-IS- 夢動かす機械   作:かきな

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あらすじ

なんだか茶道部にはいることになった稀零君でした


第三話 転校生は同居人⁉ その七

 そんな感じで時間が過ぎ、食堂に付いたら一夏も来ていた。

 

「よっ。今回は俺の方が早かったな」

 

「珍しいこともあったもんだぜ。明日には雪でも降るか?」

 

「おいおい……。っていうか、今回は稀零が遅かっただけに見えるけどな」

 

 ま、実際一夏の言うとおり、俺らが遅かっただけだ。茶道部の子と話しているうちに他の女子も集まってきて、いろんな部活から勧誘を受けていたわけだ。もちろん、全部断ったがな。茶道部に入るって先に言ってたしな。約束を違えるのは良くねえぜ。ただ、料理部のケーキを作るって言うのにはめちゃくちゃ惹かれたけどな。

 

 一夏の隣には箒もいた。なんか嬉しそうな顔をしている。いや、その言い方は語弊があるか。勝ち誇った顔、と言い換えた方が妥当だな。

 

「それより、さっさと飯食おうぜ。腹ペコだ」

 

「そうだな」

 

「ええ」

 

「うむ」

 

 三者三様の返事ではあるが、満場一致の答えだった。みんな動いてカロリー消費してるだろうからな。

 

「お、稀零は天津飯か」

 

「ああ、なんか食いたくなってな」

 

 おばちゃんが卵の上にたっぷりとあんをかける。蛍光灯の光を受けあんが光り、卵が黄金のように輝いて見える。腹ペコ補正ってすげえ。

 

「よし、席取ってくるぜ」

 

「走ると危ないわ」

 

「いや、子供じゃねえし大丈夫だって」

 

 見つけた席に小走りで近付きテーブルに盆を置く。それと同時に対面の席に盆が置かれる音がした。

 

「ん?」

 

「あ」

 

 顔を上げると、同じようにこちらを見る女子がいた。髪は短めで、メガネをかけた、大人しそうな少女。顔に見覚えがないから、多分同じクラスじゃないんだろう。

 

「わりい、ちょっと遅かったな」

 

「え、あ、うん」

 

 そう言って少女はお盆に手をかけようとする。

 

「んじゃ、俺は別の席探してくるから、ごゆっくりだぜ」

 

「え?」

 

 流石に女子に席を立たせるわけにはいかないしな。

 

「あ、あの」

 

「ん?」

 

 先ほどの女子に呼び止められる。

 

「あなたはどっちの男子ですか?」

 

「……う~ん、話題じゃない方の男子だぜ」

 

「?」

 

 疑問符を浮かべる女子だが、俺の意識は再度見つけた空席に移っていた。

 

 盆の上の天津飯をひっくり返さないように走り、今度こそ席を確保する。手を振り、他の三人に場所を示して、俺は席に着いた。

 

 全員が席に付いたのを確認して俺は蓮華に手をかける。

 

「いただきます」

 

 卵に蓮華を仕込むと抵抗なくふわりと切断される。あんに絡めて口に運べば旨味成分が俺の口を支配する。グルタミン酸ナトリウムだな、これは。手抜きであったとしても、上手いことにかわりはないからとやかく言う気もないぜ。

 

「そういや、なんで遅かったんだ?」

 

 一夏がサバ味噌定食に手をつけながら聞いてくる。魚がいいのか、味噌がいいのか、おばちゃんの腕がいいのか。とにかく、ここのサバ味噌は絶品なんだよな。明日はそれにするか。

 

「遅かったって言っても、ほぼ同時だろ?」

 

「まあな。でも、後から出た俺らと同じぐらいってことはなんかあったんだろ?」

 

「ま、なにかってほどのことじゃないけど。なあ、摩理」

 

「ええ。ちょっと部活の勧誘にあっただけよ」

 

 同意を求めると摩理の方から説明してくれる。それに興味を示したのは意外にも箒だった。

 

「ほう。それで、どこの部活に入ったんだ? 剣道部か? いや、槍に近い形状なら薙刀部か?」

 

 ああ、箒は摩理のあの動きに興味を示していたわけだ。それで、入る部活といったら武道系だと断定してるみたいだな。残念だが、箒の期待にはこたえられそうにないな。

 

