クラス代表に推薦された稀零
それに異議を唱えるセシリアを交え、3人はトーナメントすることになったのだった
「意味が分からん……」
目の前で机にぐったりしている男の肩をたたく。
「放課後だぞ。解放されてんだから、もっと喜べよ」
「いろいろあったからな。昼休みなんて大名行列やモーゼみたいなことが起きたからな。精神的にまいってるんだ」
分からなくもない。あんだけ視線を受け続けたら精神もすり減るわな。
「ああ、織斑くんたち。まだ教室にいたんですね。よかったです」
「おっ、真耶ちゃん先生じゃん」
「何か用ですか?」
山田先生。と呼ぶには少し抵抗がある。なんだろうな、教師っぽさがないんだよな。
「えっとですね、寮の部屋が決まりました」
一夏に部屋番号の書かれた紙とキーを渡す。
「なんだ、一夏。部屋が決まってなかったのか?」
「ああ。だから一週間は自宅から通う予定だったんだけど……」
「事情が事情なので一時的な処置として部屋割りを無理やり変更したそうですよ。……そのあたりのことって、政府から聞いてます?」
周りで聞き耳を立てている女子の対策なのか、最後の部分は小さい声だった。
まあ、事情って言うのは簡単に言うと……
男のIS操縦者は珍しい
↓
ぜひ我が国に!
↓
よっしゃ拉致ったる。
なんて感じの事だ。あとは研究所なんかが、身体を調べたいから来て! みたいなのもあるな。
「その研究所出身の俺ってどうよ?」
苦笑いしか返ってこなかった。ちくしょう……。
「で、政府特命もあって、取りあえず寮に入れようと言うことになったんです。しばらくは相部屋ですけどね」
「俺と一緒なのか?」
「いえ、渡宮くんは研究所のはからいで一部屋与えられていますよ」
「あいつら、なかなか気が利くじゃん」
身体をいじられた甲斐があるってもんだぜ。それくらいやってもらわなきゃな。
「稀零はいいな。俺、同居人とうまくやれるか心配だよ……」
そうか、同居人って女子になってしまうわけか。
「ふふふ。寂しくなったら遊びに来いよ。歓迎するぜ」
「ああ。でも先生。荷物は家に帰らないと準備できないですし、今日は帰っていいですか?」
「荷物なら私が手配しておいてやった。ありがたく思え」
こういう時に身内が学校に居るって言うのは役立つな。
「ど、どうもありがとうございます」
「まあ、生活必需品だけだがな。後のものは週末にでも取りに帰ればいい」
しかし、この姉はいろいろ言う割には世話焼きなのだろうか。ツンデレってやつか? ツンが名簿って言うのは嫌だけどな。
「じゃあ、時間を見て部屋に行ってくださいね。夕食は六時から七時、寮の一年生用食堂でとってください」
あ、そういや飯はここで支給されるのか。うまいのかが心配だ。学食ってのは大味で量が多いだけってのが大半だからな……。
「渡宮、いらん心配をしているみたいだが、ここの食堂の味は保証するぞ」
「まじっすか」
それはなんとも心強い保証だ。絶対間違いないと確信できそうだ。つか、なんで俺の心配事が分かったんだ。
「あ、ちなみに大浴場もありますけど……えっと、織斑くんと渡宮くんは今のところは使えません」
「え、なんでですか?」
一夏が心底残念そうに問いかけるが、当たり前のことじゃないか?
「アホかお前は。まさか同年代の女子と一緒に風呂に入りたいのか?」
「あー……」
「嫌だな、それ。気持ち悪いわ」
「ええっ? 渡宮くんは女の子に興味がないんですか!?」
真耶ちゃんどうしたの? すげえ突っ込んできた。
「いや、そういうわけじゃないけどさ。女子の視線の中で全裸なんてどう考えても罰ゲームだろ?」
「で、でも、世の中にはそれが快感になる男の人もいると聞きましたよ!?」
それがスタンダードの世界なのだろうか。少なくとも、一月ほどの研究所生活ではそんな奇特な男を見かけなかったのだが……。いや、男自体少なかったのもあるんだがな。
「山田先生、遊んでないで行きますよ」
「あ、そうでした。それじゃあ私たちは会議がありますので行きますが、織斑くんに渡宮くん、ちゃんと寮に帰るんですよ。道草食っちゃダメですよ」
「野草か……きちんと調理したらうまいらしいぜ、一夏」
「いや、今のはそういう意味じゃない。それに寮までの五十メートルにそんなものはないぞ」
ああ、校舎から寮までは舗装された道だったっけ。つうか、近すぎるな。公私の分離がし難いんじゃねえか?
