アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
私は、男が苦手だった。
理由の一つはこの服があげられるかもしれない。七歳くらいからだろうか。元々暑がりで、普通の服を動きづらいと感じた時からお腹周りや肩の部分がない服をよく着るようになった。
そしたらまぁ、やらしい理由で近づく男が出るわ出るわ。やっぱモテる女は辛いわね~
なんて、自分で言ってて悲しくなってきた。
かといって、自分がわざわざ周りに合わせたくなかったからそのままにした結果、同じ町にいた女子からは男子に媚びた格好だと仲間外れにされ、男子からは言い寄られることも多くなった。
この頃から、男が苦手意識はあったと思う。
もう一つの理由は『遺産』。私がマジックアイテムと呼ぶものを好きになったからだった。
初めて手に入れたのはお父さんからの誕生日プレゼント。小さく細い棒が人一人分くらいの大きさの抱き枕になるもので、あれに感動した。...今でも寝れないときに使ったりする。
魔法が使えない私にとって、時に魔法以上のことができるアイテムは魅惑の物だった。
希少性が高いが、町で運良く貰ったり、お小遣いを貯めて買っていた。
だが、それだけでは飽きたらず、新しい『遺産』が欲しくなった私は両親に旅をさせてくれと頼み込み、放任主義の両親から無事旅をさせてもらえることになった。
魔法が使えず、隣町に行くのも危険が伴う人間が一人で旅をさせてもらえる許可が出たのも、『遺産』のお陰だろう。
具体的には今両手にはめている小手がそうだ。強化魔法の効果を付けていて、魔法も少し弾ける。これがなかったら絶対に旅には出させてもらえなかっただろう。感謝感謝。これ以外にも色々あるけれど。
でも、その旅も楽なものでもなかった。
ありふれた言葉で言うなら、新しい物が買えたら嬉しいし、見たことない景色を見るのも面白かった。
しかし、オトコと会話することも格段に増えてしまったのだから。
基本マジックアイテムを扱ってるのは男が多く、それが欲しい私はより良い条件で貰えるよう交渉をしなければならない。私はこれを好きなものだし、譲るつもりはなかった。
また、残念だけど家から出たあと生計を建てるには『遺産』を売るしかなく、取捨選択しながらいらないものを売っていた。
初めは嫌々話していて、それが顔に出ていたんだろう。あまり良い条件では売買できなかった。
これではダメだと作り笑顔で交渉をしてみるとどうだろう、かなり破格の値段で売ったり買ったりしてもらえることが多くなった。
やっぱり男って単純だな~っと軽く考えていた矢先、
『うーん...君が僕の奴隷になってくれるならいいよ』
......私にとって、これは地獄だった。初めて言われた時は足がすくんで思わず逃げ出した。
一員として服がばっさりのなので見とれてるのも多かったんだろうけど、『体で』といってくるクズが増えた。最初に言ってきた奴は私から離れても追ってくるほどだった。
そこから、私は男を信頼、信用しなくなった。
なぜ最初から気づかなかったんだろう。よくよく考えると。
『君は可愛いね』
男はいつも下心をもって。
『ところで、ここに遺産があるんだけど』
人の好きなもので釣って。
『少し、どうだい?』
自分の欲望を叶えようとしていた。
それから私は、 全く信用できない男どもからマジックアイテムを貰うため、ニコニコと笑う仮面を着けて、あざとい格好をさらに露出させ、でも必ずお金や物で交渉できるように努力した。
私もやっていることは同じかもしれない。男の下心を利用して自分の欲望を叶えようとしているのだから。
だが、お前もやってることは同じだとか、そういう説教は受けるつもりはない。変態とか言われても、まぁ放っておこう。
信用ならない男(ゴミ)から信用できる遺産(宝物)を手にいれるために必要なことだから。
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「それが、なんでこんなことに...」
「早く歩け」
「...はいはい」
今私は、化け物...竜に連れられてそいつの棲んでいる洞窟を目指して歩いている。逃げれば殺されるし、なにより、
「ご、ごめんなさい。ノクスさん...巻き込んでしまって......」
「ティナちゃんは悪くないの。大丈夫だからね」
さっきから涙を流しているこの子をおいて行けるわけがない。
(全く...最悪だ)
ただ、この気持ちが晴れることもなかった。ユーノちゃんも来なかったのは残念......だったけど、私はそれよりあいつが許せなかった。
(やっぱり...見捨てたんだな)
やっぱり男は信用できるもんじゃなかったな。
思いだすのは...二日前に会ったばかりの、でも、少し。少しだけ期待していた、黒髪のやつのこと____
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私はエルフが住む村に珍しい『遺産』があると聞いて向かい、着いた時の感想は、
「...閑散としてるな~」
沢山の家があるのに、誰一人外にいなかった。人口少ないのかな?
