アスモディ・ストーリー (Asmody Story) 作:メレク
突然光りだしたユーノちゃんの短剣に皆が驚いている中で、
「それでここ掘ったらいいんですかね?」
目を輝かせたミディナちゃんが言葉を放ってくる。
「とりあえず...やってみようか。ユーノちゃん貸してくれる?」
「あ、はい」
ユーノちゃんから短剣を貸してもらい、土を掘り始めた。
「何が出るのか...」
「先輩は何か知らないんですか?」
「少なくとも剣が光るのは魔力通した時くらいじゃないか?」
「確かに...」
「あ」
案外浅いところにあったみたいで、短剣の先に何かが当たる音が洞窟に響いた。同時に光が消えていく。
「見つけたのか?」
「そうみたい。『遺産』なのかは分からないけど...とりあえずここを」
割れ物の危険を考えて手で掘っていく。なかなか辛い作業だが、そう時間はかからなかった。
「何かな~」
「なんだか嬉しげだな」
「だってこの感触は生き物じゃないもん、絶対『遺産』だから」
「本当に大好きなんですね」
「我が半生!なんてね」
喋りながらそれを完全に土から出す。アハトが無言でつけてくれた炎に照らされたそれは、 先から手元にかけて少し台形の形をしていて、刃の部分が透明な剣。
「え...」
ユーノちゃんとアハトが声をあげ、私を____正確には私の腰を見つめる。
「なんで、ノクスと同じ剣が...」
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「疲れたー...」
「お茶入れてきますね」
「頼むー...」
「ミディナちゃん、私も手伝うよ」
「ううん、ユーノちゃんも座ってて」
無事ミディナの家までたどり着き、ようやく一息つく。疲れた俺はソファーに寝そべり、その隣をノクスが占領した。
「まさか、あんなに追われるとは...」
「あれなら皆が期待するのもわかるよね...いや、あれは期待せざるを得ないっていうか...」
ノクスの持つものと同じ剣が見つかってから、光っていたことで魔物に見つかったらしく犬型の魔物『リグロ』の群れに追いかけられた。
してくる攻撃自体は、爪で引っ掻いてくるか牙で噛んでくるかだけなのでそうたいしたことはないのだが、最も警戒しなければならないのは、数と、その特性。
どっかの黒いカサカサしてるのじゃないが、一匹見るといつの間にか三匹、それを確認したら何故か九匹に増えている______そんなやつらだった。
それにあいつらは、より多くの魔力を持つ者を執拗に狙ってくる。おまけに、噛むとそこから魔力を吸いとってくる。
今回現れたのは全部で30とちょっと、やつらの特性から狙われたのはユーノだった。彼女を守るために俺とノクスは前に出て応戦、ミディナが支援する形を即座に取り相手する。
ユーノの『fog・beast』はあくまで動物の形をした魔力の塊なので、『リグロ』の餌も同然。かといって下手に魔法を打つと、その威力から洞窟ごと壊しかねないため、なにもできずにいた。まぁ、ユーノに注目しているだけ俺らへの警戒がないから、横からばっさばっさと斬り倒していったわけだが。
特にノクスの動きは良すぎるくらいだった。普段から人の視界に入らないように動く彼女は、魔力を持たない人間だということと相まってほとんど気づかれる前にやつらの首を跳ねていた。
「皆ごめんなさい...なにも役に立てなくて」
「いやいや、ユーノちゃんがいたからこそ私達もあまり狙われなかったわけだし、助かったよ」
「そうそう気にするな。新しいことも分かったしな」
気落ちしているユーノを寝そべったまま励ます。そこから見えた彼女の自慢の角は、心なしかいつもより下がって見えた。
「新しいことってノクスさんの剣ですか?」
「というより、剣と小手の反応だな」
さっきの戦闘で、ノクスが右手で剣を振ったときは炎が出て、左手で拾った同じ剣を振ったときは炎が出なかった。赤い宝石は右手の小手についていたからもう確定だろう。
「色々燃やすなよ」
「分かってるわよ。いざとなったらアハトに氷つくってもらうし」
「俺は便利屋じゃないんだぞー」
「いいから、これもよろしくね」
「...はいはい」
さっきの戦闘で、魔力を戻せばまた使えるようになっている見た目水晶の魔力石を使ったため、ノクスが魔力を戻すため俺に押し付けてくる。渋々魔力を込めながら、俺は話を続けた。
「あとは、俺の魔法だな...」
「強化魔法だけだって言ってたのに、嘘つき」
「うるせぇ、言ってろ」
