超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

98 / 108
第九十二話 流れる決戦

天界と下界の繋がり方は、中々に複雑なものだと聞いた。天界がありながら下界が日照不足にならなかったり、天界と下界間の移動方法がワープな時点で物理的に繋がっている訳ではない事は十分理解していたけど…どうやら完全に別の次元、という訳でもなく、条件や状況次第では物理的な形で移動する事も可能らしかった。

思い返してみると確かにそれはそうだと思う。だって現にネプテューヌは、『天界から』『下界へ』落っこちてきたんだから。ネプテューヌが女神である以上、落下中にワープを行なったという可能性もあるけど…無意識下なら勿論、意識があった状態だったとしても、攻撃を受けて落下していた最中に完璧なワープが出来る訳がない。もしそれが出来るなら、ワープより体勢を立て直す事を考えるし、離脱を考えていたのなら地面に斜めにずっぽり、なんて頭のおかしい状態になったりはしない。

イストワールさん曰く、天界と下界の境界は眠りにつく直前の時の意識の様に曖昧で、どっちつかずのものらしい。その説明自体が若干曖昧で、ネプテューヌの件を踏まえてもまだ私は『天界と下界は別次元』という認識の方が強かったんだけど……あの時、あれを…負のシェアの柱を天界で目にした瞬間、別次元という認識は私の頭の中から吹き飛んだ。それ程までに、空を貫き地を穿たんとするあの柱は、何処までも何処までも届いていたのだった。

 

 

 

 

「--------やはり、早急に倒す必要がある様ですね(・ω・)」

 

私達の説明を聞いたイストワールさんは、そう結論付ける。

幻影に隠された天界の一角を発見した私達は、その後一時間程探索した後に幻影の壁の外へ出て、最初の集合場所へと戻っていた。

理由は、幾つかある。

 

「だよねー、うん。…あれは洒落が全く効かないレベルだよ」

 

普段通りの笑いを浮かべた後、笑みを消して代わりに真剣な表情をするネプテューヌ。

まず一つ目は、イストワールさん及び下界へ連絡を取る事。幻影の壁の先の一角…便宜的に『裏天界』と名付けた場所ではイストワールさんへの連絡が出来なかった。これは裏天界には悪意のシェアが蔓延っているが故に、善意のシェアを媒体とするネプテューヌとイストワールさんの連絡が阻害されてしまうからで、仮に出来たとしても比較的モンスターとの遭遇率が高い場所ではネプテューヌが集中出来ない…と、いう以上の理由から、連絡を阻害されずモンスターとも遭遇し辛い(=裏天界及びその周囲から離れている)最初の集合場所が選ばれたのだった。

 

「元々常識の通じるものでは無いと思っていたけど…まさか、下界と天界の境界を超えて聳えているとは…」

「あれにはヒヤッとしたわね…下界の方はどう?何か問題起きてない?」

「大丈夫ですよ。…とは言っても、汚染モンスターの目撃情報は増える一方なので、平穏無事ではありませんが……(¬_¬)」

「…私達が戻らなきゃ不味い…とかはありませんか?」

「いえ、現段階では各国のギルドで編成された、有志の方達による部隊で迎撃出来ているので心配は無用ですよ。報酬と支給品の為に予算を投じた甲斐があるというものです( ̄∀ ̄)」

「部隊?…そっか、それなら人数辺りの戦力の強化が出来るものね」

 

連絡を取ったのは単純に裏天界の事を伝えるだけでなく、裏天界を目にした事で不安感を煽られた私達が、下界の状況を聞きたいからでもあった。…けど、これは杞憂だったみたいだね。

ギルド経由でギルド利用者に協力を仰ぐ、というのはTV電話の時に出た案だし、世界全体の危機とはいえ『無償で協力しろ、これは政府からの指示だからな』…なーんて権力濫用も甚だしい御触れなんて出せない以上、各国の予算を投じるともいうのも当然の事だったけど…部隊を編成したというのは初耳だった。でも、それも現場の判断としては何も間違っていない。個人ではどうしても生まれてしまう弱点を複数人なら補えるし、バラバラに動くよりは少しでも組織を作った方が情報伝達の効率も上がる。つまりはTV電話の段階で上がっていた問題点がある程度解消されているという事であり、これは私達を安心させてくれた。……因みに、「ふふん、やはり私の妹の意見は正しかったわね!」と、妙にご機嫌な人がいたけど…水を差しても良い事はなさそうなので放っておく。

