アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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古跡(ファーデン)

「それにしても皆さんどうやってこの町まで来たんですか?今通行止めされてるはずなんですけど...」

「「「へ?」」」

 

ミディナちゃんの言葉に皆が固まった。

 

「あ、でもあそこの門番だけだろ?」

「いえ、町に入る前の通りで三重の関所ができています。今は商人くらいしかこの町に入ってこれませんよ。逆に出ることも出来ませんが」

 

恐らく、私達が降り立った場所は二つの関所を抜けた先だったのだろう。

 

「へ、へー...」

「...不法侵入?」

「ええぇっ!」

「に、なるよなぁ...いや、そんな法律あったっけ?」

 

万引きはやっちゃダメとか基本的な法律はあるけど、国に入っちゃダメとかあるのかは知らない。アハトも知らないようで、首を捻っていた。

 

「先輩方!?大丈夫なんですか!?」

「バレなきゃ平気だろ」

「無茶苦茶な...」

「...ミディナ、帽子あったら持ってきてくれるか?」

「はい?どうしたんですか突然?」

「いいから」

「は、はい」

 

ミディナちゃんがしぶしぶアハトの言う通り帽子を取りに部屋を出る。すると、アハトがこっちに手招きしてきた。私達はそれに寄る。

 

「なに?」

「ミディナにはユーノが旧魔だって正直に話した方がいいと思う。どうせユーノが旧魔ってことは言わなきゃいけないし。少なくともそのうちバレるし」

「嫌われないかな...今せっかく友達になったのに...あぁでもやっぱり」

「こんなところで弱気になるなっての。大丈夫さ」

「...それで、どうするの?」

 

アハトとユーノちゃんの漫才もどきを止め、話を進ませる。

 

「とりあえずなんで通行止めされてるかを聞いて、俺達ができる問題だったらやろう。違うなら通行が出来るようになるまで休む」

「バッサリしてるね...」

「実際これくらいしか考えられないが、なるべく早く移動した方がいいからな」

「そうだね」

「じゃあそれで」

「「うん(はい)」」

「先輩、とってきましたよ?」

「サンキュー」

 

アハトがミディナちゃんから帽子を受け取り、

 

「じゃあ、いいか?」

「...うん」

「どうしたんですか?...っ!」

ユーノちゃんに許可をとってから、『image・replica』で作っていた帽子を消した。驚いた顔で固まるミディナちゃん。

 

(新魔がどんな反応するのか全然知らなかったけど、この感じだと...)

 

まじまじと見られるユーノちゃんは獣に睨まれて怯えているように体を震えさせている。

 

でも、そんな心配は杞憂に終わった。

 

「わぁー!それ旧魔の角ですよね!おっきい!!」

「え?」

「いや私前から旧魔の角見たかったんですよ。こんな髪で隠れちゃうやつじゃなくて存在感あるやつが。初めて見ました!」

「大きさは人によって違うから...それよりミディナちゃん、怖くないの?」

「へ?なにが怖いの?」

「そ、その...私、旧魔なんだよ?」

「ユーノちゃんが旧魔だからって怖がる理由なんてないよ?むしろかわいい!」

「...ありがとう」

「やっぱり大丈夫だったろ?」

「うん!」

 

興奮するミディナちゃんに、安心するユーノちゃん。二人を見るアハトの目を見て私も安心した。

 

「それじゃあ、本題に入るか...ミディナ、どうして通行止めなんてしてるんだ?」

「本当に知らないんですね...このすぐ近くの森で、古跡(ファーデン)が見つかったんですよ」

「それ本当!?!?マジックアイテムいっぱいなの!?!」

 

ガバッとミディナちゃんの元まで詰め寄り、目を開きながら訪ねる私。ミディナちゃんはそれに対してかなり顔をひきつらせていた。

 

「えぇーっと...はい」

「アハト君。ファーデンって?」

「知らないよな...簡単に言えば、『遺産』が同じ場所にたくさんあるところだな。お宝取り放題的な?」

「だからノクスさんあんなに...」

 

ユーノちゃんの目が少し冷たい気がしたが、気にせず無視しておく。

 

「死活問題なんだろ、きっと。それよりどうしてそれで通行止めになる?」

「理由としては二つありまして、一つは利益の独占ですね。噂を聞き付けた旧魔が入ってこないようにという話らしいです」

「だからオークションやってたんだね」

「またそういうのやってんのか...」

「ここの人たちマジ許さない。取られる前に取ってくる」

「お前もかなりわがままだから。少し静かにしろ」

「はーなーせー!」

 

アハトは外に出ようとする私の首根っこを掴んでくる。あっさり捕まったお陰でまともな身動きも出来なくなってしまった。渋々動きを止める。

 

「で、理由はそれだけじゃないんだろ?」

「はい。もう一つは...といっても、こっちが主な理由ですけど...魔物の数が異常なんです」

「魔物の?」

「はい」

「ミディナちゃん、魔物って古跡にいるの?」

「今回見つかった『遺産』の場所は洞窟で、そこを住みかとしていた魔物が多いんだ...ただ、数も強さも普通じゃなくて。けど、町の遠くに逃げ出すと隣町なんかが危険になるからここで倒そうとしてるの」

「で、魔物の逃げ道を塞いでる、か...ぶっちゃけ人間が越えられなさそうな山くらいは越えそうだけど」

「そこまではもう責任取れないみたいですけど...」

「魔物は倒そう!強い魔物がいる古跡は良い『遺産』が多い傾向あるから!」

「そうなのか?」

「一応私も聞いたことはあります」

 

