アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
「それでは皆さん。お待たせいたしましたーー!!これより、第43回『アースラ』武道大会、決勝戦を行います!!!」
「オォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!」
年に一度のお祭りの最後だからか、司会も観客も大興奮だった。
「騒がしいのは相変わらず、か」
「さっそくいきましょう!まずは一組目!二人の絆は世界一ぃ!ユーノ、カムイペア!!」
ウウウウウゥゥォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
「...まるで一種の魔法だな」
「......」
隣のユーノが歓声で固まってしまった。無理もないが。
「対するは、明るい見た目に騙されるな!マルク・ウィントペア!」
低いものの「わぁぁぁぁぁっ!」という歓声を浴びながら、会場入りをしてくる二人。ふと、マルク・レイと目が合う。
お前には、負けない。
さて、どうでしょう。
一瞬の交錯は、そんな思いが込められていた気がした。
「決勝戦のルールは簡単、自分の膝が十秒地面に着いた時点でその人は負けとします!降参もありです!先に二人を負けさせた方が勝ちでとします!また、審判が止める場合もあるので、気を付けてください!」
前に危険な行為をしたレイを警戒したのか、先に釘を打っておく審判。
(まぁ...いいけど)
自分の国に帰るためにも、ノクスの敵を討つためにも、絶対に勝たなきゃいけない。
「ユーノ、勝とう」
「...!」
そして、
「それでは。試合、開始!!」
開始直後はまず、俺が突っ込んでユーノが『fog・beast』で援護する。相手の固有魔法がよくわからないので初めは正攻法で仕掛けるしかない。しかし、
『abuse・voice』
『......!!』
「...どうした!?ユーノ!」
レイが固有魔法を使ったが、ユーノはいつまで経っても魔法を放つどころか一歩も動かない。声も聞こえているのか分からない。
(まさか...やっぱり行動を制限する固有魔法なのか!?)
「くっそぅ!!」
ユーノが動けないなら、まだ動ける俺があいつらの注意を引き付けなければならない。女の方を見ると、集中して詠唱してる途中なのかあちらも動かないままだった。
なら、俺は。
「レイ!」
「ふふっ...来てみるといいよ」
最初から顕現させていたエクスシアと、やつの剣が交錯する。ギリギリギリと擦れる音が自分の脳にはびこる。
「相方が大変そうですね。大丈夫ですか?」
「うるせぇ!お前だって似たようなもんだろ!」
「まぁ...そうですね......」
剣の向こうで、レイがほくそ笑みを浮かべる。そして、
「今のところは、ね?」
「...!!!」
(なんだ...これは...)
奴の言葉の直後、体が鉄に侵食されるように、動けなくなっていく。でも、こいつはユーノに固有魔法をかけた。詠唱が必要な固有魔法をし直していないのにどうして。
「まず、一人目だ」
「...!」
そして俺は、逆手に持ち帰られたレイの剣をそのまま喉に______
キィィンと金属音がした。
刺さることはなかった。目の前には『fog・beast』を展開しながら突っ込んできたユーノ。
「_________!!」
大声でなにか叫んでいるようだが、耳にはなにも聞こえない。
「邪魔が...君は傷つけずにしたかったんだけど、しょうがないですね」
「...!!」
「おっと!」
レイが手を上げると、ユーノが再び固まり、俺は急に動けるようになったためバランスを崩す。
(これは...動けなくできるのはどちらか片方だけ!)
