アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
目が覚めて窓の外を見ると、朝日はもう出ていました。
昨日の夜、ティナちゃんとお風呂に入ってから魔力の特訓を少しして寝たので...少しって言うとアハト君に怒られそうだけど。
それにしても、少し日が高過ぎるような...
部屋から出て、階段を下りてリビングへ。
「おはようございま~す」
「じゃあ、行ってきます!!嘘!ユーノちゃんに行かせて!」
「いってら。はよ行け。そしておそようだぞねぼすけ」
リビングには(服は皆着替えていました)手を振るアハト君、怒っているような顔をしたノクスさん、ひきつった顔をしたティナちゃんとダンさんがいて、わけがわからないことになっていました。
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私はアハト君の説明を受け...
「えーと、つまりティナちゃんと一緒に遊ぶ人、ダンさんと一緒に情報を聞きに行く人、ここで資料をもっと読む人に分けたいけど、私が寝てたからティナちゃんと遊ぶのを私に任せることにしてダンさんとアカーディアさん「ノクスって呼んでいいよ!」...ノクスさんで無理やり行かせようとしたけど私が起きたことで振り出しに戻った.....ってこと?」
「そういうこと」
「ユーノちゃんからもこいつに言ってやってよ!自分が本読んで動きたくないだけのひどいやつだって」
「考えた結果なんだけどな...」
「...カムイ君が考えたのなら良いものかも知れないけど、無理やりはよくないと思うよ」
「そうだそうだ!」
「悪かったよ。すまないな」
「これは土下座か『遺産』の提供ですね!」
「その前にティナと遊んでやれよ。そっちの方がいいんだろ?」
「もちろん!本読んでても寝ちゃうし!それじゃあティナちゃん行こうか?」
「は...はい」
リビングがら出て二階に上がっていく二人。それを見送ってからアハト君が息を吐いた。
「じゃあユーノ。ダンさんと頼むぞ」
「カムイ君がそれ読むの?」
「俺がこのメンバーの中で一番目を通している。この家の物置にあった本もさっきとってきたし、こういうのには慣れてるから。お前もしっかり情報集めしてきてくれ」
「うん。わかった」
「あと、パジャマ姿で外でるなよ?」
「わかってるもん!」
ダンさんから受け取った自分の服(ホントに一日で乾いてる...)に着替えて、私たちは情報集めのために外に出ました__________
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「で、何もなかったと」
「面目ありません...」
「ごめんね」
ユーノとダンさんが帰ってきたのは日がくれる少し前だった。新しい情報はゼロだったけど。
「いえ、最初から村長などもなにか知っているとはあまり思ってなかったので」
「じゃあなんで私たちを行かせたの!?」
「万が一を考えてに決まっているだろう」
「うっ...夕飯の支度します!」
そういってユーノはキッチンに逃げた。全く...
「そういえばティナとアカーディアさんは?」
「ケーキを買って来てから部屋に戻りましたよ」
「あぁ、ティナはケーキが好きだからね...」
__________最後の夕御飯、とか、思ってるのかな__________
その呟きは、周りを静かにさせるのに十分だった。
だから。
「大丈夫です!」
彼女のその声も、周りによく通るものだった。
「きっと明日竜を倒した後のパーティー用ですよ!」
誤魔化しにも聞こえたけど、
「それに、カムイ君だってノクスさんだって、一応私もいますし...」
他人任せにも聞こえたけど、
「いざとなったら逃げればいいですし!」
自分達のことしか考えてないように聞こえたけど、それでも。
「だから、大丈夫です!」
一生懸命さが。ユーノの思いが伝わるものだった。
こんなやつだから俺は。
「ユーノの言う通りです。お父さんが落ち込まないでください」
「...そうだね。二人ともありがとう。」
ユーノが仲間で良かったと思った。
「いえいえ。さて、夕飯は前夜祭として張り切っちゃいますよ!」
「俺も手伝うぞ。あの二人を驚かせてやろうぜ」
「うん!」
ユーノの隣に並んで腕捲りをする。いつの間にか日は沈んでいた。
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「じゃあ、おやすみ...」
「あぁ、すぐ行くからね」
「うん......」
あのあと夕御飯を作り、上の部屋で寝ていた二人を起こして皆で食事をしたあと(ちなみにケーキは食べなかった)ティナちゃんは寝るためにリビングから出た。
ダンさんは一応娘との最後になるかもしれないから一緒に寝てあげたいんだろうが、すぐには行けない。なぜなら、
「じゃあ、作戦会議だね」
「すぐ終わらせますから」
「ありがとう...本当にありがとう」
「泣かないでよ見苦しい」
「ま、まだ竜倒してませんから!嬉し涙はとっておきましょう?」
「......そうだね」