(一人一軒とかだったら買いたいな~)
ま、まずは交渉しに行かないとね。
しかし、動き出して見つけたのは、
「村の外から来た方でしょうか!?」
なんか切羽詰まった感じで迫ってくる男。
「そうですけどなにか?」
ここ数ヵ月で上手くなったポーカーフェイスで対応。ここでも対応するなんて優しさの極みだよね。
んでもって話を聞いてみると、竜を倒して娘を救ってくれとのこと。普通だったら助けてもいいんだけど...
(男のお願いなんて聞きたくないし......アイテム貰えないかな~)
......竜と戦う危険性や、娘さんのことを考えないあたり、もう私はおかしなやつだったんだろう。
「お願いします!」
「いやーそう言われてもね」
土下座までしてくる相手を見て、さて、どうしようかと考えていた時。
あいつは現れた。
まず見えたのは綺麗な薄紫の髪にくりくりした水色の瞳をした、大き目の角が生えている旧魔の少女。そのかわいさに心がぐらついた。
私は男が嫌いになってから女の子が気に入るようになっていた。け、決してレズではないけどね?でも、その子は本当に可愛かった。杖を大切そうに抱えている辺りもいいね!
そして、もう一人。
少しボサボサの黒髪に、同じく漆黒の瞳。おまけに服まで黒が基調のコートを着た奴。初めに思ったのが真っ黒だなーだったのは私が悪いわけじゃない。角が出てないから有名どころだと新魔、人間などだろうか...
そんな、女みたいな男だった。
私たちをみて驚いている二人に、
「あ、助けてくれないかな?」
「え?他の町の方々ですか!?」
私と懇願している男(ダンって言うらしいけど)は同時に話しかけた。黒髪のほうが呆れていたのは、私がなるべく目を合わせようとしなかったので分からなかった。
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二人が加わり、順調に(あいつに肩掴まれたり、無視されたけどね!!)話がまとまりかけて、今は村長の家にいた。
「で、そういうわけで協力したいのですが」
「じゃがのう...」
でも、あちらは乗り気じゃないみたいだった。やっぱり自分に火の粉のかかることは嫌なんだろう。ま、私もだけど。あーあ...
「これだから嫌だったんだ。自分達のことしか考えないから」
思わず口から漏れてしまう。男ってやっぱり最低だな。
_____自分のことを棚にあげなきゃ人を攻められなくなったのはいつからだろう?_____
しかし、
「竜の情報をくれればこちらでなんとかします。お礼は、俺たちは食料をくれれば結構ですので」
「「え!?」」
(...え?)
この黒髪が言ったことにはすこし驚いた。さっきから『遺産』のことをあてたり、人のことできるやつみたいに言ってきたり、自分に利益がほとんどないのに勝てるみこみがない戦いをしようとしたり...なんなんだよこいつ?私の中で無駄な焦燥感が表れる。
「_____君。そ__________いの?」
「大丈夫だ。お金なんて全く使ってないしな」
「確_________んね」
「そんなに多_____いさ」
「えー......」
「__________。今回は聞こえ__いみたいだけど」
「あ、すいません...」
男と女の子は小さな声でしか喋ってないけど、だいたいのことはわかった。
(金持ちなんだね...)
かなり偏見だが、これも娯楽の一つとでも考えているのだろうか?
「それなら...お願いしようかのぅ」
「じゃあその竜についてなにか意「私はぶんどるからね!」はぁ...」
待ってました!と言わんばかりに私は割り込む。隣でため息を疲れてたのは無視した。
「私が要求するのはこの村の『遺産』だよ!」
『!!!』
「もともとこの村に『遺産』があるって聞いて来たしね」
これなら依頼を受けてもいい。もともとただで譲って貰えるとは思ってないし。
「...お願いします」
ほらつれた。
「ダン!貴様!あれはこの村の大切な物だぞ!」
「それでも娘の方が大切なんです!」
「貴様なぞ出ていけ!無論お前らもだ!」
「そのつもりです。皆さんこちらに来てください」
「わかりました」
やり~と、心の中でガッツポーズをとる。これで討伐は任せて『遺産』だけゲットしてやるぜ!
