英雄になりたいけどなれない少年の物語   作:木戸 真人

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 話が進まない…アリシゼーションまであるのに…
 お気に入り登録してくださった方、ありがとうございます。
 これを糧に頑張っていこうと思います。
 第二十四話です。




手掛かり

 日はもう暮れようとしており、プレイヤーたちは各々の寝床に帰ろうとしている中、トキアは一人ベンチに腰を掛けていた。

「振られたらしいナ」

 そこに近づき、話しかけるのは恐らくSAOの中で一番の情報屋だと言われている<売れるものなら何でも売る>がモットーでありお髭のマークがトレードマークのアルゴだ。

「振られてない」

 トキアは首をふり、アルゴの言葉を否定する。

「いーヤ、真っ向からお願いして断られたのだったらそれは確実に振られたナ!」

「おい!その言い方やめろ!てか、なんでお前がそんなこと知っているんだよ!」

「オイラの情報力をなめるなヨ」

 ふふんと胸を張るアルゴを見て、トキアはため息をつく。

 

 

 これから数時間あたり遡る…

 

 

 

 

「俺を弟子にしてください」

 トキアは自分の思いを伝えようと深々と頭をさげる。

「断る」

 しかし、その思いが届くことはなかった。

「…っ!とりあえずどうしてダメなのか聞かせてくれ」

 トキアは頭を下げたままアーサーに問いかける。

「…今のお前では私の修行に耐えることはできん。己を知らぬ者に私の弟子がつとまるか」

 アーサーはトキアの頭を上げさせ、目を見つめる。

「それでも…お前が本当に私の弟子になりたいのなら…」

 トキアは黙って、アーサーの次の言葉に耳を傾ける。

「NYCのアジトがある。それを見つけることができたならば考えてやってもいい」

「NYC?」

「じゃあな」

 次にトキアが瞬きした時にはもうすでにアーサーの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

「デ?もしかして、オイラへの依頼はNYCのアジトを探すことカ?」

「あぁ、一応俺が知っている中で良い情報屋の一人だからな」

 その言葉を聞くとアルゴは得意げな顔をする。

「それはうれしいことだナ。でもな…」

 だが、すぐに申し訳ないような顔に変わってしまった。

「オイラ、NYCのアジト知らないんダ」

「知らない?教えられないじゃなくて?」

「まー、少しはえーちゃんに口止めされているケド…ほとんど知らないことが多いナ…」

 その言葉を聞いてトキアは驚きを覚えた。なぜなら、アルゴほどの情報屋が知らないことがあったからだ。

「だけど、えーちゃんからヒントを聞いたゾ」

「ヒント?」

 アルゴはできるだけアーサーに似せてヒントの内容をトキアに伝える。

「『一人だけNYCと深く関わっているプレイヤーがいる』らしいゾ」

 声真似はあまりうまくはないが気持ちは伝わってきたのでトキアは何も言わず、流すことにした。

「一人だけ…か…」

 トキアはアルゴにお礼を言い、宿に戻ることにした。

 その翌日の朝早く。

「深く関わっている人と言えば俺はここしか知らないなぁ」

 トキアは<とみ屋>の入り口前に来ていた。

 <とみ屋>は基本的に朝の十時から営業を開始し、夜の十一時に閉まる。つまり、そこの店主と話せるのは朝しかないのだ。

 だが、もちろん入り口は鍵が掛かっており、入ることはできないし、もしも長いこと店主さんと話そうものならファンの人たちから二度と外に出られない程度のダメージを負ってもおかしくない。

 どのようにして店主と話そうかと思い、入り口付近をうろうろしていると入り口が開き、その隙間から顔が現れる。

 ストーカー扱いされ、牢獄行きを予感したトキアはどんな風に言い訳をしようと頭を働かせていると。

「あなたって、もしかしてサキちゃんが言ってた少年くん?」

「へ?」

 

 

 

 

