超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第八十九話 合流、そして捜索

出発前…つまり、TV電話を行なっている時、予め私達は天界での集合場所を決めていた。と、言うのも転移場所が国ごとに違っていて、その転移場所同士も割と離れてる為に集合場所を指定しておかないと合流もままならない…というから何だけど、これが意外と厄介だった。

まず第一に、私達は誰も天界の地理について知らなかった。今まではアイエフを始めとして目的の国やその周辺地理について知っている人が最低一人は居たし、仮にパーティー内では情報不足だったとしても、取り敢えず国(街)の中心へ向かうなり道中で人に聞くなり地図を利用するなりと打てる手が意外とたくさんあった。…が、天界は国でも街でもなければ住人がいる訳でもなく、残念ながら地図も存在していない。一応イストワールさんに訊くという手はあるけど…この場ではなく下界にいるイストワールさんに、念話(…で、良いのかな?)という声及び音でしか情報の交換が出来ない手段で訊いている以上、伝えられる情報も受け取る情報もかなり限られてきてしまう。だから、私達は出発前に聞いていた道筋と道中イストワールさんから訊いた限定的な情報を頼りに…つまり、若干の不安を抱きながら歩む事となっていた。

そして、第二に……

 

「こんなギリギリの位置に逃げないでよ、こんなギリギリの位置にッ!」

 

ひょこひょこと土地の端へと逃げるモンスター。恐怖を感じていないのか、落下しても平気なのか、ひょっとしたら飛べるのか(どう見ても陸上モンスターだけど)…とにかく危なっかしい場所に逃げられるのは勘弁してほしいと思いつつ、逃走先へ回り込んで正面から叩き斬る私。

決して戦い易いとは言えない足場での戦闘。それがもう一つの厄介な点だった。戦い辛い、心臓に悪い、どんどん集合が遅れてしまうという三重苦に頭を悩ませる私達。ノンアクティブモンスターが姿を現さない事だけがせめてもの救いだった。

 

「なんでこんな所でまでモンスターに邪魔されなきゃならないのよ…!」

「同感よ。今のねぷ子なら蹴り飛ばして落下させれば楽なんじゃない?」

「…そうね、片っ端から蹴り落としてやろうかしら…」

「ふ、二人共悪い顔してるです……」

 

大太刀とカタールを振るいながら、何やら普通に倒すより酷そうな手段を思案するネプテューヌとアイエフ。底の見えない下へと落っことそうなんて中々エグい。モンスターの方もそれを察知したのか二人を警戒する様に動く。

…と、その瞬間私に視線を向け、小さく頷くネプテューヌ。……そういう事ね。

 

「コンパ!挟撃かけるよ!」

「……!はいですっ!」

 

素早く残存モンスターの方へ向き直り、地を蹴ってモンスターに接近する私とコンパ。人でもモンスターでも突然複数の方向から来る敵に対応するのは難しく、更にそれが注意を怠っていた敵からのものであれば更に対応は難しくなる。

『はぁぁぁぁぁぁッ!』

 

私はバスタードソードを、コンパは注射器を刺突の形で構えて突貫。正面のモンスターを貫きつつ交差する様に一気に駆け抜ける。

私とコンパのダブルチャージ。駆け抜けた結果私達はモンスターに背を向ける体勢になり、当然モンスターはそこを狙ってくるけど…フリー状態のネプテューヌとアイエフがそれを許す筈がない。私とコンパの背を狙うモンスターの背後から強襲し、正にミイラ取りがミイラになる結果をモンスターに突き付ける。

四人での連携で一度に数を減らす事となったモンスター。そうなってしまえば、後はやや環境が悪いだけの掃討戦だった。

 

「ふぅ、時間のロスではあったけど…後々マジェコンヌと戦う事を考えると、良い運動にはなったかもね」

「出来れば合流後の方が良かったけど…モンスターに『時間改めて来てくれない?』って言ったってしょうがないもんね」

 

周囲に残存モンスターがいない事を確認した後に一息つく私達。普段なら息を整える為にもう少し休んでいく所だけど…今回はそうはいかない。

 

「うーん、この調子でまたモンスターが出てきたらやだなぁ。具体的には、二十五歩ごとに出てくるとか」

「それは原作であって原作じゃないから安心なさい。さ、行きましょ」

「さっきいーすんさんは後半分位、って言ってたですから頑張るですよ」

「はーい……あ、そうだイリゼ。ちょっと質問良い?」

「ん?なーに?」

 

荷物を持ち直して歩みを再開する私達。と、そこで何の気なしに私に問いかけを行うネプテューヌ。何だろう…と思いつつも、彼女につられる形で私も何の気なしに回答の構えを取る。