「茶道部よ」

 

「さ、茶道部⁉」

 

「へえ、似合いそうだよな」

 

 案の定、箒は驚き、一夏は口説く。ちょっと天然たらしすぎやしないか一夏。

 

「ちなみに、俺も茶道部に入るぜ?」

 

「まじか‼ ……て、どうせお茶菓子目的だろ?」

 

「その通りだぜ」

 

 さすが一夏、俺のことを理解してるぜ。

 

「な、なぜ、剣道部ではないのだ⁉」

 

「私、武道とかやっとことがないもの。それにあまり興味がないの」

 

「おいおい摩理、それは箒に失礼だぜ?」

 

 摩理は俺の言葉に不思議そうな顔をする。あれ、摩理は知らなかったっけ?

 

「箒は剣道部所属なんだぜ」

 

「えっ、そうだったの? ごめんなさい、失礼なこと言って」

 

「いや、それは別にかまわないが、武術に興味がないありにはあの槍術、見事なものだと思ってな。私でも捌き切れるかどうか」

 

 天津飯を食べ終えてしまった。食事は食べている他のやつと速さを合わせるのがマナーだが、空腹時にマナーもなにもあったものじゃない、そう俺は理解するぜ。

 

「私でもって言い方から察するに、箒はそこそこ剣道強いのか? 一夏がぼろ負けしてたのは見たけど」

 

「おい、ひどい言いようだな」

 

「事実だぜ?」

 

「まあな。でも、箒は全国大会で優勝した猛者だぞ」

 

 マジで⁉ めちゃくちゃすごいじゃねえか。一夏が負けるのは当然だろそれ。

 

「なんで教えてくれなかったんだ?」

 

「聞かれなかったからだ。それに、自分からこんなことを言っても自慢しているように聞こえるだろ?」

 

「自慢できることがあるのは誇れることだと思うぜ?」

 

「そうね。それに全国大会優勝は自慢してもいいと思うわ」

 

「そ、そうだろうか」

 

 自慢されて気に食わないと感じるのは、聞き手が卑屈な場合と、自慢しているものが大したものじゃないって言う場合に限るだろ。全国大会優勝にケチつけられるなら、それは相手が悪いだけってもんだぜ。

 

「だから、その箒が認めた摩理の槍術も誇っていいってわけだ」

 

「別に誇れるものではないと思うのだけれど」

 

 ん~、なんだかみんな謙虚だな。それはいい事でもあるが、

 

「俺だって自慢できることは一つだけあるぜ」

 

「お、なんだ」

 

「計算がすげえ早い」

 

『……』

 

 おう、なんだこの微妙な空気は。

 

「じゃあ、101+100+101+32=」

 

「334……って、なんでや。もっと難しいのあるだろ!」

 

「いや、難しくしたらこっちが正解か分かんなくなるし」

 

「なら、私が試してやろう」

 

 そう言って名乗りを上げるのは箒だ。おお、天才の妹はどんな計算を出してくるんだ?

 

「14492+73917+73982= どうだ。これなら解けないだろう」

 

「よく舌が回ったな。答えは162391だぜ」

 

「なっ⁉ ……う、うむ。せ、正解だな」

 

 おい、自分で答え分かってねえじゃねえか。

 

「てか、なんで足し算ばっかりなんだよ」

 

 難しくするなら四則全部使えよ。

 

「稀零のイメージに合わないわね」

 

「ん。それは良く言われてたぜ」

 

 俺は勤勉じゃねえし、授業も真面目に受けないから数学の点数だけいいのはカンニングだと断言してた先生もいたな。わざわざ計算過程を書いてやってんのに、カンニングなわけないだろって話しだぜ。

 

「どうして数学なんだ?」

 

「数学ってのはさ、俺に見えない世界を示してくれるだろ? ただの数字の羅列にも意味が込められていて、その一つ一つが事象を現し、俺の世界を広げてくれるんだ。虚数なんて、実際には存在しない数字ですら、数学は定義できる。俺が見ることも、触れることもできない世界を示して、俺の世界を広げてくれるんだ。それってなんだか、すげえと思うだろ?」

 

