エンチャンターがろーぷれわーるどを跋扈する   作:妄想狂い

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交渉

「で、クエストってのは?」

 

 

 

 俺はマリーがおごりだといって頼んだ酒に口を付けた後に問うた。マリーも同じように酒に口を付け、こちらに向き直る。

 

 

 

「なに、日本人なら簡単な仕事さ。とある御屋敷にある宝石、それを盗んできてくれればいい」

 

「ふーん、価値のある物なのか?」

 

「そりゃあ教えられないさ。企業秘密ってやつさね」

 

 

 

 この時点で俺はマリーのことを完全にクロだと断定した。今更遅いと思うかもしれないが、それでもほんの少しだけ俺のように興味本位で来ていたやつという可能性もあったからな。

 

 

 

「ま、いいさ。こういうのはお互い詮索しないのがマナーだ」

 

「そうそう分かってるじゃないか。聞き分けのいい子は好きだよ」

 

 

 

 またクスクスと笑う。ぬかせ、今から探りいれてやるから覚悟しろ。

 

 

 

「ところで……マリー……さんはギャスパルクについてなにか知ってるか?」

 

「マリーでいいさ。でも、なんでそんなことを聞くんだい?」

 

 

 

 さっきまでの余裕の笑みをひっこめ、眼を鋭くしてこちらを睨む。おいおい、顔芸ができてないぜ?あのナツキとかいう奴みたいに感情が表に出やすいやつなのか?

 

 

 

「この世界のタイトルにもなってるんだ、気になりもするさ」

 

「なるほどねえ……悪いけど、あたしはそのことについては全く分からないよ。この世界を楽しむのに忙しくてね、そんなこと気にも留めてなかったから」

 

「そうか。なら、俺の調べたことを話そうかな」

 

「ほう、興味深いね。ぜひ聞かせておくれよ」

 

 

 

 ここまで来ると互いに腹の探り合いだ。マリーもさっきまでの鋭い表情をひっこめ、会った時の余裕の表情を取り戻しているから、両方とも表情はそこまで悪いものじゃない。

 だが、水面下では相手の正体を見極めようと一挙手一動を見逃さないようにしている。

 

 

 

「まずはギャスパルクの仲間というか、しもべについて。ギャスパルクには眷属とでも言うべき七匹の魔神が存在している。

 

 だけどギャスパルク自身はこの世界のどこかに封印されていて、その封印を解くには七匹の、これまた封印されている魔神を全員解き放つ必要がある」

 

「その話、本当なのかい?にわかには信じられないんだけどねえ?」

 

「正直言ってこれは俺も人づてに聞いた話だからな。でも、昔エルフが書いた歴史書を読む機会があった。その歴史書に載ってたんだよね、このことが」

 

 

 

 普通にウソだ。リサさんの言っていたことを聞き、ギャスパルクのことについて考えを重ねた結果出た結論を、長命種たるエルフという隠れ蓑に隠れながら言ったに過ぎない。

 

 

 あながち間違っているとは思っていない。教団はギャスパルクの復活のために魔人たちの封印を解こうとしているらしいが、ギャスパルクの復活の為なら最初からそっちの封印を解くために動けばいいのだ。

 なのにそれをしないということは、七匹の魔人たちが復活しないとギャスパルクも復活できないと見ていいだろう。

 

 

 

「へえ。よくそんなもの見せてもらえたねえ。エルフは排他的だってのにさ」

 

「どこの世界、どこの種族にでも心の弱いやつはいるってわけさ。

 

 どうしてもギャスパルクのことが気になった俺は、一番長く記録が残っていそうな種族のエルフをターゲットした。

 

 そして、エルフの中でも高位の家の娘に取り入って特別に見せてもらったってわけさ」

 

「悪い男だね。その娘も可哀想に」

 

 

 

 あまり可哀想とも思っていない表情で、マリーはクスクスと笑う。まあ、あっちもこんな話信じていないだろうしな。

 

 

 

「で、さらに驚いたことに、その封印を解こうとしているやつらがいる」

 

 

 

 この言葉を発すると、再びマリーの目つきが一瞬鋭くなった。そろそろか?

 

 

 

「そいつらは結構大きな組織で、各国の中枢に取り入ったり、強引な手口で資金を調達したりしているらしい」

 

「……………………」

 

「で、たまに無法者が集まる場所でクエストを出すんだ。~を盗ってこいとかの、な」

 

「もういい、もうわかったさね」

 

 

 

 もうマリーは笑みを一切消して、俺を睨む。その顔には警戒と、ネコを思わせる怒りの表情をしている。

 

 

 

「あたし達教団のことを知ってるね?で、なんだい?何が望みだい?」

 

「さすがにわかるか」

 

「そりゃあね。エルフに取り入っただの適当なことを並べているはすぐにわかった。アンタだってばれていることを前提に話してただろうに」

 

「違いない。で、望みといったな。俺の望みはアンタたち教団に入ることさ」

 

「ほう?」

 

 

 

 それを聞いて、若干ではあるがマリーの顔に興味の色が浮かぶ。まあ、わざわざこんな回りくどいことをしているのだ、気になるだろう。

 

 

 

「俺も世界を統べる側ってやつになってみたくてね。

 

 でも、ただ入れてくれと言ったのでは入ることができないだろうと思ってこうやって必死にご機嫌取りと自己アピールしてみることにしたのさ。俺はちょっとは頭も使えますよってね」

 

「そんな浅い考えで……」

 

「そう、浅い考えだ。だから、もう一つ手土産がある」

 

「手土産?」

 

「旭日騎士団のアジトと連絡手段」

 

 

 

 ガタッ!とこの言葉を聞いた途端マリーが動揺したのが分かった。すぐに疑わしい目で俺を見るが、同時に期待の色も見えた。

 

 

 まあ、そんなもの知らないんだけどな。

 

 

 

「どうしてアンタがそんな情報を?」

 

「ここにくるちょっと前、メルクリッドの街で旭日騎士団の連中にスカウトされたのさ。それを受けて、俺は旭日騎士団に入団した。

 

 けど、常識的に考えてみてくれ。何百年も前に封印されているっていう七匹の魔神とその主人だぜ?いくら相手が日本人の集まりだとしても勝てるかどうかはわからない。

 

 しかも封印されているんだ。封印っていうのは、相手があまりにも強大だったり、そもそも倒すことが不可能な敵に対して施すもんだぜ?

