超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第八十四話 活躍(?)する妹達

「--------と、言う訳で絶対にMAGES.とブロッコリーから離れない事。良い?」

 

雪原へと向かう道中、つい最近出来たばかりの双子の妹に注意を述べる白の女神……というか、わたし。それを聞く双子の妹…ロムとラムはあからさまに面倒そうな表情を浮かべていた。

 

「むー…それ、何回もきいた…」

「そんなにわたし達がしんよー出来ないっていうの?」

「信用出来ないというか何というか…」

「……あ…ゆきうさぎ…!」

「ほんとだ!つかまえようよロムちゃん!」

「……だから不安なのよ…はぁ…」

 

ため息を漏らすわたしと、それを知らずに雪兎を追いかけようとするロムラム(勿論わたしは肩を掴んで止める)。今回の同行者であるMAGES.とブロッコリーはそんなわたし達姉妹の様子に苦笑していた。

汚染モンスター討伐の依頼を受けた翌日。わたし達パーティーは数人ずつに分かれて早速遂行する事とした。

 

「姉というのも大変そうだな」

「本当に連れて来て良かったのかにゅ?」

「…幼くても女神、早めに色々知っておいて損はないし余裕のある内に教えておきたい事もあるのよ。……それとは別に、何かアドバイスはない…?」

「残念ながら、無い」

「妹分ならともかく、実妹についてのアドバイスは持ち合わせてないにゅ」

 

ゆっくりと首を横に振る二人、肩を落とすわたし。…妹二人は可愛いし、大事な家族だとは思ってるけど…何故プラネテューヌやラステイションより明らかに低年齢且つ二人なのかしら…二段階位難易度が高い気がするわ……。

 

「…こほん、とにかく二人にはきっちり言い聞かせたけど万が一の事もあるから、悪いけど二人の事を頼むわ」

「任せろにゅ」

「お守りは慣れないが…文字通り守る事位は完遂しよう」

 

片やどこまで本当でどこまで厨二なのか分からない魔術師、片やロムラムより小さい毒舌少女というコンビではあるけど、仲間として友人としては十分どころか十二分に信頼出来る二人である事もまた事実。…こう批評してるわたしも世間一般からすれば負けず劣らずズレてるのでしょうね、と思いながらわたし達は雪原へと向かうのだった。

 

 

 

 

夢見る白、と言われるだけあってルウィーにはどこもかしこも白が多い。まぁそれは雪が殆ど一年中積もっているからで、捻くれた考え方をすれば夢見るじゃなくて雪降る白なのだけど…その白と雪が大いに役立つ事は多々ある。例えば……雪原を移動する、モンスターを見つける時に。

 

「早速、発見ね…」

 

雪原を浮遊する三体のモンスター。確か名前は『アイスゴーレム』。名前通り氷の身体を持つ、中途半端に人を模した様な見た目のモンスターなのだけど…その内の一体は青みがかった透明(いまいちアイスゴーレムの向こう側は透けていない)ではなく、暗く輝く闇色をしていた。

 

「ふっ…まるでフォールドクォーツだな」

「あのサイズならかなり希少だにゅ」

「ふぉーるどくぉーつ…?」

「きしょー…なの…?」

「そこは食いつかなくていいから…三体ならわたし一人で十分ね」

 

二人の事を任せるとMAGES.とブロッコリーに目で合図した後、わたしは地を蹴りつつ女神化。こちらの存在に気付いていないという絶好のチャンスを活かして一気に接近し、無防備なアイスゴーレムの内の一体を一撃で沈める。

 

「まず一体、っと…ほらよッ!」

 

仲間が一瞬にしてやられた事に気付き、即座に戦闘態勢に入る汚染含めた二体のアイスゴーレム。それを確認したわたしは足元を蹴って雪を巻き上げつつ飛翔、相手の視界を制限しつつ再度の攻撃態勢に入る。

 

『ーー!』

 

