超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth1 Origins Alternative   作:シモツキ

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第九十三話 決意を抱いて

「ぎゅーっ」

「ぎゅー、ですわ」

 

裏天界にて、ネプテューヌがコンパの、ベールがアイエフの手を握る。側から見れば仲良しさん達のワンシーンだし、実際仲が良い(後者は仲が良いの域なのか微妙だけど)からこの解釈は間違ってはいないんだけど…別に友情を確かめたい訳でも、ましてやその友情を私とノワールとブランに見せつけたい訳でもない。

 

「わ、凄いです…嫌な感じが急に減ったです…!」

「これが加護…やっぱり凄いのね、女神様って…」

 

驚きと感嘆の混じった声を上げるコンパとアイエフ。二人に対する『対負のシェア防護付加』は滞りなく成功した様だった。…無論、これは一時的なものだから暫くしたらまたしなければいけないし、女神の私達ですら完璧な防護を見に宿している訳でもないのだから、それより劣るであろう二人への加護は絶対に過信してはならない。

下界の事を含め、あまり悠長にはしていられないというのが今の私達だった。

 

「さてと、今から裏天界を進む訳だけど…目指す先はあれで良いわよね?」

「えぇ、あそこに何もないとは到底思えないし…」

「巨大な建造物の中か周辺にいるのがラスボスってものだからね!」

 

ノワールが指差したのは闇色の柱。巨大な負のシェアの塊。柱、と言っても何か支えていたり人為的に作られたりした物ではなく、単に柱っぽいから柱と呼んでるだけで、ネプテューヌの表現は間違っていたけど…わざわざ指摘する程の事でもないし、それよりも「言われてみるとそうだなぁ…」という感想の方が大きかった為、誰も突っ込む事なくその場を済ませていた。

闇色の柱を目指して進む私達。途中何度かモンスターに遭遇したけど…こんな場所でもやはりモンスターはモンスター、連携して戦う事で難なく倒していく。

そうして数十分後、近付くにつれ大きさを増す(勿論遠近感の関係でね)闇色の柱がいよいよ眼前となる辺りで私は一度立ち止まり、真剣そのものの顔で皆に声をかける。

 

「皆、油断は禁物だよ?マジェコンヌが柱の前で座してるとは限らないし、伏兵がいる可能性だってあるんだから」

「伏兵、ね…考えてみると、マジェコンヌって某滝口さんばりに殆ど自分一人で暗躍してましたよね、ベール様」

「そう言われるとそうですわね。アヴニールやルウィー教会の兵はあくまで数を用意する為、謂わば下っ端的存在…」

「わたしの国の教会職員を馬鹿にする気?」

「そ、そこに食い付くんですの…?ええと…指示を受けて動く側の存在…なら良くて…?」

 

予想外過ぎる所に食い付かれたベールは困惑と狼狽の混じった様な表現を浮かべ、数秒の思考の後に別の表現をブランに提示する。するとブランは無表情のまま、こくんと頷くだけの返答を見せる。…え、それだけ!?わざわざ訂正を要求したのにその後の反応はそれだけなの!?

…と、私だけではなくベールもそう思っていたらしく、一瞬ぽかんとしていた。

 

「…こ、こほん…指示を受ける側こそそれなりに用意していたものの、側近やら参謀やら同志やらはいませんし」

「そう考えるとマジェちゃんって一人で色々出来る有能だったのかな?ノワールと同じでぼっちだった事だけは確定だけど」

「事実一人で私達と立ち回ってる訳だからそうなのかも…って誰がぼっちよ!あんなのと一緒にするんじゃないわよ!」

「え……あ、ごめん…ノワールがそこまでのぼっちだとは思わなくて…」

「そっちじゃないんだけど!?私のぼっちレベルを過小評価された事に突っ込み入れたんじゃないんだけど!?」

 

自然な流れで真面目な会話をノワール弄りにシフトするネプテューヌ。ノワールもノワールで割と良い感じの突っ込みをするもんだから、つい私達もそれを見入ってしまい、状況には不釣り合いな賑やかな場となってしまう。

…とはいえ『一人』、か……。

 

「…イリゼちゃん?」

「…あ、何でもないよ?ちょっとセンチメンタルな気分になってただけだから」

「友達のいないノワールに同情して?」

「だから!私はぼっちじゃないって言ってるでしょうが!マジェコンヌの前に貴女を叩っ斬るわよ!?」

 

