アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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サブタイつけるの難しいですね...


開花するもの

 

 

「いよいよだな」

「うん」

 

運命の、決勝。

 

「ここまで来たら勝つだけだ」

「頑張ろうね?」

「もちろん」

 

二人でスタジアムへ続く階段登った先には______

 

 

 

 

 

_____クラウ________

 

黒い、ナニカ。

 

 

 

 

 

え、

 

 

 

 

 

「ユーノ!」

「はいっ!?」

 

目が覚めたら、見えるのはアハト君だけで、スタジアムも、黒い塊も、消えていた。

 

「ここは...」

「控え室だろ?大丈夫か?朝から早起きしてご飯作るから...」

「あんまり寝付けなかったんだけど、ここに着いたら眠くなっちゃって......」

 

そうだった。準決勝の組み合わせが出て、ノクスさんを傷つけたペアとは決勝でぶつかることになって、先にこっちが第一試合だから控え室に来て______

 

(いつ寝たんだろう?)

 

「無理するなよ?明日が本番だしな」

「今日のはいいの?」

「いや、もちろん出るけど。勝たなきゃいけないし。そこで相談が...こんなのをしたいんだが...」

「?」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「はぁ...はぁ...」

「...そんなもの?」

 

身体中が悲鳴をあげている。もれ出る息はヒューヒューと上がり、まるでずっと血を吐いているような錯覚に陥っている。

 

「...あと20秒で起き上がること」

「はぁ...はぁ...かはっ」

 

立ち上がるのをこんなに億劫に思ったことはない。手が縛り付けられたように地面から離れない。

 

私はメイルさ______いや、メイルに連れられた町の近くの森で、特訓を受けていた。

 

「...あと10秒」

「はぁ...ぁぁぁぁぁあ!」

 

なんとか体を持ち上げ、短剣を構える。今自分を守る武器は、これしかない。静かに佇んでいる相手は生えてる旧魔特有の大きな角と相まって、地獄から来た死神に見えた。

 

「...よく相手の動きを見て。あなたは動体視力が良いから追えない速度じゃない」

 

と言いながら動いている相手を全然追うことができない。

 

「どうゆう動き方してるのよ...」

「...人間、目は顔に二つしかついていない。だから、どんな人でも必ず死角が存在する。ある程度強い魔力を持つ者は相手の魔力を探り当てることができるけど、貴女はそれができない」

「ッ!そんなこと、知ってるよ!!」

 

突然視界に入ってきた相手に短剣を向けるも、あっさりかわされて蹴られてしまう。私はそれに耐えられずに木に当たり、その場に倒れた。

 

「かはっ!!」

「...あと30秒。こんなふうに魔力で身体の力も負けてしまう。貴女がそんな奴らと対等に戦いたいのなら、力ではなく柔軟性を手にいれた方がいい。今私がやったように相手の死角に飛び込み、切りつける。それができる能力も、貴女は持っているから」

「言いたい...放題で......」

「...現に、今剣を突き出したのは私が見えたからでしょう?それは、突然のことにも対応できるってこと。それに、今私が出た場所から逆算して、どこが人の死角なのか分かる」

 

そんなこと、言った、って。

 

「...魔力がないのは短所。でも、逆に魔力で気配を探る相手には絶対バレない長所。だから、貴女には今自分の体で感覚をつかんでもらっている。これが自身の手でできれば、今より格段に強くなる」

「なんで...貴女は、そんなことが出来るように、なったん...ですか?魔法が使える旧魔なのに......」

「...『nephrite・enable』で相手の死角に回り込こんで、攻撃してたことがあったから」

「『nephrite・enable』?」

「...私の、固有魔法」

 

つまり、転移で敵の見えない所に入り、攻撃したという______

 

「...時間」

「え?」

 

まだ30秒は経ってないはず、なんて考えていると、突然メイルは構えを解き、私の目の前に液体が入った緑色のビンを置く。

 

「これ、は...」

「...私が作った回復薬。王都にいたときは、暇潰しに作っていたことがあったから。大丈夫。資格はある」

 

