アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
まどろんでいた意識がかすかに震える。
「ん......ここは...?」
気がつくと、俺は誰かに抱えられていた。
「あ、起きましたよ!ノクスさん!」
「ホント!?」
顔を少し傾けると、そこにはアーカディアとティナちゃんがいた。二人してこちらを覗きこんでいる。
「お前らか...って、竜は?」
「...見てごらん」
見えた先には、完全に死んでいる竜だった塊が。
ちゃんと倒せたんだな______
「良かった...」
「良いわけないでしょバカ!」
「うぇ?」
いきなりアカーディアに抱きつかれた。予想だにしていなかった行動に少し動揺する。
「そんなボロボロになって!あんたが死んじゃうところだったでしょ!?そしたらどうすんのよ!」
「そうですよ!」
二人は泣きながら、怒ってますと言わんばかりの顔をしていた。
言われて自分の体を見ると、全身服が裂け、血がにじんでいた。電撃受けてこれだけですんだら良い方なんだけどな。
「...ごめん」
「もういいの!結局無事だったんだから!」
彼女の気持ちを組んで謝ったのに言われて、回らない頭が少しキレる。謝り損じゃないか。
「それよりほら、村に帰ろう?」
「はぁ...そうだな......」
しかし、喜んでいる二人にこれ以上なにも言えなかった。
______全部守れて、よかった。
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「ケーキ用意してくれてるといいね~」
「はい!」
「...二人とも。村につく前に、言っておかなきゃならないことがある」
「なんですか?」
「もったいぶらないで言いなさい!」
竜から解放された嬉しさからか、浮かれた状態の二人に、俺は声をかける。
俺は現在、アカーディアにおんぶしてもらって村を目指していた。そこまでやらなくていいと言ったのに「そんな体じゃダメ!」と、断られた。納得したくはなかったが、思うように体が言うことを聞いてくれないので、しぶしぶこうなっている。
振り向けないアカーディアの分もかねているのか、体ごとこちらに向けてくるティナちゃん。
一呼吸入れてから、俺は
「ごめん。村は_______________」
それより早く、予想より早く、森が開けて、村が見えた。
「ほらテイカーさん!この村がどうかした......え?」
「なんで...?」
辺り一面黒くなった、村だった土地が。
「村は燃やしてしまった。ごめん」
「どういうこと!?竜はこっちにも攻撃したの!? 」
「そうじゃない」
全て消えた土地を見て、アーカディアは動揺し、ティナちゃんは...その瞳から、光が消えていた。
「え、テイカーさん?嘘ですよね?竜は攻撃してないって言うし...ここが『エルビス』なんて~」
「......」
明るい口調ながら、俺にはその姿が痛々しく写ってたまらなかった。
「そっか!皆で驚かせようとかくれんぼでもしてるんですね!なら頑張って探します!絶対驚きませんからね?」
「ティナちゃん......」
ティナちゃんは壊れた人形のように動き出す。涙はとまらず、すすり泣く声は止まらなかった。
俺は汗が止まらなかった______
______自分の、説明の下手さ加減に。
「俺の言い方が悪かったんだよな。これ」
「え?」
「ティナちゃん。実は...」
「ティナーーー!!」
「ノクスさん!カムイ君!!」
「「!?!?」」
村はなくなったけど、村人は無事だから。
そう声をかけるよりも早く、ティナちゃんは皆の方へ駆け出した。
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既に日は落ち、寒さが出てきたころ、私たちは____________________
「もっと飲んでくれカムイ君!!ほら!」
「い、いえ結構ですので...」
アハト君はダンさんの絡み酒に付き合って、
「これ美味しいよ!」
「まだまだありますから、沢山食べてくださいね?」
「やったー!ユーノちゃんも食べよう?」
「はい!」
私達はケーキを楽しく食べていた。後ろから「俺にもチーズケーキ食べさせろー!!」という声が聞こえたけど気にしないでおこう。
「そういえばユーノちゃんはなにやってたの?」
きっと、いや、絶対竜と戦っていた間のことだろう。
まぁ、私は直接行ってないし______
「実は___________」
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『家を燃やす!?』
『竜はこの村の魔力を吸い上げてあの回復力を実現している。でも、家をなくせば魔力はすぐに枯渇する。だから燃やしといて』
『いやいやいや!!そんなのここの人たちが許してくれるわけ...』
『もう許可は取ったから。いつでも直せる村と、治せない人の命どっちが大事だ!って言ってな』
『えー...』
『炎は練習してただろ?いつも通りやれば大丈夫』
『そう言われても......』
『じゃあもういくから。あとよろしく!』
『あ、カムイ君!』
そんなやり取りがあったのが10分前。アハト君はもうここにはいない。そして______
「ユーノさん!お願いします!」
荷物なども全て出した人たちが村から少し離れて、あとは私が燃やすだけな状況になっていた。
(これ私よりダンさんとかがやった方がいいだろうけど...)