 

「なので、こちらの事は心配無用です。そちらこそ、何か問題はありませんか?(・・?)」

「問題、というか何というか…あいちゃん、コンパさん、もう体調は大丈夫でして?」

「あ、はい。ご覧の通りもう大丈夫です」

「わたしもです。心配をかけちゃってごめんなさいです」

「それは仕方ないよ、というかあれで体調崩さない方が問題だし」

「そうですね。負のシェアが充満している場所で体調を崩さないのは、イリゼさん達女神の様にシェアエナジーに適応した身体を持った人間か、マジェコンヌの様に心身共に負のシェアに汚染されきった人間位ですから(´-ω-`)」

 

二つ目は、体調を崩したコンパとアイエフを回復させる為だった。裏天界に負のシェアが充満していたのは、恐らく幻影が壁の役割を果たしている為に、闇色の柱から発せられた負のシェアの密度が高まったからだと思われる。

ギョウカイ墓場に比べれば大分希薄なものの、充満しているというのは事実。私達女神は「嫌な感じだなぁ…」位にしか感じなかったけど、シェア関連においては普通の人間であるコンパとアイエフは入ってから数十分程した所で体調不良を訴えてきた。

 

「…やっぱさ、二人はここで待ってた方が良いんじゃない?勿論二人が居てくれた方が心強いのは確かだけど、あそこにいるのは二人も辛いでしょ?」

「…ここまで来て、ただ待ってるだけの方が辛い…って、言ったら?」

「まぁ、そう言うよねぇ…こんぱは?こんぱはどう?」

「わたしもただ待ってるだけなんて嫌です。きっとこれは我が儘何ですけど…それでも嫌なんです」

 

ネプテューヌの言葉を拒否するアイエフとコンパ。コンパの言う通り、体調が悪くなるのを分かってて行くのは合理性に欠ける判断だけど…人は合理性や正当性だけで動けるものではないし、それが分からない程私達は理屈人間ではない。…というか、女神がそういう『感情』の部分を考慮しなくなったらお終いだもんね。

 

「…いーすん、何か良い方法はないかな?二人はここまで着いて来てくれた訳だし、二人の気持ちも大事にしたいんだ」

「ふふっ、そういうと思ってました。無効化は無理ですが、悪影響を多少緩和する程度で良ければありますよ?(^ ^)」

「あるの?さっすがいーすん、それで方法は?」

「スキンシップです(´・ω・`)」

『……スキンシップ?』

 

事も無げに言ってのけるイストワールさんに、ぽかーんとしてしまう私達。……イストワールさんそんなキャラだっけ…?

 

「え、ええっと…イストワール、貴女の言うスキンシップって、世間一般で言うスキンシップの事…?」

「世間一般以外の使い方をする場合があるのかは知りませんが…はい、そのスキンシップです( ´ ▽ ` )」

「……さっぱり意味が分からないわ、わたし達が悪いのかしら…」

「い、いや今までの事から考えても、イストワールさんは説明もちゃんとしてくれるって!…ですよね?イストワールさん…」

「そのつもりですよ。理由としては単純です。スキンシップ…まぁ要はシェアに適応している女神と直接的に繋がる事で、女神本人程ではないものの、シェアに対する適応力が増す…謂わば、一時的に女神が防護フィールドになってくれるんです。厳密に言えば、この表現は少々語弊があるんですけどね^_^;」

 

防護フィールド。どこがどう語弊があるのかは分からなかったけど、確かに分かり易い表現だった。とはいえ、まだまだ不明瞭な点があったからか、アイエフが質問を口にする。

 

「…その、スキンシップって言うのは…手を握るとか肩に触るとかでも良いの?」

「触れる事が条件なので、最悪髪の毛と髪の毛が接触するだけでも効果はありますよ?髪の毛と髪の毛では効果は微々たるものですが…(-_-)」

「ほぅ…では、抱き締めたり膝に乗せたりするとより良いと?」

 

何やらアイエフに視線を送りながら確認を取るベール。そんなベールに、うわこの人絶対私利私欲が混じってるよ…とか、別にベールがアイエフを担当しなきゃいけない理由はないよね…とか私達が思っていた所で…イストワールさんがかなりぶっ飛んだ事を述べる。

 

「そうなりますね…というか、口に出すのは憚れますが…より良いを求めた場合、キスやそれ以上の行為の方が適任だったりします……(>_<)」

「そ、それって……」

「…負のシェアが充満する場所で、敵である筈の相手には目もくれずキス以上の行為に耽る女神…堕ちているわね、これは……」

 

赤面し、互いに目を逸らし合う私達。きっと、イストワールさんとブランの言葉で妄そ…想像してしまったのだろう。…恥を忍んで言えば、私はしちゃったし……い、いやこれはもう想像しろって誘導された様なものだし!不可抗力だもんね!?

