超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative 作:シモツキ
「ここが、シェアクリスタルの間……」
「何だかよく分からないけど…凄いわね…」
感嘆の息を漏らすコンパとアイエフ。言葉にこそ出さないものの、この瞬間私も二人と同じ気持ちを抱いていた。
私達が訪れたのはプラネテューヌ教会のシェアクリスタルの間。女神でも教会職員でもないコンパとアイエフは勿論、女神であってもプラネテューヌの女神ではない私にとってもシェアクリスタルの間は始めて来る場所であり、この場の雰囲気に感銘を受けていた。
そう、雰囲気。単に幻想的…というだけでなく、実際に(といってもあくまで感覚として、だけど)『力』が空間に満ち溢れていた。
「何だか力がみなぎってくる気がするです…!」
「それはこの空間にあるシェアのおかげですよ。ここには負のシェアと対極の存在である、正のシェア、善意のシェアが充満していますから(´∀`)」
「シェアってその場にあるだけでそんな効果を持つものなの?知らなかったわ」
「シェア…というかシェアエナジーは感情や想いが元になってますからね、人の精神に影響し易いんです。でも、ここまで顕著になるのはここやギョウカイ墓場の様な、シェアが高密度になっている場所だけですよ(。・ω・。)」
「そうなんですか…そう言えば、私の眠っていた場所もほんの少しここに似た雰囲気があったけど…あそこも同じなんですか?」
「そうですね。イリゼさんとイリゼさんの眠りやシェア配給の維持の為にはかなりの量のシェアエナジーが必要な筈ですし、結果としてここに近い環境になっていたんだと思います( ̄^ ̄)」
すっかり解説・説明役が板に付いてきたイストワールさんの説明をふむふむと聞く私達。……いや、板に付いたって言っても元々説明担当になる事が多かったのかもしれないけど。世界の記録者でもある訳だし。
彼女の説明で私は魔窟の奥の一室を思い出した、と言ったけど…本当はそこだけでなく、ギョウカイ墓場も思い浮かべていた。ねっとりと絡みつく様な、底の無い沼へ沈められる様な、内で眠らせておく筈だった負の感情をかき立てられる様な、そんな黒く暗い何かに満ち足りている場所、ギョウカイ墓場。対極の存在とはいえ、本質的な意味ではこの場所もギョウカイ墓場も変わらないという事、そして私達女神の力も結局は悪意のシェアと表裏一体であるという事を考えると……ゾッとする。
「えっと…いーすん、天界に向かうにはわたしの力が必要って話だけど…どうやってやれば良いのかな?」
「あ、はい。基本はシェアクリスタルに意識を集中させつつ転移場所を強く思い浮かべる事で出来るのですが…ネプテューヌさんの場合それは出来ませんよね…
(ーー;)」
「うん、なんたって記憶喪失だからね!」
腰に手を当てて胸を張るネプテューヌ。見た目はちんちくりんだし言動も基本子供なせいでネプテューヌが胸を張ると、なんかもう一周回って微笑ましい。…しかし、自ら記憶を取り戻す機会を蹴ったネプテューヌは、単純な記憶喪失のカテゴリに該当するのかな……。
「何を誇らしげに…ではネプテューヌさん、疲労的な意味で大変な方法と、苦痛的な意味で大変な方法のどっちがいいですか?(・・?)」
「娯楽的な意味で楽な方かな」
「……選択権をネプギアさんに移譲しましょう(¬_¬)」
「えぇっ!?わたしの事なのに!?」
「ネプテューヌさんの事なのにふざけるからです。自業自得ですよ( ˘ω˘ )」
「そんなぁ……ネプギア、ネプギアは酷い選択なんかしないよね…?」
先程までとは打って変わってしゅんとするネプテューヌ。…私、コンパ、アイエフはそのやり取りを見て、「イストワールさんもネプテューヌの扱いが上手くなってきたなぁ」とか「そろそろ話進めてくれないかなぁ」とか思っていたのは言うまでもない。
「うぅん…じゃあ、疲労的な意味で大変な方を…」
「…その理由は?」
「え?それは…お姉ちゃんが痛い思いとか苦しい思いとかするのは、わたしも嫌だから、だよ?」
「ネプギア…もー、ほんとネプギアはいい妹なんだから〜♪」
「ふふ、だってお姉ちゃんの妹だもん」
ころころ変わるネプテューヌの表情、今度のネプテューヌは向日葵の様な笑みを浮かべていた。相変わらずぱっと見ネプギアの方が姉に見える光景だけど、さっきの胸を張っていたネプテューヌ以上に微笑ましい上、見ていてこっちも癒されそうなのでしばし姉妹のじゃれ合いを眺める私達。
