アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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トーナメント

夕方。約束通り日が沈む前に町の入り口に戻ってきたものの。

 

「あ、ユーノちゃん」

「?ノクスさんだけですか?」

 

いたのはノクスさんだけで、時間は守りそうなアハト君の姿が見えなかった。

 

「あぁ、あいつは...」

「?」

「まぁいいや、ついてきて」

「は、はい」

 

ノクスさんの後をついていくと、脇道のとある一軒家にたどり着いた。ここからだとメインストリートの騒がしさがあまり聞こえず、夕暮れが少し薄気味悪さを出していた。

 

「ユーノちゃん連れてきたよー」

「遅かったな」

「...おかえりなさい」

「はいただいまです」

「え?」

 

中に入ると、テーブルを挟んでアハト君と見知らぬ人が向き合って座っていた。

 

「...ッ!」

 

白衣のような服を纏い、水色の髪をした女性は、私の方を向くと少しだけ目を見開いたように見えた。

 

「ええと...アハト君。この方は...?」

「俺らの探し人だよ」

「え?...えぇ!?」

「...メイル・セリカ。よろしく。ユーノ」

「は、はい...よろしくお願いします」

「...あなたが生まれていたのはアイオスから聞いていた。会ったことはなかったけど」

「あ、そうなんですか」

 

お父さんの同僚、元王族の護衛をしてた人だからどんな人かと思ったら、優しそうな女性で少し安心した。ずっと無表情だけど。

 

「......それじゃあ、さっきの続き」

「はい」

「もしかしてアハト君?」

「この人には全部話してる。下手に嘘ついてもバレるしな」

「...続き」

「あ、はい。二人とも座りな。ユーノはともかくノクスにはまだ話してないしな」

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「...つまり、新魔と旧魔の戦争を止めるために訪ねて来た?」

「はい」

「私そんなの聞いてなかったんだけど」

「言ってなかったしな。どうせお前は遺産のために『クロスベル』まで来るつもりだったろ?」

「そりゃそうだけど...」

「なんなら人間代表で話してもいいぞ?旧魔一人だけだと買収したみたいだしな」

「...必要になったらね」

「......」

「それで、どうか俺達を『クロスベル』まで連れてってくれませんか!」

 

ノクスがそっぽを向いて黙り、俺がお願いをする。メイルさんがおもむろに眼鏡をかけた。今さらだが、なぜ白衣の両胸のポケットに一つずつあるのか気になったが、迷わず右の眼鏡をかけていた。

 

「じゃあ質問だよ!」

「...えーと、はい」

 

眼鏡をかけたメイルさんは、キャラが変わったようにハキハキと喋りだす。こっちがびっくりしてしまった。

 

「あ、これは人格を変えるマインドセットみたいなもんだから気にしないでね。こっちの方が話が早く進むし。」

「...わかりました」

「それじゃあ、私の返事ですが...残念ながら、あなた達を行かせるわけにはいきません。」

 

 

 

 

 

「「「え?」」」

 

メイルさんの発言に皆が固まった。

 

「なぜです!?」

「理由はまぁ、色々あるんだけどさ...多分、今のままだとアハトがいた部隊と鉢合わせたら死んじゃうでしょ?会わないようにしてるってことはそういうことだよね?戦争させたくはないけど、私は子供を死なせに行かせられるほど割りきれる人間じゃない」

「ッ...」

「そもそも戦争を子供に止めさせるようなやつらは戦争してた方がいいんじゃない?無駄な人口が減ってさ」

「俺はそうならないように自分からこれを達成しようと志願したんです!!」

「君がそんな身を粉にしてやる必要ある?」

「あります!」

 

俺は手で机を叩きながら立ち上がる。だって、俺は人を死なせたくないから、大切な人もそうでない人も。

 

「......まぁ、君の思いはわかった。ごめんね?挑発して。大人がやらなきゃいけないことをやってくれてありがとう」

「...試されてたんですか?」

「察しの良い子はお姉さん好きだぞ?それで、そっちの二人はどうなのかな?この子と一緒に『クロスベル』まで行く気ある?」

 

追及を案外早めに切り上げたメイルさんは、今度はユーノとノクスの方を向く。

 

「私は...魔法が全然使いこなせなくてよく弱気になっちゃいます。でも、そんな自分を直したくてアハト君と村を出ました。それで...今は、アハト君の手助けをしたい。そう思っています」

「.....私は二人が『クロスベル』に向かう理由も今聞いたし、そこまで強い理由があるわけじゃないけど...それでも戦争は良くないのは分かるし、それに努力してるアハトや、手助けするユーノちゃんに何かしてあげたいって気持ちはあるから」

 

二人とも......