私の力説にアハトは疑問を浮かべ、ミディナちゃんが返答する。それに「へー」と感心したように呟くアハト。私の話は信用ならないのか。

 

「でも、だからこそより独占しようって声が高くなるんですよね...」

「悪循環だな」

「そうですね...おまけに、まだ治癒薬なんかの有効な物とかがあまり出てないらしくて余計皆に火がついているんです。うちもあまり良いものは...」

「あるの!?見せて!」

「あ、分かりました。ちょっと待っててくださいね」

 

そう言ってミディナちゃんが奥の部屋に行き、しばらくすると両手に色々持って戻ってきた。

 

「お前が古跡から取ってきたのか?」

「私も一応戦えますからそれもありますし、オークションで買ったのもあります。ですが今回は武器なんかが少なくて...さっき買った魔力で温めることができるコップとか、魔法に耐性のある布とか、丸いのを半分に切ったみたいな宝石とか色々です。使い道が分からないのが多いですけど」

「うーん...」

 

ごそっとテーブルに置かれたものを一つ一つみると、確かに何に使うか分からないものが多かった。

 

「普通は一緒に説明書みたいなのが埋められてあるんですけど...かなり離れた場所にあったり、まだ見つかって無かったり......」

「そのぶんさらに貴重な物が眠ってる可能性があると考えてるわけか...本当にあったらとんだお宝だな」

「ん?これは...」

 

二人の会話を聞き流しながら、持ってきて貰った物を見て、少し薄っぺらい丸をした赤色の宝石を手に取った。

 

「あ、それは私が自分で手に入れたやつです」

「部屋の飾りにしか見えないんだが...」

「これ、もらっていい?」

「私は先輩の言う通り部屋の飾りにしか使えないと思ってるので、そんなもので良ければどうぞ」

「ありがとう」

「物好きだな...そんなものでも欲しいのか?」

「個人的にほしいのもあるけど、今回は...っと」

 

宝石を、朝からつけていた私の小手にはめる。それはカチリ、と音を立ててはまった。

 

「「!!」」

「やっぱり」

 

内心全力で叫びたくなったが、驚異(私の中で)の自制心で抑え込む。

 

「これ、小手にはめる物だったんですか?」

「勘でやっただけだけどね。これで性能上昇とかなら嬉しいなぁ...」

「...なんかもっと嬉しがるかと思った」

「いや、嬉し過ぎて冷静なだけ」

「あ、そう...」

 

答えを聞いたアハトは呆れた様にそっぽを向いた。

 

「それでアハト君、これからどうする?」

「俺らが出来るとしたら魔物退治だなぁ......わかった。古跡にも行くからその目をやめろ」

「やったー!!」

 

私のお願いする瞳にアハトが折れた。

 

「いいんですか?」

「どうせ動けないなら、こいつは一人で行きかねないからな。ミディナ、道案内頼めるか?」

「それは構いませんけど、せめて明日からにしましょう。今日これから行ってもすぐ暗くなってしまいますし。寝床はここで良ければ使ってくれて構いませんから」

「いいのか?助かる」

「いいのミディナちゃん?」

「もちろん!」

「ありがとう!」

「私は泊まらせてくれるなら床でいいから」

「ちゃんと人数分布団用意しますよ!」

 

それから私達は、『遺産』を取るため、そこに住む魔物を狩るために必要なものを買いに行ったりした。

 

どっかの誰かさんのせいで、森を移動してから町についたから。なんて言葉は、私の優しい心によって留めておくだけにした。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「にしても、バーやってるとはな...」

「本当に手伝わなくて良かったのかな?」

「本人が言ってるんだし、大丈夫だろ。ふぁーあ...」

「寝不足?」

「いや、ただ眠いだけ」

 

アハト君があくびをしながら布団に入る。

 

ミディナちゃんの家で寝ることになったものの、空き部屋がないため皆で同じ部屋で寝ることに。二人より小さい私と、この家の主であるミディナちゃんが一つのベッドに、アハト君とノクスさんはそれぞれ用意された布団で寝ることに。

 

今ミディナちゃんはバーを開店させていて、私達がお店を手伝うか聞いたものの丁重に断られ現在にいたる。

 

「明日は朝から忙しくなりそうだし、早く寝ろよ?お休み...」

「凄い妨害したくなるんだけど」

「明日相手してやるから」

「私を構ってちゃんみたいに言わないで!」

「はいはい」

「全く分かってないでしょ...私も寝ようかな」

 

お風呂上がりで髪を乾かし終わったノクスさんも、アハト君の隣にしかれた布団にもぞもぞと移動する。

 

「年上組が先に寝ちゃうのもあれだけど...ユーノちゃんも早く寝なよ?」

「はい」

 

それから二人が目を閉じて五分。アハト君は「すー、すぅー」と寝息を立て始めた。

 

「よし、おしまい」

 

二人より髪が長いため時間がかかってしまったが、それもようやく終わった。私もベッドの中に入る。

 

ミディナちゃんを待ってようかと思ったが、「先に寝ていてください。明日は早いですから」と本人に言われているし、何より睡魔には勝てなかった。徐々に視界が暗くなっていく。

 

(でも、軽蔑されなくて良かった...)

 

頭から生えた旧魔特有である大きめな角を触りながら、私はそんなことを考えていた。それからいつ寝たかは覚えていない。

 

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