さすがに自分達の手で村を壊したくないとのこと。気持ちは分かるけど、私だってしたくはない。
でも、
「なにはともあれ、頑張らないと!」
失敗するかもしれない、というかその方が確率は高い。今まで成功したことないし。
『もしユーノが時間かけてると、俺再生する竜相手にずっと戦わないといけないから。なるべく早く頼むぜ?』
でも、あんなこと言われてやらないわけにはいかない。
「よし!」
自分を鼓舞してから、両手で杖を構え、呪文を詠唱する。
「----」
『大きすぎるとか小さすぎるとか気にせずいつもイメージしてる大きさでやるんだ。その方が成功する。』
アハト君の言葉を思い出す。詠唱時間自体は短い。基本魔法だし。それを、ゆっくり、慎重に唱える。
「-------」
あふれでそうになる炎を抑える。もっと落ち着いて。もっと、もっと。
ピリッと、感じたことがないものが私を突き抜ける。
(今だ!)
『flame!!』
実は、基本的に魔法の名前は自由だったりする。自分の想像しやすい名前を皆がつける。だから、中級以上の魔法は人によってバラバラで、初級の物も、その呼び方を推奨されているだけ。初級の技に応用を効かせることは難しいから、呼び方が一つに絞られている。
そんな中、例に漏れず推奨されている呼び方を叫んだ結果は成功。無事に家三軒が同時に燃える程度ですんだ。
こんなにやるつもりはなかったんだけど。という戸惑いよりも、 やった!できた!と、喜びの方が大きく____状況を考えず、その場で喜んでいた。
この調子で__________
こうして私は、村の家を燃やしていった。
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これは誰にも言うつもりないけど。
全ての家を燃やし終わってから戻ると、ダンさんに言われたことがある。曰く、
『一度にあれだけ家を焼きながら、嬉しそうにニコニコしているユーノさんは...ユーノ様は、怖かったです...』
はい。すいません。忘れて下さい。
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「そうだったんだ...」
「結局間に合って、皆無事だったから良かったけどな」
どさっと体を下ろしてくるアハト君。ダンさんからの絡みはなくなったみたいだった。
「あ、私お父さん寝かせて来ますね」
「ティナちゃん。いまさらなんだが...ごめん。村を無くしてしまって...」
アハト君のその言葉に少し怯えてしまう。だって、やったのは私だから...
「そんなの気にしてるわけないじゃないですか!皆無事だったんだからいいんですよ!」
「......ありがと」
「いえ、私行ってきますね?」
嬉しそうに駆け出していくティナちゃん。それを見て、アハト君の顔も少し楽になった気がした。
「明るくなってよかったね」
「命の危険がなくなったんだし、そりゃ元気にもなるだろ」
「そうだね」
「それよりケーキどこ?」
「もう私が食べたよ!」
「アカーディア!貴様ぁぁぁ!」
「ちょ、あいつ思い出すからやめてよ!」
「カムイ君!私もらってくるから!」
暴走しそうなアハト君を止めるために、私はケーキを貰いに行きました。
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「いや、ないならないでいいんだが」
「ユーノちゃんが行った後に呟かれても...」
星空を見上げながら座り込む私達。
ふと横のテイカーを見る。所々破けた服から見える包帯が痛ましかった。私は息を飲む。
(よし。今は二人きり。言うこと言わなきゃ!)
