アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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新たな目覚め

「エクスシア...っ!」

「アハト!?」

 

アハトが剣を作るも、疲れで尻餅をついてしまう。

 

「無駄じゃろうて。これと戦って疲れておるのだろう?その状態じゃ話しにならんわい」

 

知らない女が、青い炎で燃やされ灰になりつつある魔物を扇子で差し、そのままこちらへ向ける。

 

「それとも、無駄な死を望みか?」

「バカが...そんなわけないだろうが......」

「まるで自分が死なないと勘違いしているような戦い方じゃったの。後ろの奴等は守られてばかりじゃったの。新魔と旧魔と人間、そんなごっこ遊びはやめたらどうじゃ?」

「っ!...てめぇぇ!!」

 

アハトが激昂して立ち上がっても、すぐに倒れてしまった。

 

「何故その剣が作れたか不思議なくらいじゃ。前よりは格段に力をつけているようじゃが...それもここまで」

「俺は...仲間を守りたくて」

「それがごっこ遊びだと言うのだ。今日のお主らはほぼ全て見ていたが...そこの少女は薄っぺらい言葉で改心した。そこの少女は戯れ言を言われても笑顔を取り繕った。そこの女は仲間とやらを助けるために来たのにも関わらず、戦闘を放った」

 

扇子が、ユーノちゃんを、ミディナちゃんを、そして私を指す。

 

「そして...お主は、守るだの戯言を言って、自分が死にかけている。滑稽以外の何者でもないわい」

「ふざけるなよ...そんなわけ、ないだろ」

「盲信は時に人を殺す。よく言ったものじゃの」

 

そう言って、閉じたままだった扇子を開く。

 

「まぁ、安心するがよい。今貴様らがどんな思いをしていようと...死ぬのは、変わらぬ」

 

女が口にした瞬間、後ろから足音が聞こえてきた。数えきれない足音が、バタバタと洞窟に響く。

 

「これは...」

「この魔物は『リグロ』を使い試験した実験台じゃったが、用意のはそれだけではない......魔物を従わせる笛を受け取っているのでな」

「な...!」

「これで、貴様らは終わりだ。四人の内二人の新魔が大怪我、一人は使い物にならない旧魔、一人は魔法を使えぬ人間。どうしようもあるまい」

 

突如として、彼女の周りに青い炎が浮かび上がる。見たこともない綺麗な色だった。

 

(でも、あの色は...怖い)

 

「まさか...この洞窟の出来事全部......」

「それが分かったところでどうなる?」

 

炎は次々に浮かび上がり九つで止まった。

 

「魔物を倒して逃げるか、我を倒して逃げるか。好きな方を選ぶがよい」

「くっ...」

「ちなみに魔物の数は百は越えておる。我はそこのと同じ限定魔法の使い手じゃ。...このまま、偽善を信じて死ぬがいい」

 

私は、頭の中で何かが切れる音が聞こえた。

「アハト、貸して」

「は?お前...」

「そのエクスシアは透明結晶(クリスタ)使ってないでしょ。私でも使える」

「ちょっ、おまっ」

 

アハトから剣をぶんどって、女に向ける。

 

「後ろの方は任せるよ。なんとかなるでしょ?エクスシア消すときは声かけてね 」

「ノクス...?」

「ノクスさん!」

 

そのまま歩いて、後ろを守るようにたった。剣を上段で構える。

 

「くくっ...人間は魔力が分からないらしいからな。よく立ち向かえるものだ」

「うるさい...」

 

あいつは知らない。人間でも、魔力をその人の雰囲気として感じることができることを。実際、相手は魔力だけならユーノちゃんより少し劣っているくらいに感じる。

 

(それでこの恐怖感...ユーノちゃんが本気出したらどうなるんだ...と)

 

あいつは知らない。ユーノちゃんが言われた言葉でどれだけ救われたかを。

 

ミディナちゃんがユーノちゃんに言われた言葉は私も分からないけれど、それでも笑顔を作る理由が。私がどんな思いで戦闘を見ていたのか。

 

「ユーノちゃんも、ミディナちゃんもそんな子達じゃない...そして」

 

