アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
二話を改稿しました。といっても、今もこれからもほんのすこし文字が増えてたり、結合したりしていくだけですので。気になった方は見てみて下さい。感想もくれると嬉しいd(((
それではどうぞ。
「ふゎぁ~ねっむ...」
あのあと自分の部屋に戻ってもなかなか寝つけなかったので、抱き枕を展開して寝たのが昨日。というか今日だった。
今日はティナちゃんを助けないと。朝から気合いを入れ、部屋のドアを開けると_______
「竜がきたんじゃよ!早くせんか!」
「ですが!」
「お父さん...私、行くから」
「ッ!!」
一階から聞こえた声は、すでに事態が進んでいることを意味していた。慌てて階段をかけおり、玄関に顔を出す。
「ティナちゃん!!」
「ノクスさん...」
「行かないで!ユーノちゃんとかまだ起きてないし!」
「竜がお呼びしている。早くしないと村を滅ぼされるのじゃ。よそ者は黙っておれ」
「よそ者でもあんたよりティナちゃんを知ってる自信があるよ!」
「ノクスさん...あなたは...」
「......来い!」
「あっ!」
くそ村長に連れ去られていくティナちゃん。
私はバックから道具を取り出そうとして...
「ノクスさん。私は大丈夫ですから」
本人に止められた。その悲しげな顔が、私の脳裏にこびりつく。昨日見せていた笑顔の面影はどこにもなかった。
「ティナちゃん...」
なにもできない憤りが襲ってくる。
「大丈夫です。少し、先に行っていますね?」
「すぐにあいつら起こしてくる!」
私が魔法を使えれば。強ければよかったのに。それをこんなに思う日はなかった。
「テイカー...テイカー!」
そしてそれは、無意識に彼を呼ぶ声になっていた。
「もう起きてる!俺がユーノを叩き起こすから、ティナちゃんと一緒にいてあげてくれ!」
「...うん。わかった!」
私はそのまま180度ターンして、外に向かう_____
だって、あいつのことは信頼したいから。
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「ティナちゃん!」
「あ、ノクスさん...」
ティナちゃんたちは、いつのまにか玄関から消えたと思ったらもう村の入り口近くまで来ていた。
「私が側にいて支えるから」
「ありがとう...っございます」
「ティナ......」
涙ぐんでるティナちゃんに、それを見つめるダンさん。
そして、
「来たようだなー!」
_______そんな雰囲気をぶち壊す、悪魔が叫んだ。
見えたのは、まがまがしい色をした竜(バケモノ)。
「さぁ、早く来るといい小娘」
「はい...」
「ティナ!」
「ティナちゃん!」
「......お父さん。ノクスさん」
そそくさと行こうとするティナちゃんを引き留めようとする私たちに、振り返ったティナちゃんは...
「私、村の人皆を守りたいんです。だから...行きますね」
覚悟を決めた顔を、向けてきた。
「今までありがとうございました」
____さよなら_______
その言葉を口にしてから、ティナちゃんは四本の足で地面を踏みしめる竜の元に。
ユーノちゃんは、テイカーはなにしてるの!?
「ククク...ともかく、この小娘はもらっていくぞ。ご苦労だったな」
「はい...」
村長がかしこまっている。あいつらは来ない。
ダンさんが手を握りしめる。今エルフ族が魔法を、娘の意思に反することをしたくないんだろう。あいつらは来ない。
ティナちゃんが涙を流す。あいつらは......あいつは来ない。
(あーーーもう!!!)
もう、限界だった。
「返せ」
「ん?」
一人ごとに律儀に返してくる竜。そんなことはどうでもいい。今は、
「ティナちゃんを、返せぇぇぇぇ!!!」
あいつの代わりにこいつを倒す。それだけ...ただ、それだけ。
手に持つのはバックから取り出しておいた魔法石。それも、最高級の水晶タイプ。
魔法石っていうのは、魔力なしでもその石を砕くことにより魔法が使えるという『遺産』の一つ。私が持っているのはその最高ランクである水晶型。
基本的な魔法石は、その石に決められた物しか使えない。赤色なら炎。水色なら水や氷。威力もそこそこ。でも、このタイプは自分の願うことなら、固有魔法以外の基本的な魔法ならなんでも叶えてくれる。想像した力なら。ただし全て使い捨て。
今私が持っているのは四つだけ。一つ持ってるだけでも十分だけど、頑張ってここまで集められた。
と、長々語っても今の私には関係ない。
走り、右手で持っていた魔法石を竜に押し当てる。戸惑っていた相手は、私が持っているものを知っていたのか驚いた顔をするが、もう遅い。
( ...お願い!効いて!)
