アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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一悶着

二人と別れた(置いてかれた)俺は、『image・replica』で作ったフード付きローブを被って町を歩いていた。

 

(このくらい大きな町だとバレて面倒ごとになる可能性は高いからな。今度ローブ買おう)

 

人に聞きながら向かったのは武器を扱ってる店。個人的に行きたかったのと、店主が物知りらしい。

 

「いらっしゃい!」

「どうも」

 

店に入ると圧倒される数の武器が置いてある代わりに、人は誰もいなかった。ま、大会見に来た人達は武器なんていらないし____店員の顔がいかついし、といったところか。

 

にしてもこの店。

 

「何で剣しか置いてないんですか?」

「俺の趣味さ。武器は剣が一番!」

「...そうなんですか、いいですよね」

「お、にいちゃんわかるかい!?流石だねぇ!」

「...どうも」

 

(俺も剣しか見るつもりなかったし、いいか)

 

ふと目についた剣を手に取ってみる。形はエクスシアに似ているだろうか。黒のスタンダードな中に、あちこち赤のアレンジが入っていた。

 

「お、あんた目利きがいいね。そいつは俺の自信作だ」

「いい剣ですね」

「わかるか!あんたとはうまい酒が飲めそうだ!俺は飲めないけどな!」

 

_____夜中にうろつく人切りが持ってそうな色をした剣ですね。なんて言えなかった。

 

剣を置いてさらに物色すると、両手持ちの剣を見つけた。

 

太さはさっきの二倍から五倍。長さもそれなりにあって、とても片手では持ち上げられなさそうだった。

 

「こっちのはやめた方がいい。ひょろひょろのにいちゃんが使えるもんじゃないよ」

「...そうですね」

 

もう、性別のことはどうでもよくなってきた。心の中では息を吐いたが。

 

「じゃあ、片手で持てる大きめの剣はどれがいいですかね?」

「そんなのを見たいのかい?どっちもいいとこどりしたみたいな?」

「はい。ありますか?」

「あんま取り扱ってないな...今度あんちゃんが来るときまでに何個か作っておけるようにするよ」

「いえ、わざわざしてもらうのも....」

「俺が作りたくなったんだから気にするな!」

「...じゃあ、頑張ってください」

「おう!またのご来店を!」

 

屈託のない笑顔で見送ってくる店長を背に店を出る。

 

重さもあって、攻撃を防げて、かつ片手でも満足に動かせる剣。

 

(テーマは決定したな。頑張らないと)

 

「あ、メイルさんの場所聞くの忘れた」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「らったらったったた~♪」

 

少し重たくなったバッグを持っていた私は、慣れない歌まで歌ってスキップしていた。

 

理由は簡単。マジックアイテムが買えたからだ。

 

(相変わらずあそこの人はこの子達の価値が分かってないな~)

 

バッグを覗いて、今まで入ってなかった物を確認する。

 

苦労して相手(男)の目を見て話をつけたおかげで、値段をかなり下げた。

 

(今回はあんまり人のこと言えない気がするけど...)

 

金色の指輪。効果は全く分からないのに、値段が割りと高かった。たぶん綺麗だったとかなんだろうけど。

 

少ないお金をやりくりして使える『遺産』を買わなければならないのに、今回無駄な物を買ってしまったのは____

(いや無駄ではないんだけど、なんで『遺産』で買ったんだろう......)

 

 

 

 

 

______もしかして、自分の好きな物をもって欲しかった?

 

(ないないない!これはただのお礼なんだから!!)

 

顔が青くなって赤くなったのに、私は気づかなかった。歌もいつの間にか消えている。

 

「きっとアクセサリー屋さんとか行くのをめんどくさがっただけなんだから。うん。そうよ...あっ」

「おっと」

「あ、ご、ごめんなさい」

 

ぶつくさと独り言に集中していたため、こっちに歩いていた人、見た目からして軽そうな男三人組の一人とぶつかってしまった。とっさに謝り立ち去ろうとすると、

 

「なんだぁ?謝って済ませようってんのかぁ?」

「そうっすよ!」

「んだんだ」

 

ガシッ、と腕を掴まれてしまって、私は鳥肌がたった。

 

確かにアハト達と会う前はこんなこともよくあった。その時は普通に対応できたから____

 

「ちょっ!離して!」

「嫌だね!こちとら肩を痛めちまってなぁ。慰謝料くらい払ってもらはないとなぁ?払えなければ...」

「こいつ上物っすよ兄貴!胸はないけど!」

「んだんだ」

こいつらは所謂カツアゲをしてきた。必死に力を入れて振り払おうとするも男には敵わない。周りは見ているだけで、なにもしようとしなかった。

 

(いやっ、やめてっっ!!)

 

「あはは!こいつちょっとひき止めただけで泣きやがってる!」

 

男の言葉に、私はピタリと止まった。

 

(泣いてるの?私が?いつもなら...)

