道に迷って鈴ちゃんにどつかれて
インタビュー受けて意識が飛んで
感謝されて眠りについて
「転校生が来るらしい」
摩理と俺はクラスの情報通の女子たちの一団に混ざり雑談をしていた。そんな中で出てきた話題がこれだ。どうやら二組に新しい奴が来るらしい。
「転入はかなり条件が厳しいらしいけど、どこかの代表候補生かな?」
「マジで⁉ ……じゃあ、なんで摩理はすんなりここに来てんの?」
と、口にしたところで気付く。摩理も一応研究所からの推薦だったような……。
摩理の方をちらっと見ると、こくん、と頷く。俺の言わんとしている事が分かったらしい。本当に便利な奴らだな。
「中国の代表候補生なんだって」
ほう、中国の代表候補生か。あの人口からの代表ってことは相当の実力者だな。
ああ、そういえば昨日会った奴も中国人だったな。
「へえ、どんなやつなんだろうな」
一夏も気になるみたいだな。そいつが代表候補生なら、同じ専用機持ちになるしな。ってそれは俺にも言えることか。
「ふん、今のお前に女子を気にしている余裕があるのか? 来月にはクラス対抗戦があるというのに」
ああ、また突っかかってるよ。もう、これ素直になるとかじゃなくて、箒なりの愛情表現なのかもしれないな。
「今のところ専用機を持っているクラス代表って一組と四組だけだから、余裕だよ」
情報通の子が言う。そう言う情報はどこから仕入れるんだろうな。
「――その情報古いよ」
ドアのあたりから聞こえる声。聞いたことあるような、無いような……。
「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」
「鈴……? お前、鈴か」
「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」
「あ、昨日のやつじゃん」
「昨日?」
摩理が不思議そうに声をかけてくる。
「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」
「な、なんてこと言うのよ、アンタは!」
一夏と知り合いだったのか。そう言えば、昨日も一夏って名前で呼んでたな。
鈴の後方に一つの影が迫る。時計を確認し、俺はこれから起こることを察した。
「おい」
「なによ⁉」
バシンッ! 出席簿が頭を叩く。
「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」
「ち、千冬さん……」
「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」
「す、すいません」
この様子からするとあいつは昔からの馴染みみたいだな。織斑姉を名前で呼んでたし。
「うわっ。案の定一夏にみんな群がってるぜ。馬鹿だな、先生に殴られるぞ?」
「稀零、昨日って何?」
なんだ、摩理も転校生に興味があんのか? そりゃそうか。転校生って言ったら面白イベントの一つだしな。
「稀零? 聞いてる?」
あ、ヤバい。
「先生、できるだけ優しく……」
「いたっ」
出席簿が摩理の頭にヒットする。
「席に着け、馬鹿ども」
一夏の周りにいたクラスメイトも一様に頭を押さえている。そっちも対処済みなんですね。流石先生、仕事が早いぜ。
連絡事項を終えた後、織斑姉は教鞭をとり、また理解できない授業の時間がやって来るのだった。
昼休み。
ようやく訪れた至福の時間。腹が減って死にそうだぜ。腹のヘリは大体授業の三時間目にピークを迎え、四時間目で治まって、昼休みにまた腹が減る。最高の腹具合で飯を食べられるという驚異の時間管理だということだぜ。
一夏も誘って飯に行こうとしたんだが、なにやら箒と師匠にあの転校生のことに関してお取り込み中だったので、放置して摩理と二人で食堂に行くことにした。
食堂に至り、券売機に並んでいると、噂の転校生が前に並んでいた。
「よう」
「んっ? って、何だ。あんたか」
「一夏じゃなくて残念だったか?」
一夏という言葉に過敏な反応を示す。顔を赤くして挙動がおかしくなる。
「べ、別にそんなこと思ってないわよ! だ、だいたい、あいつとは単に幼馴染なだけで……」
あ、これはあれだわ、一夏の被害者の一人だな。
「稀零。この子とはどんな関係?」
「? 関係? いや、別に昨日道を聞いたら殴られただけだけど?」
やけに気にしてるな。
「それより、次はお前の番だぜ? 早く買えよ」
「わ、わかってるわよ!」
そう言って食券を買う。中国人なんだから中華が大好きなんだろ? とかいう偏見は持っていない。日本人である俺も洋食とか好きだしな。
でも、鈴はやっぱりラーメンを頼んでた。なんだよ、俺の気遣い意味なかったぜ。
「ああ、そう言えば、俺はお前のことなんて呼べばいいんだ? 一夏の知り合いならこれからも付き合いがあるだろうし、鈴でいいか?」
一夏もそう呼んでたし、中国読みの苗字は言いづらいしな。
「別にそれでいいわよ。じゃあ、私も稀零って呼ぶわね。……そっちはなんていうの?」
摩理の方を見て言う。クラスも違うし、摩理とは初対面か。ま、当たり前だな。
「花城摩理。摩理でいいわ」
「そう。よろしくね、摩理。……ちなみに――」
鈴は摩理に顔をよせ、耳元で何かを囁いた。それに対し摩理の顔は徐々に赤く染まり、目を見開いていた。なんだ、なんの話してんだ? 除けもんにすんなよな。
「っ⁉ ち、違うわ‼ 私と稀零はそんな関係じゃ……」
「ああ、やっぱり? 何かそんな気はしてたのよね。雰囲気が似てるっていうか、何というか」
そう言って鈴は俺のほうを見て妙に納得した顔をする。雰囲気が似てるって誰とだ? 摩理と鈴の共通の知人じゃねえと成り立たないから一夏か? 一夏と俺……似てるとこなんてあるか?
