アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
________ノ
見渡す先に何もない空間。一人だけの世界。
_____ノ
そこから産まれる黒い塊。これは、私?
----サイ---
お__ユー________
黒の塊は少しずつ大きくなる。その正体は分からないけど、触れると何かが壊れる...そんなモノ。そして、反対には白き光。
これは...なんなの?私は...
ユ__ノ__い_げんに__ろ___
----ツヨサヲ、ノゾンダ----
光は強くなる一方、それを上回る速度で黒が広がる。あと少しで、触れてしまう...
もう...
「ユーノ!!!」
「はっ!」
気がつくと、目の前にアハト君が。
今の、夢...?
鮮明に見えていた夢が色を失い、すぐに忘れてしまった。はりついた汗が気持ち悪い。なにより、今のは...
「目が覚めたな!?早く準備しろ!皆もう行っちまった!くそ!もうあれから何分たった!?」
アハト君はそう言って私の服を投げつけてくる。
「皆行ったって、どこに?」
「村の入り口だ!もう竜が来たんだよ!!」
......え?
私は受け取った服を持ったまま動けなかった。
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あわててダンさんの家を出て、村の入り口まで向かう。
そこの曲がり角を曲がれば...
「ッ!ユーノ!」
「ちょっ!」
アハト君にいきなり肩を掴まれ立ち止まる。
「アハト君!?なにを」
「いいからここから覗け!バレるなよ!」
そう言われて家の角から少しずつ頭をだし、村の入り口を覗く。すると_____
「ッ!!」
そこにいたのは竜。身体中紫色の鱗で覆われ、大きな翼を生やし、四本の足で地面を踏みしめている異形の化け物。
「ともかく、この小娘はもらっていくぞ」
声が大きいのか竜の声だけが鮮明に聞こえてくる。人間五人分くらいの高さの竜は、ティナちゃんを近くに引き寄せた。
「あれは!?」
「今魔法を打ったらティナちゃんまで犠牲になるぞ!落ち着け...!」
次の瞬間。
「__________!!!」
ノクスさんがなにかを叫んで竜の元に走り。
その鱗に右手をつき、そこから出た炎が竜の体を貫いた。反対側まで伸びる炎の渦。
「!!」
「あれは...!」
魔法を使った反動からか、ノクスさんはそこに尻餅をつく。
なんで人間のノクスさんが魔法が使えるかなんて分からない。ただ、それは相手にとって致命傷だというのは分かる。
いや......致命傷だった。
「なめるな小娘!」
地面が振動する。見ていた全員が目を見開いた。
穴のあいていた竜の体は、たちまち治ってしまったのだから。
鱗こそなくなり、中の肉が丸見えになったものの確実に治っていた。
「こんなもの効かぬわ!!」
「あれは...」
「再生した...!?」
どうして!!?という叫びを止められたのは、ある意味奇跡かもしれなかった。
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復活した竜は、アカーディアに目を向けた。
「__________ 」
「__________」
声が小さくなったせいでここまで聞こえなくなったが、アカーディアと言い争っているように見えた。
それより今の感覚......竜の再生。引っかかるのがたくさんあるのにうまく答えが出せない。
......なんであいつは、ユーノより魔力がなさそうなのに再生できる?
魔力の多さは自分が魔力を使えれば使えるほどよく分かるようになる。(人間だと大雑把な雰囲気だけらしいが)最近上がってきた俺の力でも、あの竜の魔力はあまり感じなかった。
この世界に回復魔法は確かにある。だが、基本的に使える者は最高レベルだけのはずだ。しかも今のは一撃でやられてもおかしくない。そんな傷を一瞬で治すというのは、ありえなかった。昨日読んだ資料にも、今までの知識からも竜は皆治癒能力があるとは書かれてないし、知らない。
だから、自分の傷を癒す力がそんな簡単に行える訳がない。できるやつは......
...ユーノの全力でも、叶わない?
しかし、これ以上考える時間なんて与えられなかった。
竜が足でアカーディアの顔をぶった。彼女はその場に倒れ、持っていたバックがふっ飛ぶ。
「ッ!」
必死に動こうとする体を止める。今出てもなにも解決されないし、ユーノにまで被害が及ぶ。
「では、また10年後に会おう!」
「まてっ!ティナー!!」
しかしそんな中、ティナと、なぜかアカーディアまで連れて竜が引き返す。ダンさんは近くの同族に捕まえられて動けないなか、必死に手を伸ばしていた。
俺が行って二人だけでも逃がすか?だが、村はどうなる?考えろ。考えろ。なにかあるはずなんだ。
「もうまてないっ!」
「おい!ユーノ!」
ユーノは村の門まで走り、魔法を唱えようとした。それを俺は必死に止める。
「離して!このままだと二人とも!!」
「ダメだ!今使ったら二人も危ないしお前も捕まるぞ!」
ユーノの今の精神状態なら、竜に当たらないことだって考えられた。
「でも!」
「貴様らまだいたのか!」
互いに譲らず口論を続ける俺達に、村長が話しかけてくる。
「今回はこれで助かったのだ。あの竜はダンの娘と、あの女を連れていくことで今回は許してくださると言った。よしとしようじゃないか」
村長がそんな言葉を投げ掛けてきて、俺は視界が黒く変わった気がした。その言葉にはある意味感心するぜ...
