-IS- 夢動かす機械   作:かきな

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前回のあらすじ

空から女の子が降ってくる系のアニメって、ラピュタとエウレカと、あとはなんですかね?

ISは空から主人公が墜落するアニメですけどね


第2.5話 夢漂う少女 その二

 私はあの時――流星群の夜に悪魔の薬を選んだ。だから私は一時の夢から覚め、亜梨子の元から離れた。亜梨子の記憶に存在するなら、生きた証を残すことができるのなら、死ぬこともそんなに悪くないと思えた。

 

「(それがこんなことになるなんて……)」

 

 私は諦めが悪いのだろうか。布団の温かさに包まれて闇の中を漂う私という存在はいったい何なのだろうか。

 

 一度死んだ。夢を亜梨子に託して、虫の中で生き永らえていた『私』も死んだ。そして、私はまたここにいる。

 

「(私は何度死ぬのかしら)」

 

 自分という存在に疑問を持つ。私は私であるという単純な証明すらままならない。いったい私は誰なのだろうか。私を包む闇が心地よい。このまま闇に溶けて、消えてしまえたならどれほど楽なことだろう。

 

 そんな闇は突如として消え、まばゆい光が射し込んできた。

 

 

 

 

「……」

 

「おう、起きろ。朝だぜ?」

 

 布団を取りあげて起こす。テーブルには先に起きて食堂から取ってきた朝ごはんが二人分ある。別に早起きをして取りに行ったわけじゃないぜ? 床が固くて眠れなかったから、必然的に早起きだったってだけだ。

 

 しかし、無理に布団を取り上げたのが不満なのか、摩理は俺のすねをぺちぺちと蹴ってくる。

 

「飯にしようぜ!」

 

「朝から元気ね」

 

「当然だろ。朝っていうのは一日の始まりだぜ? これから面白いことに出会うかもしれないって考えたら、わくわくするだろ」

 

 前の世界ではそんな期待はいつも裏切られてばかりだったが、こっちの世界では目新しさもあって、期待通りの面白いことに出会うことが多いぜ。

 

 しかし、そんな俺を少し驚いたような眼で摩理は見てくる。

 

「……面白いこと?」

 

「おう。だからさっさと飯食って町に出るぜ」

 

「ええ。……え?」

 

 ん? 俺、今なんかへんな事言ったか?

 

「町に出るって、何のために?」

 

「勿論服を買いに行くぜ。摩理は何も持ってないんだろ? 服ぐらい買っとこうぜ」

 

「……お金がないわ」

 

「わかってるって。それくらい俺が奢ってやるぜ」

 

 金は研究所からあほみたいに貰っている。端末の画面に示されている金額はこの学園での寮生活では必要のないほどに0が並んでいる。まあ、身体いじられて稼いだお金だから複雑な気分ではあるが、金があるに越したことはないぜ。

 

「あ、それとその後は研究所に来てもらうぜ?」

 

「研究所?」

 

 その言葉に身構える。『研究所』なんて単語聞いたら、あまりいい方のイメージは湧いてこないよな。虫憑きならなおさらだぜ。

 

「別に何か調べられるわけじゃねーぜ。適当な身分証明書を見繕ってもらうだけだぜ」

 

「そ、そう。ならいいわ」

 

 それにしても便利な研究所だ。体をいじられるのは俺がもうしたから摩理は必要ないだろうぜ。

 

「あ、ちょっとフラッシュバックが……」

 

「本当に大丈夫かしら」

 

 摩理が心配そうな顔をしている。これが俺の心配だったらうれしいが、明らかに自分の身を案じてのことだよな……。

 

「ほんじゃ、いただきます!」

 

「い、いただきます」

 

 その食事で緩んだ真理の表情は歳相応のものであった。

 

 

 

 

 

「摩理。もしかしなくてもこういうところ始めてだろ」

 

「うっ」

 

 店員に話しかけられた摩理は動揺して対応に困っていた。女子の買い物に男が口をはさむのはどうかと思ったからちょっと離れて見守っていたんだがな。

 

「仕方ないじゃない。ずっと病院にいたもの」

 

「お、そうなのか。それは悪かったぜ」

 

 見るからに病弱そうだしな。主に肌の色とか。そりゃ入院生活が長かったら日に焼けることなんてないだろうしな。

 

