これからは週一これくらいの文字数にしようかな…
第二十一話です。
ここは、アインクラッド第四層。
俺とソラは―
「「イーーーーーヤッホォォォウ!!!!」」
―大浴場に来ていた。
「トキア!久しぶりのお風呂だよ!」
「あぁ!少し感覚が現実と違うけどな!」
どうしてこんなところに来ているのかというとそれは三十分前に遡る。
「「お風呂?」」
怪しむトキアとソラの言葉にお髭のペイントがトレンドマークのアルゴが頷く。
「そうダ。トッキーもソーちゃんも疲れていると思ってナ」
「嘘言うな。なんか企んでいるだろう」
<鼠のアルゴ>と言えば<売れるものならなんでも売る>がモットーであることで有名だ。つまり、タダで何か教えてもらえるなんて無いに等しい。
「ひどいナ。オイラはそんなにトッキーに信用がないのカ?」
「お前が何も変なこと考えないなんてありえないからな」
「ニャハハ。ほめ言葉として受け取っておくヨ」
「で、本題は?」
「ある情報が本当かどうか確かめてほしいんダ」
「ふーん」
「その内容はある男性プレイヤーが二人の女性プレイヤーを引き連れているという情報ダ」
「は?」
もうちょっと怪しい情報なのかと思っていたため斜め上からきた内容にトキアは声を上げてしまう。
「それでだナ―」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「?」
「それがお風呂と何の関係がある」
アルゴはうつむき、すぐに何か思いついたように顔を上げる。
「うん。無いナ。全くない」
「な、なんだよ…それは…」
「まー、お風呂に関してはこの前のお礼だと思ってくレ。今回のことはついででイイ」
この前といっても結構前のことだと思うがトキアはアルゴがそこまで言うならと思い、絶景が見えるというお風呂の情報を受け取った。
それにソラとの修行でトキアは疲れていたので、アルゴの情報は願ってもいないことだった。
「ところであれからえーちゃんとは連絡を取っているのカ?」
「いや、全然全く」
「即答だナ」
「だって、あの後少し話してからすぐに分かれたからなぁ。フレンド交換すらしてないぞ」
あの後といったらもちろんあのクエストの後である。トキアはフレンド申請をしようと思ったのだが逃げられてしまった。
「マー、オイラの言ったお風呂に行って疲れでもとってこイ」
「あいあいさー」
「依頼のことも忘れずにナ」
「おーけー」
「面白いものが見られるかもナ」
最後の一言だけは疲れたトキアの耳に入っていなかった。
アルゴに教えてもらったお風呂場というのがとてつもなくめんどくさい場所にあり、トキアは「いつ、着くのか」「まだなのか」と愚痴をこぼしていた。
誰も通らないような所を通り、モンスターは少なかったが登山をしなくてはならず戦闘よりも神経を使うことになってしまっており、トキアの中には来なければよかったという後悔で溢れていた。
しかし、ようやくついたお風呂場はアルゴの言った通り絶景だった。先ほどまで愚痴をこぼしていたトキアも絶景に感動したのかその光景に見入ってしまっていた。
四層すべてとは言わないがある程度見渡すことができ、少し体を乗り出すとカルデラ湖を見ることができた。さらに、外特有のたまに起こる微風によりのぼせることもなく入浴することができる。
確かにゲームと現実では違いはある久しぶりの入浴であったソラとトキアにとってはそんなことは大して気にはならなかった。
「ところでさ、女性プレイヤーを二人連れている男性プレイヤーって誰なんだろうね」
「さ~な~、アルゴもついででいいって言ってたし後からでいいだろ~」
完全に風呂の気持ちよさに負けていたトキアの声は気の抜けたものとなっていた。
それでいいのかとソラは内心ツッコミつつ、トキアが言うならと思い自分も風呂の快楽に浸りだす。何気なくいつものように<索敵>スキルを発動させたソラは一つ違和感を覚える。
「トキア」
「なんだ~?」
「近くにプレイヤー反応。二つと…あと一つはなんだろう」
「なんだろうってわかんないのか」
ソラの<プレイヤー反応>という言葉に反応したトキアは我に返り、<索敵>スキルを発動させソラの言葉が正しいことを確認する。
「青色の点が二つ…もう一個は黄色?」
通常、<索敵>スキルを発動させ、ヒットしたプレイヤーは青色にウィンドウ上に現れる。
黄色で映った。という例は聞いたこともない。
ただ一つ可能性があるとしたら―
「オレンジプレイヤーかな?」
ソラの一言にトキアは何も言わず頷く。
オレンジプレイヤーというのがいたという情報はまだない。しかし、存在したというのだ。ベータテスト中にプレイヤーを攻撃した者が。
だから、ゲームと現実の命がリンクしているこの状況下で精神不安定による犯罪が起こってもおかしくない。
「プレイヤー反応がなくなった」
「あぁ」
おそらく向こうもこちらに気づき、すぐさま<隠蔽>スキルを発動させたのだろう。