ダンさんはユーノとアカーディアに言われて顔を上げる。その顔に涙は残っていなかった。
「じゃあ、早速始めるけどその前に。」
「なに?」
「お前が持ってる『遺産』の中に、なにか使えるものないのか?」
「再生する竜に効きそうなやつなんてなにもないわよ。収縮瓶だって入らないだろうし。魔力増強ジュースはあるよ?あげないけど」
「ダメじゃねえか...だいたい、お前魔法使えないならそのジュース持ってる意味ないだろうに。じゃあ......俺たちがとれる作戦は一つだけだな」
「一体なにを?」
「簡単ですよ...ユーノに竜を燃やしてもらう。それだけです」
「「!!?」」
「ちょっ!カムイ君!?」
「そりゃそうだろ。大火力によって再生できないくらいダメージを与えればいい。ユーノの中で辛うじて安定してできそうなのは炎と氷。なら燃やせ。氷はダメな?復活するかもしれないから」
「いやいや!?竜を燃やせることってできるの!?」
「一か八かだな。でも、資料と情報を集めて、一番可能性が高いとしたらこれだ。ちなみに魔力増強のやつはいらないからな?いきなりそんなのいれたらどうなるか分からないし」
「ユーノちゃんは普通でそんな強いの打てるの!?」
「えーと......もしかしたら?」
「大丈夫じゃないよね。これ」
「......それでも、お願いします」
「ちょっといいの!?娘の命がかかってるんだよ?」
「今まで真剣に考えてくれた方々がそれしかないと言うのです。それなら、任せるしかありませんよ」
微笑みながらダンさんは任せると言ってくれた。なら、
「任されました。必ず倒します」
「頑張ります!」
「私は結局なにもしないのか...いざとなったらティナちゃんを逃がすくらいはやるよ」
「お願いします!」
全力でやるだけだ。
「ま、出来るかどうかはユーノ次第ですけどね」
「...あ」
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「ユーノ、よく寝ておけよ?」
「う、うん...」
「じゃあおやすみ」
「うん。おやすみなさい」
作戦会議(作戦と言えるのかはともかく)は終わり、ダンさんはティナちゃんの元に、俺達も自分の部屋に戻ってからしばらく経ったとき、俺は特訓しながら一冊の本をまた見ていた。
特訓のほうは、ここ三日辺りで安定感が出てきた気がする。実践で使えるのかは知らないが......
目の前にある本は、50冊近くあったなかで俺にとって有効なことが書いてあると思ったものだった。最後の確認に読むのにはふさわしいだろう。
さっさと確認して寝るか......と思った矢先。
コンコン。
「ん?」
ドアをノックする音がして、そのまま開いた。向こう側にいたのは_____
「今、いいかい?」
アカーディアだった。
「......いまさらだが、その腹とか肩とか露出しまくってる服寒くないのか?」
「うるさい!」
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「それで、なんか用か?」
「いや、チェスでもどうかな~って」
「...まぁいいぞ。やるか」
「うん。駒しかないけどいいよね?」
「盤なら用意できる」
「え?」
明日使うだろうし、バレてもいいか。そう思ってチェス盤をイメージ。すぐに完成させたものをベットに置く。
「座るのベットしかないけどいいだろ?」
「それより今のなに!?」
「俺の得意魔法だよ」
「へぇ...すごいねぇ......」
「俺からしたら何で駒だけ持ってるのか不思議なんだが」
「ちっちゃいから持ち運びに便利じゃん。盤は紙でも作れるし」
そういいながら駒を並べていく。彼女の昨日とかと少し違った態度を不思議に思いながら。
「先攻どうぞ」
「言っとくけど、俺は強いからな?」
「なめないでよね」
軽く会話しながらポーンを動かす。まぁ、今はぶっちゃけこの勝負どうでもいいんだけどな...
「それより、ただチェスしに来たわけじゃないんだろ?」
「...うん。さっきまでユーノちゃんと話してたんだけどさ。少し気になって...」
「なにが?」
「......君が」
駒を動かしながら会話が進む。アカーディアはこっちを見ずにチェスに集中しているように見えた。
「なんで最初、私を村の人たちの情報収集に行かせようとしたの?」
「なんでって...お前『遺産』集めなんてやってて交渉するの得意そうだったから情報集めやすいんじゃないかな~って。それだけ」
「!ちゃんと理由があるなら言ってくれればよかったのに」
「今のお前と違って頑固そうだったからな。てか今お前潮らしくなりすぎだろ。昨日とかと全然違うじゃん」
「そんなことはないし、そんなことはいいの。それより...君とユーノはついこの間会ったんでしょ?なのに凄く仲良く見えるから気になってね。何でなのかな~って」
「出会って少しハプニングがあっただけだ。今では守りたい良いパートナーだけどな」
「それだけじゃないんじゃない?」
「なに?」
「だって、あんたはたまにすごい目してるから。遠くを見てるような......」
駒を動かす手が止まる。まさか......