押し当てられたことで水晶が割れる。あふれでてくるのは炎。
その力は自身の手も含め、竜を貫く火柱となった。
反動で尻餅をつき、右手が焼け焦げていることにも気づかなかった私は、竜に体に空いた穴を凝視していた。
(やった!別に私だけでもできたじゃん!)
願いが現実になって、喜びが溢れる。
だが、
「なめるな小娘!」
そんな希望は、絶望に変わる。
なぜなら、竜にあった穴が塞がったから。
「こんなもの効かぬわ!!」
「う、うそ......ほんとに...?」
(なんで効かないの?)
竜はじろり、とこちらを向いてくる。私の背筋はそれだけで凍った。直後、竜が足で私を叩かれる。持っていたバックが飛んでいく。でも、
「さっきまでの威勢はどうした?また攻撃してもいいのだぞ?」
「あ、ぁぁぁ、ぁぁ...」
全身が恐怖に支配されて、なにも出来なかった。痛みとかなにも感じなかっただけましなのか。それとも、完全に恐怖に呑まれてしまったことを悔やむべきなのか。
「しかし娘...貴様もなかなかだのう」
「ッ!!!」
反射的に感じた。あいつらと同じだと。
頭に思い浮かんだのは、想像もしたくないこと。思わず顔が歪む。
「貴様も小娘と共に来るといい。そうすれば今回は村を焼かないでやろう」
「ノクスさんっ!」
でも、逆らうことは許されなかった。ここで私が逆らえば、ティナちゃんの覚悟を無駄にしてしまうから。
「......はい」
「では、また10年後に会おう!」
「まてっ!アカーディアさん!ティナー!!」
ダンさんが魔法を打とうとしているを、周りのやつらに止められていた。私達はそのまま竜についていく。
最後に後ろを振り返っても、あいつは来なかった。
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「中に入れ」
思い返している間に、移動が終わったらしい。目の前には洞窟が見えた。高台にあるとはいえ、後ろを振り返っても村は見えなかった。
「早く入れと言っている!」
「はいはぁぃ...」
いつもの感じで対応しようとするも、声が裏返ってしまった。
「今回は二人も連れて運がよかった。片方はエルフじゃないようだがまぁいいか。それにしても_____________」
なんか竜が喋っているようだったけど、どうでもいい。
「ノク、スさん...ごめん、なさい」
「いいんだよティナちゃん。これでお父さんとかは10年安全なんだし。あ、でも女しか狙わないんだっけ?だったら元から意味ないか」
「えぇ、そうでしたね...」
涙を流しながら笑うティナちゃんを、私はこれ以上見れなかった。私も、涙が出そうな瞳を隠す。これから私達は、死ぬ。喰われる。そう考えるととても怖くて、
(さ、とっとと死にますか。)
考えること、生き残ることを放棄した。
「食べるなら早くしてくれない?待ちたくないんだけど」
これ以上怖い思いをしたくないから。これ以上悲しい思いをしたくないから。これ以上期待したくないから。
「おぉぉ、そうだな...では貴様からだ。娘」
「っ。来なさいよ!」
「恨むなら俺を攻撃した自分の愚かさを恨むんだな!」
竜が口を開いて食べようとしてくる。私はその暗い口の中が怖くて目をつむった。
あぁ、でもどうせなら。
最後にあいつの顔。見たかったかもなぁ_____________
「その食事、もう少し待ってもらえますかね」
「ぁ...!」
「......なに?」
洞窟の入り口の方から声が聞こえた。恐る恐る目を開けると、竜が
顔をそっちに向けていた。
つられて私も入り口を見つめると、あいつがいた。
「そいつと話がしたいので」
私は、微笑むあいつ___カムイ・テイカーから目が離せなかった。