アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
アイオスさんとの戦いで勝利した俺は安堵しながらエクスシアを消す。
でも、アイオスさんのあの強さ......尋常ではなかった。
俺はアイオスさんがどんな魔法を使うのかは直前に聞いた。アイオスさんはこっちの魔法を分かっていなかった上に、防御を行っていただけ。しかし、結果はやっとのこと一歩後ろに下がらせた程度。本気で戦ったらと思うと......ゾッとする。いや、比喩ではなく瞬殺だろう。
俺も......もっと強くならないとな。
「負けてしまったか......なめた態度をとってすまなかったな」
戦い終わった後のアイオスさんが優しそうに謝罪してくる。さっきとのギャップがありすぎてなんだか少しおかしく感じた。
「いえ...あの、いくつか質問してもいいですか?」
「答えられる範囲なら、答えよう」
「なんで王女の護衛を止めてこの村に?こんなに強かったら護衛を解雇されたわけではないでしょう?」
「あー......彼女がこの村にいたから。だね。」
そういってフィルフィさんに顔を向けるアイオスさん......
「......顔がにやけてますけど?」
「ハッ!」
緩んだ頬を引き締め直すアイオスさん。さっきの威厳とか、もうないですよ。
「もうひとつは、なぜ貴方がユーノの指導をしてあげなかったのですか?アイオスさんなら、魔力の制御なんてすぐに教えられそうなのに」
「......自分の娘に、魔法を教えたくはなかったんだ。使い方を間違えれば人殺しの道具になるし、なにより自分の親がそんなことをしてると思われたくなかった。その結果このざまだけどね。今の環境に甘えていたよ」
「アイオスさん......」
「さて、他はあるかな?」
苦笑しながら答えるアイオスさんを見て、急に不安になった。だからこそこんな言葉が出たんだろう。
「あとは......どうやったら、貴方みたいになれますか?」
「それは、強くなりたいからかい?」
「はい。正直この戦いで、今のままでは.....ユーノを守れないと思いました。でも、俺は......」
「だいたい言いたいことは分かっているつもりだよ。君はもっと辛いことをしようとしているのだから」
「......」
返す言葉もない俺に、アイオスさんは考えるように手を顎にあて、
「二つアドバイスをしよう。君の戦いかたは見たけど、欠如しているのは魔力の練りの甘さと、単純な魔力量だ」
「!」
「筋肉の原理のように、魔力を圧縮して練る練習をすることで、より魔力が増え強くなることは分かっているだろう?君の魔力はもっと強くなり、量も増やせるだろう。だから毎日魔力を使うべきだ。それだけでやれることが格段に増すだろう。制御もうまくなるから剣を使う間の強化魔法もさらに使いこなせるようになるだろうし、利点は大きいと思う」
「......ありがとうございます!」
的確なアドバイスに頭を下げる。確かに『image・replica』も、基礎的なことをやればできることは広がるだろう。まぁ、純粋に魔力不足ってのも悲しいけどな......
「あともうひとつ。気持ちを強くもて。絶対に諦めない心を持て。君の魔法を使う上で、そしてユーノを守る上で...いや、人間の心で一番大切なことだ」
「ッ!!」
「頼むよ?」
「ありがとうございます。本当に。.......俺は強くなります。人を、ユーノを守れるくらい強く」
「頑張れ。あ、あとさっきのはただのおっさんの助言だからな」
ほがらかに笑顔を向けるアイオスさんにつられて俺も笑う。
「次会う時までに成長してれば、本気で勝負してみたいな」
「そんなすぐには強くなりませんよ」
「なれるさ。絶対にな」
「はぁ...」
「......娘を、頼むな」
「......はい!」
アイオスさんは認めてくれた。俺も新たな目標ができた。
絶対にやってみせる。
決意を新たにしたその時、
「キャー!!!」
事件は起こった。
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「キャー!!!」
「リーゼ!?」
遠くから聞こえた悲鳴にバルトさんが反応する。本当に今ので自分の娘かどうかわかるんだ......
「また熊か?」
「最近は冬眠に備えている時期だからな......栄養が欲しいのかもしれないな」
「まだ冬眠しないんですか?」
「時期的には微妙だよね...ここら辺は他より少し暖かいってのもあるけど」
冷静に解説するカムイ君とお父さんの声も聞こえなかったようで
「リーーーーーゼーーーーー!!」
「待ってください!」
私たちは走り出すバルトさんについていった。
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バルトさんを追うと、その先は森の中だった。
「このあたりか?」
「手分けして探そう」
「そうしましょう。早く見つけないと」
「リーゼー!!」
...リーゼを探すこと五分。カムイ君と一緒に行動する私は、なかなか見つけることはできなかった。
「もう食べられてるってのは......」
「そんなことないだろ。こんなところで後ろ向きの考え方するな。早く探すんだよ」
「うん......」
泣きそうな目を拭ってリーゼを探す......リーゼ、死んでないよね?
だが、あっさりと、
「このっ!このっ!あっちいけ!!」
「いたぞ!」
彼女を見つけることができた。
しかし、見た先にいたのは、ボロボロで血も流しているリーゼと、彼女と対峙している『ブラッディ・ベア』二匹。リーゼは魔力が切れているのか、もう抵抗らしいことができなかった。
「助けなきゃ!」
慌てて腰につけていた短剣を抜くも、熊はその爪をリーゼに降り下ろす。
固有魔法が詠唱なしなら、妨害できただろう。
強化魔法がもっと強かったら、素早く移動して割って入れただろう。
...詠唱なしの普通魔法が使えれば、助けられただろう。
その全てができない私は...無情にも、ただ見ていることしかできなかった。
あぁ......もうだめだ!
私は友達が傷つく恐怖から目を反らした。
「さっき言われたばっかりだしな」
彼女の声を聞くまでは。
「え?」
「これは...」
恐る恐る目を開けると、さっきお父さんと戦ったときに出てきた鉄板みたいな、氷の壁がリーゼと熊の間に入っており、爪が刺さっていた。守られたリーゼも口を半開きにしている。
「諦めない。絶対に」
「カムイ君......」
カムイ君が氷魔法を使った結果だった。
「俺は人を守れる力が欲しい。もっともっと強い力だ...ユーノも協力してくれるか?」
「...うん!」
「じゃあまずは、あいつらをやるぞ!」
「うん!!」
手に持ったままの短剣を握りしめ、カムイ君は黄金の剣...エクスシアを作り出す。そして、リーゼを助けるため私たちは駆け出した。