……あ、俺には関係ないことだわ。公の部分が欠落してるし。
「疲れたし、道草の調理はまた今度にするか」
「そうだな。俺もはやく部屋で休みたい」
お疲れの一夏と共に俺は寮に向かった。
「えーと、ここか」
一夏が部屋の番号を確認する。ついでだから俺も部屋に付いてきた。これからのこととかの相談もついでにしようと思う。
なにせたった二人しかいない男だ。自然と仲間意識が芽生えてくるのも不思議なことじゃない。
「よし、じゃあ入ろうぜ」
「ああ、入るか」
中はなんというか、学生寮というよりはちょっとしたホテルって印象だな。
ベッドが二つ並んでいる。一夏ともう一人の同居人のベッドだろうが、女子と横並びで寝ないとだめなのか。一夏は大変そうだな。
一夏がベッドに飛び込み幸せそうな顔をする。
「そんなに気持ちいいのか?」
「ああ、すごいぜ。間違いなく高級品だ」
「まじか。ちょっと詰めろ」
そうして俺もベッドにダイブする。すると触れた瞬間分かる高級感。肌を優しく包み込む。その柔らかさは俺が今まで感じたことのないものだった。さすがIS学園。金かけてるな。
「誰かいるのか?」
突然、奥から声が聞こえる。曇った声からドア越しであることが分かる。ん、この部屋ってもう一部屋あるのか? いや、そんなことはないはずだが。
あ、あったわもう一部屋。風呂。この単語で次の展開が予想できる。
「ああ、同室になった者か。これから一年よろしくたのむぞ」
ん、この声聞いたことがあるぞ。確か教室で……。
「こんな格好ですまないな。シャワーを使っていた。私は篠ノ之――」
「――箒」
「あー、あの時の奴か」
そうだそうだ。一夏を連れ出した女子だったな。それにしても大胆な奴だな。誰が同居人かくらい、先に分かっているはずだよな。担任は織斑姉……けど、忙しくしてたから伝える役は真耶ちゃん先生か。ああ、これは伝えてないな。
二人はきょとんとした顔をしている。俺? 俺はもう一度モフモフしてるぜ。だって、タオル一枚だろ? 見えるかもしれねえじゃん。だから顔を布団に埋めるんだよ。
「っ……⁉ み、見るな!」
「わ、悪い!」
ベッドが揺れる。どうやら一夏が体制を変えたようだ。
「な、なぜ、お前……と、もう一人の男が、ここに、いるんだ……?」
言葉が途切れ途切れに紡がれる。動揺してるんだろうな。
「いや、俺が同居人なんだけど……」
「あ、俺は付き添いね」
返事をするついでに顔を上げると、篠ノ之はタオル姿のまま壁に立てかけてあった木刀を取り構えていた。
「うおおっ⁉」
それを見て一夏はものすごい速さでベッドから飛び降りると一目散に出口へと駈け出した。それは幼馴染の勘だろう。それがない俺はワンテンポ遅れて一夏の後ろを追いかける。
バタン
一夏と俺は外に出た後、扉を閉める。そして俺は安心して扉にそのまま腰かけた。
「ふう、助かったな一――」
ズドン!
後頭部にものすごい衝撃が走る。目の前に火花が散り、意識はフェードアウトしていく。薄れゆく意識の中、俺が見たのは扉を貫通した木刀であった。
……あれ、俺死ぬんじゃね?
「はっ」
目が覚めると、俺はベットの上だった。
思いだそうとすると頭が痛むが、篠ノ之の一撃を受け意識を失って、ここに運ばれたんだろう。
「……テンパるにもほどがあるぜ」
まあ、男子に半裸を見られたら動揺して暴走するのも無理ないのかもな。同居人の状態を確認せずに踏み込んだ俺の落ち度でもあるし、許してやるのが男だぜ。
それにしてもここはどこだ? 二人部屋みたいだが、人はいない、てことは俺の部屋か? 俺の荷物もここにあるし……。
「メモか……」
なになに
『君の身体はまだまだ未知のところが多いから、定期的に検査にいくね♡ その時に私が泊まるために二人部屋を独占してあげたんだよ? ありがたく思ってね♡』
丸めて床に投げ捨てる。
「……あいつを思い出したら、いたるところが痛くなってくるぜ」
部屋を確保してくれたことにだけは感謝だけはしつつ、俺は時計を見る。
「……飯の時間終わってんじゃねえかよぉぉぉおお!」
ホタルと腹の虫と一緒にベッドの上で眠りについた。
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前後編に分けた後編です
読みやすさ重視のために、間隔あけました
今週土曜日の12時に投稿する二話のあとがきで少し連絡があるのでお楽しみに