-IS- 夢動かす機械   作:かきな

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前回のあらすじ

厳しい摩理の訓練を終えて

一回り強くなったかもしれない稀零君

主人公の修行は戦闘フラグでしかないよね



第三話 転校生は同居人⁉ その六

 あの後、俺は一夏は同じピットに向かいつつ、談笑していた。

 

「で、あの転校生の鈴って、一夏とどういう関係なんだ?」

 

「ああ、鈴は幼馴染だよ」

 

 ん、幼馴染?

 

「幼馴染は箒じゃねえのか?」

 

「箒はファースト幼馴染。で、鈴がセカンド幼馴染。ISが発表された時にさ、箒は身の安全のために引っ越したんだよ。で、その後に知り合ってそれから付き合ってたのが鈴なんだよ」

 

「へ~」

 

 なるほどね。鈴の言ってた通りなわけだ。それに、さらりと付き合ってたとか言う辺り、さすが一夏って感じだぜ。

 

「そのネーミングセンスはいかがなものかと思うぜ」

 

「そうか? ファーストとセカンド。分かりやすいじゃん」

 

「確かにな」

 

 二人して笑う。

 

 それはいいが、幼馴染って……。

 

「小五からって、別に幼くなくね?」

 

「そうか? でも、なんつーかずっと一緒だったし、幼馴染って感覚なんだよな」

 

「あ~、そういう感じ? 量より質ってか?」

 

「ははっ。何だよその言い方」

 

「え~、間違いじゃねえだろ?」

 

 そんな他愛のない話をしていたらピットについた。摩理は一足先にアリーナから出て、槍を返してから寮に行くそうだ。

 

 中に入ると箒がそこに鎮座している。

 

「箒? なんでこっち側に来てるんだ?」

 

「私がピットに戻るのはおかしいか?」

 

「いや、そうじゃなくて、セシリアの方に――」

 

「ピットなんてどっちでも構わないだろう。それに、先に来ていたのは私だ」

 

 そんな言い分を主張する箒。別にいけど、俺もいるからあまりアドバンテージにはならないんじゃない? え、何のアドバンテージかって? 恋は戦争なんだぜ。

 

 一夏がぐったりとベンチに深く座り込み、箒がその横で汗に濡れた長い髪を結う。絵だけを見たら、仲のいい恋人ですと言われても違和感がないんだが、

 

「さっきの訓練、無駄な動きが多すぎる。だから必要以上に疲労するのだ。もっと自然体で制御できるようになれ」

 

 口を開けばこうなる。ま、アドバイス自体は的外れでないし、悪いとは思わねえが、それの前に一言だけ……一言だけ一夏に優しさを……!

 

「あ、箒、ものは相談なんだが、今日先にシャワー使わしてくれよ。ベタベタして気持ち悪いんだよ」

 

「だめだ。それに、汗をかいているのは私も同じだ」

 

 力関係がはっきりしてる図だな。だが、箒の一夏に対して抱いている感情を知っている俺はこの発言に対する邪推ができる。

 

 多分、箒は乙女らしく、好きな人に汗臭いと思われたくないから、一刻も早く、一夏よりも早く汗を流したいんだろう。おお、この予想はなんだかそれっぽいぜ。ぜひとも恋愛マスター稀零と呼んでくれ。

 

「稀零はどうするんだ?」

 

「俺か?」

 

 う~ん、ぶっちゃけハードな訓練であったとはいえ、虫と同化してたし身体はあんまし疲労してないんだよな。精神の方も、虫の能力を使ったわけでもないから摩耗してるわけじゃないしな。

 

「普通に寝る前に風呂入るだけだが?」

 

「あ、だったらさ――」

 

「一夏っ!」

 

 元気いっぱいな声と共にスライドドアが開け放たれる。声の主である鈴がピットの中に入り、一夏に近付く。

 

「おつかれ。はい、タオル。飲み物はスポーツドリンクでいいよね」

 

 ん?

 

「サンキュー。あー、生き返る……」

 

 汗まみれであった顔を拭き、清々しい顔をする。隣の箒が面白くなさそうな顔をするも、俺は今すごく感動している。なんでかって?

 

 一夏に対してこれほど普通の接し方をした女子が果たして何人いただろうか……。ここまでありふれた青春モノの様な一連の流れ……常識的すぎる。ぶっちゃけ、俺が箒や師匠に求めているのはこういう気遣いなんだ。これが自然にできてればいくら一夏でもその行為に気づ……。

 

 呆けた顔をする一夏。それを見て、何故か他人事で舞い上がっていた俺の脳みそが冷静になる。

 

 こいつはもしかして、五年間、鈴のこういう行動を受けた上で気付いていないんじゃないか?