回復薬の作成資格は、安全性と実際の効力からそう簡単に取れるものじゃなかったはず。

 

「なんでもありですね...」

「...それを飲んで、今から私が二人の試合を見てくる間に、昨日の練習を二セット」

「あれを!?」

「...無理なことは言ってない」

 

私はきっと、ひどい顔をしているだろう。昨日は半日かけて一セットやった特訓を、数時間かけないでやれと言われたのだから。

 

「...終わってなかったら、その時点で特訓も終わり」

「そんな...」

「...それと、無理に敬語にしなくていい。ムカつくなら文句も好きに言って」

 

普段無表情なくせに、嘲笑するような顔を向けていい放ってくるのを、私は意地で顔を向けた。

 

「...絶対、やっとくから」

「...なら、頑張って」

 

詠唱の後、メイルは消えた。

 

昨日今日で、言ってることは無茶苦茶だし、とんでもない力を使ってくるけど。

 

『頑張って』

 

的確なアドバイスに、ためになる力。半日前の自分とはかなり違うのが分かる。こんなに早く。

 

だからこそ。

 

あの人に、

 

「認められ、たい」

 

ユーノちゃんと、アハトと、

 

「同じ道を、一緒に行きたい」

 

だから、

 

置いてあった回復薬を飲み干す。甘い味に少し酸味が入っていた。そしてなにより、すぐにメイルにつけられた傷が治っていく。即効性の高さに思わずにやけてしまった。

 

 

 

 

 

「...やってやろうじゃん!!」

 

私は頬を両手で叩き、気合いを入れた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

(...あの子...凄くのびしろがある)

『nephrite・enable』で試合会場まで移動したメイルは、一人考え事をしながら観客席まで向かった。直接行かなかったのは、行った先にいる観客に突然現れたことを怪しまれないためである。

 

(...ここまでいけるとは思ってなかった。おそらくこのまま放っておいても十分戦えるようになる)

 

彼女は歩きながら眼鏡をかける。

 

(ま、いずれあいつにも見せなきゃ。そんで今はこっちかな!)

 

スタジアムが見える観客席まで着いたものの、まだ始まっていない。予定より少し遅れているんだろう。

 

(決勝まで上がれるか楽しみだな...まだ本気は出せないみたいだけど、今のうちに得られる情報を多くしないとね)

 

_____獣の、ね______

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「それではこれより、準決勝第一試合を、おぉぉこないまぁす!!」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「凄い熱気だな」

「う、うん...」

 

昨日あんなことがあったばかりだというのに、会場は異様なまでの熱気に包まれていた。年に一度のお祭り、それも後半戦に入ってきたから気持ちはわからんでも_____

 

「今回からペア戦になります!まずは、大会中にプレゼントをあげる仲!ラブラブなユーノ、カムイペア!!」

 

『ぉぉぉうぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

 

「やっぱわかんねぇ」

「え?」

 

なんでこんな騒いでんだよ。てか、なんで気づかれてるんだよ。俺コート変えただけだぞ。

 

「な、なんでこんなに...」

「お前のファンだからお前が静まらせろよ」

「えぇ?私の?」

「俺の時こんな奇声あげられてないし」

 

今なおバカ騒ぎしてる奴らに、司会から『静かに!しじゅかに!うぅ...噛んだ』なんてなんとも締まらない注意が響く。その甲斐があったのかどうかは知らないが、一応会場は静まった。

 

「続きまして対するのは、昨日初めて話したという即席ペアは伊達じゃない!ランス、ガーナペア!!」

『............』

「「なんの反応もなしかよ!!」」

 

男女ペアの相手は紹介されても無反応だった。二人でハモってツッコミをいれてる辺り、息はあってるのか、なんか可哀想だなと同情した。少しだけ。

 

「まあいいか。ユーノ、話した通りだから」

「いきなり倒れちゃうのはやめてね?」

「分かってる」

 

ユーノが静かに詠唱を始める。魔法を使っていいのは試合が始まってからだが、そのための準備は開始の合図を待たなくていいから。

 

(...さぁ)

 

「それでは準決勝第一試合。開始!」

「行くぜ!」『fog・beast!!』

 

そして、俺は_______

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

ドゴォン!!