 長々と語り終える。何度もしてきたことだ。その度に、俺の周りから人は離れる。今度も白い目で見られるんだろうな。そんな目をされるのは俺だって嫌なんだぜ。だが、人が離れることを拒んで自分を偽ることもないだろうと思う。離れたら離れたでそれまでの関係だったって話しだ。

 

 ま、そんな予想を裏切ってくれたのがこいつらだった。

 

「すげえな稀零。まさかそんな難しそうなこと考えてたなんて、見直したぞ」

 

「おい、どういう意味だそれ」

 

「いや、私もまさか稀零がここまで思慮深い人間だったとは……見直した」

 

「だからお前ら――」

 

「稀零の考え方は面白いわね」

 

「それは、感心しているのかバカにしているのかどっちだ?」

 

 まあ、摩理のことだしバカにはしてないんだろうがな。

 

「俺は小さな世界で留まりたくないからな。自分の世界を広くしたくて必死なんだぜ」

 

「そうなのか? なんだか抽象的で難しいな」

 

 一夏には分からないかもな。つっても、俺自身も明確な答えを持っているわけじゃない。ただ、そうするとなんか、自分の生に意味を見いだせてるような気がするだけだ。

 

 ……て、食事中に考えることじゃないな。飯食ってエネルギー摂取してんのに、そのエネルギーを無駄に使ってちゃ意味ないぜ。

 

「ごちそうさま」

 

 食後の満腹感は至高だということを噛みしめる。なんというか、このまま寝たい。

 

「この後お茶入れるけど、稀零たちも来るか?」

 

「お、気が利くな。なんか茶飲んでまったりしたい気分だぜ」

 

 この気が利くところが一夏だな。ま、お茶ってところが年寄りっぽいって言われるんだろうけどな。

 

「摩理も行くよな?」

 

「ええ。織斑くんと篠ノ之さんが迷惑でなければ」

 

「いやいや、稀零ならともかく花城さんは迷惑になんてならないって。なあ、箒」

 

「ああ。花城は少し気にしすぎだ」

 

「箒は遠慮なさすぎないもするがな」

 

「稀零も人のこと言えないわよね」

 

 あ、あれ? なんか最近俺がディスられる会話が提携になってる気がするんだが……。

 

 

 

 所変わって一夏の部屋。俺は一夏がいれた煎茶を一口飲み、ふうと息をついてのんびりとした時間を過ごしていた。一夏のベッドに腰かけているが、このふんわりとした感じ、横になったらすぐに寝てしまいそうだ。

 

 そんなふわふわとした空気を取っ払う様に部屋の扉が騒々しく開かれた。そこからボストンバッグを手につかつかと部屋の中に入ってきた鈴。

 

「というわけだから、部屋代わって」

 

「なっ! ふ、ふざけるな!」

 

 何が『というわけ』なのかはさっぱりわからないが、俺がピットから出た後に一悶着あったことだけは確信できる。

 

 大方、一夏と箒が同室であることを鈴が知ってどうこうって感じだろ。

 

「だいたい、なぜ私がそんなことをしなくてはならない!」

 

「だって、篠ノ之さんも男と同室なんていやでしょ? 気を使うし、のんびりできないし」

 

「そうなのか、摩理?」

 

「どうしてそこで私に振るのかしら」

 

 え、だって摩理も俺と同室だろ?

 

「気を使うのは当然だけど、それは異性に限ることではないから別に変わらないわよ」

 

「そ、そうだぞ。同室が一夏でもほかの女子でも変わらん! だから、変わる必要はない!」

 

「え、なに、あんたたちも同室なの?」

 

 驚きを露わにする鈴。確かにこの状況だけ見れば、おかしいよな。俺らのほうは管理しやすいって理由があるけど。あ、一夏も都合が合わなかっただけか。

 

「ま、ちょっとした事情があってな」

 

「事情ねえ。ま、いいけどね」

 

 あ、これたぶん『どうでも』いいけどね、ていうことだな。下手に興味を持たれるよりもありがたいけどな。

 

「……」

 

「どうしたの、稀零」

 

「いや、別に俺もこいつらの正妻争いに興味ないから帰ってもよくないか?」

 

 そう言って、手元の湯呑を一気に傾ける。そこに茶葉が少し沈んでいるのがいつも気になるんだが、これはこれでお茶の楽しみ方だと割り切ることにしている。

 

「んじゃ、俺は戻るか。ん? なんか、箒の様子がやばいんだが……」

 

 鈴のペースに乗せられて激高してらっしゃるな……って木刀⁉ それはまずいだろ!