 

「……」

 

「ん、なんだよ、稀零。あ、タオル使うか?」

 

 そうじゃねえぜ。タオルは使うけどよ。

 

「てか、よく覚えてたな。やっぱり運動後の水分補給はぬるめのスポドリだな」

 

「変わってないね。一夏の若いのにいつも身体のこと気にするとこ」

 

「あのなあ、若いうちから不摂生したらいかんのだぞ。癖になるからな。後で泣くことになるのは自分と自分の家族だ」

 

「ジジくさいよ」

 

「う、うっせーな……」

 

 なんだかよさそうな雰囲気だ。邪魔しちゃ悪いから帰るか? 別にもう用はないし、さっさと帰って夕食に向かうか。

 

「一夏、先帰ってるぜ」

 

「おう、また食堂でな」

 

 一夏とはいつも食堂で待ち合わせて晩飯を食べようとしているんだが、ほぼ毎日遅れてくる。理由は大体が箒か師匠、たまに別のクラスメイト。一夏とプラスαの女子が来る頃には、俺と摩理の飯は冷えているという感じなので、最近は先に食べてお茶を飲みながら一夏を待つと言ったようになっている。

 

 スライドドアをくぐり、外へ出る。今日は何を食うか、和食もいいが、がっつり洋食もいいな……。

 

「ああ……天津飯にしよう」 

 

 ふわふわの卵にあんが絡んだ逸品だ。生活の中に食のインスピレーションはある。今回は中華だな。

 

 

 

 

 部屋に戻るとなにやら水がタイルに跳ねる音が聞こえる。いや、こんな周りくどく言わねえでいいか。詰まる所、摩理がシャワーを浴びているってことだな。

 

 こういう時、俺は終わるまで廊下で待機する。当たり前だろ? 

 

 廊下で待機する事が日常になっているので、この辺を通り過ぎる女子とは大体知り合いだ。

 

「あ、渡宮くんまた廊下で立ってる」

 

「おう。特訓の後で摩理がシャワー浴びてんだよ」

 

「へえ、摩理ちゃんの特訓見てあげたんだ」

 

 通りすがりの女子が声をかけてくる。確か同じクラスだったと思うが、名前は憶えていない。

 

「いや、俺が見てもらってた」

 

「へっ?」

 

「知ってるか? 摩理ってめちゃくちゃ強いんだぜ」

 

「そうなの? そんな風には見えないよ」

 

 それが普通の考えだ。俺だって、あの細身からあんな槍術が飛び出してくるなんて思ってもみなかったぜ。

 

「摩理ちゃんって部活やってるの?」

 

「いや、俺と一緒で帰宅部っぽいけど」

 

「あ、じゃあ、渡宮くんも一緒に茶道部来ない?」

 

「茶道部?」

 

「うん。なんか、摩理ちゃんって着物似合いそうだし、前から目をつけてたんだ」

 

「なるほどな」

 

 部活なんて入る気あんまりなかったからな。前の世界ではやる前から面白くないだろうと決めてかかったし、こっちでは手を出してみるのもいいかもしれない。

 

「摩理に着物が似合いそうっていうとこは同意するが、男が茶道ってのはどうなんだ?」

 

「え~、でも起源は千利休だよ?」

 

 まあそうなんだけどさ。起源まで遡っても時代によってその扱いは変わるしな。

 

「おいしいお茶菓子食べ放題だよ?」

 

「ぜひ入部させてくれ」

 

「即答⁉」

 

「ぶっちゃけるが、俺は甘党なんだぜ」

 

「それは知ってるわ。前、紅茶に角砂糖をたくさん入れていたもの」

 

 声に振り向くと、いつの間にかシャワーを終えた摩理が立っていた。どこから話を聞いていたかは知らねえから、説明した方がいいのか?

 

「で、稀零は茶道部に入るのね」

 

「そうだよ。摩理ちゃんと一緒にね!」

 

「……え?」

 

「いや、摩理に浴衣が似合いそうっていう理由で茶道部から勧誘が来たわけよ」

 

「そ、そうなの?」

 

 確認するように摩理は茶道部の子の方に視線を向ける。

 

「うん。だって、摩理ちゃんスタイルいいもん。絶対着物似合うよ!」

 

 着物が似合うスタイルというのは、どういうものなのか。それを考えると、摩理の機嫌が悪くなりそうなので、俺はそれ以上の思考を止めた。

 

「で、どうかな、摩理ちゃん」

 

「入るわ」

 

「本当っ‼」

 

「ええ。茶道には興味があるし、なにか部活に入ってみようとは前々から思っていたの」

 

「やった! じゃあ、ちょうど明日部活あるから、放課後一緒に行こうね!」

 

「分かったわ。楽しみね」

 

「だな。あ~、楽しみだぜ、お菓子」

 

「「そっち?」」

 

 




閲覧ありがとうございました

着物姿の摩理……見たい!
でも、茶道部の顧問って……


次回、数字と部活と愚痴と
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