「いや、なんでもないさ」
「嘘つき。バレバレだよ?」
「......マジか。こんな奴に」
「こんな奴言うな。それで、今なら話し聞いてあげるけど?」
「上から目線だなおい」
「私の方が偉いから」
何故かどや顔のアカーディア...だから俺も、ポロッと話してしまった。
「......昔、一緒に遊んでいた奴に怪我をさせてな。そいつは足が折れた」
「......」
「そいつは大丈夫とか言ってたけど俺は自分を攻めて...それから守りたい人を守れるように強くなりたいと思って、魔法を覚えたんだ」
「...あっさり、というかあんまり深くない理由だったね」
「言ってろ。俺にとっては大事だったんだ」
あのときは俺もあいつも泣いていた。それから周りの人を泣かせない、助けれる人になりたいと思った。
思いは今も変わらない。そのために新魔と旧魔の戦争を止める手伝いもし始めたのだから。
「でも、ダメだな」
「え?」
「たぶん、ユーノとあいつが似てたから、重ねて見ていたんだと思う。でもそれはダメだろ。同じ人じゃないのに大切な人同士とはいえ違う人を一緒に考えるなんて。それに、ユーノはパートナーだ。いつもは見ていて危なっかしいけど、大切なことに気づかせてくれるやつだ。まだ少ししか一緒にいないけど、守りたいと思える大切な人だから。対等でいたいって言うと違うかもしれないけど......ダメだ。まとまらない」
自分の気持ちが分からなくなる。無意識に重ねていたんだろう、そんなことはするものじゃないのに。感情に任せてこういうことをすぐ言う辺りもダメなんだがな...
それでも、
「確かなのは、ユーノは大切な奴で、守れるくらい強くなるってだけだ」
「...そっか。いいね、そういう関係って」
「うらやましいか?」
「そうだね。少しね」
「俺で良ければお前となってやるよ。いや、こっちが下だからなってもらえませんか。かな?」
「ぅえ?」
初めてアカーディアが顔を上げ、目が合う。
「関係ってこうやってなるもんでもないと思うけどな。あ、なんなら朝困らせた時に約束した土下座でもしようか?」
少しふざけた風に言うと、アカーディアはいきなり肩を掴んできて、
「ちょっと待って!今までさんざんバカにされて怒ってないの!?」
「バカにされてたのか?まぁ最初の方無理して笑顔とか作ったりしてんのは分かってたけどな」
「!!?」
アカーディアはめっちゃ驚いた顔をしている。俺は思わず笑いそうになるのを堪えて話をすすめた。
「あ、もしかして分かってて声かけてくるから怪しまれてる?」
「やっぱり『遺産』目当てなの?それとも私自身!?」
「前半はともかく、後半は自惚れすぎだろ。はっきり言っとくが、だれも『遺産』目当てなんかじゃないさ。ましてやお前とか...」
「くぅぅ~!」
突然こいつはなにを言ってきたんだろうか?首をかしげていると、彼女はさらに顔を近づけてきて、
「私の目をよく見て!」
両手で首をしっかりと拘束され、顔が目の前までくる。
自身の赤い髪につられるようにできている少し黒くなっている赤目が見つめてきた。髪は触れあい、あと数ミリで顔がくっつく。さすがに近い...少し動揺した。
それから体感では何秒か、何分たったかはわからない。アカーディアは顔を離して、
「ほんとに、なってくれるの?」
「え?」
「...やっぱりやめておくよ。ほら、チェスも終わりだよ!」
よく見ると、盤面はアカーディアの優勢だった。
......ここから逆転も楽なんだけどなー...あ、そうだ。
「このままだと負けそうだなー」
我ながら棒読みだったと思うが、まぁいいだろ。
「だけど、新魔に伝わる奥義があってな...」
「?」
首をかしげる彼女を尻目に、俺は盤に手をかけ、
次の瞬間。
『flame・bomb!』
「あぁぁ!」
そのままひっくり返した。もちろんそんな奥義は旧魔にも新魔にも存在しない。
「何してくれんのさ!」
「だから、奥義だよ。今日はもう遅いし早く寝ろ。片付けばしとくからさ」
「なにがなんだか...もういいっ!」
アカーディアは怒った顔をかくそうともせず、足早に部屋を立ち去ろうとする。
「続きはまた今度な」
「!!......おやすみなさい!」
「あぁ。おやすみ」
頬を赤くしたアカーディアがドアを完全に閉める。荒立たしい足音もやがて消え...静寂が訪れた。
「さて、俺も早く片付けて寝ないとな...」
一人言を呟きながら手早く片付けを済ませ、ランプを消す。月明かりは俺の部屋のベッド部分だけ照らしていた。
竜が来るまで、あと一日。
一週間近くの放置申し訳ないです!
基本的に文字数少ないのですが、効率悪いので...(笑)
せめてもう少しはこのペースを保てるよう精進します!