ぱっと見どこに目があるのか、そもそも目があるのか分からないアイスゴーレムでも巻き上がる雪は効果あったらしく、一瞬動きを止める。この系統のモンスターは硬く、一瞬の隙で仕留めるのは容易ではない。……が、それはあくまで普通の人の話。女神にとっては一瞬あればそれで良かった。

一気に急降下し戦斧で右腕を破砕。その勢いが収まるのを待たずに両脚で雪の大地を踏みしめ、女神の身体の頑丈さを頼りに思い切りスイング。氷の割れる様な音を響かせながら二体目のアイスゴーレムも消滅する。

そしてその瞬間、わたしの側面から氷の塊が飛び込んでくる。

 

「……っ…やっぱ汚染状態だとパワーも上がってるな…」

 

飛び込んできた汚染アイスゴーレムの右ストレートを戦斧の柄で防御。幸い足場を踏みしめていたおかげで体勢が崩れる事こそ無かったものの、このままいっぺんに汚染アイスゴーレムも倒してしまおうと考えていたわたしは攻め手を変える事を余儀なくされる。

数秒の硬直の末、互いに離れるわたしと汚染アイスゴーレム。汚染アイスゴーレムは離れながらも衝撃波らしきものを飛ばしてくる。

 

「ふん…甘いんだよッ!」

 

衝撃波が放たれると寸前で察知したわたしは戦斧の投擲。空中で両者がぶつかり合い、衝撃波は打ち消されて戦斧は軌道が逸れる。

それを確認した汚染アイスゴーレムは再度衝撃波の体勢に入る…が、それはわたしの予想通りであり、同時に手遅れであった。

 

「砕けやがれッ!」

 

汚染アイスゴーレムの眼前へと現れるわたし。わたしは戦斧を投擲すると同時にそれを追う様に自身も接近をしかけていた。汚染アイスゴーレムは咄嗟に防御をしようとするも、ろくに関節も無さそうな身体で女神の動きに追いつける筈もない。わたしの打撃が次々と胴体に叩き込まれ、その度に氷の破片が宙に舞う。そして、トドメとばかりにわたしが放った回し蹴りが汚染アイスゴーレムの胴体を貫き…決着となる。

 

「ふぅ…まず一体目、討伐完了だな」

 

ひらひらと軽く手を振った後、飛んでいった戦斧を回収するわたし。…と、そこへロムとラムが走ってくる。

その時わたしは若干ながら焦った。勿論今いたモンスターは殲滅したものの、戦闘音を聞きつけて別のモンスターが姿を現す可能性は十分にあり、幾ら女神化していると言っても奇襲を受けたら、しかもそれが自分から離れたロムとラムへ向けられたものだったら迎撃出来るか確証がない。

無知故に危険な事をしてしまうのは仕方のない事だけど、だからと言って放置していい訳ではない。だからわたしは寄ってきた二人を叱ろうと口を開き……

 

「おねえちゃん、すごい…!」

「すごいすごい!見ててすっごいドキドキした!」

「……え?」

 

--------かけた口からは、説教ではなく驚きの言葉が漏れる。そしてその後もきゃっきゃと興奮した様子でわたしに話しかけてくる二人に、ついわたしは笑みをこぼしてしまう。勿論、教育としてはきちんと叱るべきだとは思うけど…二人が生まれたばかりなのと同様わたしも姉になったばかりであり、しかも幼い二人が羨望の眼差しで見てくるとなったらこれはもう叱るに叱れない。……というか、何だか軽く胸を張りたくなる気分だった。

 

「…申し訳ない、二人のすばしっこさを見誤った…」

「子供と言えど女神だという事を忘れてたにゅ…」

「あぁ、気にすんな。これはこいつらの責任だからな。ロムラム、次はわたしが呼ぶまで来るなよ?」

『はーい』

「さて、んじゃ次行くとするか…」

 

一体倒しただけで済む筈がなく、雪原だけでももう数体はいるだろうと踏んだわたしは女神化を解除し、再度探し始める。

 

