…ノワール、早速またおびき寄せ作戦するの?」
「そうしたい所だけど…雑務が残ってるから今日は止めておくわ。おびき寄せにかかりっきりになったから別の仕事は出来なかった、なんてのは嫌だし」
仕事に真面目なノワールの意向によって次の行動は明日、という事になるわたし達。護衛兼ストッパーはノワールの作戦ありきという事で当然わたし達はフリー状態になる。これまで偽者との戦いは負ける事なく済ませてきたけど何度かヒヤヒヤする事はあったし、偽者のノワールがどんな手を使ってくるか分からないんだから、明日の為に今日はゆっくり休まなきゃだね。
--------因みに……
「さて、と…偽者が現れたら雑務に時間割けなくなるし、やれるうちにやっておかないと…」
「だね。あ、ノワールお茶貰うよ?」
「えぇ、そこのポットから好きに淹れて頂戴……って、何で貴女がここにいるのよ!?」
「え、それは…ノワールを弄って遊ぶ為に決まってるじゃん!」
「邪魔しないで欲しいんだけど!?」
休む前に、ひとしきりノワールを弄って遊ぶわたしだった。
今回のパロディ解説
・ブレイクオーバー
ダンボール戦機におけるLBX同士の対決での、決着パターンの一つの事。審判(?)ではなく戦っていたネプテューヌがそれを言っていますが…まぁ、あくまでパロディですし。
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Re(アールイー):バカは世界を救えるかに登場するヒロインの一人、間宮薫の使う力の事。使い手しか守ってくれないこの能力で他人を守るのは本当に難しい事なのです。