アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
剣の先を前に向ける。右手を引いて上に、左手を剣の刀身に当てる。
「こいよ」
燃え盛る炎は突き出した剣とぶつかり、その激しさを増した。圧倒的脅威が目と鼻の先で止まる。
後ろに守りたい人かいるから。だから、負けられない。
「そうだろ?だからお前の力を貸してくれ!」
白く輝き続ける名もなき剣は、俺の声に答えるように光を強くして、炎を上空へ反らした。かすった観客が悲鳴をあげているが許して欲しい。
「なっ!」
『psychic・plasma』
「っ!!!」
剣を消し、電撃を体に纏って体当たりをかます。ドンという派手な音と共にウィントが壁に突き刺さり、そのまま倒れた。
あれは完全に気絶してるだろう。膝も着いてるし問題ない。あとは、
『---------』
「させるかよ!」
「っ!ごほっ!ごほっ!」
レイがしていた固有魔法の詠唱も、口の中にすくった砂を高速移動したままぶつけてやる。不意をつかれたレイは抵抗できずにそのまま咳き込んでいる。なんだか悪役がやりそうな手段だが、なりふりかまっていられない。
「アハト君大丈夫!?」
「今さらだけどカムイだからな。周りは聞こえてないみたいだけど」
「あ、ごめん...」
「かはっ...どう...して...限定魔法は、剣を...作る、ものじゃ...」
「この移動方法か?遠くから見てなかったらわからないだろうけど...ただの魔法の応用だよ」
消費する魔力が半端ない上、使いこなせてもいないけどな。という言葉を飲み込む。わざわざ弱点を教える必要もないだろう。
ちなみに限定魔法ってのは、新魔がつかえる固有魔法のことだ。俺の『image・replica』や______
「応用って話なら、お前らの方が凄いだろ?相手の声を操る固有魔法と、動きを止める限定魔法。それらをバレないようにしてたんだから」
初めはレイの固有魔法が動きを止め、声も出なくなるだけだと思っていたが、違う。
(どうして気がつかなかったんだろうな。自分も同じものを使ってるのに)
限定魔法で動きを止めていたのは、新魔であるウィントだった。そして、レイが声を遮る魔法の使い手。
「ノクスとの試合の時、大会スタッフを止めていたのは場外にいたウィントだったんだな。お前はノクスの声を遮っていただけ...あの時あいつは数人の動きを止めて、この試合で片方ずつしか止めなかったのは、限定魔法持ちだとバレたくなかったからなのか、詠唱がバカみたく長いからとか、そんな理由か」
魔力の消費が並みじゃないってのもあるかもしれない。それなら、ユーノみたいな大きさの炎魔法を作る余力もそうないだろう。
「こほんっ...見破ったことは称賛します。ですが今攻撃しないで答え合わせしていたことを後悔させてあげますよ」
「答え合わせの方が大事だと考えただけだ。それに、俺もノクスを傷つけた分後悔してもらうからな。覚悟しやがれ」
こっちは実際に大怪我をさせるつもりはない。あんな奴と一緒になりたくないし、誰も喜ばないから。
だから、せめて。
「ふっ...勝てますかね?」
そう言って剣を構えるレイ。
(ならこっちだって!)