『ノクス!二人を頼む』

 

(頼まれたからには、それを信じてないと)

 

あいつは知らない。アハトがどんな思いで体を犠牲にしてまで私達を守ってくれるのか。

 

『それから守りたい人を守れるように強くなりたいと思って、魔法を覚えたんだ』

 

『俺にとっては大事だったんだ』

 

エルビスで言われたとこを思い出す。そうだ。そうだ。

 

「アハトが自分のこと死なないなんて、思ってるわけないでしょ...」

 

だから私は、上っ面だけ攻める彼女を許せなかった。

 

「怖くても、いつも皆のために戦ってくれる。守ってくれる。それを...あんたがバカにするなぁぁぁ!!!」

 

私は持ってる技術と勇気を総動員させて、女に向かって突き進んだ。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

ノクスさんが特攻して、剣劇を繰り広げ始めた。ノクスさんはエクスシアで猛威を振るい、相手は扇子で受け止める。その表情は余裕に満ちているように見えた。

 

「この扇子は特殊製でな。そんじょそこらの武器とはわけが違うぞ」

「知らないよっ!」

戦いが始まったところで、アハト君がゆっくり近づいてくる。

 

「お前ら...今のうちに逃げろ」

「逃げれるわけないじゃないですか!」

 

私は、ノクスさんをじっと見ていた。

 

「前はあんなで、後ろは魔物うじゃうじゃですよ?それに、先輩は傷が...」

「それはお前も一緒だろうが。後ろのやつ、突破するぞ。ノクスが前に出てくれた意味がない...多分、魔物を相手にした方が勝ち目があるだろ?」

 

『ユーノちゃんも、ミディナちゃんもそんな子達じゃない』

 

(今まで逃げてきた。自分は何もできないと)

 

『そんなことない!私だって出来ることがある!ユーノちゃんだって!』

 

(でも、私を守ってくれる人が、困ったときに助けてくれる人がいる)

 

『ユーノ!』

 

(その人たちのために、私が出来ることは!)

 

私は、覚悟を決めた。

 

「ユーノ...?」

「ユーノちゃん?」

 

立ち上がる私に二人が声をかけてくる。私は真剣に、たんたんと必要なことを確認した。

 

「アハト君...私は、使えてこそないけど沢山の魔力があるんだよね?」

「あ、あぁ...」

「ミディナちゃん。アハト君を守ってて」

「え?う、うん」

「...任せて」

 

背中から、メイルさん渡されてから一度も使ってなかった杖を取りだし、地面に突き立てる。

 

「今度は、私が守るっ!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「っ!っ!!」

「どうした?その程度か?」

 

私の攻撃は、この女に全て避けられていた。

 

「...初見では対応できない暗殺術......といったところじゃろうか。ただの人間が出来ることは限られているからのう...当然か」

「ふっ!!」

「じゃが、種が分かれば...」

 

私の習った技術は、ただ前を向いていても見えない相手の死角を通って近寄り、何もないように見えるところか攻撃すること。でも、女はそこに青い炎の置いていて攻められなかった。

 

(こいつ..こうも早く!?)

 

「瞬間移動も出来ず、大した身体能力もない貴様が移動できる死角は、下だけ気にしていれば塞がる程度のものじゃ。それにまず、よくその姿を見ていれば死角に入り込まれることもない。身の程を知った方が...」

 

次はどうすると考えていた一瞬の空白を攻められる。とっさにエクスシアでガードした。

 

「よいと思うぞ?」

「かはっ!」

 

しかし、下から蹴りあげられる。肺から息がこぼれ出た。

 

「魔法は手加減しているというのにこの実力差...呆れを通り越して同情するわい。早くそこと変わってもらえ」

「...嫌だ」

 

私は確かに、魔法に対抗する力をほとんど持っていない。このままでは間違いなく負ける。いや______殺される。

 

それでも、通さなきゃいけない意地がある。

 

「負けない。負けれない。絶対に!」

「...ふむ」

 

私の心からの叫びに彼女が何か考えるような仕草をとる。そして、指を鳴らした。乾いた音と鈴の音が洞窟に響く。

 

