アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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村長の教室

昨日降った雪が積もった道は、私が出かける頃には半分くらい溶けて一番滑りそうな状態だったけど、転ぶことなく進むことができました。

 

そして今は。

 

「バルトさん。おはようございます」

「あぁ。おはよう。今日は遅かったね?」

「すいません...寝坊しちゃって」

「ユーノ!遅かったじゃない!待ちくたびれたわ!」

「あ、リーゼ。別に待ってなくてもよかったのに......」

「ッ!...私が待ちたかったからいいのよ!ほら!さっさと来るの!」

「分かったから......」

 

この人はバルト・ヴァスティさん。『シオン』の村長で、私のお父さんが補佐してる人。私に突っかかってきた金髪の女の子はリーゼ・ヴァスティ。バルトさんの娘で、小さいことからの付き合いだから、今のだって私を待っててくれたんだってわかります。よく喧嘩もするけど、一緒にいて楽しい友人です。

 

私がなぜここに来たかというと、バルトさんが開いている護身用の演習教室に参加するため。

 

この世界では魔力であれ単純な力であれ、力を持ってないと何かあったときにやられてしまう。特に女は危険が男の三倍なんて言われることもあるくらい。

 

それ以外にも、肉を手に入れるため、動物を刈るために力がいる。

私の場合、使いこなせる魔法が固有魔法と体に纏うように使う身体強化魔法だけ。それも、少し足が早くなったり、重い剣を持てるようになる程度のもの。

 

これだけでもなんとか出来なくもないけど、不安が残る。だから私は使い物にならない杖の次に得意な短剣で、この教室に通っています。まだ弱いけど。

 

今日は私、リーゼとあと5人の女の子が着ていた。

 

「じゃあユーノちゃん。今からいける?」

「...ぜひお願いします!」

 

遅く来たぶんバルトさんと戦う順番を優先してくれたみたいで、バルトさんが声をかけてくれた。お言葉に甘えて返事をしてから、お互いに武器を構える。私は短剣を。バルトさんは槍を。

 

「いくよ」

「はい!」

 

私とバルトさんが走り出したのは、同時だった。

 

 

 

 

 

...と言いたいところだけど、実際は私がフライングした。負けたくないんです!!

 

バルトさんは槍を使うのがうまく、私達は実際に使っている武器に対して、バルトさんは木を削って作った木刀ならぬ木槍で戦うくらい強い。

 

それに、短剣と槍。リーチで勝てないのは当たり前。だからこそフライングして動揺させたかったんだけど...

 

バルトさんは少し驚いたものの、私が近寄らせないよう槍を振るう。

 

私は短剣で槍を弾き、さらに近づこうとするも、バルトさんはバックステップを踏みながら槍をつき出してくる。

 

それをさらに弾き、追撃しようと足を踏み出した瞬間。バルトさんは笑っていた。

 

(何かくる!)

 

本能的に悟った私はそのまま右に飛ぶ。身体強化は最大で!

 

結果として、それは正解だったらしく、上に弾いた槍の反対側で、地面を突くバルトさん。なかなかひどい手を使ってくる...私があそこにいたら胸の部分を潰されかねない。

 

だがせっかくできた隙を見逃すわけにはいかない。私は飛んだばかりの無理な体勢を強引に立て直し、地面に着くと同時、強化魔法を足にだけ込めて一気に剣を届かせようとする。

 

(これで、決める!)

 

決めたらバルトさんは大怪我なのを忘れて、もう一度飛んだ私。でも...

 

(...あれ?)

 

実際には足が滑って、転んだだけだった......そして。

 

「ふぅ......僕の勝ちだね」

「パパ!」

 

そう余裕っぽくリーゼに笑顔を向けるも、バルトさんの灰色の目は笑っておらず、『危なかった~』 と言っているように見えた。って!

 

「え、えと、ごめんなさい!」

「あぁ、大丈夫だよ。それより、今ので何が悪かったのか言ってごらん?」

 

慌てて謝る私に、 気にして無さそうに言うどころか、反省することを聞いてくるバルトさん。すごい...

 

「え、えと、おじさんの槍を気にして避てたけど、後の行動をあまり考えられなかったこと?」

「それもあるね。避けたあとの体勢に無理があった。元々今日は季節外れの雪があるからね。あと、フライングはダメだよ?」

「うっ......すいません」

「そうよユーノ!ズルしちゃだめじゃない!」

「ごめん...」

「でも、一番気になったのは強化の弱さだね。いつもより出来てなさそうだったけど、どうかしたの?」

「決まってるじゃない!ユーノがついに強化魔法も使えなくなっちゃったのよ!」

「...っ」

「リーゼ!」

「あっ...ごめんなさいっ!」

 

私が基本魔法を使えないことをリーゼは知っている。その上でつい言われてしまった一言で私はショックを受けてしまった。それに気づいて申し訳なさそうに走り出していくリーゼ...

 

「全く......ユーノちゃん。ごめんね。リーゼにはしっかり言っておくから......」

「いえ...それよりリーゼの相手をしてあげて下さい。あの子、バルトさんにしかられるとすごく落ち込みますから......」

「でも」

「今日は全体を見て次にどうするか決めるのが大切だと分かっただけで十分ですし、これから用事もあるので、失礼します!」

 

私は急いでその場を後にした。

 

 

 

 

 

「...戦い方自体は、レベル上がってるんだけどな」

 

だから、バルトさんの一言は聞こえなかった。




今日中にあと二話作りたい...
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