稀零君待望の戦闘が始まる
でも結局負け方は一夏と一緒だね
ISは高価なものなので、その修理代はもちろんバカにならない。つまり訓練機を破壊した俺の目の前にある請求書に並ぶ0の数が多いという話なんだが、何食わぬ顔で俺は研究所に押し付けた。あそこ金持ってそうだし大丈夫だろう。
「今日はこれで終わりだ。各自、部屋に帰って休むなりしろ」
「はい……」
「おう」
一夏と俺は返事をするとISスーツを着替えてピットからでる。外では箒が待っていた。誰をって言うのは野暮ってものだぜ。モテる男は羨ましいぜ。
ちらりと箒の方をみる。俺がいることに不満そうな顔はしていないが、やっぱり俺がいるとやりづらいだろうな。
「あ、俺、師匠の方に行ってから帰るわ。一夏と箒は先に帰っといてくれ」
「そ、そうか! すまないな、稀零」
「? 箒は何を謝ってるんだ?」
「い、いや。一夏には関係ないことだ!」
大有りだけどな。あ、そうそう。なにやら一夏と箒は一週間のうちに名前で呼び会うようになったぜ。一緒に訓練するなかで昔の感じを取り戻したんだろうな。それだけじゃなく、いろいろフォローするうちに俺まで名前で呼ぶようになったから、箒も丸くなったんだろうな。
「んじゃまたな」
「ああ、また明日」
「うむ」
そうして別れた俺は反対側のピットへ向かった。
「師匠~」
「あら、あなたですか」
ピットの扉を開け放つと、ISスーツを着替え終え、カスタマイズされた制服に身を包む師匠がいた。
「お疲れさまだぜ」
「お疲れさまですわ。まったく、基礎もできていないのにあんな変則的な動きをするからああなるんですわ」
「ぐ、反論できねえぜ。一撃入れることにこだわりすぎたか……」
だが、ああするしかなかった気もするんだけどな。
「ま、楽しかったからいいじゃん」
「あなたは全部それですわね……」
それ以外何があるんだ?
「ともかくクラス代表おめでとうだぜ。あんな啖呵きっただけあってさすがだぜ」
「あなた、わたくしのことを師匠と呼ぶわりには言葉遣いが悪くなくて?」
「それはそれ。これはこれだぜ」
別に年は同じだしいいじゃねーか。
「この調子でクラス対抗戦も勝ってくれよな」
「……それについてですけど、わたくしは一夏さんにゆずろうと思いますわ」
ほう、どういう心境の変化か知らねーけど、あの師匠が譲るという行動をするのか。
「師匠、もしかして……」
「なんですの?」
ほんのりと紅潮した頬をみるにつまりそういうことか。
「これから大変そうだぜ、一夏」
「? そうですわね。私の認めたクラス代表ですし、当然ですわね」
そういうことじゃねーんだけどな。ま、クラス代表になればさらに一夏の人気は加速するだろうから、それも一因になるのか。
「ちなみになんで俺じゃないんだ?」
「あなたはISを壊すというバカなことをしましたし、論外ですわ」
どストレートな回答が来たぜ。悲しいけど、これ、事実なのよね。
「一応、あなたの方が順位的には一夏さんの上ですし、確認しましたの。それで、いかがかしら?」
「異議はないぜ」
「あら。あなたのことですから、自分がなる、と駄々をこねるかと思いましたわ」
駄々って……俺は子供かよ。そんなことしないぜ?
確かにクラス対抗戦にはでてみてーが、俺より一夏の方がいいことは理解できる。強さは師匠に迫ったことで折り紙つき。男で専用機をもち、織斑姉の弟ということで話題性もある。俺より強いかはまだ分からねーけど、代表に俺より適していることは間違いないぜ。
しかし、師匠もか……。箒一人でもヤバイことになってるのに師匠は加わったら。
「修羅場にならなきゃいいけどな」
「はい? どういう意味ですの?」
「別に~」
そうして、クラス代表決定戦は幕を閉じたのだった。
「では、一年一組の代表は織斑一夏くんに決定です。あ、一繋がりでいい感じですね!」
そこは正直どうでもいいぜ、真耶ちゃん。昨日、師匠が言っていたように俺たちはクラス代表の座を一夏に譲った。一夏の辞退は断ったくせに、俺たちの辞退は承認するあたり、さすが織斑姉だぜ。
「先生、質問です」
一夏が礼儀正しく挙手する。先生もそれに応えて一夏を当てる。
「俺は試合に負けたんですが、なんで代表になってるんでしょうか?」
「それは私が辞退したからですわ!」
待ってました、と言わんばかりの登場だ。勢いよく立ちあがるから椅子が後ろの机に当たって音を立てる。後ろの席の子が迷惑そうな顔してるぜ。
「まあ、勝負はあなたの負けでしたが、しかしそれは考えてみれば当然のこと。なにせわたくしセシリア・オルコットが相手でしたのですから。仕方のないことですわ」
……ふむ、それで?
