アスモディ・ストーリー (Asmody Story)   作:メレク

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アインツ家

突然森の向こうから走ってきたおっさんは、俺に氷を向けていた金髪の女の子に抱きつき、頬擦りをしていた。

 

「リーゼ?大丈夫?なんともない?叫び声が聞こえたから心配したんだよ?心配で心配で途中道をふさいでた木を倒しちゃったくらい。リーゼ...リーゼ?」

「パパ......やめて。今はパパの方が怖い」

 

そういわれたおっさんは形容しがたい顔をしていた。

 

こちらとしては、向けられていた氷がなくなったので助かったが......あっても弾けばよかっただけだけど。

 

そうは言っても大人。そこら辺に二頭の熊が血を出して倒れ、知らない男が娘の近くにいるのを確認して目の色を変えてきた。

 

「これはどういう状況かな?」

「暴れてた熊から彼女たちを助けた後ですよ」

こっちとしては、ようやく話が通じそうな人が来てくれて少し安心した。

 

「君は......」

「ここを通った、ただの新魔です」

 

そう言って髪をすくって、新魔特有の小さな角を見せる。おっさんは少し驚いてこちらを見て、

 

「そうか......娘達を救ってくれてありがとう。お礼がしたいんだが、どうだろうか?」

「パパ!こいつはすごい魔法使うし、危険なのよ!」

「それで守ってもらったんだろ?だったらそんなことを言わないで、お礼を言うのが先じゃないの?」

「うっ......」

「それに、うちの村はできれば新魔と良好な関係を築きたいと思っている。田舎だから来る人も少ないけどね。ともかくどうかな?村に来てくれればお礼もできるんだけど」

「......実は昨日から寝てなくて。寝床を用意していただけると助かるのですが」

「そのくらいお安いご用さ」

「パパ!」

「いいから黙ってなさい」

「ッ!」

「こっちとしても見てて不安なので娘さんと喧嘩しないでくれると......」

「あぁ、すまないね。娘は新魔の話しか聞いてないから...実物を見て混乱してるんだろう」

 

なんだか実物って言われていい気はしないが、男性も少し動揺してるんだろうと考える。

 

(普通はこんなところに新魔なんて来ないからな)

 

「じゃあ案内するよ。ついてきて」

「はい。でもいいんですか?ここで決めちゃって」

「僕が村長だからいいんだよ」

 

(それって職権乱用なんじゃ......)

 

俺はツッコミしたい気持ちを抑えて動きだした村長さんの後についていく。彼はいまだに固まっている女の子に手招きして、

 

「ユーノちゃんも行くよ?」

「あ......はい」

 

こうして全員で道を歩いていく。周りの女の子達から視線を感じるものの、気にしたら負けだと腹をくくった。

 

(...なんだかんだで上手くいったな。これで今日はゆっくり寝れるだろう。なりより、こうも上手く旧魔の村へ行けるとはな......人助けはするもんだな)

 

ここからが本番。頑張っていかなければ......

 

「大丈夫かい?」

「あ、はい。すいません」

 

考え事をして足が止まっていたのを謝ってから、俺は村長の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

村に帰った私たちは、そのままバルトさんの家に向かった。中に入ると町内会議でもあったのか、村の人がほとんどいた。

 

「おぉ!バルトさん!娘さんは見つかりましたか」

「急に会議抜け出しちゃってすいませんロザリオさん。でも、娘の悲鳴を無視するわけにもいかなくて......」

 

そんな会話をするバルトさんと、この町で服を作っているロザリオさん。

 

でも、家の中で会議してたのに、森からの娘の悲鳴を聞き分けるなんて......この村には娘が好きすぎる人が多くて少し不安になった。

 

「アキ!ユキ!もう帰ったの?」

「熊に襲われちゃって......」

「あの人に助けてもらったの!」

 

茶髪の双子......アキとユキの母であるミクさんは、ユキちゃんが指を指した男の子を見るなり「ありがとうございます」と頭を下げ、男の子は「あ......いえ」と、戸惑ったように頭を下げ返していた。

 

「ところで、その子は?」

「あぁ......娘達を助けてくれた人だよ。新魔だけど、今日はお礼に寝床を用意しようって話になってね」

 

その言葉にざわつきが生まれる皆。

 

いきなり新魔が来ました。なんて言われたら、ドッキリだと思うだろうし...