……の、つもりだったけど…
「すりすり〜♪」
「ひゃんっ…お、お姉ちゃんくっ付き過ぎ……」
「……とうっ!」
「うわぁっ!?な、何するのさイリゼ!」
「何って…あんまのんびりしてると下界担当メンバーからももう行ってるであろう他国の天界担当メンバーからもブーイング受けるよ?」
「あ……う、うんそうだね…」
半眼で二人を無理矢理引き剥がす私。あの説明は建前とかではなく、本当に本心からの言葉だった。…流石にネプギアに嫉妬したりはしないって…姉妹愛だろうし、多分。
「…えと、いーすん方法の伝授をお願いします…」
「えぇ、お教えしましょう。…とは言っても、やる事自体は簡単ですけどね」
「え、そうなの?」
「そうなんです。元々シェアクリスタルには固定した座標が記録されてるので、とにかくネプテューヌさんはシェアクリスタルに意識を集中し、転移の門を開く事を考えて下さい。…あ、女神状態の方がやり易いと思いますよ(^^)」
「へぇ、それじゃあ…やってみるわ」
ネプテューヌは女神化した後にシェアクリスタルの前に立ち、まるで力を供給するかの様に両手を前に出して目を瞑る。
原理こそいまいち分からないものの、これが超常的且つかなり集中力が必要とされるものなのだろうと察した私達は口を閉じ、ネプテューヌも意識をシェアクリスタルへと向けた事でシェアクリスタルの間は静寂に包まれる。
「……いーすん、これで合ってるのかしら…?」
「どうでしょう、ネプテューヌさんの頭の中までは分からないので…合っていればそろそろ変化が起きる筈ですよ(・ω・`)」
「変化なんて……ーーっ…!?」
訝しげな声音で喋っていたネプテューヌが突然口を閉ざす。そしてその瞬間、シェアクリスタルとネプテューヌの手の間に紫色の、空間の歪みの様なものが発生する。
「何…この情報のカオスは……ッ!?」
「落ち着いて下さいネプテューヌさん。それはネプテューヌさんを害するものではなく、シェアの…ネプテューヌさんの力の一端です。自分自身の制御下にあるもの、そう捉えて続けて下さい( ̄^ ̄)ゞ」
「わ、分かったわ……」
イストワールさんの助言を受け、意識の集中を続けるネプテューヌ。最初は単なる靄でしか無かった紫色の歪みも、段々と色が濃くなり幅が広がっていく。
そして……ネプテューヌが、手を降ろす。
「…ねぷねぷ?どうかしたですか?」
「完成よ。そうよね、いーすん?」
「完成ですよ、よく分かりましたね(^-^)」
「そりゃ、わたしの制御下にあるものだもの」
少しばかり頬を緩ませ、再び胸を張るネプテューヌ。先程とは違い、スタイルも声音も大人のそれである事も相まって、今度は大変さまになっていた。
「さて、思ったより時間かかっちゃったしさっさと行きましょ」
「そうね。いーすん、もうわたしは女神化解除しても大丈夫なのかしら?」
「はい、暫くは開きっぱなしになるので大丈夫ですよ(・ω・)ノ」
「そう?じゃ…行こっか、皆」
女神化を解除するネプテューヌ。それを見た私達も各々荷物を持って、転移門の前に立ち……振り返る。
「それじゃ、行ってくるわ」
「頑張ってくるです」
「期待しててよね!」
「下界の事は、お願いします」
「…気を付けて、下さいね」
こくり、とイストワールさんの言葉に私達は頷く。そして、転移門に足を踏みいれようとした所で……下界で待つ、もう一人の少女が声を上げる。
「ま、待って!……お姉ちゃん…」
「ん?どしたのネプギア」
「…その、あの……」
ネプテューヌの前まで来たものの、両手の人差し指を触れ合わせて俯くネプギア。何かフォローが必要かな…と、思った私だけど、それは止めた。だって…そのネプギアの様子を見つめるネプテューヌの顔は、お姉ちゃんのものだったから。
「……わ、わたしまだいっぱいお姉ちゃんに教えてもらいたい事あるんだ。だ、だから…」
「…うん。ちゃんと帰って来るから大丈夫。……わたしがいない間、プラネテューヌは任せたよ?」
「わ、わたしが……?」
「だいじょーぶ!ネプギアはわたしの妹なんだからやれるって!……行ってくるね、ネプギア」
「……うん」
ぽんぽん、とネプギアを安心させる様に頭を撫でる様に叩くネプテューヌ。そして、私達は転移門へと足を踏み入れ、天界へと向かうのだった。--------行ってきます。
