アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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四章『ヘルシンキ』
新魔領『ヘルシンキ』


「着いたー!!」

「長かったね...」

「本当だぜ全く...」

 

メイルさんの魔法で崖に送られた俺達は、結局『ヘルシンキ』につくのに五日もかかってしまった。今度あったらぜひ文句を言ってやりたいものだ。

 

「でも、これでようやく...」

「そこの者、ここは新魔以外は入れないぞ」

「 「え?」」

 

いざ町に入ろうとした瞬間、町の兵士であろう男が二人、旧魔であるユーノの道を塞いでいた。ノクスは人間だと気づかれなかったらしい。まぁ、角が出てる旧魔は目立つから仕方ない。俺は無言で服についているフードを深く被った。

 

「なんでですか?」

「この町は元から新魔以外受け付けていないからだ。さぁ帰ってもらおう!」

「えぇと...ちょっと待ってください!ここまで来たのに行きなり帰れなんて酷くないですか?」

「我々にそれを言われても困る。大体ここに来る前にも言われた筈だぞ。それを聞いてなかったのか?」

「嘘...」

「...ねぇ、どういうこと?」

 

ユーノと兵士が言い争っている傍らで、俺はノクスが聞いてくる質問に答える。

 

「どうって、何が?」

「なんで旧魔はダメなのかってこと。この前までいたところは色んな種族混ざってたし」

「...一番の原因は、資源だな」

「資源?」

「ここの湖は、対岸が見えないほどだっただろ?確か世界で一番大きいんだよな...そこから取れる魚とか、資源とかを多種族に横取りされないため、他の所より警備が厳しいんだろ...そんな差別するのは悪いことだが、旧魔を快く思ってないやつらもいるし、自分達が良くないことをやってると分からないんだろうな。そういうのがたくさんいるからやれ戦争だ、なんて言うやつが多いんだが」

「成る程...」

「ま、勝手なことしやがって...前来た時は新魔だけだったし、こいつは想定外だったな...しょうがねぇ」

 

ため息を着いてから、兵士の肩を叩く。

 

「なんだ?」

「というかあんた知り合いなんだろう?もしあれならお前も戻らせるぞ」

「...その旧魔の胸元を見ろ」

「一体なにを...!!」

「なっ!!」

 

耳元でささやき、疑いを向けていた奴らが目を見開く。いくらバカなこととしか思えないことをしてても、国の規定は覚えていたらしい。

 

「俺は彼女の護衛だ。そんな長居をするつもりはないし、とっとと通せ」

「し、しかし...」

「ほら、さっさとする。頼んでクビになるぞ」

「し、失礼しました!」

「どうぞお通りください!」

 

胸元の二本線が刻まれているバッジをつつきながらからかうように言ってやる。それを聞いて慌てて離れる二人。

 

「カムイ君?」

「あんたなに言ったの?」

「別に、どうってことないさ」

 

今度は彼女達の怪しむ目から離れるように、俺は町の中に入っていった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「崖で見たときも綺麗だったけど、ここから見ても凄いね」

「町の中に水が入ってる!」

「近くに湖があるんだ。こういう風になるのは当然といえば当然だろ」

 

灰色の石畳の道に、水路が入り組んでいる。家の色は白が多く、まさに水の都、といった形だった。

 

「さてと...お前らは市場にでも行ってこい。あっちにあるから」

「ア...カムイ君は?」

「前にこの町に来たことあるって言ったろ?その時できた友人に会いに行こうかな、と」

「カムイの知り合いとか、それはそれで気になるんだけど...」

「言われなくても後で会わせてやるから、その前にお前らは行ってこい。きっと気に入るから」

「へー...期待しとこ」

「じゃあ後でね」

「その前に...これかぶっとけ」

「わぷっ」

 

ユーノの頭に被せたのは、縦に長い帽子。今『image・replica』で作り上げたものだ。

 

「これなら旧魔だってバレることもないだろう?」

「...ありがとう!」

「おう。じゃあ後でな」

「うん。ほらユーノちゃん、行こう?」

「はい!」

 

十字路をユーノ達はまっすぐ進み、俺は右側の橋を渡る。思い返すのは白に近い灰色の髪をなびかせる一人の少女。

 

(来たのは確か半年近く前か...元気でいるだろうか?)

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「うひゃー!」

「随分と活気がいいね」

 

私とユーノちゃんは、アハトが言っていた市場にたどり着いた。大きな湖の隣だからか魚なんかがところせましと並んでいる。ユーノちゃんの目が心なしかいつもより輝いているように見えた。

 

「てかいつもはそんな声出さないでしょ」

「あ、すいません...なんだか嬉しくなっちゃって」

「確かにお店いっぱいだけど、この前の『アースラ』のお祭りだってそんな変わらないんじゃ?」

「あそこの目的はあくまで大会だったので...それに、ノクスさんと二人きりでこんなところこれるなんて思っていませんでしたから」

「...可愛いなぁもう!」

 

帽子が飛ばないように気をつけながら頭を撫でると、「えへへー」と緩みきった顔を見せてくる。なにこのかわいいの。私知らない。

 

「しっかし、アハトが言ってたのも分かるわ...」

「そうですね...一つ一つ見ますか?」

「そうだね。適当に歩こうか」

 

ひとまず手前の店から見ていくことにした。食料品のお店やアクセサリーを扱うお店。スパイス専門店なんかもあった。

 

「まさか同じ人形しか売ってない店があるとは...」

「少し怖かったです...」

 

そして、中央の広場着いたとき、その言葉は聞こえてきた。

 

「それではこれより、本日取れたばかりの『遺産』オークションを開始します!」

「......」

「あ、ノクスさん!」

 

私は、全てを忘れて走り出した。

 

メイルから貰った剣を抜く時より早く財布を開け中を確認。『アースラ』で指輪とか買っちゃったから30000ウル、何か安いのを二つ三つ買えそうなくらいはあった。

 

ここの通貨はウルと呼ばれ、新魔も旧魔も統一されている。世界で有名な『うめぇ~アイス』が50ウルで、一般的な『遺産』の相場は、物にもよるが安いもので1000ウルはする。

 

(オークションだから、それよりさらに上がるよね...)