ふと感じたちょっとした思いも、このパーティーにいると有耶無耶になってしまう。…けど、これで良いのかもしれない。負のシェアによって悪影響を受けるのは身体だけではない。心までも少しずつ蝕まれてしまうこの空間では、ともすれば心に負荷をかけてしまう緊張状態よりも、多少なりとも砕けた雰囲気の方が結果的に身を守る事になるのだから。

そういう考えと、「いやでもそろそろ行こうよ、ここまできたらもうギャグパートは最低限で十分だって」という考えが同時に浮かんでいた私は、一先ず先に進む事を提案しようと改めて口を開きかけた所で--------視界の端で、何かが光った。

 

『……ーーッ!?』

 

全力で地を蹴り、その場から散開する私達。次の瞬間、強烈な電撃が駆け抜け、一瞬前まで私達がいた場所を抉る。

私を含む女神五人は着地と同時に女神化し、七人全員が電撃の飛来元へと視線を走らせる。

敵が見えて、攻撃が来るのが分かって避けた訳ではない。光が見えた瞬間、幾度となく戦闘と死線を乗り越えた事で手に入れた直感でもって反射的に回避した私達は、どの位置から、誰が放ったのかをきちんと視認する必要があった。

 

「皆、無事?こんぱとあいちゃんも怪我はない?」

「えぇ、大丈夫よ。けどまさか、このタイミングで攻撃を受けるとは…」

「こんな事をするのは…いや、この場所にいる奴なんて、最初から一人しかいないわね」

 

あくまで目はいるであろう電撃の射手に向けながら、私達は即座に思考を戦闘の時のそれに切り替える。

そう、ここにおいて私達に奇襲を仕掛けてくるのはノワールのいう女性か、モンスターしかいない。そして、ここに来るまでに戦ったモンスターはどれも今さっきの様な電撃攻撃は放たなかった。つまり、私達へ仕掛けてきた奴というのは……

 

「遅かったじゃないか。…いや、よく怖気付かずに来たものだ、と言うべきか?」

 

特徴的な黒衣に身を包んだ、数々の争いと騒動の根源たる人物、私達が討つべき最後の敵、マジェコンヌその人だった。

 

 

 

 

互いに武器を向け合う私達とマジェコンヌ。だが、緊張からか、下手に動く事自体が下策だと分かっているからか、或いは…一種の感慨からか。誰も、その場を動かなかった。

数十秒の静寂。それを最初に破ったのは…マジェコンヌだった。

 

「…貴様等は忌々しい、見ているだけで反吐が出る。貴様等さえいなければもっと早く私は全て終わらせられたものを……」

 

マジェコンヌの言葉には誰も返さない。それはマジェコンヌの言葉が寸分の隙もない正論だったからでも、言葉を返す価値もないと思ったからでもない。----ただ、不思議なものを感じた。下劣な言葉の内容に反して、声音から感じる悪意は驚く程少なく……それこそ、何かを語っているかの様な雰囲気だった。

 

「……だが、それも仕方のない事だ。この世界は…否、私達の知りうる多くの世界は何千年も前から女神によって守護され、女神は平和を脅かそうとする者が現れる度、死力を尽くして戦ってきた。それが分かっておいて、一度はその側に加担しておきながら、自らが世界を崩壊へと導こうとする時に女神に邪魔をするなと言うのは、些か以上に都合の良い話と言うものだ。そうだろう?女神達よ」

「…何が、言いたいのよ」

 

半ば痺れを切らした様子でネプテューヌが結論を急がせる。今、目の前にいるマジェコンヌは明らかに今までとは様子が違った。恐らく何かの意図があってそうしているのだろうけど…その意図が分からない。今のマジェコンヌからは、それを見極められない。

そんな私達の様子に気付いてか、マジェコンヌは薄い笑いを顔に貼り付け、普段のマジェコンヌからは想像出来ない程の穏やかな声で--------提案する。

 

「……私の敵となるのを、止めてくれないか?もし、止めてくれるのであれば、私は貴様等の、そしてここにはいない貴様等の仲間の安全と平和を約束しよう。貴様等の好きな所に城でも建てるといい、私はそこを絶対に攻撃しない。…我が同志となれ、女神達よ」

