アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
「...お疲れ様」
「「「お疲れ様でした...」」」
アフターマッチ、結局勝ったのはメイルさんとノクスだった。いや、ユーノとノクスはお互い首もとすれすれに短剣を当てていたので引き分けだったが、俺の方が魔力切れを起こしてメイルさんにやられたので、言うなれば俺一人だけ負けだった。
「...ユーノとももっと戦いたかった」
「何バトルジャンキーみたいなこと言ってるの?」
「...ノクスには言ってない」
「むー!」
「あはは...」
で、今現在はメイルさんの家に戻って小さなお疲れ様会を開いていた。大会の方でも用意されていたらしいのだが、メイルさんが「そんなのめんどいからパス!」と言ってこっちになった。俺としても助かるけど、あんな試合を設定してくれた人達に対してそれでいいのかは疑問だ。
「アハト君食べないの?」
「いや、食べる」
「じゃあ食べられる前にチキンを全部貰って「...よくない」そ、そんなっ!」
ノクスの目の前にあったチキンを盛られている皿が、メイルさんの手にわたる。二人の視線はぶつかって今にも火花が散りそうだった。
「メイルさん。一つください」
「...はい」
「ありがとうございます」
「アハトは良いのか!」
「...独り占めしないから」
「あんなこと言わずに黙って食べれば良かったのか!」
「ノクスさん。落ち着いて...私の鳥あげますから」
「ユーノちゃん優しい!大好き!」
「えへへ...」
「...三歳も年下の子からご飯を奪う貧乳」
「......言ってはいけないことを言いましたね?」
「...ヒュー、ヒュー」
「口笛吹けないならするな!」
「ぷっ、あははっ!」
あまりにも面白くて思わず笑ってしまう。家族みたいで良いなと思った。
「アハトも笑ってんじゃない!私より貧乳の癖に!」
「よしお前表に出ろ潰してやる」
「望むところよ!」
「二人とも止めてくださいー!」
「...やれやれー」
「メイルさんは煽らないで下さい!!」
夜が更けるのはあっという間だった。
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_____二日後の朝。
「...準備は出来た?」
「はい」
「といってもすぐ町だからさほど準備もしてないがな」
「あっちで買うんでしょ?」
「多分、あっちの方が良いのが揃ってるから」
私達は、旅の準備を、軽くだけどしました。
メイルさんとの勝負に負けたので、てっきり魔法は使ってくれないのかと思ったのだけれど。
『え?誰も負けたらダメとは言ってないよ?ちゃんと運ぶよ。気が変わらない内に早くした方がいいよ?』
と言われて、慌てて買い物をしたのが昨日。軽い食料や必需品を揃えました。
「服も新しくなったし!」
「ここタグついてる」
「え、マジで?」
一番問題だったのは、アハト君の背中が炎魔法で焦げた服だったのですが、
『大会優勝者が着ていた服が貰えるならそこら辺の服持ってっちゃっていいわよ!出血大サービス!!』
なんて私がアハト君用のコートを買ったときのお店のお姉さんに言われ、同じ物の新品(サイズはまたバッチリ!)を頂きました。
「...いい?」
「「はい!」」
「はーい」
「...ノクスはここで一生暮らす?」
「ごめんなさい」
「...そういえば」
「ちょっと待ってて」と言って家に入るメイルさん。戻ってくると、その手には色んな物が入っていた。
「...私からのプレゼント。ノクスにはこれ」
そういって渡したのは、先から手元にかけて少し台形の形をしていて、刃の部分が透明な剣。
「これは...」
「...元は籠手を使っていて今は短剣にしているけど、こういうのがあってもいいと思って」
「これ、私に?凄く良さそうなやつじゃん」
「...『遺産』だし「ぜひください!」はい」
「ありがとう!!」
「わーいわーい!」と叫んでるノクスさんにアハト君は「子供かよ...」と言いたげな顔をしていた。
「...アハトにはこれ」
「?...これはっ!」
続いてアハト君に渡されたのは透明な石。よく見なければ持っていることすら分からない。
「...それで剣を作れば、今より強くなれる」
「ありがとうございます」
よく分からないものを渡されたアハト君は妙に嬉しそうだし。
「あれ透明結晶(クリスタ)だからね」
「え!?」
ノクスさんの耳打ちでようやく理解した。メイルさんの武器にも使われていた魔力を流すことで力が強くなる物質、それでもしアハト君がエクスシアを作れば。
「そしたら喜ぶよね...」
「そういうこと」
「...ユーノには、これを」
「これは...」
メイルさんが渡してくれたのは、少し小さめの杖。
「...多分、今持ってるけど使ってない杖よりは強い。制御もしやすくなるはず」
「ありがとうございます!メイルさん!」
「...今の杖はくれる?」
「え、でも...」
これは使ってないとはいえ練習に一番付き合ってくれた、アハト君風にいうなら『相棒』みたいなもので。離したくないからか少し体に力が入る。