「流石に驚くぞ。その弱さで立ち向かう勇気に敬意を讃え、本気で殺してやる」

 

喋る間に、次々と青白い炎が浮かび上がる。全てを灰にする炎。竜の時よりも感じる圧倒的な熱量。

 

「...我の炎は普通より温度が高くてな。橙色ではないのだが......一撃で終わらせるから変わるまい。失せろ」

 

右手に持つ扇子を私に向け、同時に炎が踊り出す。後ろには皆がいるから防がなければならないけれど、私には防ぐ手段が何もない。

 

「いや...!!」

 

とっさにポーチから水晶を出す。基礎魔法とその延長ならば本人の願いによって変わる特別な魔法石。

 

「氷を!!」

 

願った結果、花が開花するように氷の壁が生まれる。青白い炎はそのまま突っ込んだ。

 

「ほう...『遺産』か」

 

しかし、それも持ったのは数秒でしかなかった。

 

「あぁ...!」

 

炎に氷が溶かされる。なくなった壁を、新たな炎が通り抜けて来た。

 

「......」

「おいノクス!...っくそ!」

「先輩まだ無理です!」

 

せめて盾になろうと仁王立ちになる。エクスシアを構え、少しでも役に立つようにする。

 

「バカやめろ!」

「ノクスさん!?」

 

(アハトみたいに強くないし、ユーノちゃんみたいに優しくないし、ミディナちゃんみたいに気を配ることも出来ない)

 

メイルに技術を教わっても、こいつには叶わない。

 

(でも...お願い)

 

何も変わらない私でも、変わったものがある。

 

 

 

 

 

一人だった私に、守りたいと思える仲間が出来たこと。

 

だから。

 

(守れる力を、頂戴!!)

 

景色が、目の前まで来たの炎に覆われる。私は最後までそれから目をそらさなかった。

 

 

 

 

 

そして、その力は開花した。

 

「...なんだと」

 

炎が、消された。しかし、アハトやミディナちゃんが手を出してきたわけじゃない。その事実に、対峙する相手は怪訝な顔をした。

 

「ううっ...」

「なにが...」

「それ...」

 

眩しかった景色がいきなり暗くなったことで目が開けられずに俯く。その間も、後ろから、前からも呆気にとられる様な声がした。

 

「なに...?」

 

やっとの思いで目を開けると______そこには、剣が浮いていた。

 

「......は?」

 

メイルから貰った一本の剣と、ここで手に入れた同じ剣の二本。合計三本が、私の周りを漂う。まるで私を守るように。

 

「ただの武器が浮く...?そんなことあり得るはずが...」

 

女が呟くが、私は見た瞬間に確信した。これは、私を守ってくれていると。

 

「...ありがとう。いけるね?」

 

武器に声をかける。頭がおかしくなったのか疑われそうだが、それに剣は頷いているように感じた。

 

「まぁいい。消し炭になれ」

 

再度、炎が迫る。

 

「お願い!」

 

しかし、それは全て三本の剣に防がれた。

 

透明でありながら、透明結晶ではない剣の刃が、全ての炎を散らして見せた。

 

(やっぱり、私の思い通りに動く!)

 

「っ...どんな手品か知らないが」

「いける...これなら!」

 

エクスシアを握る手に力がこもる。自分の思い通りに動いてくれる剣達を漂わせ、相手の攻撃に構える。

 

「失せろ」

「いっけぇぇ!!」

 

そして、一進一退の攻防戦が始まった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

数えられない『リグロ』が、『セルダー』が、知らない魔物が迫ってくる。それでも私に不安はなかった。

 

『fog・beast!』

 

詠唱し終わった固有魔法により、三体の魔力で出来た狼が現れる。

 

「行って!」

 

その子達に指示をだすと、一目散に敵に向かっていった。魔力が大好きな『リグロ』はもちろん、他の魔物もそれとぶつかりあう。数からして数十秒経たずにこちらがやられてしまうのは明らかだった。

 

「----------」

 

その時間で、『普通の魔法』を詠唱する。氷という基本魔法でありながら、未だ成功したことのない技。

 

普通の人はこんな基本魔法を詠唱なんてしないし、こんなに時間もかからない。

 