「ごめんね、お茶しかないけど」

「あ、いえ、お構いなく」

 言われるがまま店内に連れてこられたトキアは適当に席に座らせられ、目の前にはお茶が置かれていた。

 開店前のため、この前行った時ほどの客は当然のことながらおらず、店内にはトキアととみ屋の店主のみだった。

「一応ここって和食料理店を目指しているからコーヒーはないのよー」

「いや、ここのお茶、おいしいんで好きです」

 トキアの言葉を聞いてか笑みを浮かべる店主。

 噂通りの美人の笑顔をまじかで見て、トキアは思わず顔をそらす。

「そ、それで俺のことをどうして知っているんですか?」

「え?だって昨日店に来たじゃない」

「そうじゃなくて…」

 キョトンとした顔で首をかしげる店主が可愛らしく思えたのだが雑念を捨て去るかのように首を振る。

「どうして俺がここに来るのがわかったのか…という…」

「あー、それはサキちゃんに聞いたからよーサキちゃんっていうのは<アーサー>のことねー」

「はぁ」

 質問の意味を理解したのか笑顔で語る店主に対してトキアは気圧され、気のない返事をしてしまう。

「それでねー、サキちゃんから伝えてくれってことだけどー」

「アーサーが何か言ったんですか!?」

 身を乗り出してしまい店主とトキアの顔が近くなってしまうのだが、店主は顔色一つ変えず終始笑顔。しかし、自分から仕掛けたトキアは自分の状況を理解し、顔を赤くして縮こまる。

「じゃあ、サキちゃんが言っていたことを言うよ?」

「は、はい!」

 トキアは一言一句逃さぬように耳に集中する。店主は先ほどとは異なりアーサーに似せたのか緩さが消えた声になっていた。

「『強さとは自分を知ることから始まる』だって」

「それだけですか?」

「うん」

 その言葉を聞き、トキアは目の前が白くなる感覚を覚えた。なぜなら、それはヒントと呼べるものとは程遠いものだったからだ。

「真実の滝に向かえってことじゃないかなー」

「へ?」

 うなだれるトキアに店主の声がかかる。

「あそこは滝なのに鏡みたいに見えるんだよーそこに行けばヒントがあるってことだと思うよー」

 確かに『自分を知ること』っていう言葉と重なる。そこに行けば手掛かりがあるかも。

 そう思ったトキアは店主にそこの滝の詳しい場所を聞き、頭を深く下げお礼を言い、<とみ屋>を飛び出した。

 店主の名前を聞くのを忘れたと思ったのはそれからして数分のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 トキアは<真実の滝>に向かいながらアーサーについて考えていた。

 おそらくアーサーはNYCのメンバーだろう。そうじゃないとアジトを見つけろなんて言いはしない。

 それにソラはどこなんだ?フレンドリストからは消えてはいないがマップに映らない。

 ダンジョンにでも入っているのか?

 様々な考えが交錯する中、思ったよりも早く滝らしきものが見えた。

「これが…真実の滝…」

 その滝は店主が言った通り鏡のようになっており、とてもきれいなものだった。

「手掛かりは…っと」

 トキアはすぐさま滝の中やその下の川、近くの草むらを探したが何も見つからなかった。

 そもそも、ある程度時間が経ったら消滅するんじゃね?

 と、また頭が真っ白になりそうな考えにたどり着いた時。

『久しぶりだなぁ。昨日振りか?』

 どこからか声がした。声のした方を向くとそれは自分が映った滝だった。

『おいおい、なんだぁその顔?』

 その声はトキアとそっくりな声であり、しかし自分がしゃべっていないことは自分で理解している。

『よぉ、アキト』

 その声を発しているのは馬鹿にするように肩頬を上げた、滝の中のトキアの姿だった。

 

 

 

 

 




 ホラーみたいになってしまった…
 ちなみにサキちゃんはアーサーのリアルネームのあだ名で名前は南 咲(みなみ さくら)と言います。
 個人個人の説明はもうちょっとしてから…
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