エンチャンターがろーぷれわーるどを跋扈する   作:妄想狂い

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邂逅旭日騎士団

 グレイヴを手に入れてから二か月後、俺は王都ガライアを離れ旅に出ていた。

 

 

 理由は簡単、グレイヴ・グレイヴの固有能力であるサーヴァントアンデットの素材を探すためだ。

 

 

 この二か月間は今まで以上にクエストを受けてモンスターと戦っていたが、どれもこれもしもべにするには今一つというやつらが多かった。

 それでもなんとか二体はしもべにすることができたので、まあ、良かったといえば良かったのか。

 

 

 で、もうガライア周辺のモンスターでは満足できなくなり再び旅に出たという次第だ。

 

 

 とりあえずの行先はアライエン王国の首都、ララーンだ。目的は装備を整えることと、道中で良さ気なやつがいたらとりあえずサーヴァントしようという魂胆だ。

 

 

 というのも、強いモンスターと戦うにはそれなりの装備が必要になる。ガライアにはもう目新しい武器防具はないし、ならばいっそドワーフの国という、その道の専門の国に行ってみようというわけだな。

 まあ、RPG好きらしくいろんな剣やら鎧やらを見たいというのもあるわけだが。

 

 

 そして今、俺はララーンへの道のりの途中にあるメルクリッドの街の宿屋に一泊している。今はちょうど宿屋の酒場兼食堂で夕食を取っているのだが、その途中に変な集団が食堂に入って来た。

 

 

 人数で言えば十人ほどだろうか、巨乳で髪を両側で括り、ウィッチハットをかぶった女性を先頭にまるで修学旅行かなんかのノリで入ってきたのを見たとき、俺は目を疑った。

 

 

 先頭の女性のキャラクター名はリサポン。これを見ればわかる。こいつは日本人だ。エターナルの人間はどいつもこいつも西洋風の名前で、リサポンなんてふざけた名前は聞いたことがない。

 

 

 後ろの連中もキャラクター名が「ナツキ」「ノぺ()」など、明らかに日本人っぽい名前や変な名前が多い。

 

 

 声をかけるべきだろうか?しかし、先日(・・)の例もある。この世界についてなにかしら情報を掴んでいるのかもしれないが、俺はこの世界に永住することをもう決めてしまった。

 普通にこの世界で生活する分には今まで通りで問題ない。むしろ変な情報を与えられて混乱することを避けるべきかもしれない。

 

 

 結果、自分の中では「話しかけられたら対応をするがあっちが気づかないならそのまま放置」という結論を出した。

 メシも食い終わったしそのまま部屋に帰ろうとしたが、どうやらリサポンとやらに見つかってしまったらしい。声を掛けられた。

 

 

 

「えーっと、ジュン君?ねえ、君ってもしかして日本人だったりする?」

 

「ん、ああ。やっぱりアンタも日本人だったのか。連れの連中もそうなのか?」

 

「やっぱり!皆、やっぱりこの子日本人だったよ!ほらほら、あいさつあいさつ!」

 

 

 

 リサポンさんがそう言うと、連れの連中が全員こっちへ来た。それぞれ「ナツキよ、よろしく」だの「ライデンだ。よろしく頼む」などなどと挨拶され、連中のテーブルへと連れて行かれた。

 

 

 そして俺と向かい合う格好でリサポンが俺に向き合い、話し始めた。おあつらえ向きにこの宿は人が少なめで、しかもちょっと夕食には早目の時間だったので他の客は数えるほどしかいない。

 

 

 

「じゃあ改めて。私はリサポン。まあ、リサって呼んでね」

 

「よろしく。俺は見ての通りジュンだ。ところで、あんたらはどういう集団なんだ?」

 

「そうね……ところで君は八つの目をかたどったエンブレムを身に纏っている集団のことを知ってる?」

 

「んー……ああ!そういえばそんなやつと会ったことがあるな」

 

「ホント!?」

 

 

 

 俺のこの言葉を聞いてリサポン……もといリサさんが驚愕した。他の連中も同じように驚き、それぞれ何事か囁きあっている。

 

 

 

「ち、ちなみにどういういきさつで会ったの?」 

 

「俺はガルガンシア王国の王都ガライアからアライエン王国まで行く途中なんだが、ここに来る前に野宿していたら盗賊に襲撃されてね。

 

 当然返り討ちにしてやったんだが、そいつらが全員目をかたどったエンブレムを身に纏っていたんだ。なんだかリーダーっぽいやつが強かったけどな」

 

