-IS- 夢動かす機械   作:かきな

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前回のあらすじ

転校生が来た

転校生とケーキを食べた!

終わり‼


第三話 転校生は同居人⁉ その二

「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、オルコット、渡宮。試しに飛んでみせろ」

 

 四月も終わりに近づき、やっと実践的なISの授業が始まろうとする中、俺は初めて専用機をみんなの前で展開するわけになる。

 

 専用機のISは操縦者の体にアクセサリーの形状で待機しており、そこから任意に展開することができるらしい。ちなみに俺のアクセサリーはブレスレット。

 

 そのブレスレッドに溶け込む蛍。白銀のブレスレットは緑色に覆われ、その金属光沢を失う。そのざらつきが目に馴染むころには全身を天姫蛍が包んでいた。

 

「熟練したIS操縦者は展開まで一秒とかからないぞ」

 

 そう責める織斑姉だが、俺は起動するのに一手間いるから一秒は難しい気がするな。師匠は……ああ、しっかり一秒以内に展開してるわ。さすがだな。

 

「集中しろ」

 

 その言葉のむけられた先を見ると一夏が突き出した右手に左手をそえるようなポーズで専用機『白式』を展開させようとしていた。次第に一夏の周りを浮遊していた光の粒子が体を包むように形を成して行き、白式はその姿を現した。

 

「へえ、稀零の専用機は緑なのか」

 

「おう。そう言えば初めて見せたな。なかなかかっこいいだろ?」

 

 ま、緑なのは虫のせいだけどな。

 

「ああ。でも稀零に緑は似合わないな」

 

「おいおい、笑うなよ」

 

 そんな軽口をたたいていると織斑姉から鋭い視線を投げられる。蛇に睨まれた蛙ってこんな感じか?

 

 おしゃべりをやめ、三人で並ぶ。準備のできた俺たちを見て、織斑姉は号令をかける。

 

「よし、飛べ」

 

 その声に反応し、師匠が真っ先に飛び立つ。それについていこうと俺も負けずに飛び上がるが、流石師匠。俺の同化したISよりも反応速度が速い。性能上では瞬間加速力は俺の方が上だと思うが……。

 

「やっぱり経験の差だな」

 

 ISの操縦はイメージが大事らしいからな。機械的な操縦じゃない分、経験に左右されるところが大きい。しかも、稼働時間によって使用者の癖なんかも記録されるんだからなおさらだ。それは同化している俺とて例外ではない。

 

 あ、なんで詳しいのかって? 師匠の目の前であの電話帳みたいなやつを朗読させられたからだよ……。スパルタすぎるぜ。

 

「何をやっている。スペック上の性能では白式の方が上だぞ」

 

 回線から聞こえる織斑姉の声は一夏に向けたものだろう。師匠、俺、その後ろに一夏だ。俺は専用機を一夏より後にもらったが、経験の差はほとんど同じだ。知識面では師匠に教わった分、やや俺のほうが上か。その上、カタログスペック以上が出るんだから俺が前に出るのは必然だぜ。

 

「一夏さん。イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

 

 師匠が一夏に飛行のアドバイスをする。以前の師匠とは思えないほどの豹変ぶりだぜ。恋をすれば女は変わるとはよく言ったものだと思うな。

 

 別にそれを邪魔する理由はないし、邪魔すると馬に蹴られるって言うし、俺は適当に聞き流しておくか。

 

「……しかし、凄い視界だぜ」

 

 遮るものがない状態でのこの高度は誰もが憧れるものじゃないか? 少なくとも俺は最高に気分がいいぜ。

 

「そ~ら~を自由に、と~びた~いぜ」

 

「何気持ち悪い歌を歌っているんですの」

 

 師匠からの冷めたいコメントを浴びせられ、ブルーな気分になった。青狸だけにな。しかし、そんなに俺の歌はきもかったのか?