「気にすることじゃないわ。終わったことよ」

 

「ならいいけどな」

 

 店員が去った後、摩理は服をいろいろと見ていたのだが、どうにも決めかねているようだ。

 

「迷ってんなら俺が決めてやろうか?」

 

「遠慮するわ。あなたが決めると街を歩けるような服がでそうもないわ」

 

「いやいや、それは心外だぜ。こう見えても服のセンスはあると思うぜ‼」

 

「昨日、数ある福の中からワイシャツを渡してきたのは?」

 

「なんか裸ワイシャツってっていうファッションを聞いたことがあったからだけど?」

 

「最低ね」

 

 え、何? 俺なんか間違ってたか?

 

「ま、俺のセンスがどうであれ、素材の摩理が可愛いから大丈夫だろう」

 

「か、かわっ、可愛い⁉」

 

 お、照れてる。さっきから仏頂面だったから新鮮だな。

 

「これとかどうだ? 白いワンピース‼」

 

「シ、シンプルね」

 

「夏といえばこれと麦わら帽子だろ?」

 

「まだ春よ」

 

 あとひまわり畑があれば完璧。ま、夏になれば必要だしとりあえずかごに入れとくか。

 

「このフリルが段々についてる服とかどうだ?」

 

「ちょっと派手じゃない?」

 

「これぐらいがいいって」

 

「そうなのかしら」

 

 とは言っても目が痛くなるような色は勘弁だぜ? あくまでデザインの話だ。てか、これくらいで派手って、摩理は控えめなんだな。

 

「あとはこれとかこれとか……。あ、これは生地が柔らかいし、部屋着にいいな。それから……」

 

「ちょ、ちょっと買いすぎじゃないかしら」

 

 そんなことをしていると、女性が一人こちらに近づいてきた。

 

「あら、そんなにお金があるなら私のこれも一緒に会計しといてくれない?」

 

 そう言って女性は手に持っている商品をこちらに差しだしてくる。

 

「はぁ? 誰だよあんた。寝ぼけたこと言ってねーで、顔洗って来いよ。目が覚めるぜ?」

 

 ついでにその濃い化粧も落ちるけどな。

 

 一転して目の前の女は顔を憤怒で紅くする。

 

「あ、あなた何様よ‼ 男のくせに、口答えするの⁉」

 

「いやいや、男も女もねーよ。なんで赤の他人に金を出さなきゃいけねーんだよ」

 

「私はどうなの?」

 

「同郷のよしみってことで」

 

 困った時はお互い様。でも、こいつン場合は困ってるわけでもないし、金を出す義理はねえわな。

 

「あ、ISも使えない男の分際で‼」

 

 あー、やっぱりそういうことだよな。なんだ、権力だけじゃなくてこういうところでもISは影響してるんだよな……。存外、ISは利益だけを生んだわけではなさそうだぜ。

 

「ま、俺は使えるんだけどな。制服見てみろよ。どこの制服かわかるだろ?」

 

 女はようやく気付いたようで、悔しそうな顔をする。IS学園の制服はカスタマイズができるが、基本の柄は一緒だ。それが学園の生徒である証であり、また自身が生徒であると認識される目印でもある。IS学園なんて世界中から注目を集めているから、その制服は一般人もよく知っている。

 

「で? 誰がISを使えないって?」

 

「くっ……お、覚えてなさい‼」

 

 何を覚えておけばいいのか。少なくとも化粧の濃さくらいは覚えておいてやるか。

 

 女が消えて静寂が訪れる。

 

「……行こうぜ、摩理」

 

「……ええ」

 

 買い物はまだ続く。

 

 

 

 

「いやいや、なぜ俺がこんなとこにまで付いて来なきゃいけねーんだ?」

 

「だって私こういうところ初めてなのよ?」

 

 ショッピングモールの一画。そこはこの女が強い世界の中で最も女性の比率が高い場所。というのは言い過ぎではない。見渡す限り男は俺しかいないからな。

 

「下着くらい一人で見てくれよ……」

 

 俺の精神ががりがり削られる。

 

「いるだけでいいわ。さっきみたいに店員に話しかけられたくないの」

 

「まあ、分からんでもないが、下着買うのに店員が話しかけてくんのか?」

 

 いや、摩理も知らないんだろうけどな。

 