......でも、 あいつがこれを受けた意味が分からなかった。
盗み見た顔からは、男にも女にも見えるようだった。
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あれから自己紹介を済ませ、ティナちゃんを救うためにまずは情報をあつめることに。
「不死身?」
「はい。竜は元々長寿ではありますが、攻撃を受けてできた傷なども、すぐに回復してしまうらしいのです」
「どこから聞いたんですか?」
「ソノーさん...村長から聞きました。前に一度だけ竜を攻撃したらそうなったと。その時は言い訳して、村はなんとか焼かれずにすんだらしいのですが......」
「なるほど」
私は竜について全然知らないので、マジックアイテム目的でついやるなんていってしまったけど。
「不死身って...勝ち目ないじゃん。諦めて逃げようかな~」
実際倒せないなら逃げるしかないかな~
「いや、いくら竜でも不自然だ。それに、そこまで強い竜ならこんなところじゃなくて竜の巣である『レベル山脈』にいるはずだしな。なにか理由があるのか...」
黒髪...さっきテイカーと名乗ったやつが真面目に考えてるのに、私は無償に腹が立った。
(......どうせなにも出来なくて逃げるくせに)
「明後日までに見つけられるかな?」
「見つけるしかない。とりあえず明日は外にでて聞いてみよう」
「教えてくれないだろうけどね」
「言ってろ」
おちょくってみたらあしらわれた。すごいムカつく!
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食事(ご飯の取り合い)が終わり、満足感に浸っている私に問題が起きた。
......服どうしよう。
もともと替えの服はなく、あるのは今着ている身軽な服だけ。でも、お風呂には入りたい上、一応人様の家だから汚いままベッドに入るのもダメだろうしな...
ユーノちゃんはティナちゃんの服を借りるらしいけど、私の場合は......サイズが合う人がいない。辛うじて合いそうな黒髪の服は着たくない。
「問題は、こっちかな」
思わず、その通りです。と言いたくなった。
「私も旅に余計なもの持ちたくない主義だから」
「他人のは着たくないですよね?」
「誰が男の服を着るもんですか」
嫌っている男の服なんて着たくなかった。
「つまり、新品の女物がいいんだな?」
「少し意味違うんだけどそういうことだよ。もしかして今から買ってきてくれるつもり?外真っ暗なのに?」
テイカーの突然の質問に、私はてきとうに答える。実際女物か、男物でも誰かが着ていたものじゃなければいいんだけど。
やっぱりこれで寝るかな~っと思っていると。
「買うわけないだろ...少し待ってろ」
そんな言葉を口にしてテイカーが部屋を出ていった。その口ぶりは、まるで用意しているかのよう。
てか、今さら無理に決まってんじゃん。あいつは女物の服どころか冒険してる人にとって必需品である武器も持っていなかった。私のように小手なんかもない。魔法なのかもしれないが、きっと戦うのもユーノちゃんに任せっきりなんだろうな......そう思うと偉そうに考えてこんでいたあいつの態度がよりムカついてきた。
これでもし自分の服とかを出してきたらぶん殴ってやろ_____どこ殴ろうかなんて思っていたら、
「ほらよ」
「え?」
部屋に戻ってきた彼から渡されたのは、ワンピースだった。刺繍などは施されてないものの、綺麗な白いワンピース。
「えじゃなくて、ワンピース。それ着てろよ。」
「ホントに買ってきたの?」
「んなわけあるか。企業秘密だ。早く受けとれ」
「あ、ありがとう...」
私はすごく動揺していた。どうやって服を......
なんだかんだで、親以外から対価なく渡されたものは初めてだったかもしれない。
「じゃあ、アカーディアさんのも洗うね。でもテイカーさんは大丈夫?」
「一応、長旅の予定で替えの服は持ってきたので。といっても普段はこっちの方がいいので洗濯お願いできますか?」
「あぁ。分かったよ」
__________なんで私にこれをくれたの?
でも、今まで迫ったきた男は皆。
「っ...あんたも『遺産』目当てなの?」
「え?」
「なんでもない!お風呂入りますから!」
そう言って部屋を出ていき、場所を把握しといた風呂場に向かう。
__________なんでこんなに慌ててるの?
私は自分の気持ちが分からなかった。
もらった服は両手で胸元に抱えていた。自分でも無意識に、大切そうに......