「…わたしも着いて行きたい、と言わなくても良かったのですか?( ̄^ ̄)」
お姉ちゃん達が転移門へ入った後、ぽつりとそんな事をいーすんさんが言った。この場にいるのは…わたしだけ。更に言えばいーすんさんの問いに該当しそうなのもわたししかいない。
「……良いんです、わたしが行っても足手まといにしかならないし、お姉ちゃんを困らせちゃうだけですから」
見抜かれていた。本音を言えば着いて行きたかったし、いーすんさんの言う通り、そう言いたかった。けど、もしそう言ったら……きっと、お姉ちゃんはわたしを連れて行ってしまうし、もし天界に…お姉ちゃん達の言う、マジェコンヌさんとの戦いになったらお姉ちゃんはわたしを守る為に無理を強いられる事になってしまう。わたしはそれが一番嫌だった。役に立たないだけなら良い、だけど邪魔になる事は…わたしがいるせいでお姉ちゃんやお姉ちゃん達が大変な目にあったり、怪我をしたりするのだけは本当に嫌だった。
「…それに、こうやって自分から言えばお姉ちゃんはわたしに言いたくない事を言わなくて済みますから」
「…お優しいですね、ネプギアさんは」
「だって、お姉ちゃんの妹ですから」
「そうでしたね、ネプテューヌさんの妹であれば納得です^_−☆」
いーすんさんと二人、笑い合う。ああ見えて、お姉ちゃんはよく周りの事を見ていた。見た上でふざけて、動き回って…皆に信頼と安心を与えていた。……まぁ、相手の事を全部感じ取れるタイプではないからちょくちょく誰かを怒らせたり、怒られたりしてるんだけど…。
「…いーすんさん、わたしに出来る事ってありますか?」
「ネプギアさんに、ですか?(・ω・)」
「はい、ちっちゃい事でも良いから、皆の為に何かしたいんです。…おまけに、お姉ちゃんにプラネテューヌを任されちゃいましたし」
「…本当にネプギアさんはお優しいですね。…では、色々としてもらいましょうか(^ν^)」
「はい!わたし、頑張りますっ!」
わたしはまだゲイムギョウ界の事をよく知らないし、お姉ちゃんやイリゼさん達女神の皆さんは勿論、コンパさんやアイエフさん達にも及ばない程弱いし、まだまだ皆の上に立てる様な女神にもなれていない。
…それでも、皆の為に頑張りたいという気持ちだけはお姉ちゃんや皆さんにも負けないつもりだったし、まだまだ未熟なわたしは一歩ずつ進んでいくしかないって事も分かっていた。だから、一日でも早くお姉ちゃん達に追いつける様に…立派な女神になれる様に…頑張るね、お姉ちゃん。
「…って、あれ?何だかお姉ちゃんが死んだみたいになっちゃった!?」
「誰に対して言ってるんですか……もうネプテューヌさん達に毒され始めましたね…
(ー ー;)」
転移門を抜けた先、そこにはのどかな自然が広がっていた。文字通り人の手の加えられていない、けど草木が雑多に生えている訳でもない、そんな環境が私達の眼前に広がっていた。
「おぉー!何か、走り回りたくなる場所だね」
「気持ちは分からないでもないけど…止めてよ?ここ物凄い高度っぽいし」
私達が転移門から出た場所は数十平方メートル位の広さの浮き岩(というか、まるで細切れにされた大地の一片の様な土地)の上だった。前にノワール達から説明を受けた通りの場所であり、周辺には同じ様な浮き岩とそれらを繋げる虹の橋が架かっていたけど…それよりも私の目を引いたのは、浮き岩の端から覗ける、下の光景だった。
下にも幾重の浮き岩と虹の橋、そして雲らしきものがあったけど…地面は、所謂底面と呼べるものは見えなかった。地面が見えない程高い位置なのか…或いは、そもそも地面なんて存在しないのか。何れにせよ、落ちたら洒落にならない事は明白だった。
「…ヒヤッとするわね」
「高所恐怖症じゃなくても怖くなるですぅ…」
「怖いと言えば虹の橋もちゃんと渡れるか怖いよね。…私の場合は最悪落ちても女神化すれば飛べるけど……ってネプテューヌ!?」
私達が三人で「怖いねー、ねー怖いねー」(多少着色がなされています)とTHE・普通トークを繰り広げている間、ネプテューヌは……虹の橋の上でぴょこぴょこ跳んでいた。ノワール達曰く、見た目よりずっと橋は頑丈らしいけど…それでもやはり、薄っすら下が透けて見える様な虹の橋の上で飛び跳ねられたらこっちが気が気でない。
と、いう訳で慌ててネプテューヌを回収する私達。
「ぶー、マリオカートのレインボーロードみたいで面白かったのにー…」
