第六話です。
俺が最後の<ルインコボルド・センチネル>を倒したとき、こことは別に何かが四散したサウンドエフェクトがした。
その音のした方を見るとさっきまでいた巨体のモンスターの姿はなかった。
キリトは立ち尽くし、ほかのプレイヤーは唖然とする者、へたり込む者。
(終わったのか?)
フィールドの色が変わり、ようやく終わったのだということを実感させる。
ほかの人も思考が追いついたのか、わっと歓声を上げる。
俺はキリトの元へと駆け寄る。
気が抜けたのか倒れこんだキリトに俺は手を差し出した。
「グッドキルだ。キリト」
「あぁ」
キリトは俺の手に捕まり立ち上がる。アスナやエギルもキリトに祝勝の言葉を捧げる。
これで、何もかも一件落着と思われた………が。
「なんでだよ!」
なんでだYO?
どこからか発せられた泣き叫ぶような声。その声のする方へ視線が集まる。
「なんでディアベルさんを見殺しにしたんだ!」
「見殺し?」
キリトのかすかな声。
「そうだろ!お前はあのボスの動きをわかっていた!それをディアベルさんに教えればよかったんだ!」
その発言を引き金にみんなが疑念を抱き始める。
「知ってる!コイツ、元ベータテスターだ!だから、全部知ってるんだ!それでもって、ほかの奴らに何も教えないんだ!」
これは……まずいな。
このままだとベータテスターに怒りの矛先が向き、攻略どころじゃなくなる。
最も最短解決ルートは切ること。恐怖で騒ぎを押さえつける。でも、これじゃあリスクが高すぎる。
さて、どうするのかね、キリトは。
トキアは昔からヒーローが好きだった。そんな人になりたいと思っていた。
子供のころの将来の夢は
ただ、ヒーローになるためには何者にも負けない、力、が必要だった。
そのためにトキアは空手、柔道、もろもろの武術を学んだ。親が自衛隊だけあって、学ぶことができたのだ。
ただ、一つ約束されたことがあった。それは<絶対他人には使ってはいけない>ということだ。
だから、親は武術の基本的なの攻撃と主に防御のことだけ教えた。
しかし、その時小学生だったトキアはそれだけでは満足できなかった。なぜなら、力が必要だったからだ。
だから、トキアは独学で学んだ、人の倒し方を―――。
ある時、トキアのクラスでいじめが発生した。というより、トキアがいじめの現場を目撃したのだ。
多人数対一人。いじめられていた者はランドセルを奪われ、袋叩きにされていた。
トキアは正義感を振りかざし、いじめを止めるべくその集団に立ち向かっていた。
武術を学んでいるトキアにとって、守り方も攻撃の仕方も知らない小学生など敵ではなかった。
しかし、トキアは初めて正義のために使う力に快感を覚えていた。
もっと試したい、もっと力を使いたいという衝動に駆られていた。
それによって起こった事態は衝撃だった。
武術を学んでいない者に技をかけると怪我が付きまとう。
そう、トキアは怪我をさせてしまったのだ。打撲などという生易しいものではなく骨折。
その事件のせいでいじめのことは闇に隠れてしまった。
トキアの暴力事件として処理された。
トキアを擁護する者はいなかった。いじめの被害者でさえも……
親はトキアの状況を理解していたが、何も言わなかった。
そんな中、トキアは気づいたのだ。何の正義感を振りかざしても状況はさして変わらないと。
だから、トキアはヒーローなんて夢を見るのをやめた。
自分の力は自分のために使う。自分に降りかかる火の粉を払いのけるために。そう心に誓い、ずっと過ごしてきた。
――次の瞬間までは。
「くははははっ」
どこからか聞こえる笑い声。これはキリトの声?
「元ベータテスターだって?そんな素人連中と一緒にしないでもらいたいな」
キリトはそれから話続ける。自分がほかのベータテスターより優れているということ。ほかの奴らよりも多い情報を持っているということ。
だが、そんなことトキアにとってはどうでもよかった。
本当にいたのだ。自己犠牲で他人を守ろうとする者が。自分が貫けなかったことを実行した者が。
トキアは直感した。キリトは英雄になる者だと。
こいつはこのゲームクリアの礎になる男だ。英雄になれない俺は何をすればいい?
その答えはたった一つ―――
「あいつのライバルになることだ」
NGシーン(パート2)
「なんでだよ!なんでディアベルさんを見殺しにしたんだ!」
キリト「あ、あーい、とぅいませーん!」
作者「はい、カット―!なんでキリトくん今ふざけたの?」
キリト「ちょっとやってみたくて……すみません」
トキア(わからなくもない)