消してしまった白い大剣は思い出せず、馴染み深い相棒(エクスシア)を創造する。
(こっちも魔力切れが近いな...完璧な状態で作れるのはあと一本くらいか?強化魔法に使う力も入れると...もう作れないか)
なら、目一杯の力で。
「エクスシア!!!」
顕現させるのは自分が望んだ剣。その感触を確かめ、構える。
「ユーノ」
『fog・beast!』
彼女の方を見ると、詠唱がちょうど終わったらしく魔力の狼が三体出てくる。
「『fog・beast』もいれたら五対一だ。気楽にいこうぜ」
「う、うん...カムイ君」
「?」
「...ううん、後で言う。頑張ろうね!」
「ユーノ...あぁ!」
「------「させるかっての!」!」
相手が詠唱を始めた瞬間攻撃を開始する。相手は剣捌きは互角だが、
「------」
「ユーノ!」
「てやぁ!」
俺はエクスシアで、ユーノは短剣で、狼たちは体当たりで波状攻撃をかけるものの、流石に五対一とあって、同時攻撃をしかけるには限界がある。
「-----」
「ふっ!!」
力と力がぶつかりあい、周りの地面を陥没させる。それでも止まらずお互いの剣で弾き、いなす。周りの観客は一言も発することなく息を飲んでいた。
先に動いたのは、レイ。
『abuse・voice!!』
「!」
「!_____!!」
死にものぐるいで唱えた固有魔法により、周りの声はなくなり、相手と自身の呟きしか聞こえなくなる。これでユーノとは声で連絡が取れなくなった。レイの口角が上がる。
「これで終わりです」
剣を交わす回数、速度がどんどん上がっていき、ユーノが割り込む隙がなくなる。俺とあいつの一騎討ち。
「上等!!」
俺は『image・replica』を使っているから、あっちは剣に集中しているからか魔法は一切なく、剣劇だけが飛び交う。上から降り下ろし、下から跳ねあげ、横から勢いよく来る剣を必死で弾き、反撃に出る。剣がぶつかる回数が増え、一度の間隔が短くなっていく。
そんな戦況が動いたのは。
「なっ!!?」
「これで!」
エクスシアを真上に弾かれる。体勢が崩れた俺に止めを刺そうとするレイが、剣を真上から降り下ろす。
これ以上剣を作ることも、魔法も使えない。こっちが出来るのは、腕を犠牲にして体勢を立て直すくらいか。
(どうせ優勝すれば回復薬貰えるし、いいか...なんてな!)
魔法で誰にも聞こえない声で叫ぶ。
「諦めるか!!そうだろ!」
「なっ!ッッ!!」
「せやぁ!!」
俺の真後ろから、弾かれたエクスシアを持ったユーノが俺を飛び越えて前に出て、レイの剣を叩き折った。相手からしたら完全に不意をつかれた状態。固有魔法も消えていた。
「くっ...だがこれで終わりだね!」
折られた剣を捨て、ユーノに殴りかかるレイ。
それを俺は。
「例え声が届かなくても!」
「連携くらいしてみせるさ!」
ユーノの肩を掴んでそのまま飛び越え、レイの顔面に膝を入れてやった。「がぁっ!」と言って倒れこんだ所をそのまま馬乗りし、ユーノから受け取った短剣を喉元にピタリとつけた。
「降参しろ。それで終わりだ」
「大人しく負けを認めると?」
「固有魔法を続けられないくらいなくせによく言うぜ」
「...君らは強いね」
「......伊達に一ヶ月近くも一緒にいないってことだ」
試合の決着がついたのは、この直後だった。ふと相棒(パートナー)の顔を見ると、満面の笑みだった。
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「この試合、ユーノ、カムイペアの勝利です!!おめでとうございます!!」
『オオオオオォォォォォォォ!』
「終わった...」
「はぁ~...」
審判さんの声と、周りの歓声でようやく終わったんだと理解したのか、二人揃って地面に倒れてしまった。ウィントさんたちはもういなくなっていた。
「やったな」
「うん。やったね...ふふっ」
「なんだよ?」
「だってアハト君...あははっ!」
「なんだよお前!」
こんな場所なのに、土をつけた顔が面白くて笑ってしまうと、アハト君に怒られてしまった。
「全く...でもこれで、行けるんだな。やっと」
確かに、これで、新魔領、『クロスベル』に行ける。
「予定は二ヶ月くらいだっけ?全然早いじゃん!」
「ま、早いことにこしたことはないからな。それより演説用の原稿とか、今から練っといた方がいいんじゃないか?」
「う...善処します」
「では、このまま表彰に入りたいと思います。が、その前に!」
私たちが倒れながらまったり話している空間を壊したのは、
「イチャコラしてないで早く立った立った!」
「「!!!」」
圧倒的なまでの魔力と、ザンッ!!という何かを地面に叩きつけた音。
「これは...」
あわてて立ち上がると、入口で仁王立ちしている人が______
「満足するのはまだ早いよ?」
自分の背丈とは不釣り合いなくらい大きな斧を持ったメイルさんと、その後ろいるノクスさん。
「これより、最後のアフターマッチを開催します!」
「さぁ、第二ラウンドだ!」