 

 

 そう、あれは俺が野宿していた時、いきなりやってきた集団に声を掛けられたのだ。今回みたいに「君ってもしかして日本人かい?」と。

 

 

 最初は俺も他にも日本人がいたのかと、安堵と懐かしさで歓迎したのだが、どうもあいつらは胡散臭かった。

 村の狩人から習った旅の手引きの中に、野宿している時声をかけてくる奴がどんなやつかを見極める目を持てと言われていたし、曲がりなりにもガライアで日々荒くれ者たちと接していた経験が生きて、こいつらなんか胡散臭いな、という結論に達して警戒した。

 

 

 案の定最終的にそいつらに襲われたのだが、ちゃんと返り討ちにしてやった。それに思わぬ拾い物もしたし、俺的にはそこまで不運な出来事でもなかったがな。

 

 

 

「その人たちとなにか話した?」

 

「いや。だけどそのリーダーっぽいやつが死に際に『猊下、申し訳ありません』とか言ってたな」

 

「そうなの……やっぱりあいつらに間違いないのね……」

 

「あいつらとは?」

 

「私たちをこのエターナルに召喚して、あまつさえこの世界を乗っ取ろうとしている集団よ」

 

 

 

 その言葉を聞いたとき、俺は「あ、やっぱり聞かなきゃ良かった」と思った。不安が的中して、俺が混乱しそうな出来事だと思ったからだ。

 

 

 というか、他の連中もなんかいきなり真剣なムードになったぞ。それってかなりやばいんじゃないか?

 

 

 

「あいつら……教団っていうんだけどね、教団は魔神ギャスパルクを復活させようと目論んでいるみたいなの。

 

 そのために、エターナルの各地に封印されている七柱の魔神を復活させようとしているわ。そのためには手段を択ばない。

 

 各地で資金を得るために強盗、商船の襲撃や放火、果ては殺人まで辞さないわ。しかも邪魔者や、教団の秘密を知ったりした人も殺してしまう、そういう連中なの」

 

「まさかとは思うが、そいつらは日本人で構成されている、ないしは、ほとんどが日本人なのか?それでいて結構規模も大きいとか?」

 

「そう!中核メンバーはもちろんのこと、少なくない日本人が在籍しているわ。数だけで言えばエターナル人の方が多いけどね。

 

 規模が大きいっていうのも正解よ。やつらは各国に潜入して、国の中枢に入り込んだりゴロツキに強盗とかのクエストを出したりしてちゃくちゃくと準備を進めているわ。

 

 でも、よくわかったわね?」

 

「キャラクターネームから察するに、あんたらも全員日本人だろ?で、その教団とやらと敵対している風な物言いだ。

 

 日本人はエターナルの人間に比べてレベルが高い。アンタ等みたいな高レベル集団が、たかだかエターナル人で構成されただけの組織にそこまで身構える必要性は本来ならないはずだ。

 自衛だってできるし、アジトを突き止めてそれなりの人数で襲撃すれば簡単に潰せるんだからな。

 

 なのにアンタ等はそいつらを警戒している。日本人なら、そんな教団なんて雑魚の集まりだ、なんて一蹴してもいいはずなのに。

 

 それらを踏まえると、教団は日本人の集団で、色々なところに拠点を持つ、それなりに規模も大きい集団だと思っただけだ」

 

 

 

 俺がそう言い終えると周りから、ほうっとため息が漏れた。どうやら感心してくれたらしい。目の前のリサさんも目を丸くして驚いている。

 それはいいが、こいつらの言っていることを鵜呑みにするのも危険だな。

 

 

 確かに襲ってきたやつらはどっかいっちゃってるような態度だったから関わりたくないが、いきなりそいつらが世界征服しようとしているなんてことを信じられるほど、俺は純粋ではない。

 

 

 それに、仮にその教団とやらが世界征服を企んでいるとして、こいつらが敵対しているとしても、こいつらもその魔神とやらを復活させようとしているわけではないとは言い切れない。

 教団とソリが合わないだけで、こいつらも魔神とやらを復活させて何かデカいことをしようとしているという可能性も否定できないからな。

 

 

 

「すごいっ!よく今の会話だけでそこまで考えつけたわね!」

 

「ホントだな。もし俺たちの仲間に入ってくれたら頼りになりそうだ」

 

 

 