……こ、こほん。

 

「一時的に、って事は一度やればOK…って訳ではないんですよね?」

『……一度やれば…?』

「そ、そこに食い付かないでよそこに!」

「イリゼさんも年頃ですからね、仕方ありません( ̄▽ ̄)」

「イストワールさんまで!?…う、うがぁぁぁぁぁぁっ!」

「うわわっ!?ちょ、危ないから武器振り回さないでよ!?」

 

揃ってニマニマとした表情を皆にされた私。悪気は無いんだろうけど、イストワールさんの言葉は援護どころか追い討ちとなってしまい、それで耐えきれなくなった私はバスタードソードをぶんぶんと振りながら走り回る。仮にこれで誰かが怪我をしたとしても、私は一切の責任を負いません。負うものか…!

 

「ふーっ、ふーっ…!」

「い、イリゼが威嚇してる猫みたいになってる……えーと、皆せーの」

『ごめんなさい』

 

ニマニマした表情の後は、全員で頭を下げての謝罪だった。…ふんだ、私じゃなかったらこの位じゃ許してないんだからね!

 

「…あの、イリゼさん…ご質問の続きをどうぞ…(・_・;」

「私は最初からそのつもりでしたよ…!……一時的なら、何度か触れ直さなきゃいけないって事ですか?」

「は、はい…そうなります。どの位の頻度かは何とも言えないので、コンパさんとアイエフさんは心身に違和感を感じたらすぐ伝えて下さいね( ̄^ ̄)ゞ」

 

若干気圧された様子のイストワールさんが言うと、コンパとアイエフが頷く。この点に関しては、イストワールさんは勿論私達にも二人が負のシェアの悪影響を受け始めているかどうかを判断し辛いのがネックだった。もし、戦闘中に加護が切れて、しかも戦闘中だからって理由で二人がそれを隠して我慢したら…そう、私は不安になる。

けど、それを察したのか…

 

「ちょっとでも何かあればすぐ伝えるから大丈夫です」

「えぇ、それにこっちから触っても効果はある様だし、何かあったらその時はこっちで上手くやるわ」

 

二人が変に気を使わなくても良い、といった旨の言葉を口にする。その言葉こそ、私達に気を使っているのかもしれないけど…じゃあ、それより良い方法があるのかと言われればそれは勿論ない訳で、だったら二人の言葉を信じようと思う私達だった。

 

「さて…連絡する事、確認する事は済んだし、軽食を取ってもう一度裏天界に向かいましょ」

「そうですわね。裏天界の負のシェアの密度が増えればこちらは不利になる一方、善は急げですわ」

「……あの、皆さん。大丈夫なのですか?(・・;)」

「……?何か問題があるのかしら?」

 

今度こそマジェコンヌを、と意気込む私達へイストワールさんがかけたのは、心配の言葉。一体何が大丈夫なのですか、なのか分からない私達は、きょとんとした顔をする。

 

「問題というか何というか…いや大丈夫というならそれでも良いんですけど…(ーー;)」

「だから何が?わたし達何か見落としてたりするの?」

「……今、夜更けですよ?(~_~;)」

『……はい?』

 

空を見上げる私達。そこには青い空と白い雲(雲は私達の下にもあるけど)。……うぅん?