「見てて怖いのよ、あんただと特に…記憶を失う前に一度落ちたんでしょうが……」
「あ、そうだったね。でもその時の事覚えてないから落ちたっていう実感がないんだなー、これが」
「落ち着けないからもう止めてほしいです……」
「はーい…って、ん?」
あからさまに残念そうにするネプテューヌと、はぁ…とため息を吐く私達。念を押してもう一度注意をしておこうかな…と、思った所で急にネプテューヌがきょろきょろと周りを見回し始める。最初はその理由が分からなかった私達だったけど…すぐにその理由は分かった。
「…声?…どこからか聞こえてきてるよね…」
「イリゼちゃんもですか?じゃあ、空耳ではないみたいですね」
「…というか、こんなの前にも無かった?確か……」
「……えますか…返……下さい…しです、イストワールです」
『やっぱり(イストワール・いーすん)(さん)!?』
その声は間違いなく、イストワールさんのものだった。声音がイストワールさんと同じな上、この様な芸当が出来るのはイストワールさん位しか思いつかない。そして、その声自身がイストワールと名乗っていたのが何よりの証拠だった。
「はい、イストワールです。やっと安定してきましたね( ̄  ̄)」
「急にどうしたの?いーすん。っていうか、それ今も出来るの?」
「封印された状態でも出来る事が、封印されていない状態で出来なくなると思いますか?(・Д・)」
「あ、それもそっか…じゃあ、何かあったの?」
「何もありませんよ。ですが、何かあった時下界との連絡手段があった方が良いと思いませんか?(^o^)」
「それなら携帯で…って、圏外なのねここ。直接行ける場所じゃない訳だし当然か…」
万が一連絡をしたい時、この連絡手段を私達が知らず戸惑ったり上手く繋がらなかったりしたらどうしようもない、という事で連絡可能である事の連絡兼テストとして連絡してきたらしかった。
「……あの、いーすんさん…ならまずわたし達が行く前に教えてくれても良かったんじゃ…」
「それは……すいません、わたしのおっちょこちょいです……(><)」
「いーすんもそんな事あるんだ…わたし達から連絡したい場合はどうすれば良いの?」
「その場合はネプテューヌさんが、シェアを連絡手段にするイメージを持ちながら念じて下さい。ちゃんと念じれば繋がる筈ですからd( ̄  ̄)」
「そっか、了解。じゃあそろそろノワール達と合流するね」
「出来るだけ急いで下さい。…場所は覚えてますよね?( ・∇・)」
質問というよりも確認に近い形の声音で言うイストワールさん。それに対し、私達は若干一名を除いてその問いに正しく返答を返す。その若干一名というのが誰かというのは…ここまで付き合ってきてくれた閲覧者の皆なら、言わなくても分かるよね。
「…よ、よーし!それじゃあ集合場所に行こうか皆!」
「はいはい…あ、ネプテューヌ先頭にしてあげよっか?」
「うっ…え、遠慮しておこうかな〜…」
「でしょうね…恐らく私達が一番遅れちゃってるだろうし、早く行こうか」
案の定のネプテューヌの反応を心の中で若干楽しみつつ、いつも通り横並びに歩き出す私達。全員揃って全く知らない土地という事で、少しばかり慎重な歩みではあったけど…同時に、四大陸全てに行った事でもう無いかな、と思っていた次なる冒険を、またやれた事に嬉しさも感じながら歩く私達だった。
「…激しくどうでも良いかもだけどさ、今回の話って然程重要なシーンがあった訳でもないのに実質一時間分あるかどうか程度しか進んでないよね」
「全部余計!一言どころかその台詞全部余計だよ!?」
……そして、オチのネタを言うネプテューヌと、それに突っ込む私で話を締めくくるパターンが久しぶりに出てきた瞬間でもあった…。
今回のパロディ解説
・「何…この情報のカオスは……ッ!?」
劇場版マクロスフロンティア 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜登場の
・「〜〜わたし、頑張りますっ!」
アイドルマスター シンデレラガールズシリーズに登場するキャラの一人、島村卯月の口癖のパロディ。ネプギアなら、この台詞かなりしっくりくる気がしますよね。
・マリオカート、レインボーロード
マリオシリーズの一つ、マリオカートシリーズとそれに登場するコースの事。カートのコースに出来る程の長さはありませんので、あそこでねぷ子カートは不可能ですね。