超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第八十七話 決戦の朝

私達の前で堂々と見栄を切ったネプテューヌは本物だった。まず国民に向けて会見を開き、その中でネプテューヌなりの言葉を発する事で国民を安心させ、その後は限られた時間の中で出来る限りの保険策と準備を進めた。

普段のネプテューヌからは想像出来ない程の真面目さと要領の良さ、仕事の正確さは私達を開口させるのには充分過ぎるものだった。…いや、今までにも似た様な事はあった。ネプテューヌは怠惰で基本駄目人間(というか女神)だけど、それはあくまで平時、普段の様子であって一度スイッチが入ればその様子は一変する。無論、記憶喪失故の知識不足や得手不得手の関係で全ての事を一人でこなした訳ではなく、私達や職員の人達の協力があっての事だったけど、そのネプテューヌ独自の魅力と率先して動く姿が私達に協力をしようと思わせたと言っても過言ではなかった。

そして、日は変わり、翌日の朝となる--------。

 

 

 

 

「えぇっ!?ちょっ、それ本当なの!?」

 

プラネテューヌ教会の廊下にネプテューヌの声が響く。別にマスオさんのモノマネをしている訳ではない、というかモノマネで時間を無駄にしている場合ではない。だから、ふざけているのではなく単純にネプテューヌは驚いているのだった。

 

「は、はい!例の柱を中心とする様に汚染モンスターの発生数が格段に上昇したという通達がギルドから送られてきました!現在確認を急いでいますが、恐らく誤報ではないと思われます!」

「あーもう最悪のタイミングだよ!…いや、最悪のタイミングっていうか……」

「…起こるべくして起きた事、なのかも?イストワールさん、これも負のシェアの柱の影響ですか?」

「そうでしょうね…汚染モンスターの増加は想定していましたが、昨日の今日でもうとは……」

「せっかく数を減らしたのに、また増えちゃうなんて…」

 

然るべき手を打った上で仮眠をとった私達(ただのモンスターならともかく、マジェコンヌが相手の場合は少しでもコンディションを良くしておきたいからね)が、いざ天界へ!…とシェアクリスタルの間に向かっていた所で起きた(言われた)のがこれだった。仕方ないといえば仕方ないけど、こうも狙ったかの様に出鼻を挫かれると何ともやるせない気持ちになる。

 

「…ねぷ子、どうする?ほっとく訳にはいかないわよ?」

「汚染モンスターさんは早めに倒さないと後々大変ですぅ」

「けど、そっちに時間かける訳にもいかないし…他の国から何かきてる?」

「いえ、今の所はまだ…」

「そっか…うん、こんぱ、あいちゃん、皆にTV電話しようって連絡入れてもらえる?天界行くなら天界、汚染モンスター討伐なら討伐できちんと話し合っておかなきゃ勘違いが起こりかねないし」

「あ、えぇ…分かったわ、ちょっと待ってて頂戴」

 

ネプテューヌの指示を受けたコンパとアイエフがすぐに携帯を出し、手分けして各国へ連絡を取る(私とネプギアが頼まれなかったのは、単に携帯を持ってないからと思われる)。ちゃらんぽらんなネプテューヌには似つかわしくない適切な指示だけど、これを昨日から何度も見てる私達は若干違和感を感じる程度でもう驚いたりはしない。

 

「それと…職員のおにーさん、汚染モンスターの情報は進展があったらその都度教えてくれないかな?」

「勿論です!ネプチュー…ネプトゥー…こほん、女神様の仰せとあれば汚染モンスターの一歩一声に関する事まで全てお伝えしますとも!」

「そ、そこまで細かくなくても良いんだけど…後ここにもわたしの名前上手く言えない人いたよ……」

 

コンパとアイエフが連絡を取っている間に職員さんにも指示を出すネプテューヌ。激しくどうでも良い事だけど、珍しく真面目な台詞と突っ込みをネプテューヌが担当していた会話だった。…今私がボケたら良い突っ込みしてくれるかな?気になるだけで実践はしないけど。

 

「…お姉ちゃん、わたしも何かした方が良いかな…?」

「んー…いや、いいよ。何か役頼んでネプギアが席外した所でTV電話が始まったりしたら可哀想だし」

「そっか…」

「一応私も訊いてみようかな…ネプテューヌ、じゃあ私は?」

「あ、イリゼには買い出しを頼もうかな」

「うん……って頼むの!?え、TV電話は!?私はそれに必要ないと!?」

 

若干手持ち無沙汰だった為にネプギアと同じ質問をしてみたら、なんと用事を頼まれてしまった。あまりの驚きに、目を白黒させながらノリ突っ込みをしてしまう私。するとネプテューヌは冗談冗談と言いながら普段の子供っぽい笑みを浮かべていた。くっ…やはりネプテューヌはネプテューヌか…!

