-IS- 夢動かす機械   作:かきな

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前回のあらすじ

槍使いの攻撃により虫を封じられた稀零

薄れゆく意識の中、聞こえるのは摩理の声だった


第四話 欠戦!! クラス対抗戦 その三

 稀零はひどい有様だった。左手にISの兵装が突き刺さっている。それを心配するも、次の瞬間、私の意識はその対峙するISに向けられていた。

 

 フルフェイスで覆われている。確証はない。けれどこの懐かしい感じ……。

 

「亜梨子?」

 

 その名を口にしてしまう。そんなわけがない。亜梨子がここに居るわけがない。けれど、口を突いて出てしまった言葉に妙に納得している自分がいた。

 

 そんな声が届いたのか、『それ』はこちらを見る。『それ』は稀零の腕に突き刺さる槍を抜き、ガチャリと金属音を立ててこちらに構える。

 

 その姿がどうにも、私の親友……私の夢を預けた、彼女の姿に重なって仕方がない。

 

 違う。

 

 そんなはずがない。

 

 そんな言葉が頭の中に浮かんでは消える。私の本能が私の理性を否定する。あれは間違いなく……。

 

「亜梨子」

 

 しかし、『それ』は私の葛藤などつゆ知らず、加速し、こちらに迫ってきた。

 

 眼前に広がりつつある死。それを私は茫然と眺める。彼女が提示するものならいっそ、受け入れてしまっていいのではないかとさえ思ってしまう。

 

 しかし

 

「摩理っ!」

 

 そんな、声と共に現れた影が、私をそれから遠ざけた。

 

「ボーっとしてんなよ」

 

「稀零……」

 

 私は、どうすれば……。

 

 

 

 

 

 何故あいつが摩理の方に向かうかなんて、理由を考えている余裕も気力もないが、兎にも角にもあいつを倒さねえといけないってのは明白だぜ。

 

 だが、それには今の俺じゃあ少し力不足だ。

 

「なんで……肝心な時に出て来ねえんだよ、ヒメボタル。お前は俺の夢を食ってるんだろ?それが目的ならよ……」

 

 視界が明るくなる。それに呼応するように周りを包んでいた鱗粉が光に押し返されているように見えた。

 

「もっと俺を……楽しませろよっ‼」

 

 瞬間、ヒメボタルは俺を包む。常人離れした加速で摩理のもとへ向かう。その加速は槍使いを追い抜き、俺は摩理を片手で抱え、槍から逃れる。

 

「摩理っ! ボーっとしてんなよ」

 

「稀零……」

 

 腕の中の摩理がか細い声で俺を呼ぶ。なんだか、精神的にまいってるみたいだが、なんかあったのか? って、そんなこと考えてる暇ねえぞ!

 

 追撃に来る槍を横跳びで避ける。片手で抱いてるせいか、摩理がずり落ちてくる。

 

「摩理っ、もっとしっかり掴まってくれ」

 

「ふぇえええ! こ、こうかしら?」

 

 摩理が手を首に回し、身体をひっつける。よし、さっきよりも安定して動きやすくなったぜ。

 

 槍の攻撃は背中から伝わってくるプレッシャーを感じ取ることで何となく避けることができた。おお、これが摩理の言ってた大気の流れを感じるってことか? やっぱ人間じゃ無理だろ。虫と同化してやっとこさ理解できるってぐらいのもんだぜ。

 

「摩理、投げるから着地できるか?」

 

「え? ええ。いけるわ」

 

「なら、ちょっと頼まれてくれねえか?」

 

 それがこいつに一矢報いる唯一の方法。

 

「その間、俺はこいつの足止めをする」

 

「分かったわ」

 

 摩理を投げる。そして振り向きざまにそいつを蹴り飛ばす。生身であるにもかかわらず、ISを退かすことのできる脚力。

 

「これが同化型ってやつか。ヒメボタル、たいしたもんだぜ」

 