『な……ッ!?』

 

予想を遥かに超えたマジェコンヌの提案に、絶句し目を剥く私達。

あり得ない、と思った。あれだけ私達を、女神を憎むマジェコンヌが、女神と争うのを止め、一部ながらも破壊に例外を作ろうと言う。--------どの口がそれを言うんだ、そう思った。何度も私達を襲い、騙し、殺そうとしたマジェコンヌの言葉を、一体どうして信用出来るというのか。

いや、そもそも…その言葉は、大前提として一つ間違っている。それは……

 

「どうだ、悪くない話だろう?何か不満があるなら言うといい、出来る限り私は譲歩するつもり……」

『お断り(よ・ですわ・だ)ッ!』

 

四女神が、マジェコンヌの言葉を遮る。そう、ネプテューヌ達が、そんな提案を受け入れる筈が…思案する筈が、無い。

 

「冗談じゃないわ。何が譲歩する、よ。そんな世界の半分をやろうみたいな最初からわたし達にとってロクな提案でもないのに、よくぬけぬけと言えるわね」

「女神が世界の危機に命懸けで立ち向かうって分かってるんでしょう?…私達を甘く見るんじゃないわよ、その提案こそ反吐が出るわ」

「仮にその提案を受け入れたとして、国は、国民はどうなるんでして?…いえ、聞くまでもありませんわね。それが、わたくし達の回答ですわ」

「此の期に及んでしょうもねぇ提案してんじゃねぇよ。わたし達はてめぇを倒してゲイムギョウ界を守る、それだけの話だ」

 

きっぱりと、真っ向から提案を撥ね付けるネプテューヌ達。寸分の狂いもない、澄み切った四人の瞳には強い強い意思が灯っている。そんな彼女等を、そんな取って付けた様な提案で丸め込める訳がない。

そんな四人の隣に立つコンパとアイエフも、ネプテューヌ達と同じ瞳をしている。それは自分の生まれ故郷がある、とか思い入れがある、とかいう人の視点の、守られる側の立場から来るものでは、決して無い。ネプテューヌ達の仲間として、友達として、同じものを大切に思う者として、共に戦おうとする現れだった。

--------やっぱり、皆は良い人達だ。強く、優しく、温かい。だから…私は、私の思いを確かめ、曖昧にしていた覚悟を決める為に……長剣を、降ろす。

 

 

「--------確かに、悪くない話だね」

 

 

 

 

イリゼは、わたし達女神とは少しだけ違うと思っていた。別に、イリゼが女神として劣ってるとか、わたし達守護女神の輪から外してやりたいとか、そういう事じゃ、無い。ただ、何かが違う様な気がしていた。

きっとそれは、今に至るまで、今のわたし達に至るまでの経緯が関係しているんだと思う。そういう意味では、記憶を失って一度は女神の力すら失ったわたしもノワール達とはちょっと違うんだけど…それでもやっぱり、ノワール達と同じ所にベースがあって、そこからちょっぴりはみ出しちゃっただけのわたしと、そもそもベースの時点でわたしとは全然違うイリゼとは同列に語れないし、多分語っちゃいけないんだと思う。

だけど、思いは同じだと思っていた。わたしは人の心が読めるタイプじゃないし、むしろその逆…相手の事を理解しきれず、結果自己中になっちゃう時もある位だけど…それでも、皆で世界を…ゲイムギョウ界とそこに住む人達を守ろうって思いだけは皆と同じだと思っていた。

だから……イリゼが、わたし達じゃなくてマジェコンヌの言葉に賛同したのには凄く驚いたし…悲しかった。

 

「イリゼ…今、なんて……?」

「悪くない話だね、って言ったんだよ?…少なくとも、私はそう思う」

「そう思うって…何言ってるのよあんた!言うに事欠いて、悪くない?……ふざけた事言ってんじゃないわよ…ッ!」

 

イリゼに摑みかかるノワール。わたし達は慌ててノワールを止めるけど…言葉に詰まる。だって、気持ちとしてはわたし達もノワールと同じだったし、わたし達も絶対に掴みかかったりしなかった、なんて言えないから。

真意を求める様にわたし達はイリゼを見つめる。自嘲的な笑みを浮かべる、イリゼ。

 