「なに自己完結してんだよ。俺にも教えてくれよ」
「い、いいの。稀零には関係ないことだから」
なんなんだ、一体? まぁ、摩理が関係ないというならそうなんだろうな。
「そうか。ならいいや。っと。それより早く俺らも買わないと後ろから睨まれそうだぜ」
昼食は戦争だからな。いくら普段は温厚な女子でも、腹が減ってるこの時間は野獣に変化するぜ。
トレイに乗った昼食を受け取り空いている席に向かおうとする。
「ん? 鈴はいかねーのか?」
「私は一夏を待つわ。あいつと話したいこともあるし」
「鈴は織斑くんとどれくらいの付き合いなの?」
お、その質問は面白そうだな。
「小五の頃からの付き合いなのよ」
「へ~」
そうして鈴と別れ食事を始めたのだが、鈴の話によれば、一夏と鈴は五年の付き合いがある。結構長い付き合いなんだな。
「しかし、五年間か……。それまでの期間で気付いてやれない一夏って言うのはいったい何者なんだ?」
「……どこかが欠けているのかもしれないわね」
摩理にまでこの言われ様。なんというか一夏、お前はレジェンドだぜ。いや悪い意味でだけどな。
ところ変わって放課後の第三アリーナでは学園名物『修羅場』というものが繰り広げられていた。しかもISを用いてのだ。危険極まりねえし、周りへの被害も甚大だ。そんな光景を少し離れて見守る俺と摩理。
「どうしてあいつらはあんなにもけんかっ早いんだ?」
「……中心の織斑くんは理由を理解してないようね」
それも問題なんだよな~。二人とも報われないから、本当に無益な争いだぜ。
「俺も一緒に訓練しようと思ったけど、これじゃあ無理そうだな」
「じゃあ、私とやる?」
え、摩理と?
「専用機でも持ってるのか?」
「ないわ。だから体術になるわね」
摩理は木製の槍を構える。え、それどこから取り出したんですか? あ、さっき道場によったのってそれを取るためだったのか。
「って俺は丸腰なんだが?」
「同化していいわよ? 稀零のISは近接武器がないんでしょ?」
その通りだ。実は俺のISの武装は蛍灯しかないんだよな。その代わりにあるのが疑似絶対防御壁発生装置『天津光』が試験的についている。シールドエネルギーとは別枠で稼働するが、効果範囲が限定的であるという代物だ。それが両手についている。つまり、両手を使えば相手の攻撃を無傷で捌くことができるわけだ。
「つまり、この天津光を使いこなすための練習ってわけだな?」
「そういうことね」
「で、なんで槍?」
道場には木刀のほうがたくさんあったと思うんだが。
「私が虫憑きの時に使っていた武器なの。別に木刀でもよかったけど、慣れている方が稀零の訓練になるでしょ?」
まあ、弱いよりはその方がいいだろうな。
「ま、訓練自体に異論はねえし、さっそく始めるか‼」
「ええ」
ヒメボタルが腕に止まり、俺に溶け込む。制服の色は変わっていないが、この感じ、間違いなく俺と虫は同化している。
「やばくなったら言ってくれよ?」
「ふふ、そうね」
その余裕の笑みの理由を、俺は後になって思い知るのだった。
閲覧ありがとうございます
隔週投稿になりつつある今日この頃ですが、点々と書き貯めをしているので、間を埋めればポンポン投稿できるかも……
鈴ちゃんがやっとまともに絡みましたよ
ISヒロインの中で比較的まともだと思われる鈴ちゃん
この作品の中では本当にまともキャラになると思います
というか、私があまりぶっ飛んだキャラを書きたくない性質でして、ISヒロインたちは原作よりも穏やかになると思います
あ、性格改変というよりは、稀零君を使っての軌道修正って感じですかね
次回
摩理の訓練
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