 速く走れるってだけじゃ実感が湧きにくかったが、こうしてIS相手に通用するとなると、相当の強化がされてるんだな。

 

 少し距離のある相手を見据える。

 

「こいよ。槍なんて捨ててかかってこい」

 

 その言葉に反応するかのように突っ込んでくる。もちろん槍は持っているけどな。

 

「うらあ!」

 

 薙ぎ払われた槍を受け止める。

 

それにはその槍の重量の何倍もの力が加わっていた。

 

 受け切れず身体をずらしてその力を受け流す。

 

 受け流した体勢から立て直す流れを利用して反撃の一打を放つ。

 

「……」

 

「っ!」

 

 俺の拳が相手に届いたのは拳に響く振動で理解できた。だが、それに全く反応しない相手にダメージが入ったかと聞かれると……。

 

「ISのシールドバリアーか」

 

 絶対防御のシールド。いくら虫憑きの力と言っても一撃で削りきることはできないようだ。

 

 相手にダメージがない以上、固まっていては反撃を受ける。そのチャンスを逃さないで槍から片手を離し、ボディーブローを貰う。

 

「……」

 

「ぐっ、なかなかいいパンチじゃねーか。でも、負けねーぜ? とっておきがあるからな」

 

 その言葉が届いたのか、そうでないのか。俺は蹴り飛ばされて、槍使いは距離を取った。

 

 一定の距離を保ち、じりじりと弧を描きながら位置を調整していく。位置が入れ替わった辺りでの向こうから声が響く。

 

「稀零! 受け取って!」

 

 その言葉と共に摩理の手から俺の方にあるものが投げられる。

 

 しかし、その間に居るのは槍使い。当然、それがこの勝負を決するための何かであると考えるから、槍使いは摩理が投げたものを捉え、こちらに届く前に奪い取った。

そうして槍使いは摩理の方を見た。作戦を失敗に終わらせた優越感に浸っているのだろうか。馬鹿な奴だと思う。今は戦いの最中なんだぜ?

 

 槍使いが見た摩理の顔は笑っていた。

 

 そして、俺も笑う。

 

「俺から目を離したな?」

 

 バッ! と勢いよく振り返る槍使い。槍使いの手に握られているものは、なんてことはないピットに置かれていた工具だった。

 

 そして俺の手に握られているのは、戦闘の途中で放り捨てた大型拳銃、蛍灯だ。それは緑色に浸食され、本来の色を隠している。

 

 摩理に頼んだのは陽動。それも、俺がこの蛍灯の落ちている場所にたどり着いたその瞬間にやってもらう必要があった。

 

 だが、普通IS兵器はその所有者のみしか使えない。この場合、所有者は俺で間違いはないが、ISに同化していない今、コアネットワークへの接続はされておらず、俺に使用権限は下りてこないのだ。

ならどうするか。答えは簡単だ。例外が一つある。それは俺の虫を同化させ、それを支配領域に置けばいい。

 

「終わりだぜ?」

 

 トリガーを引く。

 

 同化を受け強化された蛍灯の反動はいつもの比ではないが、反動制御なんて小難しいことは考えなくていい。力任せに握りしめて構えるだけでいい。それだけで、強化された握力がしっかり銃身を固定してくれる。

 

 爆音とともに威力を強化された弾丸が放たれる。

 

 槍使いもとっさに槍で防ごうとするが、片手は工具でふさがっており思うようにいかなかったようだ。

 

 空を切る槍の横を通り、銃弾は槍使いに着弾した。

 

 

 

 

 

 

 銃弾を放った後、稀零は動かなかった。その姿勢を崩すことなく横に倒れたのだ。

 

「稀零!」

 

 虫との同化が解かれ、ヒメボタルがどこかへ消える。駆け寄ろうとしたが、間には槍を持ち立ちはだかる影があった。

 

「……」

 