 

「あのさ、どうして今女神化しなかったの?」

「え……?」

「……?イリゼ?」

 

きょとんとした表情を浮かべるネプテューヌ。それもその筈、私はその問いを聞いた瞬間、唐突に足を止めていた。

完全に失念していた。女神化せずに戦う選択肢を選んだ時点でこの様な質問は来る可能性があると心構えをしていたのに、一息ついた事と、ネプテューヌは他愛ない…というかしょうもない話題ばかり振る傾向がある為に私は油断してしまい、考えておいた言い訳と態度を表に出せなかった。

 

「…ええ、と…その、シェアを温存しておこうかなって…」

「シェアを温存?」

「うん…えっと、知ってたっけ?私が皆とは違って信仰者がいないからシェアが有限なんだって」

「あー、それは前にいーすんから聞いたよ。…まぁあの数ならわたしも女神化しなくても良いかもなーとは思ったし、イリゼからすれば妥当な判断かもね。うん、納得したよ」

「そっか、それは良かった」

 

何とか立て直し、努めて自然な態度で言葉のキャッチボールを行う私。ネプテューヌの方も私の説明に妙な点を感じられなかったからか、割とすぐに納得してくれる。

別に嘘をついていた訳ではない。今後の戦闘…つまり対マジェコンヌでどれだけシェアを必要とするか分からない以上、節約出来る所では節約したいし、シェアが有限というのも嘘偽りの無い事実。

……けど、私は力を失うかもしれない、という事を隠したままでいた。嘘はついていないけど、同時に女神化しなかった理由を部分的にしか話していなかった。話さなきゃいけない事ではないし、皆に心配かけたくないとか負担を感じさせたくないとかという理由だってある。だけど、それでも……立ち止まっていた数歩分、先を歩く三人の背を見ていると、ほんのちょっぴり後ろめたいものが私の胸中に渦巻いていた……。

 

 

 

 

『遅いんだけど?』

 

モンスターとの戦闘から数十分後。道中再びモンスターと一戦交え(と言ってもまさかの一体だけ出現のパターンだったけどね)、やっと集合場所へと辿り着いた私達を迎えたのは…ご立腹の様子で腕を組む、ノワールとブランだった。

 

「えーっと…これには色々と事情が…」

「事情は正座してから言いなさい」

「うん、それじゃ……正座!?土の上で!?ノワールそんなサディストキャラだっけ!?」

「冗談よ。まぁ憂さ晴らしに正座してほしいって気持ちがほんのちょっぴりあるのは否定しないけど」

「……皆、正直且つ低姿勢で事情を話そうか」

『そ、そう(だね・ね)…』

 

冷や汗をかきながら意思疎通を図る私達。そこからは正直に、多少私達の首を絞める可能性もある事まで含めて全部話し、二人の判断を仰いだ。……因みに、ベールはちょっと離れた所で何かの本を読んでいた。男の人が表紙だったし、青春ものかな?

 

「…で、最終的には寄り道もせずにここまで来た訳です、はい」

「そう…色々思う事はあるけど、一つだけ言わせてもらうわ」

『…………』

「…時間の無駄遣い、多過ぎない?」

『…返す言葉もございません……』

 

シェアクリスタルの間で散々話してたり天界来てからもちょくちょく本筋とは関係ない事してたのは紛れも無い事実だから、本当に返す言葉がない。更に言えば言葉を返しても状況が好転する気配もないので、私達はひたすらお叱りを我慢する覚悟を決め……ようとした所で思わぬ所から援護が入る。

 

「まぁまぁ良いじゃありませんの。わたくし達と違って、ネプテューヌ達は天界に来るのが初めて、或いはそれに準じる状態なんですもの。わたくし達と同列で考えるべきではありませんわ」

 

ぱたん、と本を閉じて私達の元へやってくるベール。私達は自分達に味方してくれるベールに心の中で感謝を伝え、逆にノワールとブランはベールを自分達側だと思っていたのか「え?」って顔をする。

こういう時、本当にベールは頼りになる。普段はネプテューヌ同様ボケる割合の多いキャラで、ネプテューヌとはまた別ベクトルでぶっ飛んでる…というかこちらの理解を超えてくる厄介な人だけど、大人っぽい見た目とふざけてない時の雰囲気に見合うだけの精神も持ち合わせていて、私やアイエフ、ノワールと言った常識組(と、自負してる人達)が機能しなくなった際はきちんとストッパー役を務めてくれる。

