英雄になりたいけどなれない少年の物語   作:木戸 真人

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 すみません!遅れました!
 なぜ遅れたかっていうと…スケジュールが空かなかったことと少しばかり家がごたごた(物理的に)したせいです。
 次の月曜日にはおそらく投稿できないので水曜日ですかね…
 早く余震が止みますように…
 十九話です。





集中

 自分一人でどうにかする。そう心に決めたトキアは不思議なことに体が軽くなっているのを感じた。

「GUOOOOOOO!!!」

 雄たけびを上げながら恐ろしい速さで向かってくる拳。トキアはこれをひらりとかわし、隙をつき攻撃を与えた。

 そのトキアの攻撃は手ごたえを感じ、さっきまでのダメージより大きくなっていた。どうやら相手の防御力が落ちていたらしい。

 しかし、トキアはそんなことは考えてはいなかった。考えていたことがあるとするならばただ一つ。

 集中すること。

 湧き上がる感情を押さえつけ冷静に対処し、次の手を考え、攻撃を予測し、集中する。

 そして、トキアの全神経は通常より何倍も鋭くなっていた。

 全神経が鋭くなったことにより情報量も増加。空間すべてを体全体で感じる。そうすることによってトキアの目の前に広がるのは―

 

―超低速の世界。

 

 戦闘に関係のない情報をすべて遮断し、ただただ集中する。

 トキアの目にはもはやアーサーやソラの姿は映っていなかった。

 <ターン・ジ・オーガ>は先ほどのように右腕を構え、力を溜める。

 トキアは猛スピードで敵に近づく。相手の攻撃をぎりぎりまで引き付け、放った刹那、トキアは忽然と姿を消した。

「…………斬る」

 後ろに回り込んでいたトキアはソードスキルを放つ。

「GRUAAAAAAAAA!!!」

すぐさま<ターン・ジ・オーガ>は体を回転させトキアに攻撃する。

 しかし、超低速の世界の住人のトキアにとっては無力。

 <ターン・ジ・オーガ>が腕を振り切ったころにはトキアの姿は無く、ソードスキルを発動していた。

 そうしたトキアによる一方的な戦闘を繰り広げていると<ターン・ジ・オーガ>のHPはついに三本目に達した。

 すると、<ターン・ジ・オーガ>の体は徐々に赤色に変わっていく。

 いつものトキアならばここで信号鬼かよ!とツッコんでいるところだが今は集中しているため鬼の変色をイメチェンぐらいとしか思っていない。

 しかし、トキアはこの鬼からただならぬ気配を感じていた。

 トキアはそれを払いのけるようにモンスターに向かって走っていく。

 杞憂だったのか相手の攻撃はさきほどと同じようにトキアには当たらない。

 <ターン・ジ・オーガ>は体をのけぞらせ、体全体に白い煙がまとわりつく。

 誰にでもわかる大技の予感。トキアはすぐさま近づきソードスキルを発動させる。

 

 しまった。

 

 トキアは直感した。自分の選択が間違ったことを。ソードスキルを解除したとしてもある一定の時間は動けない。だったらと思い、そのままソードスキルを放つ。

 トキアの剣先が<ターン・ジ・オーガ>の体に触れようとしたときさっきまでいた赤色の鬼の姿が煙となって消えた。

「……………チッ」

 トキアの予想通りソードスキルは不発に終わった。

 トキアを大きな影が覆いつくす。

「………上か…」

 モンスターが上にいることを悟ったトキアはとけかけているソードスキルの力を振り絞り、半回転。これで<ターン・ジ・オーガ>が視界に入る。

 <ターン・ジ・オーガ>はもうすでに拳を固め、攻撃の準備を済ませていた。

 トキアは力を振り絞り、振り下ろされる拳にタイミングを合わせ、体術スキル<閃打>で対抗する。

 確実に押し負けると思っていたトキアは極力ダメージを抑えながら、体を拳の外へ流していく。

 その作戦はうまくいきHPはイエローゾーンに突入する程度で済んでいた、が。

「~~~~~っ!」

 トキアの体に思わず悲鳴を上げてもおかしくない程の痛みが訪れる。

 トキアは倒れそうになる体をどうにか踏ん張り、武器を持ち構える。

 その様子を見ていたソラが疑問に思ったのか一人つぶやく。

「どうして…トキアはあんなに痛そうにするんだ…?」

 トキアはこんなところで痛いフリなどをする人ではないことをソラは理解している。しかし、<ソードアート・オンライン>には<ペイン・アブソーバ>というものがあり痛みをほとんど感じない。

