英雄になりたいけどなれない少年の物語   作:木戸 真人

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なっっっっがかったー
疲れました。
第八話です。


VS,キリト

 <DUEL!!>

その言葉が現れた瞬間、俺は右足で思いっきり地面をけり、キリトに突っ込む。

俺はまだ、納刀状態。ぎりぎりまで何をするか読ませない!

 キリトはまだ動かない。

引き付けるつもりか?

 でも、俺のスイングスピードならあいつが反応する前に切れる―

 俺は剣を抜き、左下から右上への切り上げ。

 それをキリトはバックステップでかわす。

 でもこの距離なら<リーバー>が届く!

 振り上げた右手をそのまま右肩の位置へ。突っ込んだスピードをそのまま利用して<リーバー>を放つ。これなら!

 その刹那、キリトがかすかに笑った気がした。

 キリトはそのまま最小限の動きで横移動。

 ソードスキルを発動中は自由に体がきかない。このままだと右側から一撃が来る。

 くらったら一発K.O.だ。

 キリトが剣を振り下ろしてくる。

 俺は強引に右腕を操作し、ソードスキルを解く。

 暇をしている左手で腰に付けた鞘をつかみ、体をひねり俺の体とキリトの剣の間に入れる。

 さすがに剣と鞘じゃ剣が有利か、俺はキリトに吹っ飛ばされる。

 何とか空中で体制を立て直し、キリトと向かい合う。

(やっぱり強いな)

 しっかり考えて突っ込まないとやられるな。

 でも、さっきのキリトのおかげで少しわかった気がする。ソードスキルの使い方が。

 できるだけ相手の動きを限定して攻撃を打ち込む。

 ソードスキルは強いが諸刃の剣だ。まさしく必殺技、ここぞというときに使ってこそ意味がある。

 ここからが本番だ。

 

 

 

 

―side キリト―

 今のは少し危なかった。思いのほかトキアのスイングスピードが速い。

 トキアはさっきので闘いのコツをつかんだかもしれない。

 ここからは本腰入れないとな。

 と思っていたらトキアがさっきみたいに突っ込んできた。

 だったら、俺もぎりぎりまで引き付けて……

 (なっ)

 目の前に謎の物体。これは……鞘?

 鞘が当たってもダメージにはならない。でもこれでは状況判断ができない!

 (一度体制を―)

 地面を思いっきり蹴り、後方へ跳ぶ。

 これならトキアがとびかかってくる時間も考慮して状況判断ができる!

 

 

 

 

 しかし、このキリトの判断はトキアの予想通りだった。

 まぁ、別の方法であっても対応策はできていたのだが。

(かかった!)

 トキアは狙いすましたかのように発動していた<リーバー>を自分で投げた鞘へぶつけた。

 鞘にうまく当たったのかソードスキル補正の鞘はキリトめがけて一直線に飛んでいく。

 「くっ」

 キリトは反応できず顔面直撃。さらに幸運なことに当たり判定が適応したのかキリトのHPバーがほんの少し減少する。

 しかし、トキアに大切なのはここからだった。

 キリトが鞘の直撃を受けた反動がとけるころにはトキアのソードスキル後の硬直がとけ、その瞬間にトキアは再び地面を強く蹴る。

 キリトはトキアの発動させるであろうソードスキルに対抗するために自分もソードスキル<スラント>を発動させる。

(来たっ)

 トキアは待っていた。キリトの横方向のソードスキルを。

 さっきまでのは釣り、餌である。ある方向への注意を削ぐために、ここまで待った。

 トキアはできるだけスピードを落とさぬように上へ飛んだ。

 トキアは<リーバー>の体制を取り、ソードスキルを発動させる。

 今から反応して剣で守ってもソードスキル+重力の威力だ、大ダメージは免れない。

 一つ策があるとすればソードスキルを発動させることだがキリトのこの状況下であれば不可能だ。 

 ()()()()()

 キリトは状況を判断するや否や腕の動きだけ注意し、自分の重心を崩し、体を倒れこませた。

 キリトのソードスキルは地面に炸裂、その反動を利用して体を回転させ、体をトキアのいる上空へ向ける。

 キリトの剣はまだ光ったままだ。

(このやろうっ!)

 トキアの剣とキリトの剣がぶつかる。

 さすがに重力と地面にぶつけたことによる差のせいか今度はキリトが飛ばされることとなったが―

 (今の防ぐかよ、普通!)

 トキアの中では今の一撃で決まる予定だった。いや、一撃とは言わなくても致命傷を与えるはずだった。

 だが、結果は互角――

 キリトとトキアのヒットポイントはほぼ同じという風になった。

「おいおい、今のなんだよ。どこのサーカス団員だお前は」

「トキアだって、さっきまでの奇襲すべて餌だっただろう。とんだペテン師だよお前は」

「お褒めに預かり光栄だよ」

速すぎる。トキアは思った。

キリトの反応スピード、常人のそれではないと。

(あっちが並ではない反応スピードでくるなら、こっちは思ってもいないような奇襲とスピードで立ち向かうだけだ。)

トキアとキリトは再び剣を交える。

キリトはかわすだけではなく、自分の剣で相手の剣をはじく。

 

 

 

アスナから見て、この勝負はキリトに分があった。

それは的外れではなかった。それは能力の差ではなく武器の差。

片手直剣は曲刀より少しリーチがある。その差だ。

トキアはキリトよりも相手の懐に潜らないといけない。

だが、それはデメリットだけとは限らない。

トキアは半歩下がり、剣を右肩の位置へ。<リーバー>だ。

それを読んだキリトは同じく<スラント>の構えを取る。

ソードスキルはソードスキルでしかはじけない。

別にほかにも方法はあるがそれが一番効果的だ。

しかし、ソードスキルを放とうとするトキアの手には剣はなかった。

 

 

 

(どこだ!)

キリトは、それはトキアのミスではないと見抜いていた。

すると、トキアの目の前に落ちてくる曲刀。

トキアはそれをキリトに向かって蹴った。

リーチがないということは飛び道具として扱いやすいということ―

トキアは先ほど<リーバー>の構えを取る際に上に投げたのだ。

もしかしたら、自分の前に落ちてこないかもしれない。その賭けにトキアは勝ったのだ。

 (当たれ!)

 内心トキアは全力で叫ぶ。

 だが、そううまくはいかない。キリトはすぐに<スラント>の構えをやめ、紙一重でかわす。

 しかし、これもトキアの予想通り。当たるとは思っていないが願わくは、ということだ。

 そんなことより、トキアの本当の目的は()()()に持ち込むこと。

(肉弾戦なら勝機はある!)

 体制を崩したキリトから武器を奪うために敏捷力全開でキリトに近づき、武器を―

(あれっ?)

 トキアは肝心のことに気づく、キリトの武器がない。

「お前()同じことを考えていたんだな」

 ドスッとした音の後に体に訪れる、鈍い感覚。

「しまっ…」

 トキアは思った。これがキリトという男か。

 次の手を考え続け、自ら悪になるほどの強さを持った男か。

 トキアのHPは今の一撃でイエローゾーンに突入し、デュエルが終了する。

 

 

 

 キリトとトキアの初めての闘いはキリトの勝利で幕を閉じた。

 

 

 

 




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