アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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探索開始

「あれは多分、お前の剣と小手が反応したんだろ」

「え、突然なに?」

「朝の話だ」

「あぁ...」

 

時は変わって既に朝御飯を食べた後。私、アハト、ユーノちゃん、そしてミディナちゃんの四人は古跡(ファーデン)を目指すため馬車に乗り込んでいた。町から近くにあった古跡とはいえ、探索する前に体力を消耗したくないという考えから、今の期間だけ町と古跡を繋ぐ馬車が通っているらしい。

 

小回りが良いように馬を操る御者さんと四人までしか乗れない小さな馬車だけど、お陰で男と相席なんてことにはならなかった。代わりに、今も何台か同じ馬車が周りにいるはず。

 

そんな中アハトが突然喋ってきた。内容は朝に起きた、私の剣から炎が出たという話。ユーノちゃんとミディナちゃんにも伝えており、二人とも顔をこちらに向けてくる。

「じゃああれ?私の剣と小手が反応したとか言いたいの?」

「今同じこと言ったよな?」

「いやそうだけど、それならこの町につくまえだって...」

 

メイルの不手際のせいで町から遠いところに落とされた私達は、襲ってくる魔物を倒しながらこの町についた。その時も私は小手をはめた上で剣を持っていた。効果がでるならその時にも出たはず。

「昨日、ミディナからもらった物を小手に取り付けたろ?」

 

私の疑問点を分かっていたんだろう、アハトがそう言いながら私の右手_____そこにつけられた赤く煌めく宝石を指差す。

 

「でも、ノクスさんは魔法を使えないんじゃ...」

「魔力を肩代わりしてくれるやつなんてこいつが前から持ってるだろ」

 

確かに私は、魔力を持たないものでも魔法が使える上 、魔力を充電してもらえれば何度でも使える特別な水晶をエルフの村で貰っている。「それかなり魔力使うからあまりやりたくない」と魔力源(アハト)に言われてしまったため、普段の戦闘で使うことはなくなったけど。

 

「現地についたら試してみればいいんだよ。その宝石がついてる右手と、ついてない左手で比べながらな」

「ですが水晶、宝石タイプは一度使うと割れてしまいますし、希少なものでも中にある魔力自体は失われてしまうのでは...」

 

自分の店で『遺産』を取り扱っているせいか、ミディナちゃんが的を射た質問を投げ掛けた。

 

「宝石の色が変わらないから、大丈夫なんじゃないか?使い捨てのやつは使うと灰色になって割れるし。『遺産』の仕組みをちゃんと理解してるやつなんていないし、可能性は十分あると思うが?」

「そう言われると...」

「物は試しだ、古跡ついたらやってみようぜ」

 

アハトの言葉で一区切りがつき、少しの間沈黙が訪れる。

 

「...そう言えば、なんでノクスさんは『遺産』が好きなんですか?」

 

この中で唯一知らないミディナちゃんが話しかけてくる。ただそれは、私が男嫌いになった原因でもある過去に触れるということ。

 

男嫌いを直そうとはしているけど、なんだか簡単に話してはいけないと思った。こんな純情な子に話していいものか。

 

「話してやれよ、きっと泣いてくれるから」

「泣き虫じゃありません!」

「アハト...?」

 

こういうときに冗談を言わない彼女から言ってくるということは、本当に話しても大丈夫ということなのだろうか

 

アハトの目を見てみると、優しそうな目でウインクまでしてきた。

 

笑い話にしてこそ、乗りきった証拠だろ?

 

そう語っている気がして、私は一つ深呼吸をした。

 

「...じゃあ、どこから話そうか」

 

最近よく出すようになった笑みを浮かべながら。

 

 

 

 

 

「その前にアハト、ウインク下手くそ」

「うるせぇ!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「さーて...ついたな」

「ここが古跡...」

「ひゃっほぅぁ!」

 

馬車から飛び降りる俺と、それにユーノ、ノクスが続く。 一人興奮しすぎて滑って転んでるやつがいるが。

 

そして最後の一人は。

 

「うぅ...ぐすっ」

「ミディナちゃんまだ泣いてるの?」

「だってぇ...」

ミディナがサファイアの様な藍色の瞳から涙を流しながら馬車を降りる。馬を撫でていた御者さんがビックリした顔をしていた。

 

ミディナが泣いているのは、馬車の中でノクスが話した彼女自身の過去話について。『遺産』が好きだったりとか、一人旅をしてきたとか、男といざこざがあったとか。

 