「…っとそうだ…ロム、ラム。貴女達はどうやって戦うの?」

「え…?…魔法、だよ…?」

「そうそう、あ…見せてあげようよロムちゃん!」

「うん、見せてあげる…」

「…今?…え、いやちょっと待って、今敵はいな----」

『『アイスコフィン』!』

 

ロムは右手を、ラムは左手を掲げて二人同時に声を上げる。その瞬間、空中に現れ飛来する二つの氷塊。それは魔法の国ルウィーでも魔法使いや魔術師として名乗るには十分な技であり、それを生まれたばかりの二人が出来るという事には素直に感嘆の声を漏らしたかった。……氷塊の飛来先が、わたしでなければ。

 

「……不用意に人に向けて攻撃魔法を放つんじゃ、ねぇぇぇぇぇぇッ!」

 

 

 

 

工業が盛んな国、ラステイションではそれが影響してかマシン系モンスターが多く出現する。けど、それはあくまで他国と比べた場合であって、別にマシン系以外が出現しないという訳ではなく、その系統以外のモンスターも普通に出現する。例えば…側頭部と腰回りの花を除けばちょっと変わった少女にも見える植物系モンスター、『アルラウネ』の様に。

 

「良い?ユニ、汚染モンスターっていうのは必ずしも元のモンスターと同じ動きをするとは限らないわ。そういう時はまずどうするべきか分かる?」

「え、と…元のモンスターと違う動きをするかどうか、するならどこが違うのかを見極める…?」

「正解よ。強さっていうのは自分個人で完結するものじゃないの、覚えておきなさい」

 

私の質問に答えられた事に安心しているユニの肩を軽く叩きつつ、女神(というか戦う者)として必要な事を教えていく私。そんな私達の様子を、同行者であるサイバーコネクトツーとファルコムは苦笑しながら眺めていた。

 

「…私何かおかしな事言ってた?」

「あ、いや…ちょっとノワール様が教師みたいだなぁって思って…」

「教師?私が?」

「まぁ、元々のキャラもあるのかもね」

 

二人の言葉に目をぱちくりさせる私(私だけ敬語なのには違和感があったから、出来る範囲でサイバーコネクトツーには敬語抜きで話してくれるよう頼んだ)。言われてみれば…まぁ、ちょっとはそれっぽかったかもね。

汚染モンスター討伐の為に渓谷に来た私達は既に何度か汚染モンスターを倒し、先程の様に特筆する事があればユニに教えていた。そして今、私達は遠目に二体の汚染アルラウネを捕捉していた。

 

「じゃあ、あの二体も倒してくるわ。戦闘の余波がここまで来る事はないと思うけど…何かあればユニを頼むわね」

「うん、任せてよ」

「あたし達がきっちり守るから大丈夫」

「あ……そ、その…アタシも…」

「何?さっきの事で何か質問があるの?」

「そ、そうじゃなくて…ううん、やっぱり何でもない…」

 

言いかけて止めてしまったユニ。ユニの言いたかった事は気になるけど、聞いてるうちに汚染アルラウネ二体が逃げてしまったら手間がかかるから、私は追求せずに女神化。一直線に二体へと突っ込んで先制攻撃を仕掛ける。

 

『……ーー!?』

 

偶然か、それとも察知能力が高いのか私の奇襲にギリギリで気付いて避ける二体の汚染アルラウネ。それでも私の速さには反応しきれず、片方の汚染アルラウネは腰の花の花弁の一枚を散らす事になったけど…流石にそれでやられる程モンスターも軟弱ではない。二体の汚染アルラウネは敵意をむき出しにして私を睨み、私は両方を視界に捉える為に数歩下がって対峙する。

 

「さーて、先に倒されたいのはどっちかしら?」

 

大剣を緩く構え、笑みを浮かべて挑発を仕掛ける。モンスターに人の言葉が通じるとは思ってないけど雰囲気なら感じ取れるでしょうし、実際花弁を斬られた方の汚染アルラウネはすぐさま飛び込んでくる(斬られて頭にきてるだけかもしれないけどね)。