「…私さ、皆との生活が好きなんだ。皆といられる事が、皆と遊べる事が。『原初の女神の複製体』っていう、役目しか無かった私に色々なものをくれたのは、皆だったから」

「だから…だから何だよ!?それとこれとは話が別----」

「私が守りたいのは、皆なんだよ。世界も人もどうだっていい…なんて微塵も思ってないよ?でも…あくまで、私が一番に守りたいのは皆だから」

 

その目は、イリゼの瞳は澄んでいた。マジェコンヌに恐怖を抱いて保身に走った訳でも、負のシェアに当てられて心が歪んだ訳でもない、イリゼの本心の宿った瞳。そんな瞳を見たわたし達は、一瞬反論が出来なかった。その間にも、イリゼは続ける。

 

「それに…怖いんだ。皆が傷付く事が、皆を失う事が…力を、無くす事が。大切なものを、大事なものを危険に晒してまで戦う事って…そんなに、正しいのかな」

 

情けないってのは、分かってるんだけどね。…そう、イリゼは最後に付け加えた。

力を無くす、というのは分からない。何を指しているのか、何故そうなるのか。…分からないけど、イリゼの思いはひしひしと伝わってきた。そして、その思いはきっと…間違っては、いない。

 

「…それで、良いんですの?確かにマジェコンヌは強いですわ。わたくし達が無事に勝てる保証なんて無いと思える位には。…ですが、マジェコンヌの言葉に乗って…多くの人や人が築き上げてきたものを見捨てて、それで貴女は満足出来るんですの?」

「満足は出来ないだろうね、きっと見捨てたら後悔するし罪悪感にも苛まれると思う。……けど、だからってそれが私の大切なものを危険に晒すのに納得出来る程の、理由にはならないよ」

「…今まで、何度も無茶して、危険を冒してきたじゃない…なのになんで、今になってそう言うのよ……」

「今までとは、状況も敵の強さも違うんだよ。前も大丈夫だったから今度も大丈夫、っていうのは精神的な支えにはなるかもしれないけど、同時に何の根拠もない、単なる楽観視に過ぎないんだよ」

「じゃ、じゃあ…イリゼちゃんは、もうわたし達とは一緒に居てくれないんですか…?」

「それは……難しい所だね。私は一緒にいたい、だけど一緒に居たいが為に自分の心に嘘を吐くのは嫌だから」

 

ベールの言葉も、あいちゃんの言葉も、こんぱの言葉もイリゼの思いを変えるには至らない。それ程までに、イリゼの意思は固かった。多分、その場で取り繕って考えた様な言葉でイリゼを考え直させるのは…無理なんだと思う。

じゃあ、どうするか。諦めるか、無理なんだと思っていても言葉をかけ続けるか…敵とみなして刃を向けるか。…•そんなの、決まっている。

 

「……それで、良いと思うわ。イリゼがそう決めたなら、それがイリゼの心からの思いなら、わたし達がとやかく言う事じゃないもの」

「はぁ!?ネプテューヌ、あんたまで何言ってるのよ!?世界の危機なのよ!?なのに……」

「分かってる、分かってるわノワール。…だから、わたしに任せて頂戴」

 

手を横に出し、背中ごしにノワールに伝える。わたしとしては、ここからもう少しノワールとの言い合いになるかも…と覚悟していたけど、ノワールはふん、と鼻を鳴らしただけでそれ以上言う事は無かった。…信頼、してくれてるのね。

 

「もし、貴女がこのまま刃を収めるとしても、このまま敵対しないでいるとしてもわたしはそれを非難しないわ。だって、イリゼはわたし達と違って守らなきゃいけない人や国民がある訳じゃないもの。そんなイリゼに戦いを強要する方が、よっぽど間違っているわ。それに…例えイリゼがどんな選択をしたとしても、わたしがイリゼの友達である事は変わらないもの」

「…ありがとね、ネプテューヌ」

 

イリゼが返した言葉は、たった一言だった。そして、イリゼは自嘲気味の、影のある笑みを浮かべたまま私を見つめてくる。

彼女は分かってくれていた。わたしがまだ全てを言い切った訳ではない事を。その事に「やっぱりイリゼはイリゼだった」と安心感を覚えたわたしは、わたしの思いを紡ぐ。

 