そんなベールに対し、感謝の念に続けてある種の信頼を寄せようとする私達だったけど……

 

「--------それよりも、こんな落下の危険が付きまとう場所は怖かったでしょうあいちゃん。さ、ここからはわたくしが抱っこしていってあげますわ」

「あ、はい、ありがとうございま…ベール様!?」

「ふふっ、遠慮は無用ですわ」

「い、いや遠慮ではなくて恥ずかしいんですって!こんな皆の前で…しかもお姫様抱っこ!?」

「…まーたこれだよ……」

 

言うが早いかアイエフに駆け寄り、アイエフが目を白黒させてる内に抱き上げてしまうベール。数週間ぶりのお約束にネプテューヌがげんなりした様な呟きを口にし、私達もそれに無言の同意を示す。

…しかし、クール系でそこはかとなく姉御肌を持つアイエフが趣味に走りさえしなければ見た目も口調も姫、或いは貴族の令嬢っぽいベールにお姫様抱っこされているというのは大変シュールである。

 

「この二人の関係性は相変わらずね…」

「はは…べる×あい、って言うんだっけ?こういうの」

「イリゼ…貴女も段々とわたし達側に染まってきたわね…」

 

こんなの見せられた後じゃもう言う気も起きないわ…とため息を吐きながらお小言を中断するノワールとブラン。……まさか、これを狙ってベールはアイエフを!?…と思ってベールの顔を見ると、完全に彼女に萌えている彼氏や妹に萌えているシスコンと同系統の表情を浮かべていた。…偶然かな…いや、でもベールの場合偶然かな、って思わせる所まで考えてる可能性あるし……まぁ、どっちにしろwin-winだからいっか。

 

「……えと、なんか百合ップル復活のワンシーンで方向性見失ってるけど…取り敢えず合流だね、うん」

「そ、そうね。…さて、それじゃあ少し休憩したら本丸を叩きに行くわよ」

「そうね。下界担当の皆の為にも早めにカタをつけたいわ」

「…あの、その事なんですけど……」

「ほぇ?こんぱどったの?」

 

不思議そうな…と言うより、疑問が残っている様な顔をしているコンパにネプテューヌが返す。この状況で、何か気になる事があったのかな?

 

「ええと、わたし達は今からマジェコンヌさんを倒しに行くんですよね?」

「そうだよ。所謂最終章だね」

「……そのマジェコンヌさんは、天界のどこに居るですか?」

『…………あ』

 

コンパの言葉に私達は固まる。公衆の面前(人数少ないけど)で何やってんだって位イチャついてるベールとアイエフまでも固まる。

 

「……あっち…とか…?」

「何を根拠に言ってるのよネプテューヌ…」

「で、ではドラゴンレーダーならぬマジェコンレーダーで…」

「そんなものは無いしマジェコンは二作目に出てくる物よ…」

「そ、そうだ。飛んで私達が上空から探すのはどう…?」

「上も下も果てしないですぅ…」

 

全員、顔を見合わせる。その目は、その表情はこう語っていた。『あれ?ヤバくね?これひょっとしたら見つかるまで滅茶苦茶時間かかっちゃうパターンじゃね?』…と。

 

「……あ!そうだいーすん!いーすんに訊くのはどう!?」

「そ、それだよネプテューヌ!実際イストワールさんはマジェコンヌを探してた訳だもんね!」

「イストワール、ね…ここからどうやって訊くの?」

「ふふん、このわたしに抜かりなしだよ!届け、わたしの思い!コネクティブいーすん!」

 

両手を胸の前で握り締めた後、無駄に格好良い動きで空へと右手を掲げるネプテューヌ。突然のネプテューヌのアクションに、「……は?」みたいな反応を見せるノワールとベールとブラン。何か違うアクションとパロディはともかく、やろうとしている事は分かっている私とコンパとアイエフは、苦笑をしながらそれを見守る。

そして数秒後……

 

「…………」

「……何がしたかったのよ」

「あ、あれ?おかしいな…も、もう一回!届け、わたしの以下略!」

『…………』

「……やっぱり何も起きないじゃない」

「なんで!?わたしの思いが足りないって言うの!?わたし言われた通りにやって……」

「…あ、呼びました?(´・∀・`)」

「遅おぉぉぉぉぉぉいっ!いーすん遅いよ!?」

 

ネプテューヌ、絶叫!イストワールさんは困惑している!