「...次会う時までに、これを...バルバトスを作ってくれた人に強化してもらうから」
「そういうことなら...お願いします」
メイルさん自身もだけど、その武器もとても強い。それを作った人にやってもらえるなら。と思い、メイルさんに杖を渡した。
(...次使うときは、もっと上手くなってるからね)
「...別れる前に、改めてお詫びをさせてほしい」
「しょうがないですよ。『レベル山脈』を越えられるだけうれしいです」
それは昨日、メイルさんから言われた真実。
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「ごめんね。実は、あなたたちを王都まで運ぶことは出来ない」
「え?なんで!?」
「私の固有魔法、『nephrite・enable』は、自分の記憶している場所にしか行けないんだ。でも、あっちの王都なんて覚えてないし」
「そんな...」
「代わりに、『ヘルシンキ』になら運べるから、そこで我慢してほしい」
「『ヘルシンキ』か...」
「アハト?」
「その町で構いません。以前王都からそこまで行ったことがありますから」
「ごめんね...」
「運んで貰えるだけ十分です」
「ちなみに、なんでそこは覚えてるの?」
「景色が綺麗だったから」
「えー...」
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「あ、俺からも渡すものがあった」
「「「?」」」
「すいません。メイルさんには無いですけどね...これ」
アハト君が私とノクスさんの手に何かを握らせる。渡してきたのは、天使の羽の形をしたペンダント。
「...!」
「凄い!くれるの!?」
「この町に着いてから作ってもらってて、昨日受け取りにいったんだ。お前らのために作ってもらったから...もらって欲しい」
「...うん!」
「ありがとう!」
「...どういたしまして」
アハト君は恥ずかしそうにそっぽを向いてしまった。それが女の子らしくてノクスさんと笑ってしまう。
「なんだよお前ら」
「なんでもなーい!」
「...じゃあ、今度こそやる。手を出して」
話を遮られ、ペンダントを胸元に着けてからメイルさんの言われた通り、三人で手を出す。メイルさんはその手を一つに重ね合わせ、自分の手も重ねる。
『--------』
そして、短い詠唱の後_____
「...じゃあ、頑張ってね。ユーノ、ノクス、そして_____」
「ッ!!」
メイルさんが、アハト君に何か耳打ちしてから_____
『nephrite・enable』
辺りが光で満ち溢れ、次の瞬間_____
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「ふぅ...ととっ」
一瞬体が浮き上がった感覚がしてから、足が地面につく。目の前にいたメイルさんは消え、代わりに森林が視界に入った。
「これが瞬間移動...」
「変な感覚だね」
「楽しかったー!」
「遊びじゃねぇぞ...」
「...それより」
「「?」」
「...着くのって、町じゃないんですか...?」
「「あ」」
ユーノに言われてなんとなく後ろを振返ると___________
「わぁー...」
「綺麗...」
俺達がいたのは、対岸が見えないくらい大きな湖と、その手前にある町を一望できる崖、だった。太陽が反射してキラキラと光っている景色はまさに絶景。
「これは確かに覚えるよねぇ」
「そうですね...あれ?」
「ん?」
「...アハト君、『ヘルシンキ』ってどこ?」
「あ...確かにここ崖と森しかないじゃん」
「......すぅー....はぁー...あそこ」
「え」
「あそこは...」
俺は動揺していた心を落ち着かせ、二人の質問に答える。指さしたのは、さっき見た湖手前の町。
そして俺は、メイルさんの元に届けと祈りながら叫んだ。
「景色が綺麗だからって、町から遠い所に送るなよぉぉぉぉぉ!!!」
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「...ちょっといい?」
「......どちら様ですか?」
「...この町にアイオス・アインツはいる?」
「アイオスさんなら、奥さんと一緒に王都まで新婚旅行に行きましたよ」
「...そう」
「それであなたは...ッ!?消えたっ!?」
「パパー!」
「...リーゼ」
(今のは気のせいなのか...いや、そんなはずはない。それに、どこかで...)
「?どうしたの?」
「...いや、なんでもない。暗くなる前にキノコたくさん取るぞ?」
「はーい!」
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「進路を変更してくれる?」
「よろしいのですか?急いで向かわなくて...」
「アレができたのよ」
「「!!」」
「それは、つまり...」
「少し寄り道しましょう?」
三章が終わりましたが、悲しみにくれたほうこくが...
これを作ってる携帯がこわれ始め、書くのがかなり辛く、更新頻度が格段に下がります...
続けていくつもりではあるので、今後ともよろしくお願いいたします。