 そういうのはライデンという、俺よりも年上そうな男性だった。顔は老けているが、声はそこまで年寄りのものじゃない。老け顔の大学生といったところか。

 

 

 

「そこまで褒められるものでもないだろ。たまたま思いついただけだ」

 

「ううん、そうでなくても教団の恐ろしさについて多少なりとも理解してくれるってことだけでありがたいわ。

 今までには、そんなやつらどうってことないって言って話もろくに聞いてくれない人もいたんだもの」

 

 

 

 はあー。とため息を漏らすのはナツキという女子高生だ。腰には銀色に光る剣を佩いている。カチューシャをつけてへそも出して、なんだか活発そうなやつだ。

 

 

 

「そういうこと。で、どう?私たちの仲間に入ってくれない?私たちも戦力が欲しいし、ジュン君みたいな子が来てくれれば心強いから」

 

 

 

 あ、やっぱそうきたか。でもさっき考えたように、今すぐ仲間に入るつもりはない。日本人同士のつながりというのはとても魅力的だがついさっき会ったばかりのやつの話をハイソウデスカと受け入れられるわけがないしな。

 

 

 

「悪いけど、今すぐには決められないな。ついさっき会ったばかりの人の話をそうそう鵜呑みにできないし、アンタらのこともよく知らない。

 

 失礼だけど、俺の中ではアンタらもその教団とやらとソリが合わないだけで、同じように魔神を復活させようとしているんじゃないかって推測もあるんだ。

 

 だからこの場で返事はできない。入るにしても、自分でその教団とやらのことを調べて、アンタらのことをよく知ってからじゃないとな」

 

「私たちは魔神を復活させようとなんてしてないわよ!」

 

 

 

 怒った口調で反論したのはさっきのナツキという女子高生だ。自分のやっていることに使命感を持っているタイプなんだろうか?だとしたら少し苦手だな。

 

 

 

「よしなさいナツキ。彼の言っていることももっともよ。私だって、いきなりそんなことを言われたら信じられないし相手のことを疑わしく思うわ」

 

「それはまあ……そうですけど……」

 

 

 

 リサさんにたしなめられて大人しく引っ込んだ。このリサさんは結構ちゃんとリーダーをやっているっぽいな。

 

 

 

「ごめんねジュン君。あの子、正義感がかなり強いタイプだから」

 

「構わない。それと、返事自体はさっき言った通りだ。俺の方でもこのことについては調べてみて、信用できると思ったらそちらに連絡を取りたいんだけどどうすればいい?」

 

「そうねえ……私たちは連絡のための手段も持ってるけど、言われてみれば確かに出会ったばかりのジュン君にその手段を教えるのはちょっと、って感じちゃうわね。

 

 じゃあ……半年後に返事を聞かせてくれない?その間にジュン君は私たちのことや教団のことについて調べる。私たちもできうる限りジュン君のことを調べる。それでどう?」

 

「分かった。で、どこで返事をすればいい?」

 

「折角だからアライエン王国の首都、ララーンで会わない?これからいくところなんでしょ?」

  

 

 なるほど。確かにそれならララーンに行きがてら調べられるし、ララーンに着いたら着いたで大きな都市だから情報もよく入ってくるだろう。

 

 

 それにどのみちララーンでは武器なんかを揃えがてら金を稼ごうと思っていたところだ。グレイヴの死体集めもできるだろうし、いいか。

 

 

「了解。じゃあ半年後に返事をさせてもらおう。

 

 それと、半年後までにリサさんたちの話に確信が持てて、教団と接触する機会があったらやつらの妨害なりなんなりをすることを約束しておく」

 

「助かるわ。お願いね。でも、ムリは絶対にしないようにして。あいつらはリーダーである『猊下』っていう存在にかなり心酔しているヤバイ人たちなんだから。

 

 関わったら最後、口封じのためにあの手この手で殺そうとしてくるのはまず間違いないわ」

 

「そうか、なら注意しておくとするさ。ところでリサさんたちの組織ってどんな名前だ?」

 

「そういえば言ってなかったわね。私たちは旭日騎士団よ」

 

 

 

 その場で俺は席を立ち、リサさんたちと分かれた。旭日騎士団の連中は結構好意的に接してくれたし、所属できるものなら所属したいものだ。

 

 

 

 次の日俺は再びララーンに向かって旅立った。

 

 

ちなみに、リサさんたちは俺がたどってきた方向と逆方向に行く予定らしかったので一緒に行動するということはなかった。 

 

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