種が分かれば今度はこっちの番だ。
「エクスシア!」
レイの剣がユーノに当たる前に、俺が弾く。そのまま押し込むと、奴はバックステップをとる。
「フォローは上手いようですが...それで良いのですかね?」
「意味わかんねぇぞ...!?」
「すぐ喋る癖、直した方がいいと思うよ」
「なっ!」
声が聞こえた方を見ると、さっきの場所でウィントと呼ばれていたトイレの女が球体の炎を構えている。大きさは、ユーノの作れる一番小さな氷と同じかそれ以上。ルールなんて関係なく殺す気なのは目に見えている。あんなの喰らったら持たない。
『hell・frame!』
「_________!!」
「よそ見をしてたらダメですよ?」
「クソッ!」
ウィントの炎が放たれる。ユーノは考えるのはできるのか、『fog・beast』を動かして壁として使うも、三体全てが溶けて消える。次を出すにも詠唱が必要な固有魔法で口が開けないんじゃ______それにあいつは初級魔法だって時間がかかってしまう。
時間にしてあと二秒はかからない。それだけで______
___死ぬ?ユーノが?____
「やらせるかぁぁぁ!!」
レイの剣を力の限り押した瞬間、エクスシアを消して電撃を纏う。そして________
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「なんで...」
死んじゃうと思った。試合が始まる前から動けなくて、アハト君が止まった瞬間私は動けるようになった。だから、きっと一人の動きを封じる魔法なんだと思う。
動きを封じる魔法相手に庇い庇われながら戦ったものの、アハト君が突っ込んだ時に待ってましたといわんばかりに炎が私に放たれた。体が動かなくなって、出していた『fog・beast』は全て体当たりさせてもダメでだった。
だから、死んじゃうと思ってたのに。
「なんで!」
______目の前には、こっちを向いて立ち尽くすアハト君。背中に氷の壁を作っていたけど、炎の力を抑えきれずに本人に当たっていた。
「______」
「アハト君!!」
前に______私の方へ倒れこむアハト君を慌てて支える。回した手から感じた背中は生温かい。
(そんな...そんな......)
視界が恐怖で染まる。受け入れたくないと現実を拒絶する。それでも______温かいそれは止まらない。
そんなとき聞こえたのは。
「...よかっ...た」
「あ...あ......」
「さよならです」
アハト君のかすれ声と、死を告げる剣だった。
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「あっけない」
「えげつないことするからでしょ?」
アハトとユーノをまとめて貫いた剣を引き抜く。地面には鮮血が飛び散り、今なお広がっている。
目の前で行われた惨劇にその場にいる全員が戦慄していた。四人を除いて。
「『 release』...審判さん、まだやった方がいいですか?」
「あ、えと、この勝負は「...待って」え?」
審判を止めたのは、メイル・セリカ。彼女は今朝アハト言われたことを思い出していた。
『もし俺が酷い状態になっても、ルールに適してない限り待ってくれるようにしてくれますか?きっと最初は苦戦すると思うんですけど...負けられませんから』
「...まだ十秒経ってない」
「で、でも!」
「大丈夫です...二人が、あんな奴らに負けるわけないから」
メイルの隣にいたノクスは、祈るように二人を見つめている。釣られてそちらを見ると______
「!!!?」
「...ほら」
アハトは膝がつかないよううつ伏せ状態の体を回転させた。ルール上、確かに問題はない。
そしてユーノは、その場に立ち上がっていた。腹部の剣の傷は、舐めるように青白い炎がのぼっている。
「なにが...どうなって...」
メイルが一人、微笑む。
(...二人の力。私に見せて)
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「ア...ア...」
体が思うように動かないのを無視して回転させる。血が出まくってたからしょうがないけど。
回復魔法が使えない俺は、体の止血を強化魔法で行う。外から圧迫してるのと同じだ。
そんな自分のとこを後回しにして、腹に青白い炎をのぼらせながら立ち上がっている彼女を見つめる。
纏う魔力は、まるで彼女でないような、人を畏怖させるような魔力だった。
(あれは...ダメだ......あんなの、違う。)
炎が消える。貫かれた痕は、きれいさっぱり無くなっていた。
こちらを見ずに、相手だけを見つめるユーノ。このままだと__________言い様のない不安が、俺を襲った。
だから、体を動かす。ユーノと、左手につけた金色の指輪が重なった。
止めなくては。手遅れになる前に。
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不思議な感じだった。立っているのにも関わらず、自分は浮いているように感じる。
「ア...ア...」
なにより、自分の声も、体も、他人に操られているのをただ見ているような感覚がとても気持ち悪かった。
でも、それより。
(アハト君。貫かれて......)