 

「いーすんさん、まだお空はお昼みたいですよ?」

「あぁ…天界にはですね、夜がないんです。もっと正確に言えば、一日中昼間の様な天候をしているのが天界なんです」

『あ……』

 

イストワールさんの言葉を受けて、ノワールベールブランの三人が思い出したかの様な声を出す。さらにそれを受けてアイエフが携帯を取り出し、時間を確認し…はっとする。イストワールさんの言葉は間違っていないようだった。

 

「そう言えばそうだった…守護女神戦争(ハード戦争)の最中は気にも留めてなかったから忘れてたけど、ここには夜の帳は降りないんだったわね…」

「えっと、つまり…今行くと、寝不足状態でマジェるんと戦う事になるの?」

「そうなるわ、一応わたし達女神はシェアエナジーで何とかなるけど…コンパとアイエフは別だし、わたし達に取っても無駄な消費になるわ」

「懸念要素を残して急ぐか、時間を遅らせて万全の状態を作るか、だね。私は後者を推すよ」

 

ブランの言う通り、私達女神はシェアエナジーを消費する事で何とかなるし、人の身体はよく出来てるもので、戦闘となれば眠気なんか感じなくなる。けど、シェアエナジーにしても睡眠不足にしても、何かが欠けた状態で勝てる程マジェコンヌは楽な相手ではない。…それに、私個人としては出来る限りシェアを消費するのは避けたいから、ね…。

 

「わたしもイリゼちゃんに賛成です。睡眠不足は身体に良くないです」

「わたくしもですわ。シェアで何とかなるとはいえ、寝ないでいるのは違和感を感じてしまいますわ」

「これはむしろ前者派を聞いた方が良さそうね。あ、私はどっちでも良いわよ?後者の方が賢明だとは思うけど」

 

前者派がいるか訊くノワールの言葉に言葉を返す者はいない。要は、全員がここで睡眠をとった方がいいと判断していた。

 

「皆さん、寝坊しては駄目ですよ?(・ω・)」

「この場でそんな阿呆な事はしませんから大丈夫ですよ…」

「あ、不安ならいーすんがモーニングコールしてくれてもいいよ?」

「しませんよ…では、また何かあればご連絡をd(^_^o)」

 

その言葉を最後に連絡が切れ、イストワールさんの声が聞こえなくなる。……これさ、ネプテューヌとイストワールさん間の連絡に私達が参加させてもらってるだけだから、本当に切れたのかただ黙ってるだけなのかの判別がし辛いんだよね。だから何だという話だけど。

 

「さて、それじゃ軽食の代わりに仮眠の準備をしましょ。ねぷ子、あんた寝巻き忘れたとか言わないわよね?」

「わたしはキャンピングカプセル持ってきたから大丈夫!」

「いつからねぷ子はネプえもんになったのよ…」

「ふふっ、あ…わたしこんなの持ってきたですよ」

「あら、調理セットですの?これはキャンプみたいになりそうですわね」

 

ごそごそと野外用調理道具を取り出すコンパ。コンパ曰く、温かいご飯の方が元気になれるかららしい。それについては一切の反論が無かったので、全員で手伝って手早く料理を行い、それを私達は食べた。美味しかった。

 

「やー、まさかここまで来て遂に野宿をする事になるとはねぇ。…あ、好きな子の話でもしてみる?」

「修学旅行か!…一応、対マジェコンヌの作戦でも立てとく?」

「それは無用でしょ、私達と変わらないサイズの相手に複数でかかるんだから細々とした作戦はむしろ邪魔になるし…個々人の戦法は、お互いもう分かってるでしょ?」

「もしモンスターをけしかけてきたら私とコンパに任せて頂戴。露払い位はやってやるわ」

「怪我をしたらわたしにお任せです。医療用顕現装置(メディカル・リアライザ)にも負けないお手当てをしてあげるです」

「ふふっ、頼もしいですわね。あいちゃんも、コンパさんも」

 

ベールの言う通り、コンパもアイエフも本当に頼もしかった。勿論、女神の私達に比べれば単純な戦闘能力は大きく劣る。けど、そういう事ではない。信頼出来る、何かを任せられる、そう思えるからこそ二人は頼もしかった。……私は、皆から見て二人の様に頼もしい存在、なのかな…。

そうして(下界基準で)夜が更け、今日一日の疲労も相まって寝入る私達。そしてそれは、決戦前最後の休息だった--------。




今回のパロディ解説

・キャンピングカプセル
ドラえもんシリーズに登場する、ひみつ道具の一つ。一泊するだけならともかく、仮眠の為だけにあんなホテルクラスのものを用意するのは流石に過剰ですね。

医療用顕現装置(メディカル・リアライザ)
デート・ア・ライブに登場する特殊装置の一つの事。切れた四肢や大怪我ですら数日もあれば完治させるレベルの手当てをコンパが出来たとしたら、それは大したものです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。