第五話です。
ついにやってきた。初めてのボスへの挑戦。自分のパーティーメンバーのうち一人はご機嫌斜め、一人はなぜか知らないがグロッキー状態だが気にしない。
「おい、トキア」
自分のパーティーメンバーの一人キリトが話しかけてきた。顔はげっそりしているが声は怒っているように思える。
「どうした?牛乳の漬物のような顔をして」
「やっぱり、あれはお前の仕業か。どうりで水に溺れる夢を見たわけだ」
牛乳漬けにされても水に溺れるような夢しか見ないとはすごいなコイツ。牛に追いかけられてもおかしくないような気がする。
「………」
フードの女は依然としてしゃべらない。昨日のことで怒っているのか。まさに昨日のことを口外したら腐った牛乳飲ませるぞと言わんばかりのオーラを発している。
とりあえず、この姫様の機嫌をとるのは後回しだ。まずは一層をクリアしないと。
俺たちの役割はボスの取り巻きを倒すこと。ある意味楽な仕事と言えるが物足りない。ま、こっちは三人パーティーだからしょうがないケド。
「みんな!俺から言えることは一つ!勝とうぜ!」
ディアベルの言葉で士気が上がる。そして、ボスの扉が開かれる。
俺はキリトとの連携を頭に入れながら小さな声で自分の志気を上げるための言葉を言う。
「さぁ、バトルのはじまりだ!」
「ウグルゥオオオオオオ――!」
<イルファング・ザ・コボルドロード>の雄たけび。それを戦闘開始の合図とするようにプレイヤーたちはボスへと向かっていく。
「はっ」
俺は<ルインコボルド・センチネル>の攻撃を防ぎながら急所と思われる場所に斬撃を打ち込んでいった。一人で。
「スイッチ!」
そんな掛け声をしながら<ルインコボルド・センチネル>に攻撃を加えていくキリトとアスナ。なんだよあいつら、さっきまで気まずそうにしてたのに息ピッタリじゃねぇか。
俺の出番ないし。あのときフラグ折っとくべきだった。GJとか言っちゃて、クソッ。
俺はリア充への恨みを<ルインコボルド・センチネル>へぶつけた。
<イルファング・ザ・コボルドロード>のヒットポイントが少なくなった。<イルファング・ザ・コボルドロード>は持っていた武器を捨て、腰に装備していたものを手にもつ。
(あれは斧か?)
見た目が斧じゃない感じがする。どちらかというと刀……
その瞬間、鼠の本の最後のページの<変更されている可能性がある>という言葉が鮮明に思い出された。
(まずいっ)
そう思った時にはもう遅い。叫ぶキリト、そして、切られたディアベルの姿があった。
キリトが駆け付けたが間に合わず、ディアベルはパリンッと音をたて、四散した。その姿はモンスターがやられる姿、アイテムの耐久値全損による消失とまったく同じだった。なんと、もろく、儚いものだろうか。人の命は。
指揮官がやられ、<クリア不可能>という言葉の空気がフィールド内を包みこんでいっていた中で諦めていない者が俺の他に二人いた。
キリトとアスナだ。目がまだ死んではいない。
「キリト!」
俺の呼びかけにキリトが振り向く。
「雑魚は俺が片付けておいてやる!さっさと英雄になってこい!」
キリトは俺の言葉に少し頭上に疑問符を浮かべながら、俺に親指を突き上げた拳を向けた。
俺は<ルインコボルド・センチネル>に体を向け、戦闘態勢をとる。
「さぁ、ゴミ掃除といこうか!」
NGシーン
ディアベル「俺から言えることは一つ」
「真実はいつも一つ!」
他のプレイヤー「「「は?」」」
理由;絶対、しらける。