「……アレきわどいな」

 

「殺すわよ?」

 

「すいませんでした」

 

 でも、ここに連れ込んだ摩理が悪いと言えなくもないと思うんだが……。

 

 

 

 

 ところ変わって喫茶店。大体のものを買いそろえた頃には荷物は紙袋が四つぶんくらいになっていた。あたりまえだが、全て俺が持っている。

 

「昼飯にサンドイッチって、腹ふくれんのか?」

 

 女の子の胃袋は小さいな。サンドイッチなんておやつじゃねーの? あ、カツサンドは別だけどな。

 

「病院食ばかり食べていたから」

 

「ああ、だから胃袋がちっさいわけか」

 

 日ごろからあんな健康志向なもんを食わされてたら、そりゃ胃袋も小さくなるだろう。それにいきなり脂っこいものとか食べたら胃がびっくりして気分悪くなりそうだしな。

 

 対面に座る摩理の小さい口で頬張る様子を見ていると、なんだか頬が緩んだ。

 

「な、なに?」

 

「いや、何でもねーぜ。ほら、さっさと食えって」

 

 あれだな、小動物の観察をしてるみたいな気分だな。

 

 食べ終わってさっさと研究所に言って身分証を貰いたいな。遅くなると……あ、あの、あの女がががが。

 

「うわあ、それは工材道具じゃねーかああぁぁ‼」

 

「きゅ、急にどうしたの⁉」

 

「あ、いやすまん」

 

 危ない危ない。いつになったら克服できるんだ俺は……。

 

 と、フラッシュバックに悶えている間に摩理は食べ終えていた様で皿は空になっていた。

 

「よっしゃ、じゃあ行くか」

 

「ええ」

 

 サンドイッチを食べ終えた摩理と外に出る。昼時だからどこの店も人がいっぱいで、食べ終えた後もそこに居座っていられるような感じではない。

 

 隣を歩く摩理に荷物が当たらないようにしながら、俺たちは研究所に向かった。

 

 

 

 

 何がいけなかったのか。理由はわからない。目的もわからない。突然車から伸びた手に摩理が連れ去られてしまった。荷物を持っていて両手が塞がっていたからとかいう言い訳はしたくないが、俺は摩理が連れ去られるのに反応できず、ただ車が見えなくなるのを見送るだけだった。

 

「くそっ! なんなんだよ!」

 

 誘拐犯の素性も目的もわからなければ相手がどこに行くのかの見当がつけられない。情報が少なすぎて、摩理を探すことはほぼ不可能だ。

 

「そうだ、警察に……って」

 

 いやいや、それはできない。摩理はこの世界の人間ではないから、警察に探してもらってもその身分が証明できない以上、事後処理ができない。

 

「先に研究所行っても摩理がいないと身分証は作れないしな……」

 

 肩にホタルが止まる。丸で俺を使えと言うかのように。

 

「でもなぁ、お前を使うにしても、摩理の場所が分かんなかったら意味ねーだろ?」

 

 そんな時、携帯端末の着信音が鳴る。慌てて片方に紙袋を集中させ、もう片方の手で携帯を見る。

 

『やっほー☆ 私だよん』

 

 一瞬携帯を叩きつけようかとも考えたが、その下の単語に目が止まり、俺は。

 

『君の専用機ができたよ♡ 今日来るんでしょ? その時についでに設定もしようね♡ 私がちゃんといじくってあげるからね』

 

 最後の一文で脇腹の古傷が痛んだが、そんなことは些細なことだった。

 

「これだぜ。これなら……行ける!」

 

 ISには多種の機能がある。ハイパーセンサーを使えば摩理の居場所を特定できるかもしれない。

 

「行くぜ、ひめぼたる」

 

 携帯端末に溶け、染まってゆく緑。俺はそれに身を預け、常人離れした速度で研究所向かった。

 

 




閲覧ありがとうございます

よろしければ、感想なんか残してもいいんだからね‼ 勘違いしないでよね‼

オリジナルを作るのは楽しいですけど、凡才な自分が書くとチープな展開しかできませんね(泣
ま、王道は面白いから王道なので、それはそれでありかな(思考停止

次回、稀零君の専用機が出てきますが、イメージしやすいように描写できる技量はないので、なんとなくでご想像ください(/・ω・)/
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