俺達は話を聞いていたし、今彼女が前向きに男と話そうとしているのを知っているから(話す機会自体がないが)問題ないが、初めて聞いた14歳の女の子としては辛いものがあったらしい。

 

「ノクスさんがぁ...」

「いや、私今はここにいるから。そんな泣かなくても...」

 

ぐすぐすしているミディナを見て慌てるノクス。それを見てるぶんにはかなり面白いんだが。

 

「ユーノ、俺あっちの説明聞いてくるから静めておいてくれ」

「え、私!?」

「頼むぞー」

「え、え、えぇ?」

 

ユーノに後処理を任せて、他の探検者たちがそろう場所まで向かう。馬車から降りた者はここで軽く説明を受けてから洞窟に入るらしい。後々喧嘩が起きないようにルールをもうけているそうだ。

 

「キノコ狩りか何かじゃないよな?」

 

ボケた一人言は誰も聞く奴などおらず。俺はコートについているフードを深くかぶり直した。

 

一つの馬車に集まった他の奴等は、パーティーごとに話しているらしく微かな壁を感じる。

 

「はーい、皆さん聞いてください。この古跡(ファーデン)の説明をしますので!」

 

馬車の上から大声で話す男を見て皆が静かになる。

 

「今回この古跡探検者の指示をしているミコン・スラッツです。さっそく始めますね」

 

基本的にこういう指示をする人というのは、近くの町、村で誰からも信用される人や、大金持ちが多い。前者は皆が納得するように、後者はいらない『遺産』を売るときその場で買い取ってくれるからだ。そのお金持ちがいらなくても、オークションなどに売ればいい話だし。

 

(『遺産』はある意味、貴族の持ち物の定番みたいなところがあるからな...)

 

あまり良いことだとは思っていないが。

 

「この古跡は皆さんご存知であると思いますが、なかなか見つからない上、魔物も比較的強めですが、代わりに珍しい物が多いです。ぜひ大目玉を当ててください!ルールとして、『遺産』は最初に触った人の物とします。魔物の情報は先に入っている探検者から聞いてください」

「おぉぉ!」

「燃えてきたな!」

「絶対見つけてやる...」

 

話を聞いた周りの奴等が騒ぎだす。無駄ないざこざにならなければ良いが。

 

「そして、昨日の探索で結論付けました。この古跡は量、質共に最高、Sランクです!」

 

途端、即席の会場がさらにざわめく。古跡というのは場所によって取れるものが違うのだが、良いところからSランクがつけられ、そこからA、B、Cとなる。俺もSランクを聞くのは二回目だった。

 

ちなみに『遺産』にもある程度のランク付けはあるのだが、俺は使わない。そういえば、そういうのが大好きなノクスも話はしないなと今更ながらに思い出した。

 

「また、魔物は見つけ次第討伐、動物は無視でお願いします。なお、いらない『遺産』はこちらで買い取らせて頂きますので、頑張ってください!それではどうぞ!」

「いくぜぇぇ!」

「ひゃっほぅ!」

「お宝じゃあ!」

 

合図と同時に、二つの団体が騒ぎながら動き出す。俺もそれにならって、でも静かにあいつらの元に戻った。

 

 

 

 

 

「あやつは...」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「動物と魔物の違いってなに?」

 

三人と合流して洞窟に入りながらさっきの説明をしていると、ユーノがそんな質問をしてきた。

 

「基本的には魔力があるかないかだな。魔族と人間みたいな」

「へー...」

「犬飼ってる人いるでしょ?それは動物だから町でも大丈夫だけど、魔物はダメってこと」

「なるほど...『ブラッティ・ベア』も?」

「あれは四足で走る時に魔力を使ってたからな」

「そうだったんだ...知らなかった」

「俺達が初めて会ったときは襲われてたんだよな...なんか懐かしいわ」

「『ブラッティ・ベア』と言えば、旧魔領の辺境にしかいないと言われてる魔物じゃないですか。先輩そんなところまでいってたんですか!?」

「それは追々話すよ...他には、人を襲う魔物と、そうじゃないのがいるけどな...あれみたいに」

 

洞窟の中に設置されている明かりで見えた天井を指す。そこには、三匹の魔物がいた。

 

「コウモリ?」

「の形をした魔物だよ。『ファンパイアス』だっけかな...」

「あってますよ先輩」

「ありがと。あいつらは人を襲うどころか近づく者から逃げる奴等だから...」

 

無言で歩き続けると、そいつらは『キキーッ!』と鳴いて洞窟の奥に逃げていった。

 

「魔物だから討伐しないといけないんじゃないの?」

「俺は襲ってこない奴を殺したくない」

「そっか...」

 