「それで、まあ、わたくしも大人げなく怒ったことを反省しまして、一夏さんにクラス代表を譲ることにしましたわ。やはりIS操縦には実践が何よりの糧。クラス代表ともなれば戦いには事欠きませんわ」
確かに一夏は初心者なのにあの戦いの中でISの操縦をマスターしていってたし、師匠のいうことに一理あるぜ。ま、それっぽいこと言ってるけど結局理由はあれなんだろうぜ。
「そ、それでですわね」
咳払いをして一夏の方を向く。
「わたくしのようなに優秀かつエレガント、華麗にしてパーフェクト(ジ○ング)な人間が…ってちょっと! 今、ジオ○グっておっしゃったのはどなたですの!?」
俺であるが黙っておこう。
「んんっ。ともかくそんな人間がISの操縦を教えて差し上げれば、それはもうみるみるうちに成長を遂げ――」
バン! 机をたたく音が響き、箒が立ち上がる。この二人の動きはいつもうるさいぜ。もっと慎ましくいこうぜ?
てか、師匠もうまいこと話を持っていったな。こうすれば、一夏に近づくことができるもんな。
「あいにくだが、一夏の教官は足りている。私が、直接頼まれたからな」
ドスの利いた声で箒が異議を唱える。
やっぱり修羅場だぜ。修羅場なのに当事者が気付いていないあたり、二人とも報われないぜ。中心の一夏は何が何だかわからない顔してるし。
「あら、ISランクCの篠ノ之さん。Aのわたくしに何かご用かしら?」
「ら、ランクは関係ない! 頼まれたのは私だ。い、一夏がどうしてもと懇願するからだ」
「え、箒ってランクCなのか?」
「だ、だからランクは関係ないと言っている!」
「座れ、馬鹿ども」
箒とセシリアの頭を叩く織斑姉。さすが、容赦がないぜ。
「お前たちのランクなどゴミだ。私からしたらどれも平等にひよっこだ。まだ殻も破れていない段階で優劣を付けようとするな」
「そうだぜ! 俺なんてIS適性のランクがな――」
「わ、渡宮くんは黙っていてね」
山田先生に口を塞がれる。しかし、やり過ぎじゃないか? 俺にIS適性がないってことを言ってやれば、箒も下には下がいると安心するんじゃねーの?
「わかったから離してくれ、真耶ちゃん先生」
「そ、その呼び方はどうかと思いますけど……」
それでも離してくれた。あ、確かに適性がないのに乗れるとか言ったらややこしいことになりそうだぜ。
「代表候補生でも一から勉強してもらうと前に言っただろう。くだらん揉め事は十代の特権だが、あいにく今は私の管轄時間だ。自嘲しろ」
うむ。だが、俺は揉め事ウェルカムだ。どんと来い。
「お前いま良からぬことを考えてるだろ」
「滅相もございません」
学習した。この世界の女性は心を読むことができるんだと。そりゃ、男より強いわけだぜ。
「クラス代表は織斑一夏。異存はないな」
はーいとクラス全員一丸となって返事をしたが、そこにはソプラノトーンの声しかなかった。
まあ、代表じゃなくても戦いはできるだろう。そう考えることにした。
「織斑先生、先日の試合ですが……」
「ああ、渡宮か」
先日の試合とは代表決定戦のことである。
「確認したところ、緑色の打鉄は学園には無いそうです」
「……そうか。貸出の記録には?」
「普通の訓練機に使っている打鉄と同型ですね。どうしてあんな性能が上がっていたのでしょう?」
オーバースペック。渡宮の打鉄は限界を超えている性能をあの試合では発揮していた。
「それにあいつにIS適性はない」
どうやって動いているのかという問題が学園内で上がっている。しかし、まだそのことをどう扱うかの方針は決まっていない。
「どうしたものか……。男だというだけでもイレギュラーなのにな」
早急に措置を取った方がいいという意見もあるし、まだ様子を見た方がいいという意見もある。
「問題を起こさなければいいのだがな」
教師の悩みは一年に集中しているようだった。
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やっと二話終わりましたね
私としては長すぎた気がします。
次回はオリジナルを間に一つ挟もうと思います。
はい、ヒロインの登場です
やっとですよ……