 

「織斑、オルコット、渡宮、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ」

 

「了解です。では一夏さん、お先に」

 

 ……十センチって不可能だろ。急降下の速度を殺し切る減速なんてどれだけのGがかかることか。え、それすら無効にするのか? ISって怖えぜ。

 

「うまいもんだな」

 

「ん? おお、成功したのかよ!」

 

 一夏の感嘆で見下ろした先には何事もなかったかのように此方を見ている師匠がいた。ほんと、改めて代表候補生ってすごいと思ったぜ。

 

「よし、俺も行くか」

 

「おう、頑張れ」

 

 先に一夏が行った。順調に加速して地面に向かう一夏の到達点にはクレーターが出来上がっていた。

 

「なるほど。加速を殺しきるのが難しいわけか……なら!」

 

 一夏に続いて加速する。そして、地面と接するその瞬間。

 

「うらあっ!」

 

 地面を蹴りあげる。足が地面に接触した瞬間、物凄い反動が俺に伝わってくる。そして作戦通り、その反動は降下速度を殺し切り、静止した。

 

「止まったぜ! 完璧だ」

 

「馬鹿者。これでは織斑と変わらん」

 

 横を見ると墜落の実績を手にした一夏がいた。え、俺あれと同じ?

 

「いやいや、俺は堕ちてねえぜ?」

 

「でも、止まってもないだろ」

 

 ……そうか。俺のこれも世間一般では墜落だったのか。

 

「けほっ」

 

 くるりとその咳のした方に顔を向けると、砂を被ったクラスメイトの列が目に映った。

 

『………』

 

「す、すまん」

 

 その無数の目に俺は謝るしかなかった。

 

 当然その無数の目の中には摩理もいるわけで、それに気づいた俺は摩理が病弱であったことを思い出した。

 

「やべ、前はずっと病院に居たんだよな」

 

 粉塵を吸いこんでどうこうとかも気にはなるんだが、それ以上に病み上がりの人間に砂をかけるという行為自体が不徳だと思うんだぜ。

 

「大丈夫か、摩理」

 

 髪の毛の端々に砂が付いている摩理のもとへ行き、腕部分を解除し撫でるように払う。

 

「あ、ありがとう」

 

「いや、俺が悪いからな」

 

 その光景に他のクラスメイトが声を上げた。

 

「あー、ずるい!」

 

「……は?」

 

 いやいや、何がずるいんだ? 

 

「私も砂かかったよ」

 

「私も払ってもらいた~い」

 

 そんな言葉が飛び交い周囲が騒がしくなる。なんなんだこれは。女が三人以上いるから姦しいってレベルを超えてるぜ。

 

 パアンッ!

 

 そんなの中によくとおる音が響き、皆一様に振り返る。

 

「ほら、私が払ってやろう。次はどいつだ?」

 

「先生、痛いです」

 

 そこには出席簿を片手にこちらを威圧する鬼と頭を押さえるクラスメイトの姿があった。

 

『……』

 

 そんな一人の尊い犠牲により、この妙な騒動はおさまった。

 

「なんだかなぁ」

 

 同意を求め、摩理の方を向くと……。

 

「……」

 

 何故かジト目で俺を見つめていた。

 

「なんだ?」

 

「別に」

 

 なんもないのか。ならいいけどな。

ふと一夏の方に目をやると、さっきの騒動には目もくれず、箒と師匠は相変わらず一夏の周りで不毛な言い争いをしているようだ。しかし、一夏がなにも理解していないところが報われないぜ。

 

「おい、馬鹿ども。邪魔だ。端っこでやっていろ」

 

 そんな二人を織斑姉が追い払う。

 

「織斑、武装を展開しろ」

 

「は、はあ」

 

「返事は『はい』だ」

 

「は、はい」

 

 一夏の突き出した右手の掌から光が放出される。その光が像を結び、武装の形状を形作ってゆく。

 

 そして手には《雪片弐型》があった。

 

「遅い。〇・五秒で出せるようになれ」

 

 ええ! そんなん無理じゃね? だってなんにもないとこから武器を取りだすわけだろ? いくら頑張ってもそんな早くは……。

 

「セシリア、武装を展開しろ」

 

「はい」

 

 すると師匠の手には決めポーズと共に武器が握られていた。

 

「早っ!」

 

「ふふふ。当然ですわ。なんたってわたくしは代表候……」

 

「だが、そのポーズは止めろ。横に向かって銃を展開させて誰を撃つ気だ」

 

 師匠の口上が長くなるだろうと踏んで織斑姉が遮るように言う。だがしかし、その指摘には穴がある‼

 

「横の敵じゃね?」

 

 パアンッ!