 

「ねぷねぷ、ラステイションとルウィーに連絡出来たですよ」

「リーンボックスも準備が出来次第大丈夫だって言ってるわ」

「二人共ありがと。いーすん、TV電話に使えそうな部屋ある?」

「使えそうな部屋ですか…まぁ、普通の部屋なら大概大丈夫では?( ̄ー ̄)」

「それもそっか…じゃ、狭っ苦しい部屋以外にしよう」

 

と、いう訳で適当な部屋へと入る私達。早速TV電話をセッティングし始め……

 

「ここかな?それともここかな?」

「あのー…ネプテューヌさん、どうしてわたしの頭や肩を撫でたり揉んだりするのでしょうか……(~_~;)」

「え?いーすんにTV電話機能があるんじゃないの?こう、目がプロジェクターみたいになっててピカーって」

「そんな機能ありませんよ!?ネプテューヌさんはわたしを何だと思ってるんですか!?Σ(゚д゚lll)」

「おかしいなぁ…VやRe;berth3では神次元のいーすんと繋がってTV電話っぽい事してたのに…」

「それとこれとは話が別です!というか、百歩譲ってそんな機能があったとしても、身体の一部がスイッチになってたりはしませんからね!( *`ω´)」

 

ぷんすか、と怒りを露わにするイストワールさんに、ネプテューヌは頬をかきながら謝罪を述べる。…どうもそろそろ真面目モードは活動限界らしかった。ひょっとすると描写されないシーンから描写されるシーンに移ったからかもしれないけど。

 

「……ネプテューヌはほっておいて、私達でセッティングしようか」

「あ、もう終わりましたよ?」

「速いね、アイエフ辺りがやったの?」

「ううん、やったのはネプギアよ?」

「え、ネプギア?……得意だったの…?」

「得意というか何というか…実はわたし、機械全般が好きなんです」

 

いつの間にか準備されていた機材に驚く私(一応言っておくけど、携帯に内蔵されてる様なTV電話じゃないからね?あれならそりゃ簡単に準備出来るよ)。因みにこれは、今の所おどおどしてたり周りから知識を吸収したりと受け身の行動が多かったネプギア(女神候補生)の、初の能動的且つ個性的な一面が垣間見えた瞬間だった。

 

「おぉー!流石ネプギア、わたしの妹だけあって役に立つね!」

「ネプテューヌの妹なだけあるのかどうかは別として、機械に詳しい人がいるのは何かと助かるかもね」

「そ、そんな褒められる程の事じゃ…でも、嬉しいです…えへへ……」

「ギアちゃん、照れてるですね」

「ふふ、成長してる様で何よりです。さて、お二人の話ではまだ他国が準備出来てない様ですし、繋がるまで少し待ちましょうか( ̄∇ ̄)」

 

イストワールさんの言葉に頷き、椅子やらソファやらに腰掛ける私達。そしてTV電話が繋がる…つまり、四ヶ国全てが準備完了するのは、意外と早くてそれから五分もしないうちだった。

 

 

 

 

『第六回、今後のねぷねぷ一行の活動方針を考えよう会inオンライン』

 

TV電話が繋がり、それぞれと国にいる面子と自分達の顔が映し出された時、私達のいる部屋の壁にはいつもの看板が貼ってあった。……って、

 

「えぇぇぇぇっ!?いつの間に!?ネプテューヌ用意なんてしてなかったよね!?いつ誰があれ用意したの!?」

「やー、inオンラインは若干語感悪かったかなぁ…」

「そんな事訊いてないよ!?確かに気になるといえば気になるけど、そこはどうでもいいよ!?」

 

