アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
遅れた原因は後日わかると思います...
では、アハトの勇姿を!
一息ついてから、俺は言葉を紡ぐ。
「お前さ、本当は弱いんだろ?」
「突然なにを言い出すかとおもえば...何を根拠にそんなことを言ってくるというのだ!」
(やっぱり乗ってきた!)
心の中でガッツポーズをとる。あとは時間を稼ぐだけだ。そうすれば勝率が上がる______いや、勝てる。
(頼むぜ、ユーノ)
今隣にいないもう一人を思いながら、俺は目の前の現実と対峙する。
「貴様も見ただろう!俺のブレスを!これでもまだ弱いと言うのか!」
「あぁ。弱いさ。それはお前の力じゃないんだからな」
竜の怒りをふつふつと沸き上がってるのを感じる。短気な性格なんだろう。これだけ手玉にとりやすいなら容易い。
「理由は、お前が自分の魔力を使っているわけじゃないからだ」
「ッ!」
「それを我が物顔で『俺のブレス』なんて言うんだから笑えるぜ」
「貴様ァ!!」
「エルフが自分達の土地に送っている魔力を吸いとって、そのまま自分の攻撃とする。地面から魔力を吸いとれるっていうのは、確かに竜の中でも珍しいんだろう。でも、自分の持てる魔力が少ないからただのブレスなんだろ?他の何にも頼らず戦うはずの竜がそれとか、だっせー」
竜が使うブレスっていうと、基本的に炎や氷が混ざった物を想像する。てかそれであってる。
だけど、こいつのは______ユーノの『fog・beast』と同じように、純粋な無属性の魔力だけ。でも、理由はユーノとは違う。
「自分の中で作られた魔力じゃないから、炎や氷の属性を付けれないだけ...」
前に出した魔方を作る例に当てはめると、魔法使いは、自身の魔力の大きさを設定し、炎や氷などに色づけしていくわけだが、自分の魔力で無いものは着色が出来ないということだ。
「だからお前は弱い。エルフを喰うことで作られたただ硬い鱗を着けただけ、村人の魔力を吸うことでしか大きな攻撃ができず、敵わないと思わせるためにさらに周りの魔力を吸って体の再生をした、ただの雑魚だ!」
「余程死にたい...っ!らしいな!」
「死ぬわけないだろ。こんな竜の面汚しをしているようなやつにな」
「黙れ黙れ黙れぇ!!貴様ァ!ふざけるなぁぁ!!」
「それはこっちのセリフだ。平和に暮らせるはずなのに関係ないエルフを何代も巻き込んで、人間も巻き込んで!やったことは自分の面目を保っているだけか!」
「黙れといっているぅ!」
「洞窟で静かにしているから、魔力をわけてくれ」ここまで竜との関係がこじれてない頃なら、こう頼むだけで穏便に済んだはずなんだ。なのに。
竜が炎のブレスを吐いてくる。これは自分の体内で作られた魔力を使っているんだろう。でも、
「やっぱり、威力がさっきと全く違うぜ!」
自分の前に氷の壁を作る。ブレスはそれを溶かすことすら敵わない。
(_____特訓の成果もかなり出てるかな?あ、アカーディアのジュースのおかげか)
さっき貰ったアイテムに感謝する暇もなく、竜が攻撃を仕掛けてくる。
「ならば!」
硬い尻尾を払われる。とっさにエクスシアを作ってガード。しかし、ビリビリと手に伝わる痺れは止まらなかった。
「さすがに硬いな...」
「死ねぇ!!」
呟きながらもバックステップをとり続けるが、竜も追撃をしてくるためなかなか距離を離せない。時間稼ぎには丁度良いくらいだが。
「ちょこまかと動くやつめ!」
「動かなきゃ死ぬだろ」
「動いても殺してやるさ!!」
竜が止まり、力を貯める。禍々しいオーラが集まって______
(これは...さっきの!?地面からエネルギーを吸っているとはいえ早すぎる!)
とっさに避けようとするも、ピタリと止まってしまった。
(この方向は...後ろに、『エルビス』!?避けるわけにはいかねぇ!)
「やばっ!」
「ふざけたことをっ!死ねぇ!!」
エクスシアの代わりに硬い、しかしこれからくる攻撃には耐えられそうもない壁を作って構える俺に、竜がブレスを_____________
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「ん、んぅ...ここは......」
「ティナちゃん!?大丈夫!?」
「ノクスさん...って、カムイさんは?あいつは!?」
気がついておどおどするティナちゃんにここまでの経緯を話す。話を聞いた彼女は、興奮しながらも少し落ち着きを取り戻してくれた。
「大丈夫?」
「はい。でも一人で戦うなんて...!!」
「どうしたの!?」
「あっちからすごい力が感じて...とても怖い...」
怯えるティナちゃんを見てハッとする。もしかして、それは______
「まさか、さっきの!?」
そんな早くもう一回できるなんて聞いてない。
(テイカーが死んじゃう!)