 だが、トキアは本物の痛みを感じているように顔をしかめている。

「極限集中による痛覚倍増か……」

「へ?」

 アーサーの突然のつぶやきに首をかしげるソラ。

 アーサーは隣にいるソラに軽く視線を合わせ、すぐさまトキアの方を向く。

「トキアはおそらく今までにないほどに集中している。あの様子だと私たちの姿も見えていないな。闘うためだけに集中し、それに関係のないものは全て遮断する。トキアの目には世界が止まって見えるほど感覚が鋭くなっているだろう」

「それが痛みと何の関係が……まさか…」

 アーサーの言葉によって一つの結論に達するソラ。アーサーはゆっくりと言葉を発していく。

「感覚が鋭くなっているということはつまり痛覚も鋭くなっているということ。ペイン・アブソーバがあってもあれほどの痛みとは…よほど集中していたのだな」

「だ…だったら、早くトキアをサポートしないと!」

 のんきなことを言うアーサーに向かって思わず声を上げる。もちろんソラのこの声もトキアには聞こえていない。

「まだだ…まだあいつの集中が切れていない」

 ソラは絶句した。そもそも黄色の鬼が赤色に変色していた時点でソラたちは回復していた。その時に助太刀をするつもりだったがアーサーに止められたのだ。

 理由は先ほどと同じ『まだあいつの集中が切れていない』だ。

「まだそんなことを言って!トキアの痛覚は現実(リアル)と同じなんだよ!?さっきは軽いダメージだったから良かったけど…次大きいのが当たったら!」

「少し落ち着け、ソラ。お前は現状判断もできない奴ではないだろう」

 感情が高ぶっているソラをアーサーはなだめる。

「あいつは今闘いに関係のないものは見えていない。別の敵が混じってきたら判断するかもしれないが私たちは少なくともあいつの敵ではない。私たちが戦闘に参戦してもあいつの視界には映らないだろうし、邪魔になるだけだ」

「……………」

「それに安心しろ。そろそろあいつが切れる頃だ」

「?」

 

 

 

 

 

 

 トキアは残り少ない相手の三本目のHPバーを見ながらあることを感じた。

 体が重い…。

 別に集中が切れているというわけではない。先ほどと同様に相手の動きを予測できている。次どうすればいいのかすぐに頭に浮かぶ。

 しかし、一歩一歩進むたびに足が重くなっているのを感じる。

「………斬る!」

 トキアは後ろから迫ってくる得体のしれないものから逃げるようにソードスキルを放つ。

 その一撃で<ターン・ジ・オーガ>の三本目のHPバーがなくなり、残り一本となる。

「!」

 しかし、トキアは足の力を失い、地面にへたり込んでしまう。どうやっても力が入らない。相手の攻撃かと思ったが自分のHPバーにはなんのアイコンもついていなかった。

「GRUAAAAAAAA!!」

トキアがこうしている間にも<ターン・ジ・オーガ>は赤色から黒色へ変色していく。

「なんでだよ!」

 この時にはもうすでにトキアの集中は解けていた。

「GRUUUUUU……」

 ドスンドスンと近づいてくる足音。その方向に目を向けると体は黒く、目は充血したように赤い目をした鬼がいた。

 今までの怒りを溜めるに拳に黒色のオーラをまとわせる。

 その拳を少しでもくらったならばトキアのHPはたちまち吹き飛ぶだろう。

 <ターン・ジ・オーガ>は目を光らせ黒色に包まれたパンチを繰り出す。

 万事休すか…とトキアが思った時―

「なっ!」

 自分に当たるはずのパンチの軌道がずれ、外れる。

 自分の目の前に現れる二つの後ろ姿。

「なんで、ここまで待ったのさ…。アーサー」

 一人は金髪の少年。

「その方がかっこいいだろ?」

 もう一人は前から見ても仮面で顔が見えない赤色の剣士。

「なんだよ…。治ってたのかよ…」

 その二人はトキアの心強いパーティーメンバーだ。

「ごめんね、トキア。遅くなっちゃって」

「何も考えずに行動するからこうなるのだ」

 二人別々の言葉がかかってくる。

「ここからは私に任せろ。少年」

「だってさ。アーサー、何言っても聞かないんだから…」

 まるで目の前に敵がいないように話す二人をみて、トキアは何故か安心していた。

「あぁ、じゃあよろしく頼むぜ」

 

 

 

 




終わらなかったですネ…
次でクエスト回ラストですね!
お気に入り登録よろしくお願いします!
そして、熊本の早めの復旧を願います!
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