 

 俺の的確な指摘に織斑姉は出席簿で返答する。ISに乗っているにも拘らずなんで痛みが来るんだ? まさか、シールド無効攻撃⁉

 

「正面に向けて展開できるようにしろ」

 

「で、ですがこれはわたくしのイメージをまとめるために必要な…」

 

「直せ。いいな」

 

 い、威圧感半端ねえ。有無を言わさぬ目力にさすがの師匠も反論をあきらめる。

 

「……はい」

 

 いや、師匠は頑張ったよ。ただ、相手が悪かったぜ。

 

「国へ帰りな。お前にも家族がいるだろう」

 

「何を言っていますの」

 

 次に織斑姉が目を付けたのは俺だった。

 

「……で、おまえは何か武装を出せるのか」

 

「自慢じゃないが一回も出したことはない」

 

「ほんとに自慢になりませんわね。それでも専用機持ちですの?」

 

 実践もやったことないのに無茶言うなっての。俺、こいつで空飛んだ覚えしかないぜ?

 

「ああ、でも武器はあるみたいだな。なんだ、《蛍灯》だってよ」

 

 全くイメージもないからどうやって出せばいいか見当もつかねえぜ。取りあえず、出ろって力込めてみるか。

 

「来い、蛍灯」

 

 瞬間、手には二丁の大型拳銃が握られていた。銃に詳しくない俺でもこの重量感と周りを威圧する金属光沢

から相当の威力を持つだろうと分かる。

 

「マガジンもセーフティーも完璧。すげーな稀零」

 

「ん? いや、そんなに褒めんなよ。どうせまぐれだぜ」

 

 少し得意げに摩理の方にも見せてやると、摩理も微笑んでくれた。……そういえば、ここに来たってことは摩理もIS動かせるんだよな。この世界の人間じゃなくても、女だから先天的にOKってことなのか。

 

「時間だな。今日の授業はここまでだ。織斑と渡宮、グランドを片付けておけよ」

 

 この二つのクレーターを治すのか。ああ、めんどくさいぜ。ま、このくらいならすぐ終わるかな。

 

「よし一夏。さっさと終わらせるぜ」

 

「おう」

 

 すると向こうから声がかかる。

 

「手伝うわ」

 

「ん、摩理か? いや、いいぜ。これは俺らの自業自得だしな」

 

 砂かけた上にその処理を手伝わせるなんて、さすがの俺でも良心の呵責をおこすぜ。

 

「そういえば俺自己紹介してないな。織斑一夏。稀零の友達だ。よろしく」

 

「お、どさくさに紛れてアプローチか?」

 

「稀零は俺をなんだと思ってるんだよ」

 

 ん、プレイボーイだけど?

 

「あ、花城摩理です」

 

「パトリシアじゃねえのか?」

 

「き、稀零‼」

 

 元気そうで何よりだ。一夏は不思議そうな顔してるな。後で教えてやるか。

 

「んじゃ、パトリシアはそこで見てればいいよ」

 

「お、織斑くんまで⁉」

 

「ははは」

 

 この調子なら大丈夫そうだな。そう思うぜ。




閲覧ありがとうございました

なんで摩理がパトリシアなのかはムシウタbugを読んでみてね!

鈴ちゃん……ぎりぎり出てこなかった
3000字程度で更新してますが短いですかね?
長すぎても読みにくいだろうと思ってこれくらいにしてますが
前回みたいに内容が薄くなることもありますからね~
どうしよう

次回予告
鈴ちゃんがすぐに出てきます
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