電撃魔法_____俺が『psychic・plasma』と呼ぶ魔法。強化魔法のように体に電撃を纏い高速移動を可能にするもの。
一方俺の限定魔法『image・replica』は、使用中強化魔法以外使えない_______はずだった。
しかし今回とっさに使ってみたら、エクスシアを持ったまま移動ができた。止まらずに壁に激突したが。
どうやら氷や炎などの形作る魔法は使えない、ということらしい。強化魔法しか使えないと思っていたのは、自分に体に纏うタイプの魔法がなかったから。別に『image・replica』は、作り終わってからも魔力を使ってるんわけじゃないから、作る物じゃなければ問題ないのかもしれない。
「分からないものだな」
「ア、アハト君...」
「さ、お茶入れましたよ」
ユーノに何か言われる前に、妙にニコニコしたミディナがお茶をテーブルに置く。「ありがとう」と言ってからお茶を取り、
「なんか良いことでもあったのか?」
「いえ、ところで先輩、勿論さっき洞窟の壁に当たってから服についた土は落としたんですよね?」
「......」
そっと、お茶を元の位置に戻した。
「先輩?」
「...すいませんでした」
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「じゃあ、今日の戦利品確認しましょう!」
アハトがソファーについた土を掃除している間に、ミディナちゃんが両手を合わせてかわいらしく言ってきた。
「魔物に襲われた後も色々手に入れたもんね」
「いらなければ私が貰ってもいいですか? 」
「全部欲しいところだけど...皆で取ったしね」
「私が拾ったのはこれで...」
「じゃあ私も...ユーノちゃんは?」
「あ、はい」
お茶を端に置いて、真ん中に拾った物を広げる。ここからは自分のお店で『遺産』を扱うミディナちゃんと、私の出番。目がいくのは三つ。
「まず、ここら辺のは全部使い捨ての魔力石ですね」
「状態は全部良くないね。ミディナちゃんのところで売れる?」
「寧ろこのくらいのやつの方がギリギリ安値で取り扱われないので良いです。全部もらっていいですか?」
「じゃあどうぞ」
「ありがとうございます」
ミディナちゃんはいつの間に持ってきていたのか、大きめの袋に魔力石を入れていった。これで全体の三割は減った。
「私が手伝えることって、ありますか...?」
「ユーノちゃんは休んでて、ずっと狙われて嫌だったでしょ?」
「でも、私...」
「...じゃあ、一緒に見ててくれる?私達だけだと先入観があるから」
「ミディナちゃん...うん!」
「じゃあユーノこれ変わっ「じゃあ、次いくよ」ノクスてめぇ!」
後ろからの騒音は無視して続きを見る。
「こっちは回復薬だね...」
「これはいりますか?」
「いや、ユーノちゃんとアハトはエリクサール持ってるから」
「エリクサール!!?」
ガタッとミディナちゃんが立ち上がる。その目は驚愕の色をしていた。
「ちょっ、最高位の薬じゃないですか!!本物ですか!?」
「ユーノちゃんあるよね?」
「見せましょうか?」
「ぜひお願いします!!」
ユーノちゃんが、バックからエリクサールを出す。
「ふぁー...これが...」
目を輝かせて瓶を見つめて感動している彼女は、年相応の感じがした。
(私と似てるのかなぁ)
『遺産』に対する反応が私と変わらない気がした。
「まぁ、だからそれも商品にしちゃっていいと思うよ。確かに数は多い方がいいけど、そこまで必要でもないから...」
「わ、わかりました」
ハッとして更に机の物を整理をする。残ったのは二本の剣。
「じゃあ、あとはこれだけですね」
「そうだね...」
「...ノクスさんのと、同じ剣」
最初の一本が見つかったあと更にもう一本見つかり、私のと合計して三本になっていた。
「これはもらっていい?」
「確かに謎が多いですけど、同じ剣三本もいります?」
「これ、貰った物だからその人に会ったときに聞いてみたいなと思って」
「成る程...分かりました。独特な形ですけど鞘も用意しますね」
「ほんと?ありがとう」
「綺麗にしましたよっと」
話に区切りがついたとき、まるで狙い済ましたようにアハトが報告を入れてくる。
「じゃあ、ご飯にしましょう!先輩のために甘いものもありますから」
「ありがとうございます!!」
ミディナちゃんは、アハトの胃袋を完全に掴んでいるみたいだった。
「......」
更新頻度遅くなって申し訳ないです...また戻せるよう頑張ります!