 何もしてこない。ただ視線が交差するのみ。何か言いたい事があるのか。いや、言いたい事があるのは私の方。

 

「……亜梨子よね?」

 

 フルフェイスの顔の横に羽を動かすチョウがいる。それに見覚えがる。

 

『私の夢、託しても…いい?』

 

 私の問いには答えず、槍から鱗粉を吐き出す。それに紛れるように、溶けるように、『それ』は姿を消していた。

 

 

 

 

 

 

「んっ」

 

 見たことない天井だ。

 

……なんてな。どうやら保健室みたいだ。包帯が巻かれた腕が痛み、俺の意識をまどろみから引きずり出した。

 

「ああ、やっぱいてーな」

 

 これどうなってんだろうな。左手は……動かねえな。包帯ぐるぐる巻きでどういう状態なのか見えないから何とも言えないが、ほんとに腕があるのかも怪しいぞ。

 

「衝撃法の最大出力を背中から受けたんだぞ。しかもお前、ISの絶対防御をカットしたな? 良く死ななかったものだ」

 

 カーテンの向こうから声が聞こえてくる。この声はたぶん織斑姉だろう。呆れたような口調ではあるが、相手を気遣う優しい声色でもあった。

 

誰だよ、そんな無謀なことした奴。……あ、一人しか心当たりがねえぜ。

 

「まあ、何にせよ無事でよかった。家族に死なれては寝覚めが悪い」

 

「千冬姉」

 

「うん? なんだ?」

 

「いや、その……心配かけて、ごめん」

 

 少しの間。そして小さく笑う声が聞こえる。

 

「心配などしていないさ。お前はそう簡単には死なない。なにせ、私の弟だからな」

 

 ここまで黙って聞いていたが、なんかこそばゆいというか……なんというか。今まで聞いたことのない感じだと思った。

 

これ以上黙っていると俺の方が辛い。

 

「水さして悪いが、ここに俺もいるぜ?」

 

 シャッ、とカーテンが開き、ベッドの上で横になっている一夏とその傍らに立つ織斑姉の姿が現れた。なんというか、ここの構造は保健室というか病室という方がしっくりくるな。

 

「渡宮、妙なことは言うなよ」

 

 目が俺を殺そうとしている。やっぱり、こういう身内同士の会話って聞かれると恥ずかしいんだろうな。教室では見せない一面を見られたということは、なかなかに面白い経験ではあるが、そこに死の危険が漂っているのがなんとも織斑姉らしいっちゃらしいぜ。

 

「返事は?」

 

「イ、 イエッサー」

 

「女性に対してはマムだ、馬鹿もの」

 

「イエス、マム!」

 

「よろしい。では、私は後片づけがあるので仕事に戻る。お前も、少し休んだら部屋に戻っていいぞ。渡宮は今日はそこで寝ていろ。それで明日、何があったか聞こう」

 

「はぁ、分かりましたよ」

 

 織斑姉はすたすたと保健室を出ていく。

 

「何か大変だったみて―だな」

 

「稀零の方が大変そうだけどな」

 

「ああ。怪我だけ見ればそうかもな」

 

 ひどいもんだ。惨敗と言っていいだろう。

 

「ま、生き残ったもんが勝ちだぜ」

 

「そうだな」

 

 ガラリと戸が開く。その後、わざとらしい咳ばらいが聞こえたので箒だと推察。

 

「んじゃ、俺は寝とくわ」

 

「ん? 多分だけど箒が来たぞ?」

 

「それは俺にじゃねーよ」

 

 そう言って左手でカーテンを閉め目を瞑る。すぐに眠気が襲ってきて俺は眠りについた。

 

 





ふう、やっとにじファン時代のに追いつきましたね

ここからは新規で作っていかなければならないので、時間がかかるかもしれません
あと、もう一つの方が予想外に伸びてることも関係してます
この勢いのまま、先にあちらを完結させたいのが作者心です(笑)

次回、第四話のエピローグとなります
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