アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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個人的に好きなシーン。共感して頂ける方がいたら嬉しいです。

それでは本編を。


紡ぐ理想

煙に包まれた私は、戸惑っていた。

 

(死んだ後も、死ぬ前とそんなに変わらないんだ...)

 

手先、足先まで感覚はあるし、意識もしっかりしてるし、目も見開けるから。

 

個人的に、丸い魂だけになるんじゃないかなぁと思っていただけあって、少し驚いた。

 

でも、何より一番驚いたのは___目を開いた先が、真っ暗だったこと。天国って言うのはもっと白いのかと______

 

(あ、地獄行きか)

 

正直、今の私はどこに行こうと変わらないけど、死ぬ前にあれだけのことをしたのだから。

 

 

 

 

 

「すまない。待たせた」

 

だからそれも、地獄に住む人が私を攻めるための声真似だと思った。

 

「ミディナちゃん!!」

「...なんとか、なったみたいですね......」

「お店に置いておくつもりだった薬、持ってきててよかった!」

「それ、持ってきてたんですか...」

 

灰色髪をした女の子______ミディナちゃんを、赤い髪の女の人______ノクスさんが抱き抱える。

 

隣のそれを見てから、私はもう一度前を向いた。

 

「ミディナは大丈夫みたいだな。よく耐えてくれた」

「先輩...今度、先輩の好きなケーキ奢って貰いますからね?」

「実はめちゃくちゃ余裕だろお前...」

 

 

 

 

 

「...なんで、ここに」

 

そこには、右手に大剣を携えた黒髪の剣士がいた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「なんで来たの!?アハト君!!」

 

思わず叫ぶ。叫ばずにはいられない。

 

ここに来たということは、あの場にいた大勢の新魔を相手にしたということ。そして、ここまで探しに来てくれたということ。

 

「どうして探しに来たの!?私はさよなら言って、ミディナちゃんにもひどいめにあわせて!そうまでして助ける意味なんてないよ!何も出来ないのに!!」

「...ミディナ」

「私が言っても聞いてくれないので、先輩が言って上げてください」

「......前から、ネガティブになるときは酷いよな。ユーノは」

 

私が泣いているのを嘲笑うように、アハト君はケラケラと笑った。でもそれは優しさが溢れるような______

 

 

 

 

 

「俺は、ここの全員の意見を言うだけだがな...誰もユーノをいらないなんて思わない。仲間だから助ける。何も出来ないなんてそれこそ間違いだ。」

「私は仲間なんかじゃない!それに皆に酷いこと言って!!」

「喧嘩なんていくらでもあるだろ?仲直りすればいい。許さない頑固者は、ここにはいないしな」

「私は...何も出来なくて」

「いつもいつも努力して、魔法を覚えて。何も出来ないなんて思ってるのはそれこそお前だけだ。竜を倒した時も、あの大会の時も、お前がいなければやられてた」

「そんなの、アハト君だけでも...」

「一緒に戦ったやつが、お前が必要だった。って言ってるんだ。それ以上に何がいる」

 

アハト君は、後ろからさす明かりに照らされながら、

 

「それに...もっと言うなら......そうだな。俺は、ユーノ。単純な話だ」

 

 

 

 

 

俺が、皆が、お前と一緒にいたいから______

 

 

 

 

 

「それ以上に、理由なんていらねぇよ。難しく考える必要もないし、どうしてって聞く必要もない」

「う......ううっ...」

 

その言葉に、枯れていたはずの涙がまた流れてくる。

 

「アハト泣かせた~いけないんだ!」

「先輩...そんな人だったなんてー」

「お前実はめちゃくちゃ余裕だろ!いい雰囲気で終わらせさせろよ!後で殴るからな!」

「ふっ...あははっ」

 

(そんなに、簡単なんだ...)

この時だけ、いつもに戻った気がして笑いがこぼれる。

 

「...もう、大丈夫か?」

「うん...うん!」

「ならいい。全部は片付けてからだ」

 

アハト君は前を向いて、右手の剣を左腰に構える。後ろの光が膨れたものの、剣を振るうとそれが消し飛んだ。辺りが暗闇に覆われる。

 

アハト君の背中で何が起きたのかは分からなかったけど、その白く輝く剣を振るう姿と、

 

「さぁ...とっとと片付けますか!!」

 

威勢の良い声は、私がどんな暗闇に居ようと救ってくれるような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

 