「そういえば、まだお礼言ってなかったね。助けてくれてありがとう」
「それはユーノに言ってやれ。あいつがいなけりゃ全滅だったんだから」
(なんで謙遜するんだよ...)
若干不機嫌になりつつ、ずいっと近寄って目を合わせる。
「私から見たら、助けてくれたのはあんたなの!」
吸いつけられるようにあいつの黒目を見つめる。
「素直に受け取っときなさい!」
「...はぁ、分かったよ。ありがと、アカーディア」
「まずそこ!」
「え?」
「名前でいいの!ノクスで!」
「お、おう...」
圧倒されたように後ずさるテイカー。そんなにやってないのに失礼な。
「なら俺もカムイ...いや、アハトでいい」
「アハト?」
「俺の本名」
「へー、良い名前だね」
彼の言葉に淡白に返す。でもそれはどうでもいいからじゃなく、素直にそう思ったからだった。
「じゃあ改めてよろしくね!アハト!」
「こちらこそだ、ノクス」
「っ...それより!」
にやっと笑う彼の顔がかっこよく見えて、ごまかすように話を変える。
「ほら、綺麗な星空よ」
「さっきから見てるわ」
「うぅ...」
失敗。
「次二人はどこに行くの?」
「隣町の『アースラ』までだ」
「なんなら案内してあげようか?私ここにくる前までいたし」
「いいのか?」
「元々『遺産』求めてどこでも行くからね。それにほら......」
「?」
(ユーノちゃんや、あなたと一緒にいたいから)
なんて言ったらどんな反応するだろう?
「あ、それなら付いてくるといいと思うぞ」
「え?」
「これから王都に向かうんだが、確か『遺産』が沢山あった気が...」
「ほんと!?」
「たぶん、俺も行ったことあるし...今回使ったやつのお礼もそこで払うよ。俺も行けば安くなるだろうしな」
「絶対だよ!?」
「お、おう...」
(しばらく一緒にいれる上に、マジックアイテムまで、至れり尽くせりじゃん!)
都合の良すぎる条件を聞いて、ただ...
「じゃあ決定な」
「いったいどこにそんなコネを持ってるの...」
「色々あってな」
「もしかして怪しいお店とかに?」
「......少し?」
「ダメだよ。いくら男の子でもそんなところに行ったら...」
「そうだな。次からは行かないように......ん?」
「どうしたの?」
彼の言葉が止まったことを疑問に思いよく見ると、少しアハトが震えだしている。
「今お前、男って言った?」
「え、うん......」
そこから紡がれた言葉を、私は信じられなかった。
「俺は、女!!!」
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「カムイ君~ケーキ貰ってきた......よ?」
戻ってきた私が見たのは、何故か口喧嘩してる二人。
「信じられねぇ!お前俺のことおんぶしてたろうが!それで分かるだろ!」
「あんたみたいな胸でわかるわけないでしょ!」
「お前だって貧乳のくせに!」
「うるさいわよ無乳!!」
「えーと......これは...」
「「!!」」
同時にこっち睨んで来たため、反射的に体が震えた。なぜか背中の汗が止まらない。
「なんで14歳に負けてるんだ......」
私、特別胸があるわけじゃないんだけど、アハト君、気にしてたんだなぁと感じる。
そこらへん、なんだか女の子だなぁと少し驚いた。いつも男の子っぽくさばさばしてるから。三つも年上だけど。
「ユーノちゃん...なにかしてるの?」
「い、いえ......」
現実に意識を引き戻され、ここでなにか間違ったことを言ったら命がないと本能が訴えているのを直感的に感じ取った。
「確かめさせろ。ユーノー!!」
「私にも教えて!」
「無理ですよー!!!」
しかし、それは時既に遅く。
こうして、夜の鬼ごっこ(鬼は真剣)が始まって______
私は、満点の星空を見ながらスタートダッシュを決めた。
もっと上手くキャラを書きたいなぁ...と感じる今日この頃。
感想、意見があったらぜひお願いします。