魔法少女リリカルなのはstrikers Return of a soul   作:K-15

11 / 11
第11話 イミネント、なの

 クレアの奇襲により損傷を負ったマンティスマンは傷だらけで満身創痍、とても戦って彼女を捕まえるどころか召喚者であるコバルトを守る事すらできそうにない。

 這いつくばりながらギリギリと消えそうな鳴き声をあげる事しかできない状況で、それでもコバルトは不敵な笑みを崩さなかった。

 

「アナタの方から出てきてくれるだなんて手間が省けましたよ」

 

「待つのは性に合わないんだ。それよりどうする? そこのカマキリは一撃でぶっ潰してやったぜ」

 

「いやいや、心配はご無用。まだ予備は沢山あるので」

 

 言うと倒れたマンティスマンの地面に魔法陣が浮かび上がり光の中へ飲み込まれて行く。そして光り続ける魔法陣からは新たな次元生物が召喚される。人形のカマキリが再びクレアの前に現れた。

 

「先ほどは不意打ちを受けましたが、今度はそうはいきません。アナタの戦闘能力はこちらでも調べています。このマンティスマンに勝てるかな?」

 

「いいぜ、やってやるよッ!」

 

 大剣型のデバイスのグリップを両手に握りクレアは地面を蹴った。ネネより受け取ったオーバーソウル、そのお陰でストライマーバーストも安定して発動でき、動きも今までよりも早い。

 魔力で形成された巨大な刀身を目の前の敵に思い切り叩き付ける。

 

「うらァァァッ!」

 

 重く鋭い一撃がマンティスマンの緑色の皮膚に触れるよりも早く、背中の羽が動き出した。重力に逆らい両足を地面から浮かばすと途端に動きが素早くなる。高速で空気を掻き出すその羽は目にも留まらぬ速さで体を自由に動かす。

 

「ギギャァァァ」

 

「チッ、でもな!」

 

 ストライマーバーストの切っ先は空を切る。その隙を突きマンティスマンは両腕の巨大な鎌を振るう。

 高い硬度を誇る鎌は鋭く、更にカマキリの生態を持っている為動きは正確で素早い。容赦なく獲物を狙い、一瞬の内に鎌は相手を斬り裂く。

 だが、この先に居た筈のクレアはもう次の手に出ている。

 

「遅せぇよ!」

 

「ギギッ」

 

 マンティスマンの鎌はアスファルトに2筋の切れ込みを入れるがクレアはまだバリアジャケットに汚れすら付いてない。

 クレアも同様に地面を蹴って飛び上がり、そして素早くデバイスを振る。

 互いの刃と刃がぶつかり合い衝撃が走った。弾かれる大剣と鎌。

 瞬時に体勢を立て直すクレアは大きく振りかぶって袈裟斬り、横一閃。彼女の攻撃に反応するマンティスマンは何とかコレを防いで見せた。

 

「多少見た目が変わった所で、所詮お前は狩られる側なんだよ!」

 

 交差して剣を防ぐ鎌、クレアはそれを力技で押し返し姿勢を崩させ腹部に蹴りを叩き込む。マンティスマンの視界からクレアの姿が消える。

 

「これで終わりだぁぁぁッ!」

 

 背後に回り込んだクレアがストライマーバーストを振り下ろす。必殺の一撃、確実に相手を仕留める筈の攻撃は、敵のボディーに当たる事はなかった。

 背部から生える羽が高速で動きだし、マンティスマンは一瞬で彼女の攻撃を回避。その動きはまるで分身しているかのように素早い。

 

「コイツ!?」

 

「今までと動きが違いますね。ネネから何か吹き込まれましたか?」

 

「テメェには言いたくないね! それにな!」

 

 空中を飛び回る人型カマキリ、その動きを常人が視界に捉える事は不可能だ。けれどもクレアは姿が見えなくなった相手に不安も恐怖も感じない。

 デバイスのグリップを握り直し、目に頼るのではなく耳で音を聞き、匂いを捕え、肌で空気の揺れを感じ取る。他の全ての5感を研ぎ澄ませ、敵の動く先が手に取るようにわかった。

 

(確かに早い、アタシの目でも見えない。でもそれだけだ!)

 

 空気を突き破りマンティスマンがクレアに迫る。両腕の鎌を振りかぶり、加速と合わせる事で攻撃力を上げ袈裟斬り。

 コンクリートでさえ容易く分断する攻撃、バリアジャケットの防御力があろうとも無傷では済まない。

 まるで目くらましするかのよう。眩い光が瞬間視界に入った。鎌の鋭い刃がクレアの首を狙う。

 

「反応できる!」

 

 2人の刃がぶつかり合い再び衝撃が走る。鍔迫り合いになり2人の視線が交わった。マンティスマンは口を左右に開け粘着性の粘液を吐き出そうとしたが、クレアは寸前で首を鷲掴みにして頭の向きを変える。

 吐き出された粘液が自らの左腕へと排出され自由な動きが取れなくなった。

 

「これなら!」

 