「--------------」

 

さっきまでの私なら、とっくに諦めていただろう。

 

(でも、今は)

 

私を助けてくれる人がいて。励ましてくれる人がいる。

 

「--------------」

 

『何かに迷ったら自分の意志で、感情で行動しなさい』

唐突に、メイルさんが言った言葉を思い出した。

 

(...うん。自分の意志で)

 

制御しきれない魔力が溢れ、辺りに広がる。少し氷の魔力に染まった空気が辺りを冷やしていく。

 

「------------」

「この感じ...凄い!」

「何ですかこの魔力...!?」

 

(リーゼ。使わせて貰うね)

 

(『ar・flame!』)

(リーゼすごいね!!でも、『アル』って何?)

(アルって言うのは...そう、キュウキョクって意味ですわ!)

(そうなんだ!かっこいいね!)

(基本魔法でも、中級以上は自分の分かりやすい言い方で分けるのがイッパンテキなのですよ!)

(リーゼはむずかしい言葉をいっぱい知ってるね...ありがとう!)

 

昔『シオン』でリーゼとした会話を思いだしている間に、『fog・beast』が魔物にやられて霧散する。

 

(自分の力で、皆を守る!)

 

『リグロ』が足早に駆ける。しかし、その呪文は作り終わった。

 

ミディナちゃん。ノクスさん。アハト君。

 

「ユーノ!いけぇ!!」

 

そして、その式句を叫んだ。

 

 

 

 

 

『ar・ avalanche!!!』

 

唱えた瞬間、私の足元から洞窟の奥まで地面から氷の槍がびっしり突き上げていく。突き上げた槍は天井まで届き、深々と突き刺さった。誰も防ぐ手段を持たず、避ける隙間すら与えない絶対零度の一撃。

 

そしてそれは、意気揚々と私に食らいつこうとした『リグロ』を空中で突き上げ、一瞬で絶命させた。

 

続く魔物を一匹残らず絶命させた。広がるのは死、死、死。

 

私はその景色を______氷の色と、魔物の血の色がコントラストを表現する景色を見て、達成感が襲ってきた。

 

「よかった...これで、皆...」

「ユーノ!!」

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「なんだ...今のは......」

 

後ろから、炎によって焼けただれた傷も含め体中が凍るような感覚が襲ってきた。声からしても、きっとユーノちゃんが力を出したんだろう。

 

(...凄いなぁ、ユーノちゃんの本領発揮は)

 

「ありえない...あんな小娘が......?まさか...」

 

目の前の実力者が数秒呆気にとられる程度には凄まじい物だったようで、完全に上の空だった。

 

「...まさか!?」

「そこぉっ!!」

「!?!?」

 

驚き顔を崩せない彼女に、エクスシアで切りつける。しかしすんでのところで避けられてしまった。

 

「ふ、その程度」

「いや、負けだよ!」

 

一撃を避けて自慢げになっていた所を、宙を漂う三本の剣に襲われた。二つは上手く避けていたが、一本が頭に当たる。しかし、それも流れるような身のこなしでかすった程度だった。

 

「これだけやって致命傷も与えられないなんて...」

「血?...我の、血?貴様が...やったのか?」

 

頭の上の方から、薄水色の髪と額を赤く濡らす液体が出ていることを自覚して、激昂する。顔をひしゃげさせ、大きく開いた目の片方に血が流れ込んだ。

 

「...くっ。潮時か。貴様はいずれ我が殺す。見るも無惨な姿に変えてから、指を一本ずつ折って、体をねじ曲げて殺す。忘れず、覚悟しておけ!!」

 

冷静に、淡々と叫んで、鈴の音と共に彼女は消えた。私は、逃げた相手にも聞こえるように大声で叫び返す。

 

「...もう二度と来んな!」

 

私の意識は、そこまでが限界だった。




ずっとシリアスシーンだったのでコメントを控えていたのですが、一段落ついて安心しています。

見てくれている友人には『長い』と一蹴されてますが、個人的にはお気に入りです。共感してくださる方がいらっしゃれば幸いです。

誤字脱字、感想、評価等ありましたらよろしくお願いいたします。
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