凄い勢いで首を振って、部屋の壁と画面とを交互に見比べる私。前々から「妙に準備速いなぁ、ほんとにネプテューヌが用意してるのかなぁ」とは思ってたけど、今回はその比ではなかった。…ぷ、プラネテューヌ七不思議の一つとかじゃないよねこれ……。

 

「…相変わらず元記憶喪失コンビは仲良いわね」

「何度突っ込みを重ねてもやれやれ型突っ込み一辺倒にならない、ある意味凄いですわね」

「最早これは芸風なんじゃないかしら…」

「他人事感溢れるコメントありがとう…皆の国は大丈夫?」

 

対岸の火事かの様な台詞に半眼で返す私。ふん、この流れでハイテンション突っ込みを返す程私は芸人脳じゃないもんね。……突っ込み返してる時点で全く芸人脳が無い訳でもない気はするけど…。

…が、私が突っ込みと同時に会話を進めたからか、女神の皆は今度は真剣な表情を浮かべて返答をする。

 

「大丈夫よ、うちでも結構な数の報告が上がったけど、まだ都市部からは離れてるもの。皆もそうじゃない?」

「それより問題はどう対応するか、ね」

「あ、一つ訊いておきたいのですけど、もし仮にまた汚染モンスター討伐を行なった場合、その後汚染モンスターの数はどうなりますの?」

「一時的には減るでしょうが…すぐにまた増えだすでしょう。あの柱がある限り、汚染モンスター急増が収まる事はありませんから(-_-)」

 

ベールの質問への回答は、私達にとってはありがたくない内容だった。すぐにまた増えだすのであれば、当初の予定の様に一度討伐出来るだけ討伐してから天界へ向かう、という手段が取れなくなってしまう。そしてそれはつまり、どう策を取っても下界に不安を残した状態で天界へ向かわざるを得ないという事だった。

 

「…なら、汚染モンスターを叩く担当と、天界へ行ってマジェコンヌを叩く担当の二つに分かれるしかないにゅ」

「そうだな。脅威度に関してはマジェコンヌの方が上だが…四ヶ国全てを守るとなるとそちらにもそれなりの人数が必要だろう」

「……あ、あの…ギルド、でしたっけ?…に、協力を頼むのはどうですか…?」

 

おずおずと挙手しつつ提案を口にするユニ。内容の有用性はともかく、ギルドというのは誰も考えていない発想だった為、しばし思考を巡らせる私達(ネプギアはどうしよう…みたいな表情だったし、ロムちゃんラムちゃんはきょとんとしてたから厳密には全員じゃないけどね)。

 

「ギルドかぁ…良い案だとは思うけど、問題はギルド側で集められるのは、ネプちゃん達女神やわたし達とは違って普通の域を超えない人達、って事じゃないかな?」

「そうね、汚染モンスターと正面からやり合える人は多くないし、場合によっては連戦にもなるだろうから戦える人はかなり限られてくるわ」

「そ、そっか……」

「まぁまぁ、気を落とす事ではありませんわよユニちゃん。積極的討伐は無理でも、街に一定以上戦える人がそれなりに待機していてくれれば、万が一の時に対応出来ますもの。万が一の備えがあるのとないのとでは安心感が段違いですわ」

「…ちょっとベール、ユニの案を評価するのは構わないけど、まさかユニの姉の座を奪おうとしてるんじゃないでしょうね?」

「ふふっ、それはどうでしょう?」

 

胸を揺らして余裕のある笑みを浮かべるベールと、フォローの役を取られてしまったからかむっとした表情を見せるノワール。両者の反応に事の発端であるユニはおろおろとし始める。…なんというか、あまり微笑ましくない光景だった。

 

「の、ノワール様落ち着いて…」

「ベールさんも思わせぶりな態度は駄目だと思うよぉ…」

「それもそうですわね。別にかっさらう気はありませんので安心して下さいな。……現状では」

「なら良…くないわよ!なんで最後に不安を煽る様な事言うのよ!?」

 

サイバーコネクトツーと鉄拳ちゃんの仲裁でノワールとベールのユニ争奪戦(?)は収束…しなかった。…が、これに付き合ってたらいつ終わるか謎なので放っておいて話を進める私達。