_____コロス_______
この感じは、夢で見たものなのか。
(...なんだって、いい)
「なんなの...あれ?マルク?」
「...残念ながら、僕も知りません。ウィントは抑えてください」
「わかった...え?あれ?」
「どうしました?」
「あれっ...嘘っ!効かない!?弾かれてる!?」
「!そんな...」
「------『down・wind』!!」
「...ア」
「...本当に、効いてないみたいですね」
自分を縛ろうとするなにかを弾く感覚。自分の口から自分じゃない声が出る感覚。全てが怖い、怖い。
私は手を振り上げた。かざされた手は、血がべったりだった。あの人の、アハト君の、血。
「「!!」」
「...あれは、闇魔法?一体......」
同時に現れた黒い球体は、自分の魔力で作られているにも関わらず恐怖した。 あんなの打ったら、きっと、誰か死んじゃう。
コノテノイロミタイニ?
_______止めて______
お願いをしても、自分の体は止まってくれない。
「...。コロス」
_____止めて!!
「ユーノ!」
「あ...」
後ろから回される腕。背中から伝わる温かい感触。気味の悪い感覚は、そこで溶けていった。
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「...っ」
ボロボロの体を動かす。死んでないから平気だし。背中に攻撃を受けた時はゾッとしたけど、まだ動けるから問題ない。
彼女は誰もが畏怖する雰囲気を纏ったまま、強いて言うなら闇だろうか、黒い球体を浮かべている。雰囲気だけで、あれが放たれればここにいる人の大多数に被害が及ぶことが目に見えている。
そんな物を顔色一つ変えずに作る彼女が、なんだかいつもとは別人に見えて、それが怖くて悲しくて俺は、
「ユーノ!」
彼女を抱き締めた。
「あ...」
「お前はそんなやつじゃないだろう?そんな周りに迷惑がかかる魔法を打つやつじゃない。」
だからこそ初級魔法すら打たないのだから。
短い間でも、彼女がどんな魔族(人)で、何がしたいかなんて分かっている。
だからこそ______俺は、今の彼女を否定する。
「ユーノ...お願いだ。元に戻ってくれ。元のお前に......」
「...うん」
「!」
かすれた声と共に頷くユーノ。黒い球体は、いつの間にか消えていた。
「...死んでるかと思ったんだからね!?」
「バーカ、死ぬかよ。それよりユーノ...よかった」
「う、うん...//」
「いちゃついてるところ悪いんだけどさ」
「「!!」」
安心したのも束の間、ウィントがさっき以上の炎魔法を構えている。
「ヤバそうな状態だったから私が作れる限界まで溜めてたのにさ。今は動きも止めれるしつまんないよ」
「くっ...!」
「!」
(確かにユーノを抱き締めたまま動け...え?)
「魔力もこれで尽きちゃうし、悪いけど...ここで負けてね?『hell・prism!』」
さっきより勢いの増した炎が迫ってくる。あれは二人まとめて死ぬだろうな。
「!!」
「大丈夫だ」
「!?」
「喋らなくたって大丈夫だよ」
「え、なんで...確かに効いてたし、魔力切れも起こしてないのに!」
ユーノより前に出る。ちょうどさっきと同じような状況。でも、不思議と不安感はなかった。
(俺はこいつを止められる)
エクスシアで切ろうにも大きいし、防ぐにも剣の幅が足りない。他のものを作っても強度が足りない。
その、はずなのに。
(なんでだろうな、確信してる自分がいる)
右手に魔力を込める。作るのは______創造したこともない大剣。風が吹き荒れ初め、うっとうしくなった髪をかきあげる。
(贅沢は言わない。あれを防げるくらいのやつだ...できるよな?俺)
守りたいもののため、俺は力を尽くそう。
『image・replica』
静かに詠唱が唱えられ、構えた右手から光が溢れだし____
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致死量の炎が飛んで行っても、審判はメイルによって止められていた。審判は抗議をするも、一向に話を聞こうとしない。そして、
「...あれは」
「一体なにが」
「大丈夫なのか!?あの小僧!」
「アハト...」
周りの観客がどよめき、ノクスが呟く中、
(...さっきのが、覚醒した力。まだ弱いのに制御は不安定みたいだけどそれだけか......それと)
「あれが、あの子の力かぁ......」
眼鏡をかけたメイルを含め、全員が見た。
黒髪がなびき、黄金の目を輝かせているアハトの白い光を放つ剣(つるぎ)を。
『image・replica』
タイトル変えようか迷ってます。こんなのどうだろうか!という方はぜひお願いします!