予想以上の長さに自分がびっくりです。
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十八話です。
二刀の包丁を装備した青色の鬼のモンスター、<ターン・ジ・オーガ>の攻撃パターンは至極簡単なものだった。右、左の順番で包丁による縦の斬撃が繰り出され、全体攻撃など無く、たまにわかりやすい横方向の斬撃が来るだけ。縦方向に関しては左右に避け、横方向はある程度距離を取るかしゃがむことでかわせる。
しかし、戦闘が開始してから三十分ほど経過するにも関わらずそのモンスターのHPバーは一本も削れてはいなかった。
なぜこんなにも攻撃パターンが単純であるのにHPバーを一本も削れていないのか。
その理由として、ただひたすらに硬い。その一言に尽きる。
いくらトキアたちが斬っても大したダメージにはならず、ソラが弱点を探しだしてもそこに与えられたダメージは普通の攻撃において発生するダメージと
「きついきついきついきついつらいつらいつらいきついよぉぉぉぉ!」
「やっべ、頭くらくらしてきた…」
「貴様ら!何をしている!しっかりせんか!次!くるぞ!」
「「はぁ~~い」」
そこにはあまりの単純作業と長時間労働によって弱音をあげるソラとトキア。それを奮い立たせようとするアーサーの姿があった。
長時間労働というのは三十分というゲームにしては長い戦闘に加えて、ボス戦であるがゆえに精神を削ってしまうというおまけつきだ。いくら単純な斬撃の連続だといってもボスの攻撃だ。威力もスピードも尋常じゃない。少し避けるタイミングが狂うと大ダメージが待っている。つまり三十分ずっととは言わないが集中しっぱなしなのである。
「よし!相手のHPもあと一割だ!頑張るぞ!」
「あと一割といってもまだ一本目だけどね…」
「それを言うな…」
アーサーの必死の盛り上げにも残念なことに冷静に対応するソラとトキア。
「お前たち!そんなことじゃいつ死ぬかわからんぞ!」
それでもなお声を出し続け元気いっぱいのアーサー。どうしてこの程度でへこたれるのかわからないという顔をしている。トキアとソラからしてみればアーサーがなぜそんなにぴんぴんしているのかわからないのだが。
「ふんっ」
トキアはアーサーの(HPバー一本目が)あと一割という言葉に刺激されたのか両頬を叩いて気合をいれる。
「いくよ!」
いつの間にかさっきまで弱音を吐いていたソラが回復していた。ソラも自分なりの方法で気合を入れたようだ。頬をつねった跡があるがトキアは気にしない。
その後、トキアとソラが気合を入れたおかげか一分ほどで一本目のHPバーを減らすことができた。心の中ではまだ一本目であることに軽い絶望感を抱いているが三人とも口にはしない。
というよりそういう状況ではなくなってきているのだ。HPバーが二本目に突入したとき<ターン・ジ・オーガ>の目が赤く光ったような気がしたのだ。
「お前たち!何か来るぞ!」
その異変はアーサーがいち早く感知しており、二人のパーティーメンバーに向かって注意を呼びかける。
青色の鬼は二刀の包丁を構え、トキアたちの方へ向けて投げる。そのモーションは速かったもののわかりやすかったので間一髪かわすことができた。しかし、問題は次だったのだ。
青色だった鬼の皮膚は黄色へと変色していく。武器をなくした黄色の鬼は拳を固め、右腕に力が宿る。その力はバリバリと音をたて、光輝いている。それはまるで雷だ。
(まずいっ!)
そうトキアが思った時には遅く、すでに攻撃が繰り出されていた。
目の前の空気にパンチをするがごとく右拳を前に突き出し、そこから雷の力が収束したビームらしきものが放たれる。
先ほどの攻撃である程度作っていたフォーメーションが崩され、トキアとアーサー・ソラの二つのグループに分けられている。
黄色の鬼はプレイヤーの数で判断したのか、放たれた攻撃はアーサー・ソラのグループへ向かっていく。
ソラとアーサーは反応することはできたが、あまりの攻撃の規模の前にかわすことはできなかった。
だが、それだけでは終わらなかった。追加効果<
「ぐ…っ」
「く…そ…」
ソラとアーサーは動くことはできない。HPはイエローゾーンに到達していた。
優秀な仲間が行動不能に陥り、おそらくこのままだと自分もやられ、ゲームオーバー。
そうならないためにはどうすればいいかトキアは考えた。
思いついた方法はたった一つだった。おそらく最も単純なこと。
ただ―ひたすらに―何も考えず―斬ること。
時間を稼いで二人が動けるようになるまで待ってもいい。だが、聞いた話によると<
だから、ただひたすらに斬る。自分がずっと斬り続ければ相手モンスターのヘイト値を高めることができ二人に攻撃が向かわなくなる。雑魚モンスターが湧かないのも好都合だ。
二人がいつ復活するなんて考えず、ただ斬るのみ。これは<ターン・ジ・オーガ>と俺との
トキアが覚悟を決めた思いが伝わったのかソラとアーサーはトキアの闘いの邪魔にならないようにゆっくりと体を動かす。自由に体がきかないがそこは気合だ。
アーサーは一人でボスに対抗しようとする少年を見る。そこから見えるその少年の背中は恐怖など感じておらず、自信に満ち溢れていた。
いつから何も思わなくなったのだろう。いつから自分の本性を隠し、ありふれた剣の技術を隠れ蓑に使っていたのだろう。アーサーは力強さを発する自信に満ちた少年の姿を見て思った。
あの少年なら…あの剣士なら…もしかしたら…
私の仮面を壊してくれるかもしれないと心から思った。
トキア「やっと、俺、活躍しそうじゃね?」
ソラ「そうだね。トキアずっとモブみたいなことしてたもんね」
トキア「誰がモブだ。誰が。」
ソラ「トキアに決まってんじゃん」
トキア「まー、とにかくやっとこれから俺の独壇場じゃーい!」
ソラ(トキアが喜んでいるからいいけど、ちょっといやな予感が…)
ソラ「と、とりあえずその話は置いといて」
トキア・ソラ「「お気に入り登録よろしくお願いします!」」