ノクスは俺の言葉に納得したのか頷いていた。赤い髪が異様になびく。滅多なことじゃないも風がふかない洞窟で_______

 

「ノクス!伏せろ!」

「え?きゃっ!」

 

ノクスに抱きついて地面に押し倒す。その上を何かが通過し、洞窟にぶつかって穴を開けた。

 

「なんですか!?」

「え、アハト君?ノクスさん!?」

「話をしてれば...人を襲う方の魔物だぞ。気をつけろ」

『ギヒ、ギヒヒヒ』

 

よく目を凝らさないと分からない洞窟の脇道に、一匹の魔物がいた。人間の様に二本の足で立ち、両手を前に出している。名前は確か、

 

「そいつは『セルダー』。風魔法を使う中位の魔物だ!有効なのは炎!」

「はいっ!」

 

俺の声にミディナが反応する。灰色っぽい髪をなびかせ、右手で剣を抜き、左手で炎の玉を作る。そのまま突っ込む彼女に続き、俺も立ち上がって氷を作る。

 

「せえやっ!」

『ギヒ!?』

 

ミディナは剣を突き出して『セルダー』を後退させ、そこに炎を発射した。相手は慌てて避けるものの、その衝撃でバランスを崩す。

「ミディナ!」

「はい!」

 

声をあげると、ミディナは頭を下げる。俺はそこに無詠唱で作った氷魔法『freezed・ice』を通し、『セルダー』の足を貫かせた。

 

『ギヒヒヒギヒ!?!?』

「これでぇ!」

 

動揺したままの『セルダー』の胸に造り出したエクスシアを突き刺す。『ギヒ!!!』と短い叫びをあげたが、やがて完全に動きを止めた。

 

「ふぅ...」

「やりましたね」

「あぁ、ナイスミディナ」

「いえいえ、支援ありがとうございました」

 

エクスシアを消し、ミディナと拳を合わせる。一緒に戦うのは久々だったが、うまくいってよかった。

 

「二人とも...凄い」

「ありがとう。ユーノちゃん」

 

ユーノの感嘆したとも呆然としたとも取れる声にミディナが返事をする。あぁ、完全に出番なかったからか。

 

「あ、アハト...ありがと」

「気にするな。俺も話に夢中だったからな。無事でよかった」

「ちょっ、やめなさい!」

 

お礼を言ってきたノクスの頭を撫でてやると、彼女は頬を赤くしながらその手を振り払った。

 

「ほら、他にもいるかも知れないでしょ!?」

「うーん...本来『セルダー』は群れでいるから警戒はしたけど...一匹だけでよかった。あいつらの一番怖いのは、届かないところから打ってくる大量の風魔法だからな」

「うわぁ...なにそれ」

「まぁ、こういう暗いところにしかいないから、炎を避ける習性があるんだがな。それにしても...ミディナ、上達したな」

「えへへ...そう言われると嬉しいです。」

 

ミディナもミディナで愛らしく頬を染めていた。前よりも魔法と剣の扱いに慣れている様に感じた。

 

「ちゃんと練習してましたからね」

「そりゃよかった」

「ねぇ、どうせならこの脇道行ってみない?なかなか気づかないから、他の人あまりいないかも」

「魔物が『遺産』を集めてるかもしれませんし...そうですね、行きましょう!」

「じゃ、そうするか。ユーノも行くぞ?」

「あ、うん」

 

なんだかボーッとしているユーノに声をかけ、四人で脇道に入る。しばらく進むが、人は誰もいなかった。

 

「こっちの方には誰も来てないんだね。さっきの道は明かりがついてたのに...」

「俺らが入る前の探検者が用意してくれてた物だからな...でも、なんか明るくないか?」

「え?」

「ほら、そこの土...」

 

うっすらとだが、地面が緑色に輝いているのが分かる。ユーノとノクス、ミディナも気がついたようでその方向を見ている...様に感じた。暗くて表情は分からない。

 

「もしかして...よーし!」

 

一番にノクスが地面に剣を突き立てる。スコップを使うように地面を掘るノクスは、今にも鼻歌を歌い出しそうなほど軽やかだった。

 

「ノクスさん、それならこっちの方が使いやすいですよ...」

 

ユーノがノクスに自分の短剣を貸そうと鞘から引き抜く。そして______

 

「えぇ!?」

「うっ!」

「何この光!」

「眩しいっ...」

 

その短剣が光輝いていた。

 

「なんで...」

明かりに照らされたユーノは、驚いた表情をしていた。

 

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