 首根っこを押さえたまま急降下し、アスファルトに体を叩き付ける。鈍重な鈍い音が響き地面にヒビが入った。間髪入れずストライマーバーストの巨大な刀身を思い切り胴体に叩き付ける。

 

「潰れちまえ!」

 

「ギグェッ!?」

 

 腹部からくの字に曲がるマンティスマンは悲鳴を上げ、あまりの衝撃にアスファルトへは更にヒビが走る。クレアはこれでもかと何度も何度も叩き付けた。

 

「どうだ? まだ来る!」

 

 振り向きざまに横一閃。反射神経で対応するクレアの前にはもう1体のマンティスマン。甲高い音が響き互いに刃を弾け、クレアは1歩踏み込む。

 

「ギギ!」

 

「無駄だってんだよ!」

 

 剣を振り上げ左腕の鎌を切断、返す刀で右腕の付け根に振り下ろす。まばたきもしない内に2体の敵を再起不能にした。

 鋭い視線でコバルトを睨み付けるクレアは思い切り地面を蹴ると一気に加速。ニヤニヤと笑みを浮かべたままのコバルト。その手に握る鞭は、しかし武器として使われない。

 

「鬱陶しい奴は潰してやった。次はお前だ!」

 

「いやはや、血の気の多い女性だ。ですがね……」

 

「その喋り方も鬱陶しいってんだよッ!」

 

「フフフッ」

 

 迫るクレアは剣を振り下ろそうとするが、寸前で動きを止めて飛び上がった。

 

「今度は何だ?」

 

 灼熱の炎が地上を焼く尽くす。新たな次元生物がコバルトの傍に現れた。4本足で立ち、鋭い牙と爪を持つその生物はまるで獅子のよう。

 けれどもその体は白く、象徴でもあるたてがみと尻尾は炎で形成されている。

 

「必要なのはオーバーソウルだけだ。死なない程度にやれよ?」

 

「自分で戦おうともしない男に負けてられるか」

 

「何とでも言うが良い。行け、フレイムレオ!」

 

 コバルトは握る鞭を振るい地面を叩くと、フレイムレオと呼ばれた獅子はクレアを敵として認識し戦闘態勢に入る。

 対するクレアの方はタイムリミットが来た。デバイスに充填された魔力が底を突き通常形態に戻ってしまう。けれどもそのくらいで彼女の闘志は下がらない。

 

「そいつもぶっ潰して、テメェを引きずり出してやる!」

 

「威勢だけは良いな」

 

 もう1度鞭が振るわれフレイムレオが走り出した。レッドストライマーを構えるクレアも戦闘に備えるが、ふと体に違和感を感じる。

 

(何だ? 体が鈍い?)

 

 飛びかかるフレイムレオは鋭い爪で彼女の体を斬り裂こうとする。レッドストライマーでこれを弾き返し、頭部目掛けて突きを繰り出す。

 だが強靭な牙で切っ先に噛み付くと攻撃を封じる。

 

「グッ! 力負けした!?」

 

 首を右に振り、助走を付けて左へ振り被ると彼女の体ごと投げ飛ばす。そして開口すると炎を噴射した。

 急いで体勢を立て直し飛び上がるクレアだったが左足に炎が触れる。バリアジャケットはダメージを軽減してくれるが、それでも彼女の表情が歪む。

 

「ほらほら、どうしたのですか? やはり威勢だけですか?」

 

 言いながら再び鞭を振るうコバルト。鞭の音に従いフレイムレオは次の行動に移る。開口した口から火球を発射した。

 反応するクレアは空中で回避行動を取るが、やはり体が思うように動かない。

 

(気のせいじゃない。動きが鈍くなってる! どう言う事だ? アイツの鞭か?)

 

 考えてる間にも連続して火球が迫まる。グリップを両手で握り袈裟斬りしクレアは火球を分断した。いつもの調子なら高い運動能力で空中でさえも自在に動き回る事で簡単に回避できる。

 だが今は両手と両足に重石をぶら下げたかのように動きにくい。地上でしか活動できないフレイムレオはクレアを撃ち落とそうと火球を放ち続ける。

 地上に降りれば不利になる、けれどもこのままではジリ貧だ。

 途端に動きの悪くなったクレア、その様子はコバルトの目にも映っている。

 

「おかしい、まさかとは思うが体力が尽きたのか? いいや、メガミの報告ではそんな事はなかった。だとすれば他の要因。私は知能の低い動物を操る特殊な能力を持ってはいるが、人間は操れない。だが、試してみる価値はある」

 

「待ちなさい!」

 

「チッ、フェイト・テスタロッサめ。もうブラッドファングを退けたか」

 

 睨み付ける先ではフェイトが仕掛けられた次元生物を全て薙ぎ払っていた。コバルトは彼女に接近される前に鞭を振るい、自身を守るべく新しいブラッドファングを複数体、次々と召喚させる。

 現れた魔法陣からブラッドファングが絶え間なく現れ、コバルトを守る壁として再びフェイトに襲い掛かった。

 

「まだ出て来る!? この程度で」

 

