エンチャンターがろーぷれわーるどを跋扈する   作:妄想狂い

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マリーさんからの危ないお仕事

 中に入ってみるとほとんど客などおらず、いるのはカウンターにいる店員だけだった。

 

 

 

「……おい坊主。ここはガキの来るところじゃねえ。宿なら他のところにいきな」

 

 

 

 当然のように入店拒否された。まあ年は十七だし、日本人の顔は幼く見えるらしいから坊主っていわれても仕方ないんだろうけどさ。

 

 

 

「つれないこと言うなよ。俺は魔女に会いに来たんだ」

 

「……ちゃんと杖は持ってんだろうな?」

 

「ああ。燃やし尽くすための油もな」

 

「……分かった。入んな」

 

 

 

 ようやく入れてもらえた。今の問答はいわゆる合言葉ってやつで、答えないと入れてもらえないのだ。「裏」に住む連中やらやましいところがある連中やら禁制の品も関わってくるからそういうところが慎重になってしまうのも仕方がない。

 

 

 二階に連れていかれ、奥の行き止まりで止まった。そして壁を何かしらして押すと、扉のように壁が開き階段が顔を出した。

 おお!隠し扉だ!こういうのってロマンがあるよな。

 ていうか二階からまた下に行くのか。まあ地下通路は大抵一階にあるっていうのが相場だし、盲点を突くっていう意味では悪くないのかもしれないな。

 

 

 そのまま地下に連れていかれた。連れていかれた先には多種多様な品々が置かれ、壁にはいくつもの扉がついていた。

 

 

 

「見ての通りそこら辺に売っているのが呪いの武器だ。品の下取りなら周りにある扉のどれかに入れ。担当のやつが応対するはずだ」

 

「サンキュー。これは少ないけど礼だ。魔女に仕える下僕に渡してくれ」

 

 

 

 そういって七百三十八Gを店員に渡す。実はこれも合言葉の一種で、ここでこの言葉を言い、この金額を渡さないと問答無用で袋叩きにされる。

 

 

 

「了解した。良い夢を」

 

「ああ。最高の夢を見るさ」

 

 

 

 最後の確認作業を終えると店員はさっさと上に帰ってしまった。俺は装備品を物色する。ざっと眺めていると、奥のカウンターにいるやつから声を掛けられた。

 

 

 

「よお、らっしゃい」

 

 

 

 声を掛けたのはダルモンというダークエルフだった。ダークエルフという種族の特徴に漏れることなく褐色の肌に赤い目、銀色の髪をしている。

 

 

 

「お前みたいな坊主がここに来るなんて珍しいな。今日はどうしたんだ?」

 

「ちょっと呪いの武器ってやつを見たくてね。普通の店じゃ揃わねえだろ?」

 

「違えねえ。あれらには規制されてたり禁止されてたりするもんが結構あるからな。だが……お前が使うのか?」

 

「もちろん。あ、もしかして実力が心配か?」

 

「ああ。お前が呪いの武器をつけたまま死んで騎士団の連中に知れれば面倒なことになるからな。どこから流れたんだってことになる。そしたら俺らが……」

 

「そうかい。ならその心配を取ってやるよ」

 

 

 

 俺はステータスウインドウを開いてダルモンに見せた。俺のステータスを見た途端、ダルモンの顔に驚愕の表情が張り付く。

 

 

 

「れ、レベル62だと!?しかもエンチャンター!?レベルが上がりにくいクラスじゃねえか!お、お前何もんだ!?」

 

「あまり大声出してくれるなよ。他の客に聞こえるだろ」

 

「これが落ち着いていられる……」

 

「黙れよ」

 

 

 

 うるさいので背負っているグレイヴに手をかけ、睨んで務めて低い声を出して黙らせる。ダルモンも俺のレベルを知っているので、すぐに黙った。

 

 

 

「そうそう、そうやって黙ってくれれば嬉しい」

 

「わ、悪かったよ……。実力は分かったからさっさとその得物から手を放してくれ……」

 

「はいはい。怖がりめ」

 

 

 

 ダルモンをあしらって品物の物色を続ける。なるほど、見るからにヤバ気なものがたくさんあるな。

 

 

 装備するとSTRが百上昇する代わりにHPがどんどん減っていくアミュレット。状態異常を百パーセント防止するかわりにステータスが全て一になる指輪。装備すると麻痺状態になるがAGIが二百上昇するアンクル。HPを一にして残りのHP分を全てMPに加算する羽根飾り……etc

 

 

 などなど使い勝手が悪すぎて誰も使わねーよという装備が満載だ。もっとも、ステータスが上昇するだけまだマシで、中にはただステータスを減少させるだけのものもある。

 さらに怖いことを言うと、一度装備すると二度と外せなくなるって装備も少なくないことだ。もし俺が知らない間に装備されたら死ねるな

 こんなもの一体誰が買うんだか。あ、俺か。

 

 

 

「今更だがこんなもの誰が買うんだ?」

 

「知らない間に憎いやつに装備させて、相手が身動き取れないうちに殺っちまうって使い方が主だな。どこにだって呪いの武器を使ってでも相手を殺してやりてえって思うやつはいるもんさ」

 

「そんなに上手くいくもんかね」

 

「だが現に売れてる。旨い具合にやるんだろうさ」

 

「ふーん。ま、一度でも装備したら外せないってのもあるからな。そういう意味では一度でも装備させればいいってわけか」

 

「そういうことだ」 

 

 

 

 そんな会話をしながら物色していくと、ある二つの品物を見つけた。一つは装備品で、もう一つはアイテムだった。

 

 

 