「嘘でしょ、カムイ!?」
「......あれ?」
「え?なに?」
ティナちゃんが顔をきょとんとするのを見て、私も動揺していた気持ちが止まる。やがてティナちゃんはこっちを向いて、
「なんか、急に魔力を感じなくなりました...」
「...えーと、そんなことありえるの?」
「さっきまであんなに膨らんでたのに...」
まるでわけがわからなかった。魔法が途中で止まることなんてあり得るのか。
(確認しに行かないと)
「行ってみよう。方向分かる?」
「はい!任せてください」
走り出す彼女についていく。体はとても自然に動いてくれた。
(テイカー、無事でいて!)
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「ァァァァ、アアアァァァ、アアアアアアアァァァァァァ!!!」
「危なかった...ユーノ、ナイス」
今は離れているパートナーを誉めながら、役目を果たすことがなくなった壁を消す。どうやら賭けには勝ったらしい。今目の前には、地面に倒れ、もがいている竜がいるだけ。
「ない魔力を無理やり使おうとするから...」
それが分からなかったあたり、やっぱり雑魚なんだろう。
「貴様...何をした?」
「その貴様ってのやめてくれないかなぁ。俺一応女なんですよ?まだ17なんですよ?アカーディアとほぼ同年代だろうに...俺も服変えようかなぁ......」
「質問に答えろ!」
この傲慢っぷりに、さすがにキレそうになった。それとも飄々としているのが悪いのだろうか。
「その前に倒すからさ、おとなしく散れよ雑魚」
「貴様だけは殺す!絶対にだ!」
「やれるもんならやってみなぁ!」
叫ぶと同時に取り出した魔力石を俺と竜の間に投げる。割れた魔力石から出てきたのは______濃い霧。同時に、ベルトポーチから針と、魔法で作った氷を射出。
魔力石は基本魔法ならイメージするだけで使える。霧は、詳しいことは知らないが水や温度が関係しているらしい。
つまり...過程はどうあれ、霧が基本魔法でできることと、結果さえ分かっていれば、こいつでイメージするだけで作り出すことができる。
「目眩ましなど...ッ!!」
濃霧は俺達を包み込む。きっと竜は目の前から飛んできた氷と針に驚きながら__________
(ティナちゃんやアカーディアを傷つけたお礼はしっかりさせてもらう!!)
「なめたまねを!」
霧を払い、飛んでくる物を防ぐために、飛べない翼をはためかせるだろう。
ここまで予想通り。
「なに!?」
俺はもうそこにはいない。 そして、
「!?上か!」
霧が出てる間に強化魔力全開で飛び上がった俺は竜の頭の上を取る。二本の氷の槍を精製しながら。なぜなら______
「そうらよっ!」
「がぁぁぁぁぁ!!」
(いくら鱗が固かろうが、目は弱いだろ?)
竜の目に刺さったアイスランスをさらに深く刺そうとするも、半ばから折れてしまった。おまけに竜が頭を振る。俺はそれに逆らわずに地面に着地した。
ここまで予想通り。
「どこだぁぁ!」
目を潰された竜はその場で暴れまわる。回復はもう起こらなかった。
「エクスシア!!」
(出番だぜ!相棒!)
「はぁ!」
一気に接近して、エクスシアを突き刺す。硬い鱗の中で唯一皮膚が見えている所_____アカーディアが燃やした場所めがけて。
「いっけぇぇぇぇ!」
グサリ、と深々と突き刺した剣は、
「そこかぁぁ!!」
深手の筈だが、とっさの意志が無駄に強いのか、竜がブレスを吐こうとしてくる。さすがにこの距離だと止められない。そして____二人まとめて溶けるだろう。
自身の怪我をも惜しまない一撃。喰らえば例外なく全てが消える。防ぐ手段など持ち合わせていないが、俺は______静かに笑った。
(ここまで予想通り!!あとは運次第だ!)
「頼むぜ!」
左手から取り出すのは、アカーディアから受け取った二つ目の魔力石。
それをエクスシアの持ち手に押し合て、砕いた。
竜の弱点魔法。それが資料をあさって見つけた有益そうな情報。
ユーノには自分のできる魔法に集中してもらうため教えなかった。
アカーディアは魔法が使えないから言わなかった。実際魔力石を使っていたが。
エルフの人達は竜と戦わないだろうから喋らなかった。
エクスシアが強化魔法以外の魔法を使うと消えてしまうため、魔力石を使うしかなかった。さらに言えば、刺して奥まで届く状態の中じゃないと、魔法がちゃんと通るか分からなかったから。
イメージは、自分の得意な魔法の方がしやすい。
そして、俺の得意な基本魔法は氷と......
「荒れ狂え!!」
____________電撃。
瞬間、叫び声と同時に視界が白く覆われ_____
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目を開けると、焼けた竜が見えた。その瞳に光はなく、体はピクリとも動かない。
(......やった?)
安堵した瞬間、見つめていた世界が回る。
(あぁ、なんで気がつかなかったんだ。アカーディアもそうだったじゃん)
倒すことに夢中だったのは、なにも竜だけではなかったらしい。
(魔力石使う魔法、自分で出すわけじゃないから、被害がこっちにもくるじゃんか......)
軽い後悔は役に立たず、視界が暗転した。