手負いの汚染アルラウネの突進を横に交わし、握り直した大剣で横薙ぎ。それを手負い汚染アルラウネは跳躍して回避し、そのまま飛び蹴りしてくるけど…私は大剣の腹で受け、一気に真横へ振るう事で地面へと叩きつける。そのタイミングで突っ込んでくるもう一体の汚染アルラウネ。

 

「連携…と呼ぶにはお粗末なものねッ!」

 

地面に叩きつけた手負いをもう一体の汚染アルラウネへと蹴り飛ばし、追い打ちと迎撃を同時に行う私。更にそこで大剣を、身体の横で水平に構えて刺突をかけ、ぶつかってまごついている二体を同時に串刺しにしようとする……が、後ろの一体は思ったより立て直しが速く、突き刺し消滅させる事が出来たのは手負いの汚染アルラウネだけに留まる。……けど、これで後一体ね。

 

「さぁ、次は貴方よ!」

 

距離を取ろうとする汚染アルラウネに接近し、私は次々と剣戟を放つ。汚染アルラウネの方は防御に徹しているからか致命傷こそ負わないでいるものの、一撃ごとに花や草の一部が散っていく。そして、連撃の末遂に防御が間に合わなくなる汚染アルラウネ。それを私が見逃す筈もなく、上段に構えた大剣の一撃で葬り去--------

 

「フニャアァァッ!」

(な……ッ!このタイミングで…ッ!?)

 

渓谷にまばらに生えた草の影から姿を見せる、猫なのか何なのかよく分からない平べったいモンスター。その瞬間、私は二つの選択を迫られた。

一つはこのまま攻撃を敢行する選択肢。これならほぼ確実に汚染アルラウネを倒せるけど、次の瞬間にそのモンスターから攻撃を受ける可能性もある。

もう一つは攻撃を中断してその場を離れる選択肢。これなら攻撃を受ける心配はなくなるけど、汚染アルラウネを改めて追い詰めなくてはいけなくなる。

この二択ならどうするか。…考えるまでもなく、選ぶのは後者。戦場において命取りとなるのは思慮の浅い行動、そして功を焦る事(……まともな者から死んでいくとも言うけど、まぁそれはまた別問題)。それらの判断を刹那の間に下した私は後退として……次の瞬間、発砲音と銃弾が空を切る音を聞く。

 

「……っ!はぁぁぁぁぁぁッ!」

 

重心が後ろに下がっていた身体を、翼を広げる事で無理矢理正してそのまま一閃。当初の狙い通り汚染アルラウネを両断する。そして大剣を素早く引き戻して一回転。遠心力を込めた一太刀で猫風モンスター…否、銃弾を叩き込まれて仰け反っているモンスターを一撃で消滅させる。

 

「……ピンチもチャンスも瞬間的なもの、ってところかしらね…」

 

大剣を軽く振って降ろし、次なるモンスターがいない事を確認した後に女神化を解除して一息つく私。

だけど、私には一つ、そのままにはしておけない事があった。

 

「……さっきの射撃、やったのはユニよね?」

 

ユニ達の元に戻った私はまず最初にそう言う。『誰?』ではなくユニを名指ししたのは、単純にユニがライフルを携えていたから。更に言えば、サイバーコネクトツーもファルコムも火器は使わないからね。

 

「あ…う、うん!アタシでも少しは……」

「…どうして撃ったの?」

「…え……?」

「何故撃ったの、ユニ。私は援護してなんて言ってないし、援護する気なら交戦開始する前に言ってくれなきゃ困るわ。援護射撃があるって知らなきゃ射線に入って私が撃たれる可能性もあるじゃない」

 

腕を組み、ユニを問い詰める様な…というか、問い詰める。サイバーコネクトツーとファルコムは思う所があるのか私を止めようとしてくるけど…私はこの訊き方を止めるつもりは毛頭ない。

 

「あ…それは、その……」

「…………」

「……あ、アタシも…お姉ちゃんの妹として、出来る事があるならそれをしたいと思って……ごめん、なさい…」

 

俯き、私に謝るユニ。そんなユニの様子に私は--------驚いた。

 