 

しかし、バルトさんが事の経緯を説明すると、ほとんどの人が静かになった。静かになったけど、なんだが目線が...私はその空間が居心地悪かった。

 

「あの、バルトさん」

「はい?」

 

口を開いたのは木こりであるニカッジさん。

 

「彼にはなんでこんなところに一人でいるのか説明してもらう必要があると思います。さすがにこんな田舎町にいるのは...」

「うーん...その通りなんですけどねぇ...」

「...説明ならちゃんとするつもりです。どのみち聞いて欲しいこともあったので」

 

男の子がそう言うと、再び周りが静まった。私はこういうところでもしっかり意見できるなんて凄いなぁと他人事のように感心した。

 

「でも君も疲れてるみたいだし...なんでこんなところの森にいたのかは、明日説明してもらうから。それでいいかい?」

「構いません」

「じゃあそれで。そしたら泊めてくれる家を募集したいのだが......」

「バルトさんの家では駄目なのですか?」

「娘がね......」

 

そう言うと、話の本人は「ふんっ!」とそっぽを向いていた。

 

いくら新魔と友好的にしたいといっても、突然泊まらせてくれと言われても...思った通り、皆ざわつきだした。

 

どの家に行くんだろう...お、お礼もかねて今なら少し話しても大丈夫かな......なんて思っていると、

 

「なら、ウチでいいですよ~」

「え?その声...お母さん!?」

 

お母さんが手をあげていました。

 

「なんでここに!?」

「今日は休日だけど町会議ある日だって聞いて......部屋にこもっちゃったあの人の代わりよ」

「お父さん......」

 

会議があっても出てこなかったんだ...

 

「でもフィルフィさん。勝手に決めてしまって良いのですか?」

「いいのよ~別に」

 

お母さんはいつもふわふわしてるのに一つ意見を固めるとなかなか変えない人だし、バルトさんもそれをわかっていた。

 

「まぁ、それならいいんですけど......君もそれでいいかい?」

「かまいません」

 

そのままこちらに寄ってくる彼。

 

「ここになったみたいですね」

「ええ。ようこそ『シオン』へ。私はフィルフィ・アインツよ。ほら、ユーノも」

「ユ、ユーノ・アインツです。よろしく」

「よろしくね~」

「はい。俺の名前は......カムイです。カムイ・テイカー。こちらこそよろしくお願いします」

 

ペコリとお辞儀をしてくる彼にあわせて私もお辞儀してしまった。

 

「綺麗なお辞儀ね~どこかのお姫様みたい!」

「あ、ありがとうございます」

「自己紹介もすんだし、せっかくカムイちゃんが来たんだから夕飯も豪勢にしなきゃね~」

「ちゃん付けはやめてください...」

「あはは......」

 

お母さんと握手する男の子......テイカー君は、少し困った表情をしていました。

 

こうして、一日だけ我が家に居候ができました。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

「ただいま~」

「我が家へようこそ~」

「......お邪魔します」

「玄関で靴脱いでね?」

「あ、はい」

 

テイカー君を連れて家に入った私たちは、玄関で靴を脱いでリビングへと向かう。

 

「部屋は二階の一番右奥が開いていると思うから、そこを使ってね。ベットもあるから」

「分かりました。ありがとうございます」

「眠いみたいだし、夕飯ができるまで寝てていいからね?」

「すいません。お言葉に甘えさせていただきます」

「そんなにかしこまらなくていいのよ?」

「いえ...そういうわけにもいきませんから。失礼します」

 

そのままテイカー君は二階の部屋へ向かった。私たちは、リビングからそのままキッチンへ。

 

「家族が増えたみたいで嬉しいわ~」

「それ違くない?」

「そんなことないわよ~?もう少し柔らかくなってくれるとなお良いんだけど...」

「お母さんったら...」

 

そんな会話をしながら夕飯を作り出すこと一時間。もう窓の外は真っ暗でした。そして、

 

「ユーノー!お父さんが悪かったから許してくれ!」

 

父(甘えん坊)が一人増えました。

 

「もういいから、早くテーブルかたして?なんかよくわからないのでいっぱいじゃん」

「分かった!娘のためならなんだって!」

 

そう言って忙しく紙をかたすお父さん。

 

「それ仕事の書類なんでしょ?もっと大切に扱いなさいよ?」

「......ハイ」

 

お父さん大丈夫なのかな......