「……だから、これはお願いよ。反論でも、説得でもない、ただのお願い。嫌なら断ってくれて良いし、わたし達に気を使う必要なんか無いわ」

「…………」

「…わたし達に、力を貸して頂戴。わたし達が相手にするのは、凄く強い相手なの。わたし達が守りたいのは、わたし達だけで守るにはあまりにも大き過ぎるものなの。…約束するわ、わたし達はイリゼの前からいなくなったりしないし、貴女が守りたいと思うものがあるなら、わたし達もそれを守るわ。…だから、お願い。わたし達の守りたいものを…一緒に、守って」

 

目を見て思いを伝え、深々と頭を下げる。もしもこのお願いが聞き入られなかったとしたらわたしに出来る事はもう何も無いし、それを事実として受け止めなければならない。…だけど、わたしは確信していた。相変わらずの、きっと相手はこう思っていて、こうしてくれるだろうと勝手に考える、自己中な気持ちである事は分かっていたけど…それでも尚、わたしは確信を抱いていた。

わたしは顔を上げる。すると、そこには……

 

「勿論だよ。…ううん、違うかな。……私に、力を貸させて、皆」

 

--------咲き誇る、イリゼの笑顔があった。

 

 

 

 

「私は皆が大好き。私は皆を守りたい。…その言葉に嘘はないけど、それだけじゃないんだ。私が守りたいのは皆だけじゃない、皆が守りたいものも私にとっては守りたいものだから」

 

澄んだ瞳には、いつの間にかある意思が灯っていた。それはわたしが、わたし達が宿していたのと同じ輝き。守る為に戦う事を決意した、強く温かな光。

 

「な、何だよそれ…つまり、最初からマジェコンヌの提案に乗る気なんて無かったって事か…?」

「そういう事。ごめんね皆、こんな事して。でも、私が皆に言った事は全部事実で、それがどうしても心に引っかかってたから…それに決着をつける為にやってたんだって事を理解してくれると、嬉しいかな」

 

わたしは、わたし達は何も言わずに、頷く。何も言う必要はない。その言葉を聞いただけで、わたし達には全部伝わっていたし、イリゼにもわたし達の思いが伝わっていると思えたから。

故に、口を開いたのはわたし達の誰でもなかった。

 

「ふ、ふふっ…はは、ハーッハッハッハ!アーハッハッハッハッ!応じてくれれば儲けもの程度の感覚で提案をしてみたが、まさかこんな展開になるとはな!予想外だったが…やはり女神は潰さねばならない、女神を討たねば私の野望は永遠に完遂には至らない!感謝しようじゃないかイリゼ、貴様のおかげで私こそ我が決意を再確認する事が出来たッ!」

 

それまでとは打って変わって刺々しい、彼女らしい嗤いを上げるマジェコンヌ。それに対し、イリゼは…この次元の、もう一人の女神は凛々しく言い放つ。

 

「私は貴女を…貴様を討つ!貴様を討ち、全員揃って自らの居場所へと帰る!己が命を投げ打つつもりも、誰かを犠牲にするつもりも毛頭無い!笑いたければ笑え、私は笑われようと、それが如何に困難な事であろうと…その思いを貫き、未来を掴む!それが私の…私達の、覚悟だ!」

 

イリゼは、わたし達とは少し違うのかもしれない。そしてその違いが、いつかは思いの違いにもなり、わたし達が今のままのわたし達では居られなくなる理由になる事もあるかもしれない。

--------それでも、そうだとしても…この瞬間は、今わたし達が抱いている思いと、イリゼの抱いている思いは、紛れもなく同じであり……ただ偏に、わたしはその事が----嬉しかった。




今回のパロディ解説

・某滝口さん
声優、滝口順平の事。何でも彼は『カウボーイGメン』という作品の吹き替えにおいて、たった一人で全ての役をこなしたらしいです。これはもう、凄いとしか言えませんね。

・「〜〜我が同志となれ、女神達よ」
機動戦士ガンダムに登場するライバルキャラ、シャア・アズナブルの名台詞の一つのパロディ。提案の内容的に、同志と言うのは正直微妙なラインかもしれません。

・「〜〜世界の半分をやろう〜〜」
ドラゴンクエスト(Ⅰ)のラスボス、りゅうおうの代名詞的な台詞のパロディ。半分はくれませんし、そもそもマジェコンヌの目的は世界の破壊なので、やや的外れかもです。

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