 

「げぼらっ!」

 

ユーノとアハトが叫んでから一秒も経たない内。見ていた全員が固まっていた。

 

理由は、アハトがその場から消えた瞬間、ランスと呼ばれていた相手がいた場所によろけながら立っていて、その相手は観客席の下の壁にめり込んでいたのだから。

 

「ど、どういうことだー!なぜかカムイ選手が...!」

「はっぶ!」

 

ビュンと空気を切り裂く様な音がしたときには、今度はもう一人の相手が吹き飛んでいた。

 

「...審判さん。まだ戦わなきゃダメですか?」

「い、いえ!この勝負ユーノ、カムイペアの勝利です!!」

 

ユーノの催促によって終わった試合で残ったものは、気絶してる二人が作った壁の穴と、二人の勝利だった。

 

「なんだ今の!?」

「黒髪が消えたと思ったらあいつらが吹っ飛んでんだからな...どうなってんだ?」

「魔法じゃないの?」

「あんな瞬間移動できるのが、固有魔法以外でできるかよ。あいつ角ないから新魔だぜ」

 

観客が口々に叫ぶ中、メイルはただ一人じっと二人を見つめ、眼鏡をかけ直す。

 

(新魔でも固有魔法に近いことができるのは知ってる。でも、あれはそんなもんじゃない。第一瞬間移動なら私の所を訪ねる必要がない...自分でも痛いと言っていたことから、制御が効かない?)

 

じっと会場を見つめ続けていると、何か光が見えた気がした。

 

(あの光は...雷?)

 

「あれは...」

 

ボソッと呟いた独り言は、誰にも聞かれず、本人と共に消えていった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

準決勝が終わった後、俺達は控え室に戻って休んでいた。

 

「ふぅ...」

「お疲れ様。カムイ君?」

「お疲れ、といってもそんなすごいことやったわけでもないからな」

 

俺があれについて考えたのは、これもまた竜と戦った時。

 

最後に使った電撃魔法は相手も自分も巻き込んだ。死ななかったもののかなりのダメージを負ったし。それと、昔本で読んだ人間も微力な電気を帯電しているという話。これを合わせて、人間の体に大量の電気を帯電して、制御できないかと思った。

 

竜との戦いで大量の電撃を浴び、元から電撃魔法が得意な方だった俺は、そう苦労せずに体に纏うことができた。

 

強化魔法で全身を覆うようにするのと同じ要領で、魔力な雷の属性をつけることで体に電気を纏う。これだけだと普通に使うのとメリットは変わらず、寧ろ普段より魔力消費量だけ増えてくだけだが、

 

「でも、まさか自分も電気と一緒に移動できるなんてね...」

「まだ制御は出来ないし、強化魔法を全開にしないと体が大変なことになりそうだがな」

 

体全体を覆うことで圧倒的な速度での移動を可能にした。

 

もっとも、体がついていけるように強化魔法は常に全開にしないといけないし、急停止、方向転換なんかはまだできないけど。

 

実際、一回戦で使ったときは自分だけ壁にぶつかってしまって負けるところだった。さっきのも体当たり自体は成功したけど、ジンジンとした痛みは今もとれずにいる。

 

相手を警戒させるには、未知の技が一番有効策になる。

 

「これで印象付けができればいいんだが...」

「これだけやったら大丈夫だよ!自信持って!」

「...そうだな。やったことを分かった奴がいるのかどうかだけど...」

 

決勝で、あんな危険な賭けをするつもりはないが、警戒してくれるならありがたいからな。

 

「分かる人だっているって!」

「...お前、他人のことについてはポジティブだな」

「...ええへ」

 

はにかむユーノと共に、もう一つの準決勝を見ようと控え室を出た。




前回の話で、ついにUAが1000を越えました!

他の方々にとっては小さなことだと思いますが、自分としてはこの作品が一つの区切りを迎えられて嬉しいです!

今後も、よろしくお願いします!
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