 

「む、無視するな!」

 

 その声とほぼ同時に、俺はヒメホタルを同化させ鈴と箒の間に割って入る。振り下ろされる木刀に横薙ぎの手刀を合わせる。

 

 木刀が砕ける音と金属が何かを叩く音が同時に聞こえた。

 

「え、あ、あんた! 大丈夫なの⁉」

 

「き、稀零!」

 

 ん、大丈夫とはどういうことだ? そんな疑問を目で摩理に訴える。

 

「た、大変ね。鈴が木刀を防ごうと部分展開したISの腕が稀零の後頭部にあたったわ」

 

 おう、棒読みだけどそれっぽく状況を説明してくれたな。なるほど、ISでどつかれたらそりゃ驚くだろうな。

 

 しかし、割り込むのに必死だったとはいえ、そんな衝撃に全く気が付かなかったのか俺は。虫の同化による強化……だけじゃなさそうな気もするな。

 

「大丈夫か、稀零」

 

 そう言って一夏は濡らしたタオルを差し出してくる。それを取り、一応頭に当てる。

 

「ありがとよ。でも、なんか俺丈夫みたいだし平気だぜ」

 

 そう言って、笑うと鈴が何やらあきれたような顔をする。

 

「あんた、本当に頑丈ね。昨日といい、今といい」

 

 そういった後に少しバツ悪そうな顔になる。

 

「悪かったわね」

 

「いや、別に今回は悪くねえだろ。どっちかって言うと箒に問題があったしな」

 

「うっ。す、すまなかった。少し冷静さに欠けていた」

 

 意外に素直だった箒に少し驚くも俺はそのまま廊下に続く扉のほうへ向かう。

 

「ま、何ともないと思うが、一応俺は部屋に戻るわ」

 

「私も稀零に付き添うわね」

 

「そうか、また明日な」

 

 そう言ってさっさと外に出る。

 

 廊下に出ると摩理が少し怒った顔をこちらに向けていた。

 

「な、なんだ?」

 

 怒られる節が見当たらない俺は困り顔になる。一夏の部屋でなんか粗相でもしたのか、俺は。知らないうちに誰かを傷つけるなんてことはよくあることだろうが、あの限定的な空間でそれを見流すようなことはないと思うんだがな……。

 

「安易に虫を使わないほうがいいわ」

 

 ああ、そういうことか。

 

「でも、夢を喰われてる感覚がないし、全然大丈夫なんじゃねえの?」

 

 喰われるというのがどういう感じなのか、それを実感できるほど能力を酷使した覚えがないから何とも言えないんだが。

 

「今はそういうことじゃないわ。ISの腕で殴られて平気な生身の人間なんて、この世界ではおかしい存在でしょ?」

 

「そりゃそうだぜ」

 

「なら、そんな存在にならないように努めるべきだと思うの」

 

 なるほどな。そもそもISに乗れるという時点で特異な存在になってはいるが、それだけなら一夏もいるからな。

 

「もしそのせいで今の日常を壊されるのは稀零もいやでしょ?」

 

「……」

 

 いや……。

 

「別に壊してもらって構わないんだけどな」

 

 そうぼそりとつぶやく。もちろん、摩理には聞こえない程度にだ。聞かれたくないなら思うだけにしろ、て感じだが、言葉にすることですっきりすることもある。

 

「何か言った?」

 

「いや、分かったって言っただけだぜ」

 

 誰かが望んでいないなら、少しくらいは自分を押さえてもいいだろう。

 

 そんなことを思いながら俺たちは部屋に戻った。

 

 




読んでくれてありがとう
なんだか、とっても間が空いたけど私は元気です
いや、実はバテ気味でしたけど;

何ともどうでもいい回でしたが、伏線?っぽいものも入れています
回収はもう少し、というかこの調子だと来年になりそうですが、後になります。

次回は少しあっさりで終わります。
第三話は長いだけで、大事なところは前半と第四話にしかないですからね~
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