「俺が、皆が、お前と一緒にいたいから。それ以上に、理由なんていらねぇよ。難しく考える必要もないし、どうしてって聞く必要もない」

「う......ううっ...」

 

ボロボロのミディナとユーノを助けようとしたら、ユーノは酷くまいっていた。

 

旧魔として、一人だけ異質の存在としているのが、14歳の彼女にとってどれだけ負担がかかり、こうなってしまうのではないかと想像できなかったのは、完全に俺の責任だった。

 

だから、ユーノが元に戻るように精一杯声を、本心を投げ掛ける。そして、その思いは届いたみたいだった。

 

「ごめんな、許して欲しい」

 

今すぐ側に駆け寄ってそう言いたい。だが、目の前にいる異質な魔物がそれを許さなかった。

 

鋭い爪を持つ四本の足が大地を踏みしめ、猫の物を伸ばしたような細い尻尾を動かし、黒みがかった魔力を身体中に纏って震えている。

 

目は血走り、よだれを垂らしているのを見て、魔物、以外の言葉が見当たらなかった。

 

そいつが火球_____さっき、俺が、破壊してみせたものよりずっと大きいが_____を作り出しているため、顔を少し後ろに向けるだけにしている。

 

絶対に消し炭にするという意志でもあるのか、あれだけ大きな火球を放ってくる様子はまだない。が、背を向けたら躊躇いなく撃つだろう。暗闇に明るさが増していき、目蓋を少し狭める。

 

「アハト泣かせた~いけないんだ!」

「先輩...そんな人だったなんてー」

「お前実はめちゃくちゃ余裕だろ!いい雰囲気で終わらせさせろよ!後で殴るからな!」

 

悪ふざけする二人の声に大声で返事する。ミディナの見た目はとても余裕には見えなかったが、その声には挑発するような気持ちがとれた。

 

「ふっ...あははっ」

 

その甲斐があってか、ユーノがこらえられずに笑い出す。この時だけ、いつもの様に戻ったみたいだった。

 

(起きたことは変えられない。でも、これからは変えられるから)

 

「...もう、大丈夫か?」

「うん...うん!」

「ならいい。全部は片付けてからだ」

 

前を向いて、剣を構える。さっきまでこの世に存在しなかった剣。それを、抜刀するように右腰に構える。

 

(この剣に鞘なんてないけどな)

 

『image・replica』で作れる物は、どんなものであろうと一つだけ。わざわざ鞘なんて作らない。

 

そもそも、この剣に合う物など、即座に用意できるはずもなかった。なぜならそれは______相棒、エクスシアですらないのだから。

 

縦の長さもエクスシアより少し長い。横幅は広く、柄の近くから剣先にかけて細くなっている。それでもギリギリ片手で振れるように、両刃剣の間、真ん中の部分は少しくりぬいたようになっていて、先を見通せた。

 

ユーノとミディナを見つけて、庇うためにとっさにできたのがそれだった。後ろを守るための大きめの剣。

 

今までの努力を積み重ねた結果なのか、偶然の産物なのかは判断できないが、この剣を握ることまでが偶然だとは思えなかった。

 

己の理想を体現する剣。

 

(一本しか作れないくせに、二本目を作るんだからなぁ...アホでしかないが)

 

同時に作れない相棒と新たな剣を悔やみながら、それでも一瞬で思考を振り払う。今考えるべきは今のこと。後のことは後で考えればいい。

 

(俺は、自分の理想を作り出す)

 

魔力を自分の体から剣に流し込む。本来剣に魔力を行かせたところで、大したことは起きない。だが、その剣は違った。

 

(皆が生き残って、笑いあえる。それが、今の俺の理想)

 

剣の両刃______それのさらに外側、小指程度の太さで白く輝き出す。それを見て、魔物は大きな火球を吐き出した。

 

(そのために、俺に力を貸してくれ)

 

魔力を通すことで、強度を格段に上げる物質、透明結晶(クリスタ)を使った剣。名前は、

(_____アイディール!!)

 

心で叫び動作で一閃。その一閃は、何にも負ける気がしなかった。

 

その思いの通り、強度が上がっただけでなく、魔力が通ってることで魔法に干渉しやすくなった剣と炎がぶつかった瞬間、炎の方が弾け飛ぶ。

 

「さぁ...とっとと片付けますか!!」

 

吠える魔物に向けて、俺はアイディールを構える。今この時、俺は負ける可能性があるなんて、死ぬ可能性があるなんて、微塵も考えていなかった。剣の輝きは、それを象徴するように光っていた。




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