 

 過去のエターナル人もその魔神たちを倒そうと必死になったんだろうさ。それこそエターナル全土を巻き込んでな。

 

 でも、倒せなかった。殺しきることができずに、封印するしかなかったんだ。

 

 当時と今とではまず知名度や認識、危機意識の点から見ても完全に各国は遅れを取っている。そんななかに魔神やギャスパルクが登場してみろ、あっという間にエターナル中が魔神と、あんたら教団の手に落ちるじゃねえか。

 

 俺はまだ死にたくないんでね。生きるためにアンタらの側につきたい」

 

 

 

 言っていることはちょっと本心だったりする。この世界で生きていくと決めたのだから、当然生き残る努力はするべきだ。

 

 

 で、世界征服がされそうになっているなかで生き残るには二つ。

 一つは教団を倒して、今まで通りのエターナルを取り戻す。そしてもう一つは教団に協力して世界の覇権を握り、その世界で暮らすことだ。

 この世界で生きるという前提で考えるならばどっちみちどちらかの勢力につかなければならない。だから俺が今言った意見もあながちウソというわけではないのだ。

 

 

 まあ今のところは一応、教団を倒すという意識のもとで動いているが、状況によっては教団側につくことも辞さないつもりだ。

 

 

 マリーは俺の発言を受けて顔を下に向け、考えている。これが罠なのか、それとも本当なのかを測りかねているのだろう。

 

 

 教団にとって一番の脅威は日本人で構成された、反教団組織のみと言っても過言ではない。それが取り除ける可能性があるかもしれないのだ。

 そうすれば組織内でのマリーの地位や発言力も上がるだろう。そのことも勘定に入れてどうするのかを考えているに違いない。

 

 

 

「……あんたは新入りのはずだろ?そんなにすぐにアジトや連絡手段を教えてもらえるものなのかい?」

 

「旭日騎士団の構成員の大半は十代中ごろの子ども達さ。そういう警戒も薄目だし、何より善の立場に立っているっていう自覚みたいなのを持っているからな。仲間は疑わずってことなんだろう。

 

 それにちょうど俺が会った時にはアジトで定例会みたいなのを開くために集まっている最中だったらしくてな。ついでだからとそこに連れていかれたんだよ。

 他の騎士団のメンバーのやつに、俺をどこかでみたか、何をしていたか、なんてのを調べさせる目的もあったらしいぜ

 

 連絡手段だが、これだけはちゃんと最初から教えられた。新入りとはいえ情報の共有は大事だからな」

 

「へえ、そうかい。……確かに言われてみればってとこかね」

 

 

 

 そしてもう一度考え込んだ。それなりに筋も通っているし、頭から嘘だと決めつけることも現段階では難しい。

 それに教団側としては日本人はできるだけ手元に置いておきたいはずだ。ここで切り捨てて、旭日騎士団としてそのまま戦われてもやっかいなだけだしな。

 

 

 それと、これで旭日騎士団がいわゆる善の立場にいるだろうことも分かった。さっき善の立場に立っているっていう発言を否定しなかったしな。

 少なくとも旭日騎士団とははっきり対立していることだけは確かだ。

 

 

 ちなみにもし本当にアジトまで連れていかれるとなったらギリギリまでついて行って、マリーの口を塞ぐつもりだ。少なくともどこの国にアジトがあるのかくらいは掴んでやる。

 

 

 さて、どうでるか……。

 

 

 

 

 

 

「いいだろう。アンタの言うことを一応信用してやる。だが条件がある。さっきあたしが言ったクエスト、あれを成功させてきな。そしたらアンタを新たな入団者として受け入れてやろうじゃないさ」

 

 

「ちゃんとアンタらのリーダー、猊下だっけか?にも合わせてくれ。使われるだけ使われてそのままポイってのは避けたい。

 

 これほどの情報だ。アンタ等のリーダーの前で、そして大勢の幹部の前で言わせてもらう。

 

 そうすれば俺の覚えもよくなるだろうし、もし俺がウソをついていたら幹部全体に俺の顔と名前が知られるうえにその場で始末されてしまう。そんな危険なマネをするはずがないだろ?」

 

 

「……アンタが敵じゃないようにって祈りたくなったよ。なるほど、確かにそうだ。でも、もしあたしが会わせられるような立場じゃなかったら?」

 

 

「教団の資金源になる重要な任務であるクエスト事業を担当していて、入団者についてあれこれ決めることができる裁量を持ち、旭日騎士団という目の上のたんこぶについて個人の独断で判断できるやつが地位が低いとでも?」

 

 

「……ふー。降参だ。アンタの言う通り、私の地位はそこらへんの下っ端じゃないことは確かさ。分かった。このクエストが成功すればアンタを猊下の元まで連れて行ってやるよ」

 

 

 

 マリーは一本取られたという感じで俺の提案を受け入れた。

 

 

 なんとかここは乗り切ったか。あとはこれからどうするかな。旭日騎士団のために頑張るか、それとも……。

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