英雄になりたいけどなれない少年の物語   作:木戸 真人

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 いつもと違うサブタイトル…
 次からこんな風にしようかな…
 第二十三話です。



助けと頼み

 あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。

 

 トキアはまだ出口を見つけていないのか。

 

 僕のHPはすでにレッドゾーンだし、もうとっくの昔にポーションは尽きている。

 

 なのに、次から次へとモンスターは出現する。

 

 考えたくない。考えたくないけど。

 

 もしも、もうすでに出口をトキアが見つけていたとして。

 

 トキアはもうこの場にはいなくて、僕を置いて逃げたのかもしれない。

 

 トキア。君が無事なら…いいんだ。

 

 でも―

 

 

 

 誰か、助けて。

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 その時、ソラの目の前のモンスターが次々に四散していく。

 砕け散ったポリゴンの中から見える姿は赤く燃えた長髪。木刀を振りかざし、自信で満ち溢れた闘い。

 それは、一度パーティーを組み、圧倒的力を見せつけた剣士。

「あー…サー…」

「助けに来たぞ。ソラ」

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 アルゴからの連絡?珍しいな。何かの依頼か?

『大変ダ!トッキーとソラがやばいらしイ!助けてやってくレ!場所は―』

 といったことが書いてあった。

 場所は<歪曲の洞窟>か。運よく近くだな。

 トキアとソラが危険な状態にあるらしい。

 まず、どうやってアルゴがこの情報を得たのか…

 アルゴがあいつらのクエストについていって逃げてきたとは考えにくい。

 文面に『らしい』って書いてあるしな。

 じゃあ、この情報を寄越したのはトキアだな。

 あそこの洞窟は迷子になりやすいからな、出口を探し出させるのは二人の中ならトキアだけだろう。

 ひとまず、急ぐか。

 

 

 アーサーは敏捷力をマックスにして走り続けると視界に<歪曲の洞窟>の入り口が見えてきた。

(やはり…な…)

 洞窟の入り口の前にはトキアがうつ伏せに倒れていた。

(連絡し終わった途端に集中の紐が切れて気絶…といったところだろう)

 アーサーはトキアを抱え、入り口のすぐそばの壁に横たわらせ、少しなりとも隠蔽ゲージが発生するように黒いローブを掛ける。

「よし…」

 神経をとがらせ、ソラの場所を探すアーサー。

()()に走って、一分と言ったところか…」

 考えるように下を向き、右手でメニュー画面を出現させる。

「片腕で十分だな」

 スキルボタンを押していくとアーサーの左腕が力を失ったように、だらんと下を向く。

「待ってろよ、ソラ」

 アーサーはソラに向かって()()()()走り出した。

 

 

 

 

 

 ソラの元にたどり着いたアーサーは一瞬のうちに全てのモンスターを片付けた。

「うーん、こんなものか」

「まだだよ!あいつら増殖してくるんだ!」

「それについては安心しろ」

「へ?」

 ソラはわけのわからないことを口走るアーサーに首をかしげる。

「片目を捧げたからな。あと数十分はもつだろう」

「うん?」

 結局、アーサーの言うことの意味が分からなかったソラだが忘れていた肝心なことに気が付く。

「そういえば、トキアは!?」

「あいつは外で寝てるよ」

「寝てっ…」

 思いがけない答えにひきつるソラだがアーサーが安心させるように言葉を紡ぐ。

「私を呼んだんだ、あいつは。フレンド申請もしていない奴をな」

 この言葉を聞き、なぜこの場所にアーサーがいるのか理解したソラ。

 しかし、それと同時にトキアを疑ってしまった自分への恥ずかしさが現れた。

「許してやってくれないか」

「へ?」

 心が恥で埋まっていく中、アーサーからかけられた言葉は予想外のものだったために素っ頓狂な声を上げてしまう。

「あいつは助けを呼ぶために全力を尽くした。それも連絡した後にぶっ倒れてしまうほどに」

「そんな…許すなんて…それよりも僕はトキアを疑って…」

「いや、それはしょうがない。なぜなら、トキアはどんな理由にしろ仲間を置いて逃げ出したのだからな。だから、表面上は許していないようにしてくれ」

「…つまり?」

「本当は許しているが怒っているように見せてくれということだ」

「うーん…」

 ソラはトキアに嘘をつくことへの罪悪感とただの好奇心に挟まれて唸りを上げる。

 考えがまとまり軽くうなずくと

「うん。わかった」

 アーサーの意見に同意した。

「よし、まずお前にはここに向かってもらう」

 ソラはアーサーから何かが書かれた紙を受け取る。

「ここって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は!こ、ここは?」

 目を覚ましたトキアは辺りを見回し、<歪曲の洞窟>の入り口付近だということを理解する。

 誰が掛けたのかわからないローブを横に追いやり、立ち上がる。

 疲れで飛んでいた記憶が少しずつ蘇ってくる。

「ソラ!ソラが…!」

 すぐさまメニュー画面を開き時間を確認する。トキアが出口を探し出して十分が経とうとしていた。

 それを見るや否や、洞窟に入ろうとするトキア。しかし、何者かに襟を引っ張られたせいでトキアの体は進まず、勢いよく走り出したために首がしまる形になってしまった。

「ゲホッ…ゲホッ…だ、誰だ…」

 何とか息を整えたトキアはグルンと襟をつかまれた方を振り向く。

 そこには見覚えのない顔があった。

「誰?」

「貴様という奴は…命の恩人を…」

 その声は以前聞いたことのある声だった。その声は前に聞いたよりも透き通っており、その顔は凛々しかった。

「アーサー…なのか?」

「あぁ、そうだ」

「…ってことはソラは!?」

「無事だ」

 無事、その言葉にトキアは安堵を覚えた。

 しかし、すぐにトキアの心の中は自己嫌悪で満たされ、自分を責めた。

 なぜ、自分一人の力でソラを救えなかったのか。

 なぜ、もう一度立ち上がりソラに加勢しなかったのか。

 その答えはたったひとつ。

 それは、自分が弱かったからだ。

「アーサー」

「なんだ」

「俺は弱い…友達を一人だけでも救えないほど弱い」

「あぁ」

「だから、俺に力をくれ」

「………」

「俺を弟子にしてください」

 

 

 




 うーん。トキアが全然活躍しない…
 主人公なのに…



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