 

声がした方に走り出してからオークション会場はそう遠くなくすんなり辿り着けたものの、既にオークションは始まっていた。

 

ちなみに、ここまでで数分かかっていない。

 

「遅かった!いや、まだ間に合う!」

「ノクスさん速すぎです...」

「じゃあこの魔石コップセットは5000ウルで落札だ!次いくよ!これは今日のの目玉!」

 

司会者がバサッと上にかけられていた赤い布を取ると、中からさらに赤い布が出てくる。

 

「強力な対魔法が施された布だ!家一つ燃やせる炎魔法を耐えてみせたから性能は折り紙つき!料金は10000ウルから!」

「すご...」

「そんな布、存在するんですか?」

「軽い物を防げるなら知ってるけど、ここまでするとは...15000!」

「ノクスさん!?」

「あいつには内緒にしてね?」

 

その後も値段は上がっていき、あっというまに27000ウルまで上がってしまった。

 

「こうなったら...」

「ノクスさんこれ以上は!」

「...ここで退くなと私の心が叫んでいるんだ!」

 

いつのまにか、私も会場のテンションに乗せられていた。だがもう止まらない。

 

「「30000ウル...え?」」

 

高らかに全財産をかけると同時、隣から声が上がる。かわいい髪飾りをつけ、サイドテールを揺らす灰色の髪に、サファイアのように濃い青の瞳をした女の子。その顔はとても真剣だ。

 

「貴方は...」

「31000ウル」

「ちょっ!?」

 

こっちを見ることなくお金を釣り上げる彼女。対して、私の残金は。

 

「...ユーノちゃん!」

「あげませんよ」

「くっ......こうなったら、あいつに借金すれば」

「カムイ君がお金貸すと思いますか!?」

「だがしかし...」

 

 

 

 

 

「あの、カムイってカムイ・テイカーですか?」

「「え?(へ?)」」

 

高まっていた口論に割り込んできたのは、さっきの女の子。顔も体もこちらを向けており、複雑そうな顔をしている。

 

「えーとっ...そうだけど?」

「...先輩が、この町に来てるんですか!?」

「「先輩?」」

 

普段使われない言葉に私達は思わず聞き返してしまった。

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「で、ここにいなかったんだな」

「お久しぶりです先輩」

「えーと...色々聞きたいことがあるんだけど、二人は知り合い?」

「あぁ。俺が会おうとしてたやつだよ」

「初めまして、ミディナ・マキです。この店の店長をやってます。ミディナって読んでください」

 

そう言って自己紹介するミディナ。『遺産』のオークションをやってたらしく、そこで出会った三人は俺の元______ミディナの家である料理店に戻って来た。若干一名ご立腹だが。

 

「ねぇ、なんであんたが向かう先が『遺産』を取り扱ってる店だって言わなかったの?」

「忘れてた」

「今では夜バーもやってます。私カクテル作るの上手いんですよ?」

「未成年なのに?」

「味は保証されてます」

「...まぁいいか。それで?」

「......なんでもないですぅ!」

 

そいつは俺の一言に言い返せないらしく、悔し涙を流していた。

 

「そこにいるのはユーノ・アインツで、こっちがノクス・アカーディアだ」

「ユーノ・アインツです。よろしくねミディナさん」

「二人は同い年だぞ?」

「え、そうなんですか?」

「じゃあ...ミディナちゃん?」

「うん。よろしくねユーノちゃん!」

 

二人は仲良く握手していた。こいつはユーノが帽子をとって旧魔だと分かっても態度を変えるようなやつではないだろうし大丈夫だろ。

 

「でもすごいね、14歳でお店営業してるの?」

「私も今はこの町の周りを冒険して出資はなんとかなるし、友達も手伝ってくれるから」

「へー...」

「...なんで先輩って呼んでるの?」

「それは先輩が剣の指導をしてくれたからです」

「といっても半年近く前にちょっとやっただけだけどな」

「私にとってはかなり本格的な内容だったので。あれから魔物に会っても動じなくなりました!」

「そいつはよかったな」

「はい!」

「アハトって意外なところに人脈あるんだなぁ...」

「あ、バカ!」

「アハト...?」

 

ノクスの間抜けな一言で、俺とミディナが固まる。

 

(余計なことを...)

 

「教えてなかったの?」

「まぁな...アハトは俺の本名だ。騙してて悪かったな」

「アハト、アハト...どっかで聞いたことあるような...」

「どこら辺にもある名前かなぁ?」

「...というか、怒らないのか?俺は今まで...」

「カムイさんでもアハトさんでも、先輩であることに代わりはありませんから」

「そうか...ありがとう」

「いえいえ」

 

(...こいつ疎くてよかった)

 

首を横にふるミディナに、感謝だけ表す顔をするのはかなり苦労したのは内緒だ。

 

(バレてもいいが、それはそれでめんどくさいし)

 

「それにしても皆さんどうやってこの町まで来たんですか?今通行止めされてるはずなんですけど...」

「「「へ?」」」

 

今度は俺を含めたミディナ以外の全員が、ピタリと動かなくなった。

 




あけましておめでとうございます!

投稿開始からもうすぐ一年...早いものです。

ことしもまたこの小説、よろしくお願いいたします!
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