 

「うーん、何人何人で分けるのが最適なのかな?」

「どちらかを一人だけ…って言うのは確実にアウトだって事しか分からないかな…」

「最低でも各国一人以上、じゃないかな?あたし達…というかどんな人でも一度に複数の戦場で戦える訳ないし」

「マジェコンヌの方にも結構な戦力が必要よ。現状わたし達四人の力を得てる訳だから、コピー及び強奪された時点の女神四人分の戦力が最低ラインかしら…」

 

マジェコンヌの強さと想定される汚染モンスターの数を念頭に熟考する私達。マジェコンヌの方へ割く戦力を見誤ればマジェコンヌ担当メンバー全滅の危険性があるし、汚染モンスターの方へ割く戦力を見誤れば数多くの怪我人や死者が出る可能性もある。そして、そもそもの話として今いるメンバーで両方何とか出来るという確信がある訳でもない。その上でどちらにどれだけの戦力を割くか。

答えのない、仮にあったとしてもここではそれを証明しようのない問題に、真剣かつ真摯に思考を巡らせる私達。そして…一つの答えを、打ち出す。

 

「…あたし達が、汚染モンスターを担当するよ」

 

そう、ファルコムが口にする。…否、ファルコムだけではない。本来ならそれこそ他人事である筈の、別次元から来た皆が、それぞれの言葉を述べていく。

 

「単純な戦闘能力なら、ネプテューヌ達女神の方が上だからな」

「わたし達なら大丈夫、汚染モンスター位やっつけちゃうよ!」

「うんうん、ネプちゃん達程じゃないけど、わたしも強いんだからね」

「心配はしていないけど、ねぷ子達も油断は禁物だにゅ」

「下界はわたし達が守るから、皆はマジェコンヌをお願い!」

 

それは、頼もしい、頼もしい仲間達の言葉だった。具体的な根拠がある訳でもなければ、皆を過大評価してる訳でもない。だけど、私は…私達は、こう思った。--------皆に任せておけば、下界は大丈夫だ、と。

 

「…コンパさん、アイエフさんはどうしますか?」

「わたしですか?わたしは…わたしは、ねぷねぷに着いていくです。この旅はわたしとねぷねぷで始まった旅です。だから最後まで着いていきたいんです」

「こんぱ…あいちゃんは?わたしは別に強要しないけど…どうする?」

「…私も着いていくに決まってるじゃない。ねぷ子達だけじゃ重要な所でミスしかねないし…この次元に住む者として、この戦いの行方は最後まで自分の目で見届けたいわ」

「……なら、決定だね」

 

こくん、と頷き合う私達。別次元組の皆とコンパ、アイエフは勿論。彼女達の言葉を誰も否定しなかった事により、誰がマジェコンヌを討ち、誰が汚染モンスターから下界を守るかが決まった。

 

「…皆が任せてくれたんだから、私達は全身全霊で持ってマジェコンヌを倒すよ。だから、期待していて」

「心配なんてしなくて良いわ。女神として、仲間として…絶対勝ってくるから」

「まだわたくしはやりたい事…皆様とやりたい事があるんですの。だから負けたりなんてしませんわ」

「下界の事は頼むわね。決して楽な事ではないと思うけど…貴女達の強さはわたし達女神全員が認めているわ」

「全部終わったら皆でまた遊ぼうね!任せたよ、皆。それと…任せて、皆!」

 

これ以上の言葉は必要ない。私達は何から何まで言わなきゃ伝わらない様な薄い関係ではないし、もしまだ何か言いたいのであれば、それは終わってから改めて言えばいいだけの話。世の中何があるかは分からないし、確定している事なんて滅多にない。……けど、誰もその『もしも』なんて心配していなかった。だって……

 

 

私達は、私達を……皆を、信じているから。




今回のパロディ解説

・マスオさん
サザエさんに登場するメインキャラの一人、フグ田マスオの事。「(えぇっ・えー)!?」はアニメ(漫画)が元ネタのパロディにおける超有名クラスのネタですよね。

・V、Re;berth3
本作の原作であるRe;berthシリーズの三作品名とそのリメイク前の作品の事。はい、例の如く単なるパロディであってメインの物語に関わる情報とかではありませんよ。

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