「ソラ」
トキアは手ぶりでソラに指示を出し、ソラもそれに同意する。
「………行こう」
トキアは全神経を働かせ、マップに映らない違和感を探し出す。
そして、何気なく見た岩が他の岩よりゆらめいているように見えた。
「………誰だ」
ずっとそこを見続けていれば<隠蔽>ゲージが0パーセントになり、相手の姿が見える。もしも、とんちんかんな場所を見続けていたならば誰も現れず、後ろから攻撃されるだろう。
そんなことを考えていると徐々に黒いマントのようなものが出現し、そこにプレイヤーがくるまっていることが分かった。
「……なんだ。お前か、キリト」
「よ、よぉ。ひ、久しぶり」
しかし、そこにいたのは第一層のボス戦を共にしたキリトだった。
「あ、トキアの知り合い?」
トキアが集中を解いたのが分かったのかトキアの傍によるソラ。ソラはトキアがどこから攻撃されてもいいようにトキアの近くに隠れていた。
「あぁ、話しただろ?こいつがキリトだ」
「あのビーターていう二つ名持ちのキリトくんか」
ビーターという言葉に反応し、キリトは体をこうばらせる。
それを察したソラはすぐに訂正する。
「あー、ごめん。尊敬の意味を込めてビーターって呼んだだけだから」
「ん?」
トキアはキリトの隣のプレイヤーに声をかける。
「もしかして、アスナか」
「ひさしぶりね…トキアくん…」
なぜか顔は下を向いており、心なしか顔が赤い。
そんなアスナに目もくれず、もう一人の謎の女性に顔を向ける。
「で、アンタは?」
「私の名前はキズメルという。今はキリトとアスナと共に行動している」
色は黒く、耳がとんがっている。明らかにSAOプレイヤーではない。それよりも明らかなのはカーソルが黒いこと。恐らく高レベルなのだろう。
「NPCか」
「えぬ…ぴー…?」
「そ、そうなんだよ。クエストで一緒になって…<
NPCのデータにはない言葉があったのかクエスチョンマークを浮かべるキズメルをすぐさまキリトの助け舟が入る。
「そのクエスト…トキアがめんどくさいって言ってやめたやつじゃない?」
「ちげーよ。確か、どちらかを助けないといけない状況で嫌気がさしてやめたんだよ」
「そのあと、攻略二人でやってたら『こんなにアイテム取りやがって!』っておこられたんだっけ」
「いまだにあいつらのことは腹立たしく思うぜ」
急に身内話を始めた二人に困惑するキリトだったがとりあえずアスナが気にしていることを取り除くべく、二人の話に割り込むように声をかける。
「とりあえず、トキアは服を着てくれ!」
「ったくよぉ。服を着てないくらいで恥ずかしがるかフツー。どんだけカマトトぶれば気が済むんだよ」
「くらいじゃないわよ!くらいじゃ!」
「水着もパンツも変わらんだろう。それにキズメルとやらは全く気にしてない様子だったぞ」
「キズメルはその…仕方ないじゃない!私たちとの感性が違うんだから!」
「うわー、ここにNPCとプレイヤーを差別している人がいまーす」
「そういう意味じゃないわよ!そもそも敵かもしれない相手に裸で挑むなんて非常識よ!そんなんじゃいつ殺されてもおかしくないわよ!」
「だから、ソラに俺の防御を頼んだんだろうが。それに裸じゃねぇパン一だ」
「あんまり変わらないわよ!」
「はー?かーわーりーまーすー!だったらお前、グラビアアイドルは裸で撮ってるっていうのか?あ?」
「なに急に怒ってんのよ!というかそんな変態な話しないでくれる?けがれちゃうわ」
「何お前、純粋アピールしてるの!?そんなんで可愛く見えるなんて大間違いだヴァーカ!」
「別にあなたに可愛く見られなくていいですから!?」
「お、お前たち…そのへんで…」
「「キリト(くん)は黙ってろ(て)!」」
「はい…」
トキアが服を着ていなかったことで起こったトキアとアスナの口喧嘩はしびれを切らしたソラとキズメルの一言で静まり、とりあえず五人座って話すこととなった。
「僕の名前はソラって言います。トキアとは旅をして二週間ちょいかな?ビーターのキリトくんには会ってみたかったんだ。よろしく」
まず、自己紹介が基本だとソラが言い出したことによって軽い自己紹介が行われていた。
「私はアスナよ。よろしく」
「短いなぁ」
「黙ってて」
ソラとは違って必要最小限のことしか言わなかったアスナにトキアの茶々が入る。
アスナの名前を聞き、うんうんと考えていたソラが確かめるようにアスナに聞く。
「もしかして、超高速リニア―使いさん?」
「は?」
「あぁ、そうだぜ。これが超高速(笑)リニア―使いさんだよ」
「あの気絶するまで闘いまくった挙句、キリトくんに助けられたって噂の?」
「キリトくん?」
「おおおおお俺は、ななな何も言ってないぞ」
誰が情報を漏らしたのか追及するためにキリトを睨んだが、真っ向否定する。そしたら、もう残るは一人しかいない。
先ほどからにやにやしていた男。
声を一段と低くしてその男を睨みつける。
「トキアくん」