 

「...分かったよ。君達を運んであげる」

「!ありがとうございます!」

「ただし条件付きね」

「なんです?」

「それは_________

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「アハトくーん!」

「...ん」

 

時は戻って。場所は武道大会の参加者専用エントランス。俺はユーノの呼び声に考え事をやめた。

 

「お疲れ」

「...お疲れ様」

「わざわざありがとうございます」

 

同じく大会に参加してるユーノとノクスは、関係者だったらしいメイルさんと一緒に歩いて来ていた。

 

メイルさんの出した条件。それは、武道大会で全員が一回戦突破、さらにその内の誰かが優勝するというものだった。

 

本人曰く「これで優勝してやっと送り出せる位の強さかな!」だそうで。

 

昨日、開会式と一回戦をして、全員突破(俺はなんとか...)したので、あとは誰かが優勝するだけ...俺はさっき二回戦を突破。午後にはユーノとノクスが二回戦が始める。参加者の人数は32人でトーナメント制なので、俺はあと三回、ユーノ達はあと四回勝てばいいわけだ。

 

「おーい、アハト君」

「ここではカムイだ。さっきも間違いやがって...」

「痛い痛い!ごめんなさい!」

 

間違えて呼んでいるユーノの頭をグリグリしてやる。当の本人は笑っているようにも見えるが。

 

「で、これからお昼どう?」

「...私のオススメ」

 

ノクスが少し微笑んで、メイルさんは相変わらずの無表情で話しかけてくる。

 

「なら期待して行かせてもらいます。店の場所は?」

「...ここを右に出てすぐ。名前は『ホットカフェ』。良いお店」

「わかりました」

 

(...あ、でもそれなら)

 

「俺、少し用事があるので先に行ってて下さい」

「あ、ちょっと!」

 

追及されるのを避けるために返事を聞かずに走ってエントランスを抜ける。

 

向かったのは言われたお店と反対側にある少しきらびやかな店。宝石や、それを使ったネックレスなどのアクセサリーを売っている所だった。

(にしても、フードがないだけで随分視野が広くなるなぁ...)

 

もうフードは被っていない。あれだけ大騒ぎしてバレないのだから大丈夫だろう。お陰で一昨日と景色が違って見えた。

 

中に入ると、ところせましと並んだ宝石が太陽の光と店の明かりを反射していた。

 

一昨日はこの町にこんなに長居しないだろうと存在だけ把握していたのだが、ここの店なら______

 

「すいません」

「はい?」

「実は...アクセサリーを作って貰いたいのですが」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「お、上手いなこれ」

「...でしょ?」

 

後から来たアハト含め席に着いた私達は、並べられた料理を食べ始めていた。ユーノちゃんはサンドイッチ、アハトはパスタ、メイルさんはがっつりカレーで、私はシチューにした。

 

「あ、アハト。後で魔力頂戴?」

「それで意味あんのかな...」

「魔法が使えないんだからしょうがないでしょ!」

 

魔力も使えない私は大会の中でも唯一の人間で、あとは旧魔か新魔ばかり。それでも勝っていくためには手段が欲しかった。

 

「だって、もらった魔力石で一度だけのとんでも魔法打って、相手が怯んでる時にナイフを突きつけるって...強さというよりは別のなんかじゃん。」

「そりゃそうだけど...」

 

そう、この前『エルビス』でもらった魔力石を使って、私は一回戦を突破した。というより、こうでもしないと普通は何も出来ない。

 

「こう言うのもあれですけど...これでいいんですか?」

「...発想の勝利」

「そうですか...ま、これから頑張れよ」

「うん!」

「......うん」

 

元気よく頷くユーノちゃんとは対照的に、ガラスに写る私の顔は少し怯えているように見えた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

次は私の番だ。

 

(大丈夫でありますように...)

 

一回戦の時と同じお祈りをして、歩き出す。

 

「二回戦第五試合、戦う二人は...町の最強大工!フワム・オゴス選手!」

「ふんすっ!」

『おぉぉぉぉぉ!!』

 

反対側にいるのはボディービルダーのようにムチムチの筋肉でポーズをとる新魔のおじさん。一回戦で使ってたのは魔法だったけど。

 

「もう一人は、今回最年少!ユーノ・アインツ選手!」

 

オォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

「うっさ!」

「ユーノちゃん頑張れー!」

 

さっきとは桁違いの空気を裂くような歓声に、背筋が震えてしまう。そんな中二人の声援?が聞こえて、少し安心した。

 

「念のためルールを確認します。基本は魔法、武術などなんでもありで、相手に降参と言う、もしくはこちらで危険と判断されるまで流血した場合その選手の負けとします。制限時間はありません!こちらで回復魔法を唱えられる人員も用意しているので存分に暴れて下さい!」

 

この大会のためにかなり応用の魔法の部類に入る回復魔法を唱えられる人を用意するなんて______大会の大きさに改めて驚く。

 

「それでは、両者準備はよろしいですか?」

「うっす!」

「は、はい!」

 

相手が杖を、私が短剣を構える。

 

私は基本魔法を使うわけにはいかない。この前制御できたとはいえ、あれを使ったら相手が丸焦げになってしまう。

 

「------------」

 

だから、使うのは『fog・beast』と強化魔法だけ。

 

「それでは、二回戦第五試合、スタート!」

『fog・beast!』

 

私は詠唱を終わらせていた固有魔法を、試合開始と同時に繰り出した。

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