「……えっと…なんで謝るのよ?」

「……へ?だ、だってお姉ちゃんの邪魔、しちゃったから…」

「邪魔って…確かに驚いたけど、邪魔どころかむしろ助かったわよ?」

「そう、なの…?…じゃあ、問い詰めてきたのは……」

「動機を聞きたかったのよ?例え相手が敵や害あるものだったとしても、何かを傷付けるならそれ相応の動機がなきゃ相手に失礼だもの。…それに、私の妹として頑張ってくれたなら私は嬉しいに決まってるじゃない」

「お姉、ちゃん…」

 

どうやら勘違いしていたらしいユニを安心させる為、優しく頭を撫でる私。するとユニはホッとした様な表情を浮かべた後、えへへと笑いを溢す。元々の目的は汚染モンスター討伐とユニに色々教える事だったけど、この笑顔を見た瞬間私は『あ、もう満足かも』とか思ってしまった。

 

「…この姉妹は、中々大変そうだね」

「うん、わたしもそう思う。…けど、これも含めて『らしい』よね」

 

私がユニを撫でている間、二人はまた苦笑をしていた。……しかし、どうしてこうも勘違いしたのかしらね…。

 

 

 

 

「よーしネプギア、習うより慣れろだよ!」

「え…えぇっ!?」

 

汚染モンスター討伐とネプギアのモンスター討伐体験の為にプラネテューヌに戻ったわたし達は、翌日の朝早速それを開始していた。…え?こういう事に熱心なわたしは珍しいって?ふっ、わたしだって理由があればやる気を出すのさ!そう!

 

「ネプギアにモンスター討伐をさせてみようと思った時とかね!」

「どこ向いて誰に対して話してるの!?」

「あーそっか、ネプギアはまだ知らないもんね。何を隠そうわたし達は物語の中の一キャラなのです!」

「知ってるよ!?知ってる上でメタ発言し過ぎだから突っ込み入れたんだよ!?」

 

わーきゃーと立て続けに突っ込みを入れてくるネプギア。うーん、わたしやこのパーティーに慣れると自然と出来なくなる初々しい突っ込み、良いね!…あ、でもこの系の突っ込みは今でも時々イリゼがやってるか…。

 

「ねぷ子、楽しいのは分かるけどこのペースだとすぐネプギアがバテちゃうわよ?」

「それにそろそろペースダウンしないとギアちゃんが本格的にねぷねぷをアレな子だと勘違いしかねないです」

「あーそれもそうだね。じゃあ一旦落ち着こうかネプギア」

「わたしはボケの連打が始まるまで落ち着いていたよ…」

 

げんなりしているネプギアと、わたし達を苦笑しながら見ているこんぱとあいちゃん。はい、今日もわたしは絶好調です。

 

「で、ねぷ子。さっき貴女ネプギアにモンスター討伐させるって言ってたけど…もうここらの汚染モンスターはひと通り倒したわよね?」

「うん。だからわたしが倒してもらおうと思ってるのは普通のモンスターだよ?」

「え、そうなの?」

「そりゃそうだよ、初めての戦いの相手が汚染モンスターって…それはわたしでも流石に無理だって」

 

どうやらあいちゃん…というか皆わたしの言葉を勘違いしていたみたいなのできちんと訂正しておくわたし。

あいちゃんの言う通り、ここら一帯で見つけた汚染モンスターは全て女神化したわたしが倒したからもう今回のここでの目的は半分達成していた。……いやー、群像劇状態だと最初からじゃなくて途中からになるからわたし達からすると楽なんだよね〜…なんちゃって、実際にはちゃんと倒してきたよ?