 

 

 

 

 

数日でも二人と一緒に過ごしてダメになっちゃったのかな、私。あの空間に慣れすぎて______

 

「このまま路地裏に行きやしょう!そして...グフフ」

「んだんだ」

「ッ!!」

 

 

 

 

 

アハトが男だという勘違いがなくなった時、男でも良い人はいるかもしれない。なんて希望を見ていた。

 

でも、現実はどうだ。目の前にはゲスい顔をした三人と、見ているだけでなにもしないやつらばかり。

 

 

 

 

 

自分の気持ちがこんなに弱いなんて、もう、どうしようもないのかな______

 

「__て」

「ん?なんだぁ?」

「泣きながら謝るんすか?無駄っすよ?」

「んだ?」

 

 

 

 

「助けて」

 

 

 

 

 

ユーノちゃん。

 

 

 

 

 

_______アハト ____

 

 

 

 

 

「はぁ?この期に及んで助けなんてこねぇぐばぁ!!!?」

「兄貴!?」

「んだ!!?」

 

 

 

 

「あ......」

 

 

 

 

 

「全く。こんな真っ昼間から道のど真ん中でカツアゲとは、恐れ入るぜ」

 

その後ろ姿は、

 

「 しかも俺の仲間を......ノクスを泣かせたんだ。わかってんだろうな?」

 

今まで見たどんな人より輝いて見えた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「なんだお前?喧嘩うってんのかぁ?」

「黙れ」

 

ノクスを掴んでいた手を離させる。

 

「もしかしてお前、俺を知らないのか?」

「興味ない」

「なら教えてやるよ!この町で有名な、泣く子も黙るカノン様とは俺のことだ!」

 

魔力が漏れ出てる。少なくとも強くはなさそうだなと判断をつけた。

 

「行くぞノクス」

「あ、うん...」

「おい!待ちやがれっ!」

「そうっすよ!」

「んだんだ」

 

自己紹介をわざわざ聞いてやる必要もないためノクスを連れて立ち去ろうとするも、騒がしい奴等は突っ掛かってきた。

 

「待ちやがって言ってんだろ!」

 

奴の大声に怯えるノクス。

 

こいつら、どうやって潰してやろうか。

 

「こっちも黙れと言っている」

「その女は俺達が目をつけたんだぞ!彼氏気取りのやつは引っ込んでろ!」

「か、彼氏って」

「...お前、ふざけんなよ」

 

顔を少し赤くしてるノクスを離して、クソ男に向かっていく。

 

「お前ら!」

「おいっす!」

「んだ!」

 

リーダーが叫ぶと付き添っていた二人に体を掴まえられ、ローブも軽く結ばれる。緩い拘束だったが外しはしなかった。

 

「どうするつもりだ?」

「うるせぇ!くらいな!」

 

結論を言うと、大きな音がした。魔力を込めた拳を大きく振りかぶって顔面を殴られた。

 

 

 

 

 

まぁ、それだけ。

 

「...な、なんで効かないんだ......」

 

そりゃ、こいつのを上回る強化魔法で顔を覆えば痛みを感じるどころかこんなふうに微動だにしないさ。なんて教えてやる義理もなく。

 

俺は静かに拘束から抜けて、リーダー格の首もとに腰から取り出した細長い針をピタリとつけた。

 

「なっ!」

「俺は殴られたから正当防衛だよな?」

 

(まぁ、こっちは最初に殴ったけど。気づいてなさそうだし、煽るのには十分だろ)

 

最近煽り技術が身に付いてきた気がするのはあの竜のお陰だろうかと、ぼんやり考えた。

 

「こいつぅ!」

 

圧倒的な力の差を見せつけたので、怒り狂って来るかと思ったが、その時は訪れなかった。

 

「...やめなさい」

「ッ!あんたは!」

「?」

 

野次馬をかき分け、水色髪の女性が乱入してきたのから。

 

「ゲッ!兄貴、あいつは」

「早く逃げるぞ!お前ら、覚えてやがれ!」

「んだ!」

 

そいつが登場した瞬間、三人は慌てて逃げていった。

 

「なんだったんだあいつら...っとと」

 

逃げた方向を眺めていると、いきなり後ろから体を押されてしまった。振り替えって見ると、涙目のノクスが抱きついて来た。

 

「えーと、ノクス?」

「なんでわざと殴られるのさ!心配したんだからなバカ!」

「......ごめんな」

 

頭をそっと撫でてやる。

 

(こいつ怖かったんだろうな。苦手な男から絡まれるのは)

 

この町にたどり着く前に「もう少し努力してみるよ」と言っていたが、いきなりは厳しいもんだろう。

 

「...大丈夫?」

「え、あぁはい。大丈夫です。ありがとうございました」

「...そう」

 

いきなり話しかけて来たのはさっきの女性。答えられないノクスの代わりに応対すると、表情一つ変えることなく返答された。

 

「...この町は初めて?」

「はい」

「...なら路地裏は気を付けた方がいい」

「あ、ありがとうございます...」

 

悪い人ではないんだろうが、醸し出されるプレッシャーがなんとも言えなかった。

 

「...名前は?」

「え?」

「名前は?」

「え、えっと...」

 

突然の質問に動揺してしまう。しかし、それ以上の物があった気がした。

 

(この人に嘘をついたら逆に怪しまれる)

 

「アハトといいます。こっちのはノクス」

「...そう」

「あなたは?」

「...私はメイル。メイル・セリカ」

「そうですか...」

 

 

 

 

 

ん?

「メイル?」

「...?」

思わず呟いてしまった言葉に、女性______メイルさんは首を傾げていた。

 

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