…取り敢えず、私はイストワールさんへの状況説明をしつつネプテューヌをなだめる事にした。会話再開に漕ぎ着けるまで、数分かかった。

 

「す、すいませんネプテューヌさん。わたしから皆さんに話しかける事は何度もありましたが、ネプテューヌさんからわたしに話しかけるのは初だった為か若干通信不良でしたm(_ _)m」

「んもう、危うくわたしが頭おかしい子扱いされる所だったんだよ?」

「……?何言ってるのよネプテューヌ。私がそんな事で頭おかしい子扱いすると思ってるの?」

「の、ノワール…わたしノワールがそんなにわたしを信じてたなんて知らなかったよ。ありがとうノワー……」

「あ、違う違う、私はとっくにネプテューヌを頭おかしい子だと思ってるって意味よ」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!」

 

ネプテューヌ、号泣!ノワールはしてやったぜ、みたいな顔をしている!

……また会話再開まで数分かかってしまった。ノワールは私達が遅れた事を怒れる様な立場じゃないんじゃ…。

 

「ネプテューヌは私が預かるから皆は訊いておいて…」

「えぇ。…貴女も大変ね、イリゼ……」

「同情ありがとブラン…ほーらネプテューヌ、こっちで私と遊ぼうねー」

「うん……」

 

絶叫したり号泣したりでへろへろなネプテューヌを連れて皆から離れる私。……しゅーんとしてるネプテューヌは小動物みたいでちょっと可愛いなぁ…とか思っちゃったけど、まあそれは関係のない話。

 

「イストワール、貴女マジェコンヌの場所が分かりまして?」

「あ、その事ですか…すいません、まだ分かってません…(u_u)」

「そんな…じゃあどうすれば良いですか?」

「そう、ですね…漠然とした考えで申し訳ありませんが、手がかりを探すのはどうでしょう(´-ω-`)」

「手がかり…と言っても、ここは広い上に情報収集する手段が限られ過ぎてて、難易度高過ぎないかしら?殆ど本人を探すのと変わりないんじゃないかしら」

「確かにノワールさんの言う事も一理ありますね。しかし、世界を壊す事を目的としているマジェコンヌが何もせずじっとしてるとは思えませんし、現在の天界で異変が起きるとすれば、それは十中八九マジェコンヌの仕業です。なので、注意深く周りを観察、考察すれば手がかりが見つかるのではないでしょうか( ̄^ ̄)」

 

自身の思考を巡らせ、私達に提案をするイストワールさん。この通信(?)はネプテューヌとイストワールさんで行なっているからか、話から離れた私とネプテューヌにもよく聞こえていた。

先に断っていた通り、今回の提案はざっくりとしてると言うか、かなり確実性に欠けている。けど、天界が下界と直接繋がってる訳ではない以上、簡単に調べられないんだろう、と皆思っていたらしく、特に不平不満は出ていなかった。

 

「出来ればすぐにマジェコンヌの所へ行きたかったところだけど…分かったわ。そっちも何か情報を掴んだらねぷ子経由で教えて頂戴」

「はい、マジェコンヌの方ももう皆さんの事を察知している可能性がありますから、用心して下さいね(`_´)ゞ」

「了解よ。早速探し始めましょ」

「……あー…その前にちょっとやらなきゃいけない事があるっぽいよ」

「うん、一先ず皆武器を構えようか…」

 

皆の会話に水を差す様な形で口を開く私とネプテューヌ。私達…特に私の言葉の中に穏やかでない単語が入っていたからか、訝しげな目で皆が見る、私達の視線の先には…私達の存在を見つけたからか、わらわらと集まってくるモンスター。

そして、ここに来るまでに数度モンスターと戦闘を行なった私達はまたか…とややがっくりしつつ、別行動だった女神の三人は幸先が悪い…と言いたげな表情を浮かべながら各々抜刀。マジェコンヌの手がかり探しの障害となるであろう、モンスター群の掃討に取り掛かるのだった。




今回のパロディ解説

・二十五歩ごとに出てくる
本作の原作のリメイク前の作品、超次元ゲイムネプテューヌにおけるエンカウントシステムの事。現実基準で考えると、物凄いエンカウント率ですよね、これ。

・ドラゴンレーダー
DRAGON BALLに登場する、ドラゴンボールを探す為の機材の事。原作の次回作ではかなりマジェコンが普及してるらしいので、至る所で反応しそうですね。

・マジェコン
本作の原作の続編である超次次元ゲイムネプテューヌ Re;Berth2及びそのリメイク前作品に登場する違法ゲームの事。本作からすればこれは未来のゲームですね。

・「〜〜コネクティブいーすん!」
バディ・コンプレックスにおけるカップリングシステム起動の為の合言葉のパロディ。無論ネプテューヌもイストワールもヴァリアンサーパイロットだったりはしません。

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