アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
村を出てから数日。今日も、私たちは次の村へ移動している最中だった。
日が暮れそうになり、辺りはうっすらと赤色に染まる。
「じゃあ、今日はこの辺にするか」
「はーい!」
「元気だな...」
「お腹すいたから」
「いつもと変わらないぞ?」
「じゃあいつもよりお腹すいた!」
「はいはい...じゃあ炎だけつけるから後頼む」
「はい!」
アハト君の指示で歩くのを止め、私はテントと夕御飯を作りだす。その間、アハト君は自分の鍛練をしている。これは、朝の私の鍛練の時にアハト君に見てもらっているから。人のを見ながら自分のことをやるとどっちも片手間になってしまうかららしい。お陰で私はきちんと教えてもらえるので、こうしてお礼として夕飯を作っているのですが。
でも、今日アハト君は特訓せずに腰につけているポーチから棒状の何かを出すと、カリカリと食べ出した。
「アハト君特訓しないの?」
「今日はわりと坂道が多かったかし、お前がいつもより早くおきたぶん眠いんだよ。糖分摂取したいんだ」
「でも、夕飯前にダメです!」
「あっ!ユーノ!」
アハト君の手から棒の入った袋ごと取り上げる。てゆうか、ポーチの中にあったのによく折れなかったね......
よく触ってみると、棒はクッキーみたいなものでできていた。折れそうになるのを注意しながら掴み続ける。
「これで糖分とれるの?」
「中にチョコが入ってるんだよ。一本食べてみな?」
疑わしかったが、言われた通り一口食べてみる。口のなかには甘い香りが広かった。
「うーん...はむっ......!おいしい!」
「だろ?」
「うん。...あ、食べちゃった......」
「これでお前も一緒だな。さ、残りを返そうか?」
「だ、だめだよ!夕飯食べてから!」
「食べたやつに言われたくないぜ......それに、それは集中力の特訓にもなるんだぞ?」
「え?これが?」
「二人で端と端をくわえて、折らないよう注意しながら最後まで食べ進める......ってやつだったと思う。すぐ近くで見れないから感覚が研ぎ澄まされるとか言ってた。だから返せ」
「それ一人じゃできないじゃん!」
「騙されなかったか...」
「私そこまでバカじゃないよ。でも...せっかくだしやろうよ!それなら簡単そうだし私も集中力つければ基本魔法も上手くできるようになるし」
「一本じゃ意味ないとおもうけどな......まぁ、お前が言うならそれでいいけど」
「?」
「いい早くくわえろよ」
いつの間にか袋ごと私から奪っていたアハト君は、棒を一本取り出すと口にくわえてその先を私に向けてきた。
「ほは、ふーほも(ほら、ユーノも)」
「う、うん...」
せかされた私は反対の端をくわえる...
(顔ちっか......///)
くわえてから気づいた。これダメだ。きっと顔は真っ赤になっているだろう。
だってアハト君の顔近いし、というかアハト君の顔も真っ赤だし、なんかいい臭いするしでさっきまでおいしかったこのお菓子の味なんてもう分からなくなっているし......
「しゃあ、いくしょ(じゃあ、いくぞ)」
「ふぁ......///」
アハト君の顔が寄ってくる。え、でもダメだよこれこのままいったら......でも、アハト君ならいいかもしれないけど......あれ?
考えてるうちに、どんどん減っていく私たちの隙間。
(えぇい!ままよ!)
私は覚悟を決めて目を閉じる。来て...
しかし。
ポキッ。
「あ......」
棒は見事に手前で折れてしまった。出来なかったな......ってなんで落ち込んでるの!キスされてないからいいじゃない!それにこういうのはムードが大切で......べ、別にムードが良ければしたいわけじゃ!!
私が一人でわたわたしていると、
「いやー折れちゃったかーうまくいかないなー」
「......アハト君?」
若干棒読みっぽく喋りながら、後ろを向いているアハト君。顔は見えないが、その耳は赤々としていた。
もしかして......
「アハト君......」
「なんだよ!?」
「もう一本、しよ?」
「しないから!!はっ!」
顔をこちらに向けてツッコミをいれたアハト君の顔はりんごみたいに真っ赤だった。
「あははははははっ!」
「ユーーノーー!!」
その顔がかわいくて大爆笑する私に、アハト君の怒号が響き渡った
次回から二章に入ります!気長に待って下さい!(そう遅くはならないはずですから...)