「なにを言ってるん「ふざけるな」...カ、カムイ君?」
怒りが沸々とわいてくる。
「ふざけるなよ。必要な犠牲とでも言うつもりか?あんたは」
必死に右手を抑える。汗が全身を駆け、不安だけが募る。
こいつを今殴ったって何も変わらない。俺の本当にしたいことはそうじゃないから。
「...そうじゃ」
怒りに飲まれて暴れることじゃない。この状況から二人を助けるために動くんだ。
「あんなに小さい子を見殺しにして、巻き込まれた形のあいつも見殺しにして、それが必要な犠牲と言ってここで暮らすのか?」
「今までも我らはそうして生きてきたのだ。それに、彼女は自分から突っ込んでいって自業自得じゃ 」
「御託はいいんだよ!!人の体は、命は戻らないんだぞ!!!」
あいつみたいに...
俺の激昂に、周りからの反応はなかった。くそが!
俺は体の向きを変えて村の入り口を出ようとする。
「貴様、どこにいく?」
「もちろん、あいつらを逃がしに行く。お前らはここで戻ってきた竜に焼かれてろ」
さっきまでの理性が働かない。俺はどうやってあいつらを逃がすかだけ考えていた。
(こう考えたら俺も...大概なやつだな)
「ふざけるな!我々の村だぞ!だいたい再生する竜なぞ倒せるものか!」
「知ったもんかよ」
そのまま歩こうとして...
「ダメ!アハト君!」
ユーノに止められた。
「私を止めたのに自分は行こうとするの!?アハト君も死んじゃう!」
「そうだよ。俺はずるいやつだからな。それに、俺はこんなところで見捨てるなら自分から死ぬさ」
「落ち着いてよ!!」
「嫌だ!」
「ッ!...!」
はっきりと拒絶の言葉を口にした瞬間、
パァン!!
俺はユーノに頬を叩かれた。
そして、
「お願いだから行かないで...ティナちゃんもノクスさんも死んで、それにアハト君にまで消えられたら......私は......」
両手を背中に回され、抱きつかれた。激しく掴まれて痛いが、温かくて、必死な思いが伝わるもの。
(...あぁ、なにを焦っていたんだろう。)
自然と自分の中の怒りが、衝動が収まっていくのを感じる。
「お願い...」
「...あぁ、ありがとう。ユーノ」
「アハト君...」
「ふぅ...よし!」
自分の頬を叩き、気合いを入れ直す。大丈夫、今ならいける。
「とにかく、竜と交渉するしかないかなぁ...この村を明け渡すとか」
「なに!?ふざけるでない!」
「倒せないなら平和的に解決するしかないだろ?村人逃がしてさ」
「この話は終わりじゃ!余計なことをするな!」
「それは断るぜ。二日とはいえ一緒に過ごした仲だ。みすみす見殺しにできるかよ」
ひとまずこの村長を言いくるめて村人を逃がそうと考える。
しかし現実は残酷だった。
「た、大変です!」
「今度はなんじゃ!?」
「い、家で隠れていた仲間が皆急に倒れました!」
『!!!』
さらに悪い話だった。これじゃあもし村長のやつが村の提供を承諾しても移動できない。こんなタイミングで起こるなんて...
_____まてよ、
『再生した...!?』
『こんなもの効かぬわ!!』
『家にいた仲間が倒れて_____』
「ど、どうしたら...」
『 ここの土地は魔力がこもっているので』
『 ユーノより魔力がなさそうなのに再生できる? 』
カチリ。と、脳内でパーツが繋がった音がした。
そういうことだったのか。種が分かれば呆気ない物じゃないか。
「村長」
「もう話合うことはない」
「竜を倒せると言っても?」
「倒せぬだろう?」
「倒せるさ。今できなければこれからも竜の危険がある。それは嫌だろう?」
「それは......」
「なら選べ。このまま見逃してこれからも竜に屈服した生活をするか、自分達で倒そうとして村と村人を焼かれるか、俺達に倒してもらうか」
「貴様...」
「アハト君......」
「...アハトさん。お願いします」
村長が怒りの目で、ユーノが心配そうな目でこちらを見つめる状況下で、ダンさんは頭を下げてきた。
「ダン。貴様までか...!」
「村を失います。それでもいいですか?」
「なんだと?それではやはりダメではないか!」
「いいから。皆を助けるなら、あなたに村長としての自覚があるなら、かけがえない同族を助けるため協力してくれませんか?」
相手の瞳をじっと見つめ、必死に思いを訴える。村長は考え込んだ後、沈んだ声で言ってきた。
「......本当に倒せるのだろうな?」
勿論答えは決まっている。
「もちろん」
「............任せた」
「!ありがとうございます!」
渋々といった形ではあるが、折れてくれた村長にも頭を下げるダンさん。俺はそれにニヤリと笑みを浮かべ、
「じゃあ任された!ほらユーノ!いつまでやってるんだ」
「わわっ!」
今まで抱きついていたユーノを離して、あいつのバックを拾う。
「アハト君。なにするの?」
...もうカムイだとツッコムのは止めよう。
「なにって、もちろん」
俺は全力の笑顔を向けてこういった。
竜退治_____救出作戦だよ。
アハトとユーノが二人を助けるために取る作戦は...?