「安心しろよーソラにしか言ってないからさー」
そうことではないだろうとソラとキリトは内心思ったがこの二人の口喧嘩の仲介にも疲れてきたので流すことにし、自己紹介を進めることにした。
「さっき言ったけど俺の名前はキリトだ。君付けじゃなくて呼び捨てでいい。それでこちらがキズメル。黒エルフという種族だな」
「ソラと言ったか、よろしく」
二文字のためあまりイントネーションに違和感はなかったため訂正せずに握手をする。
「ところでさ…おーい!トキアそろそろ!」
さすがに話し込んでいる隣で喧嘩されても困るので喧嘩を止め、話に介入させる。
「なんで君たちはこんなところにいるの?」
おそらくアルゴの言っていた情報はキリトたちのことだろう。では、なぜ誰も寄り付かないようなこんな山へきたのか。なにか特別なクエストでもあるのか。ソラはそれを聞きたかったのだ。
「え、えっと…それは…その…」
なぜか言葉を濁すキリト。そんなにも重要なクエストなのかと警戒すると予想もしない人物から答えが発せられた。
「アスナが外にある風呂に行ってみたいと言い出してな。私が案内したのだ」
「ん?」
「ちょっと…キズメル!」
ということはもしかしてキリトも一緒に入るのか?と思ったソラだが隣のオーラがいつもと違うことを感じ、恐る恐る隣を見ると顔はいたって冷静な顔をしているが頭に怒りマークが浮かんでいるトキアの姿があった。
ここで押し黙るのも変なのでそれとなく話題を変えようとする。
「えーと、キリトは一緒に入るの?」
うん。全然変わってない。思わず思っていることが口に出てしまった。しかし言ってしまったことはしょうがない。そう思ったソラは答えが常識的なものであることを願い、身構える。
「そ、そんなわけないじゃないか!」
焦るようにキリトがすぐさま否定する。恐らくトキアの異変を感じ取ったのだろう。だが、これでトキアの怒りは静まったと思ったその時だった。
「何を言っている。この前
―水爆並の爆弾発言が投下されたのは
また、アンタか!とツッコむ暇もなく、隣からブチッと何かが切れた音がした。
「だ、だめだよ!トキア!暴力は!」
「…………」
すかさずトキアの暴走を止めようとするが動く様子はない。
「………そうなのか。じゃあ、ゆっくり三人で入ってくるがいい」
明日には槍が降ってくるかもしれない。こんな場面に遭遇したのにトキアは切れる様子は一つもない。先ほどのは空耳だったのかと思わせるほどだ。
「いや、だからだな…」
「………俺たち用事があるからそろそろ出るわ。またな、キズメル、キリト、アスナ」
なおも訂正しようとするキリトを無視し、立ち上がり歩いていくトキア。ソラは三人に会釈をし、トキアの後を追う。
「お、おう…」
「あぁ、また会える機会があったら」
「余計な事、漏らさないでね」
三人それぞれの返答をした後、歩いていくトキアの背中を見つめキリトがぽつりと呟く。
「なんか…嫌な予感しかしない」
前を歩いていたトキアに追いつき、横に並んだソラは話しかける。
「めずらしいね。トキアが何もしないなんて」
いつものノリだと『表へ出ろ!』くらいはいいそうなものだし、今回に関しては一人の男性が二人の女性とどんな理由であれ入浴したという事実がある。何も言わず攻撃してもおかしくない。
「……ソラ。……俺はいままで何の修行をしてきた?」
「えっと、集中して心をできるだけ乱さない修行…」
言いながらソラはあることに気づく。
「……その通りだ。……これも心を乱さず流すのが修行の一環だ」
ソラの心を読みとってか先に答えるトキア。ソラはトキアが少なくとも少しは精神的に成長していることに喜びを覚える。
「修行の成果が出てるってことだね!それはそうと、もうそろそろ集中を解いてもいいんじゃない?」
「それもそうだな」
ソラの一言でトキアは集中を解く。
「じゃー次はどこに行く?」
「そうだなぁ、とりあえず手あたり次第クエストもやっていくか」
「キリトの言ってたやつもね!」
「あー、<
「ところで、さっきからメニュー画面いじって何してるの?」
話している間トキアがメニュー画面を操作していることに気づく。
すると、トキアはメニュー画面を可視モードにしてソラに見せる。
そこにはアルゴ宛に今まで話していた内容(ほとんどはお風呂について)が書かれていた。
それを見て、ソラはため息をついた。
「やっぱり怒ってんじゃん」
その内容は最高極秘情報として保管され続け、誰も買うものはいなかったという。
もしかしたら、えーちゃんって誰だ!という人がいるかもしれないので…
えーちゃんとはアーサーのことです。
アーちゃんはすでにいたので他のにしようと思い、イニシャルのAをとってつけました。
候補として アーサー➡朝➡モーニング➡もーちゃんにしようかと思いましたがわかりにくいので…
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