 

「…えと、ほんとにわたしはモンスター討伐しなきゃ駄目?」

「うん、どうしても嫌なら強要はしないけど、わたしは人に教えるのはきっとへたっぴだしこっちの方が良いかなって」

「…どうしても嫌、って訳じゃないけど…やっぱりちょっと不安だよ…」

「大丈夫大丈夫、倒してもらうのはあいつだもん」

 

ネプギアを安心させる様ににこやかな笑顔で話しつつ、ある方向を指差すわたし。わたしの指差す先には……

 

「ぬら〜」

 

青い雫型の身体に犬耳と犬鼻&口を持ったモンスター、『スライヌ』がいた。そう、原作プレイヤーならきっと誰もが知ってる有名モンスター、スライヌだよ。

 

「……強く、ない…?」

「いやいや、だってあの見た目だよ?某名作ゲームの初代作における最弱モンスターとして出てきて以来多くの作品で雑魚ポジションを得ている例のモンスターのパロディモンスターだよ?」

「で、でも作品によってはそれなりの強さだったりするし…」

「大丈夫。お姉ちゃんを、信じて」

「お姉ちゃん……うん。分かった」

 

こくんと頷くネプギア。そしてネプギアは持ってきたビームソードを出力して(わたしよりプラネテューヌの女神っぽい武器だよねぇ)、スライヌを刺激しない様にゆっくり近付く。…うーん、お姉ちゃんを信じての一言で意見が変わっちゃう辺り、お姉ちゃんとしては嬉しい反面ちょっと不安でもあるよネプギア。

 

「攻撃が当たる位置までいったら一気にだよ、ネプギア」

「うん。攻撃が当たる位置までいったら一気に、攻撃が当たる位置までいったら一気に……」

「ぬぅら〜〜」

 

気付いていないのか油断しているのか、理由は不明だけど一切臨戦態勢に入らないスライヌ。わたしなら「よっしゃ」と思って走り込んじゃうけど、ネプギアは慎重派なのかスピードを上げずに少しずつ距離を詰めて……

 

「……っ!えぇぇぇぇいっ!」

「ぬらぁっ!?」

 

大上段から縦に一撃。元々然程強くないのに加えて無防備だった為にネプギアの一撃はクリティカルヒットとなり、一瞬にして勝負がついてしまう。

倒せた事に安堵し、同時に喜びの声を上げるネプギア。その一部始終を見ていたわたしは……

 

「えぇー……」

「やったよお姉ちゃん!わたし出来たよ!…って、お姉ちゃん…?」

「いや、うん…倒せたのは良かったんだけどさ、思った以上に決着が早くて、ね…」

 

わたしとしては一波乱あるかな〜場合によっては姉として助けてあげようかな〜とか思ってたものの、蓋を開けてみれば波乱どころか波一つ立たない戦いだった。……まぁ、ネプギアが無事だから良いけどさ。

 

「ふふっ、ギアちゃんの初戦闘は白星になったですね」

「これは景気の良い経験になったんじゃない?」

「だね。よーしそれじゃあネプギア!この調子で他の汚染モンスター討伐もやってくれてもいいかなー?」

「いいとも〜!…って、無理だよ!?無理だからね!?」

 

こうして、ネプギアの初戦闘経験は明るく賑やかな形で幕引きとなり--------わたしの代わりに汚染モンスター討伐に向かうのだった……。

 

「だから無理だって!無茶振りされても無理なものは無理だからねっ!?」

 




今回のパロディ解説

・フォールドクォーツ
マクロスシリーズに登場する特殊鉱石の事。作中でも触れましたがもしゴーレム系モンスタークラスのサイズのフォールドクォーツなら…相当な価値があるでしょうね。

・まともな者から死んでいく
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ登場キャラ、昭弘・アルトランドの名台詞の一つのパロディ。もしこれが正しいのなら、本作のパーティーから死者は出ませんね。

・「〜〜某名作ゲーム〜〜モンスターだよ」
ドラゴンクエスト(Ⅰ)及びシリーズ、そして代表的モンスターの一つ、スライムの事。本作の原作には色々なパロディモンスターが出ますが、この系統が最も多いですね。

・「〜〜いいかなー?」「いいとも〜!〜〜」
平日お昼に放送していた代名詞的番組、笑っていいとも!における有名なやりとりのパロディ。いいかなー?と聞かれたらいいとも〜!と答えてしまうのは仕方ありませんね。

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