アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
「...朝?」
目を覚まし、眠気眼を擦りながら辺りを確認する。部屋の窓からはカーテン越しにうっすらと明かりが指しており、朝日が出たばかりなんだろうと回らない頭で考えた。
日の明かりで照らされている所にはベッドで寝ている二人が見える。どっちも熟睡しているようで、小さな寝息がたっていた。
(かわいい...じゃなくて。なんだか慣れたなぁ...)
一月くらい前までは一人で寝て、一人で起きる生活が当たり前だったから、起きたら両親以外の誰かの寝顔を見ることなんてなかったし、そうなるなんて思わなかった。
(人間の適応力って高いなぁ...って)
少し感心しながらさらに辺りを見ると、隣の布団の中がもぬけの殻だった。そこに寝ていたのは黒髪の_____
「...アハト?」
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「アハトー?いるー?」
二人を起こさずアハトを探すため静かに家の中を探したものの、どこにも見当たらなかった。あと探してないのは家の外。
「うぅー...寒っ!」
家の扉を開けて外にでる。日が出たばかりの朝は、寒くなっていく季節と相まって想像以上の寒さを作り出していた。あまりの寒さに思わず声が出てしまう。
しかし、目的の相手は直ぐに見つかった。
「お前の服は薄衣だからな。流石に朝は体に堪えるぞ?」
「...アハト」
家のすぐ前でいつもの黒いコートを纏い、片手に透明結晶(クリスタ)を持った彼女が声をかけてきた。
「練習?」
「あぁ、思ったより早く起きちゃってな。少しでも上手くしないと...」
苦笑しながらそう答えてくる。練習というのは、彼女の魔法、『image・replica』で透明結晶を作り出すこと。
この町に着くまでも、このあいだメイルからもらった透明結晶を参考にしながら何度か作ろうとしていた。時にはメモ張にスケッチをしてイメージを膨らませていたり、実際に作ってみたり。
「順調なの?」
「バッチリ...と言いたいが、見た目がそっくりの物を作れても、魔力を通すと割れてばかりでな...魔力に対する強度が本物より相当足りない」
「本来今の人の技術で作れるものじゃないから『遺産』なんでしょうが...」
希少性が高く、ただの石のように見えて魔力を一時的に蓄え、自身の強化に使うことができるこの結晶は、挑戦してもそう簡単に作れる物じゃない。
魔力を流し込むこと自体は、強化魔法と同じ無属性しか流せないので簡単、らしい。魔力を使えない私には分からない。
話している間も彼女は練習しているようで、もう片方に同じ大きさの石が現れる。確かに見た目はそっくりに見えた。
その透明な石が白く光る。それは魔力が送られている証拠。しかし数秒経たずにパキンと音がして、急速に色を失った。たぶん割れた所から魔力が漏れてるのだろう。
「な?」
「確かに...」
「今のこれを使うなら普通に剣を作った方が硬い。問題はこれをどこまで強くできるか...」
アハトは自分の作る剣に透明結晶を使い、魔力を注ぐことで今より強い剣を作ろうとしている。それこそメイルの斧、バルバトスに負けないくらいのものを。
「この前作った大剣は?」
「そっちもな...あの時は無我夢中で作れたけど、今は大雑把な輪郭しか思い出せない」
この前出た大会で、こいつは輝く大剣を作っていた。私は魔力が使えない人間だから魔力を正確に感じられないけど、緊張とか、相手を怖く感じるかなんかで大体を分かる。そしてあれは遠目から見てもかなりの存在感を放っていた。
「まぁ、俺の魔法じゃ一つしか作れないから、剣が二本あっても意味ないけどな。元は二刀流だったんだが...」
「え、そうなの?」
「ホントに剣を始めたばかりはそうだった。『image・replica』が使えるようになってからは止めてるが。」
「へー...」
意外な事実に相槌を打っていると、アハトが少し躊躇いながら、それでも笑顔で声をかけてくる。
「...それより、せっかく起きたんだしやらないか?」
「何を?」
「...一戦な?」
それからこいつは嬉しそうにエクスシアを作って構えた。私は軽くため息をつく。
「戦闘狂じゃあるまいし、今日古跡(ファーデン)行くのにやるの...やるけど」
私も小手をはめ直し、腰につけていた剣______先が少し幅があるため、槍のように使うこともできそうなメイルからもらったもの______を構える。
実際に少し実戦形式でやりたかったという思いはあった。私の戦い方はこの間教わったばかりで、技術の飲み込みが早いと言われたとはいえ不安だったから。
どちらからということはなく一歩動き出し、すぐに二つの剣が激突する。
アハトの戦い方は、『image・replica』で作ったエクスシアでの近接戦闘。その間強化魔法以外は使えないらしい。
(そういえば、電撃も出来るんだっけ...まぁいいや。使いこなせなければ変わらないし)
私は魔法が使えないのを補うため、相手の死角に自ら入り、気づいた時には剣が迫っているように錯覚させるメイルから教わったトリッキーな近接戦闘。この前はユーノちゃんといい勝負をすることができた。
どっちも近距離が得意な人達なんだから、こうなるのも当然だった。アハトは遠距離だとなすすべない私に合わせてくれたのかもしれないけど。
それより、腹が立ったことが一つ。私はその事をアハトの死角、身長的にギリギリ見えないであろう左下に滑り込みながら叫ぶ。
「でも、せっかくの練習なのになんで透明結晶使わないの!?」
「お前に砕かれるのは嫌だ!」
アハトは驚くものの、かろうじて剣を合わせてくる。
「なにそれ!?」
「ただの俺の思いだよ!」
気持ちが高まってお互いに声を荒くしながら剣を交える。
(でも、私には使いたくないってそれ舐められてる!?)
「こっのー!」
「...っ!!?」
腹が立って思いきり自分の剣を振りかぶって叩きつけようとする。しかし、アハトは急に後ろに下がってしまった。
「避けんじゃない!」
「...殺意溢れてるやつに言われたくないわ」
呆れてるように見える彼女に剣を向け_______
「しかも魔法使えないのに、炎向けてくるんだもん」
「ええぇ!?」
自分の視界に入った剣は確かに炎に包まれており、自覚した瞬間熱さも伝わってきて思わず落としてしまう。
ガチャンと音を立てて落ちた剣から徐々に炎が消え、やがて完全になくなった。
「...」
「...これは」
自分が魔法を使えないのが分かっているからこそ、あり得ない現象に固まる私と、何かを考えるように顎に手を当てるアハト。
「先輩、ノクスさん。ご飯出来ましたよ」
「あ...ミディナちゃん」
家から出てきて現れるミディナちゃん。いつの間にか起きていたらしい。
「...ありがとうミディナ。ノクス、とりあえず飯にしよう」
「う、うん...」
戸惑っていた私にアハトが声をかけくれたことで、ひとまず落ち着く。
なぜ炎が出たのか、それが剣が纏ったのか、分からないことは多いけど。
とにかくメイルからもらった、この『遺産』。
(この剣、凄いのかも...)
なんて子供みたいな気持ちを抱きながら落とした剣を拾う。さっきまであった熱はもう冷めていた。
ご無沙汰してます、メレクです。もう一月が終わりに...早いもんです。
更新頻度も高めたいと思いながらなかなか出来ないので...読んでくれてる方は、待っていてくれると嬉しいです(感想、評価くだされば執筆スピード加速します。たぶん笑)