 

ガタガタと動くお父さんを心配してると、ガチャ、とドアが開く音が。見ると顔がさっきよりスッキリしているテイカー君が。

 

「かなりよく寝れました。ありがとうございます」

「そう、よかった~」

「......え、我が家に家族以外の知らない人物?え?」

 

お父さんが持っていた書類をそのまま落とし、固まった。

 

「あ、えーと...今日一日だけこの家に泊まらせていただくカムイ・テイカーです。よろしくお願いします」

「泊まる...?え、泊まる...?」

「は、はい...」

 

お父さんは自己紹介をするテイカー君をまじまじと見つめ、

 

「まさかお前...ユーノの彼氏か!?」

「「え?」」

 

私とテイカー君が固まる中、お父さんは一人頷き、

 

「俺に内緒で泊まろうとするとは...だがお前に娘はやらん!絶対にだ!!」

 

高らかに宣言するお父さん。

 

ガンッ!!

 

その後ろで夕飯のステーキを作り終えたお母さんが、その手に持った神器(フライパン)を降り下ろした。満足そうにしているお母さんと、頭から倒れるお父さん......殺してないよね?

 

「ごめんなさいね。うちのダメ夫が」

「えー...助かりました?アインツさん」

「あら?ここにはアインツが二人いるから、名前で呼んでね」

 

((さりげなくアインツ家から一人消した!!))

 

この時、私とテイカー君の思ったことは同じだったと思う。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

不思議な家族だ。

 

それが、俺が用意された部屋のベットと上で考えたことだ。

 

既に(フライパンで殴られてたアイオス・アインツさん含め)四人で夕飯のステーキを食べ、皆それぞれの部屋に戻った後だ(アイオスさんとフィルフィさんの部屋は一緒らしい...)

 

でも、今日の雰囲気。元より家族とあまり触れ合わない俺にとっては、慣れないものだった。

 

(それだけ大切で、魅力的ってことだよな......)

 

これからやろうとすることは無謀かもしれない。でも、達成できれば......それに、この村はかなり良い条件。新魔と友好的で、あっちからは入りづらい旧魔の村。問題は時間だが...今は気にする程でもない。まだ。

 

(これができたら、俺も家族皆で笑いあえるのだろうか......いや、してみせる)

 

決意を固めた俺の意識はいつの間にか落ちていた。

 

 

 

 

 

----------------

 

 

 

 

 

午前五時。

 

目を覚ますと既に朝日が見えていたが、普通に起きるにはまだ早い時間。

 

(...やるか)

 

俺はベットから出て、そっとドアを開ける。静かに一階に降り、家の外に。

 

(玄関の鍵は閉められないか...まぁ、見ながらやれば問題ないか)

 

楽観的に考え、日課を始めるために家から少し離れて立ち止まり、目を閉じる。右手を前に出して魔力を込める。

 

(今日は剣かな)

 

イメージするのは鋼鉄の剣。強く、固く、細長い剣。

 

(っと、こんなもんか)

 

右手に鋼色の剣が握られているのを確認して、何回か振るう。ときどき、ほとんど溶けている雪に足を持っていかれそうになるも、強化魔法をかけて踏ん張りながら剣を横になぎ払う。

 

(無詠唱生成完了。お次は...)

 

俺は作った剣を消して、もう一度目を閉じた。

 

「ーーーーーーー」

 

作るのは、さっきより強い剣。不朽で輝く剣を。そして、それを使う自分を詠唱しながら考える。

 

『image・replica』

 

静かに唱えた詠唱のせいか、辺りに風が吹く。目を開けるとさっきより輝きの増した剣が現れる。だが、

 

(まずまずって所か。実際役に立つのは無詠唱だしな......)

 

詠唱してこの程度じゃ満足なんて出来るわけがない。

 

基本的に詠唱を必ず必要とするもの。旧魔の固有魔法と、天災レベルと言われる超上級魔法以外では、無詠唱で能力を使うことができる。

 

しかし、それ以外の魔法でも詠唱を行うことにより、精度や生成効率を高めたりすることができる。

 

俺の魔法『image・replica』だと、生成した物の強度などが増加する。時間がかかるのであまり使わないが...

 

「次でラストっと」

 

作り出した剣をもう一度消し、新しく作り直す。今度は無詠唱。しかし、それでいて俺が作るなかで一番上手く出来る俺だけの剣(つるぎ)。

 

「...来い。エクスシア」

 

構築されるのは黄金の長剣。俺が望んだ最強の力。

 

(うーん...これもまずまずだな)

 

「きれい......」

「ッ!」

 

彼女...ユーノ・アインツが現れたのは、そんなことを考えている時だった。

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