「アイツラでは足止めくらいにしかならないか。それもいつまで保つか怪しいモノだ。だとすれば手加減をしている余裕もないな」

 

 クレアの体に起こった異常、そうでなくともコバルトはクレアを封じ込める事はできると考えていた。けれども管理局内で最高ランクに位置するフェイトの戦闘力を無視する事などできない。

 浮かべていた笑みもいつの間にか消え、コバルトは自分を中心にして新しく魔法陣を発動させて、懐から灰色の角笛を取り出した。

 

「クレア、君1人ならコイツを呼ぶ必要もなかったものを」

 

「情けない男だな。結局、威勢が良いだけなのはテメェだろ? こっからでもお前がビビってるのが良くわかるぜ。テメェよりも格上のフェイトにビビってる!」

 

「減らず口もそこまでです」

 

「こっちのセリフだッ! このぉ……ぶっとべェェェッ!」」

 

 火球を斬り落とすクレアは自身の体に埋め込まれた2つ目のオーバーソウルの力を発動させた。デバイスの魔力充填はまだ終わってないが、オーバーソウル自体が魔力をチャージしてくれている。

 電力を帯びたように体がスパークし、鈍くなっていた身体機能も一時的に回復、更に上昇した。

 右手に握るレッドストライマーを振り上げると、攻撃態勢に入るフレイムレオ目掛けて力の限り投げ飛ばす。

 赤い魔力を帯びるレッドストライマーは、元々の彼女の腕力とオーバーソウルにより増強された魔力とにより、まるでレーザービームのような速度で次元生物に迫る。

 空気を突き破る衝撃に円形の白い雲が通過した痕に発生し、切っ先は開口するフレイムレオの口内に直撃した。

 

「っっっ!?」

 

 声にならない声を上げるフレイムレオは、その威力に体が吹き飛ばされた。骨が粉砕される程の衝撃とスピード。地響きが広がりそのままアスファルトをめくり上げながら白い体は突き進み、フェイト宅のフェンスを突き破り手入れされた庭をボロボロに荒してようやく動きが止まる。

 舞い上がる砂煙が晴れる先でフレイムレオが体がズタボロになった状態で横たわっているが、クレアはその事を確認するよりも早くに次の行動に出た。

立ち止まり角笛を吹くコバルトに向かって一直線に飛んで行く。

 

「庭が壊れたけど許せよ、フェイト。さて、これでぶん殴れる!」

 

「それはどうかな?」

 

 強烈な光が周囲を照らし、嫌でもクレアの視界に入る。思わず腕で目を保護するクレアはもう少しの所で立ち止まってしまう。

 

「何だ? 今度は一体!?」

 

「フフフフフッ、私が操る最強の次元生物だ。君に勝ち目はないよ」

 

 魔法陣から現れるのは今までの次元生物とは違う。強靭な牙、巨大なボディー、天を仰ぐ両翼。全長が14メートルはあるその生物は、ドラゴンと呼ばれる伝説上の生物。

 頭部にある4本の角、分厚い甲殻と鱗は黄色く夜の闇にも良く生える。

 伸ばした手がクレアの小さな体を掴み取り、ギリギリと骨と筋肉を痛め付けた。

 

「ぐあああァァァッ!?」

 

「良い声だ。本当はここまでする予定ではなかったのだがね。このイエロードラゴンの前にひれ伏せ!」

 

 イエロードラゴンと呼ばれた次元生物の左肩に乗るコバルトは、響き渡るクレアの悲鳴を聞いてニヤニヤと笑みを浮かべる。その頃になってようやく、フェイトは自身に迫るブラッドファングを退けクレアの元に来る事ができた。

 

「クレア!? アナタ、この生物は?」

 

「フェイト・テスタロッサ、君の存在は私を本気にさせた。だが、言ったように目的は彼女の捕獲。君との勝負は後回しだ」

 

「そんな事はさせない! クレアは返して貰います!」

 

「ほう? 彼女はもはや私の手の中にある事をちゃんと理解しているのかな?」

 

 バルディッシュを構えるフェイトは鋭い視線で相手を睨み付ける。だがコバルトは素知らぬ顔で、イエロードラゴンはクレアを掴む手の力を強めた。

 

「あ゛あ゛あ゛ァァァッ! このッ!」

 

 デバイスを手離した状況、わずかな隙間から右腕を出してイエロードラゴンの指を殴るが、その程度ではびくともしない。

 フェイトはこの状況を見て険しい表情に変わる。

 

(クレアが自力で脱出するのはほぼ不可能。戦うだけなら私1人でも何とかなるかもしれない。けれどもこんな所で暴れられたら街にどれだけの被害が出るか。それに、後ろにはヴィヴィオが居る)

 

「フフフッ、その表情たまりませんね。人間の怒りや憎しみ、悲しむ姿は、いつ見ても面白く、そして醜い……」

 

「アナタは絶対に逃しません。クレアも取り戻します」

 

「戯言を。宜しい、少しだけ遊んであげますよ」




スーパーかみさんのキャラを使用させて頂きました。
ご意見、ご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。