「孤独の首輪にゾンビタトゥねえ……」

 

「それを選ぶのか?ずいぶんと命知らずな」

 

 

 

 孤独の首輪は文字通り首輪型の装備品で、装備するとVITが二倍になる代わりにヒールなどの回復魔法を一切受け付けなくなってしまう装備だ。

 そしてゾンビタトゥはシールの形をしたアイテムで、これを貼られた者は自然治癒力が二倍になる代わりにヒールなどを受けたときにダメージを負うようになってしまうというアイテムだった。

 

 

 二つの効果を併せれば、あら不思議。ヒールなどの回復魔法を一切受け付けなくなる代わりにVITは二倍になり自然治癒力も二倍になる。

 ゾンビタトゥのデメリットを首輪のデメリットの効果で打ち消されてしまうという呪いの装備コンボだ。

 

 

 もしこれをサーヴァントアンデットでアンデットにした奴らに装備させることができれば、アンデット系モンスター共通の「ヒールによるダメージ」を無効化することができる。

 装備品やアイテムがアンデットに使えるということはもう実証済みなので問題はない。

 

 

 ダルモンが言った命知らずというのは、やはりヒールの恩恵を受けられないことだろう。

 いくらVITが二倍になったり自然治癒力が二倍になったとしてもHPが減らないわけじゃない。なにか突発的なことが起こった際に回復魔法を受けられないということはやはり不安材料以外の何物でもないからな。

 

 

 

「なに、これらを付けるのは俺じゃないさ。それにしてもこれは結構数があるな」

 

「そいつらは呪いの武器の中では比較的メジャーなドロップ品だからな。そいつを落とすモンスターは他のドロップも落とすんだが、そいつが高級な回復薬の材料になる。そいつを出そうとしているうちに出てくるのがその呪いの品だ。

 もっとも、その呪いの品が出るから騎士団以外ではそのモンスターを狩ることはできないんだがな」

 

「なるほど。とりあえずこいつらをそれぞれ八個ずつくれ」

 

「八個ずつか!?そんなに買ってどうすんだよ!?」

 

「いいだろ?こいつらは結構安めだしちゃんと金は足りてる。売ってくれ」

 

「まあいいが……一度にここまで大量に買ったやつはお前が初めてだぜ」

 

「光栄だね。先着一名様に選ばれるとは」

 

「そういう意味じゃないんだが……」

 

 

 

 それでもしっかりと売ってもらう。十六品も買うとさすがに金も心もとなくなり、今日はこれで帰るかと思った矢先に扉から出てきた女に声をかけられた。

 

 

 

「ねえアンタ。もしかして日本人かい?」

 

 

 

 声をかけてきたのは黒くて長い髪を腰まで伸ばし、目元に星形の刺青を入れたマリーという女だった。腰に剣を佩いていて露出度の高い服を着ている。

 

 

 

「そういうアンタも日本人か?」

 

「やっぱりそうかい。えっと……ジュン君か。この世界を楽しんでるかい?」

 

 

 

 この口ぶり……怪しいやつだな。正常な心を持っているなら、いきなりこの世界に飛ばされてきたはずの同郷の人間に対して「楽しんでいるか」なんて聞くはずもない。

 

 

 ……まさか教団ってやつらの仲間か!?もしかしたら会えるかもしれない、なんて冗談半分で思っていたら本当に会ったっていうのか!?

 ……ここはとにかく警戒心を上げて対応しておくか。アウトローな人間みたいな態度で接していけばいいだろう。

 

 

 

「ああ。裏の連中に関わりがあるこんな店に来るくらいにはこの世界を楽しんでるぜ。ていうか、もしかしてさっきの叫びを聞いたのか?」

 

「アイツったら驚くとすぐわめき散らすからねえ。ジュン君もあんな男になっちゃだめさ。もっと落ち着いた感じじゃないと女の子にモテないよ?」

 

 

 

 クスクスと片目をつぶりながら笑うマリー。どこかネコ科の動物を思わせる女だな。こんなところで会ってなきゃまだこの会話も楽しめたのだろうが……。

 

 

 

「女性からの忠告痛み入るぜ。で、要件は?同郷とはいえこんなところに出入りしているようなやつに声をかけたんだ。何かしら用があるんじゃないのか?」

 

「へえ、ずいぶんと頭がまわるじゃないか。そういう男は好きだよ。

 

 要件ね、確かにあるよ。ねえキミ、ちょっとお姉さんのクエストを受けてみないかい?」

 

「わー悪の道に誘われてるー。……っとまあバカやってないで。それは内容によるな。話を聞かせてくれるか?」

 

「いいよ。まあここじゃなんだから上に行こうかね。ここ、人様に褒められないようなクエストを発行してる酒場があるのさ。そこで話そうじゃないか」

 

 

 

 マリーに連れられて上の階の酒場へと向かう。俺は行きがてらこの場をどう乗り切るかを考えた。

 

 

 ちょうどいいし、よっぽどヤバイクエストだったら諦めるが、一応は受けてみるというスタンスで行こうと思う。

 仮にマリーが教団の人間だったとして、こんなところに来ているのだ。少なくとも信用のおけるやつじゃない。

 

 

 マリーが教団の連中であるかどうかを確認し、あわよくばギャスパルク云々の話も聞きだして、もしリサさんから聞いていた通りならばこいつらが聞いていた通りのやつらなのかが分かるだろう。

 そして旭日騎士団のことについて聞き出すことにも成功したとなれば、終了だ。最悪この女を殺してしまえばそれで片が付く。

 

 

 よしそうしよう、とこれからの方針を決め、俺はマリーと酒の席に着いた。

 

 

 

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